ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』
チャプター43『パーフェクト・ソルジャーです!』
遂に動き出した島田 愛里寿とイプシロン(島田 伊四郎)の兄妹………
その実力は、大幅に戦力ダウンしていたとは言え、大洗連合を壊滅させるまでのものだった。
今、あんこうチームと弘樹は………
最後の決着へと向かう。
メガフロート艦上・遊園地跡内………
「みぽりん! 愛里寿ちゃん達が何処に居るのか分かるのっ!?」
弘樹をタンクデサントとさせたまま走るⅣ号の車内で、沙織が車長席の方を振り返って見上げながら問う。
「最後の報告で、黒森峰機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊と交戦していたそうだから、多分………中央広場だよ!」
「我々が最初に集結していた地点か………」
みほは地図を見ながらそう推測すると、弘樹がそう呟く。
「………!」
と次の瞬間、何かに気づいた様な様子を見せる。
「? 弘樹くん? 如何し………」
たの?と言い切る前に、通り掛かった宇宙船を思わせる施設からロケット弾が数発飛んで来た!
「「「「「!?」」」」」
「………!」
あんこうチームの面々が驚く中、弘樹は素早く四式自動小銃を構え、発砲!
飛来して来たロケット弾を全て撃墜した!!
「うわっ!?」
「………!」
爆風からみほが顔を庇う中、弘樹はタンクデサントしていたⅣ号の上から飛び降りる。
「! 弘樹くんっ!」
「行けっ!」
「!!」
みほが呼びかけると弘樹は即座にそう返す。
「麻子さん! 行って下さいっ!!」
「一応確認するが、良いんだな?」
「ココは弘樹くんに任せるのがベストです」
「分かった………」
すぐにみほが麻子へ呼び掛けると、Ⅳ号は速度を上げて離脱して行った。
「…………」
それを見送ると、弘樹はロケット弾が飛んで来た宇宙船の形をした施設に近づく。
「…………」
慎重に歩を進める弘樹。
そして施設が間近まで迫った、その瞬間!
突如として施設が爆発した!
「………!?」
爆風に吹き飛ばされ、仰向けに倒れる弘樹。
素早く立ち上がるが、そこへ施設から上がっている爆煙を突き破る様にロケット弾が飛んで来る。
「来たか………」
横跳びしながらかわすと、爆煙の中へ四式自動小銃を向ける。
そこで再度、爆煙の中からロケット弾が飛んで来る。
「…………」
しかし、弘樹はその場を動かない。
やがてロケット弾は、弘樹の左右を抜ける様にして背後の方へ着弾する。
如何やら、回避行動を執ったら当たる様に撃たれていた様であり、それを見抜いた弘樹は敢えてその場に立ち尽くした様だ。
「………!」
弘樹は反撃とばかりにロケット弾が放たれた位置に向かって発砲する。
しかし手応えは無く、再度ロケット弾が飛んで来る。
「………!」
今度は回避行動を執りつつ、再度発砲するがやはり手応えは無い。
とそこで………
半壊した施設に瓦礫の上に影が現れた!
「………!!」
すぐさまその影に四式自動小銃を向ける弘樹。
「舩坂 弘樹、良く凌いだ。初手で西住 みほ諸共に葬る積りだったが………」
「イプシロン………」
それは紛れも無く、右肩にバズーカを担いだイプシロンの姿だった。
「まあ良い。西住 みほは愛里寿が倒す………そして貴様はPS(パーフェクト・ソルジャー)である私が倒す」
「イプシロン、もう止めろ。この戦いに何の意味が有る?」
「知れた事! 西住流への雪辱を果たし、島田流こそが真の最強である事を証明する! それが母上、そして父上の願いだ!」
「島田 敏は死んだ。お前が父親だと思っているのは只の機械だ」
「黙れ! 貴様に何が分かるっ!?」
とそこで、イプシロンは左手にM3サブマシンガンを握り、弘樹に向かって発砲した!
「!!」
弘樹は大きく後ろに跳ぶ。
「ツァアッ!!」
その瞬間にイプシロンも半壊した施設の上から跳躍。
そして、後ろ跳びした弘樹の右肩に跳び蹴りを喰らわせる!
「ッ!!………」
「!!」
仰向けに倒れた弘樹の頭の先に着地したかと思うと、素早く振り返ってM3サブマシンガンを発砲するイプシロン。
「………!!」
弘樹は地面の上を転がって回避する。
「!!」
転がる弘樹に発砲を続けるイプシロン。
「………!!」
すると弘樹は、転がりながら四式自動小銃を発砲!
その反動で起き上がった!!
「………!!」
そしてイプシロンに向かって牽制も含めて射撃する。
「!!」
通常の人間ならば、弾丸が発砲されるのを確認してから回避するなど不可能だが、超人染みた反応速度を誇るイプシロンは難無く回避する。
(恐ろしい程の反応速度だ………身体能力も明らかに高い………コレほどまでの敵と戦うのは初めてだ)
この僅かな交戦で、イプシロンの底知れぬ実力を理解した弘樹の頬を冷や汗が伝う………
弘樹は今迄に感じた事の無い感情を感じていた………
◇
一方、その頃………
中央広場へと向かったあんこうチームは………
「間も無く中央広場です………」
「…………」
優花里がそう告げると、みほは無意識の内に、キューポラの縁を握り締める手に力を込めた。
「! 停止っ!!」
「!!」
とそこで、何かに気づいて停止指示を飛ばし、麻子も素早く反応してⅣ号を停止させる。
「………!」
少し前のめりになったのを踏ん張り、中央広場へと視線を向けるみほ。
「…………」
そこには、中央広場の中心に陣取っているセンチュリオンの姿が在った。
「…………」
キューポラからは、愛里寿が姿を覗かせている。
あのバイザー付きのヘッドホンも装着されているが、今は作動させていないのか、目に光は宿ったままである。
「愛里寿ちゃん………」
その愛里寿の姿をジッと見据えるみほ。
「………私は」
やがて、愛里寿が口を開く。
「私は………お母様の悲願と………お父様の願いを………叶える」
「…………」
「だから………西住 みほ………私は………私は………私は………」
私は、の次の言葉が中々出て来ない愛里寿。
今彼女の心には途轍もない葛藤が渦巻いている様だ。
「愛里寿ちゃん………」
しかし、そんな愛里寿にみほが声を掛けようとした瞬間………
「私は………お前を倒すっ!!」
愛里寿は、覚悟を決めた様な表情となり、みほの事を睨みつけた!
「!!」
「クッ!」
みほがその愛里寿の顔に驚いていた間に、麻子がみほの指示を待たずにⅣ号を発進させる。
直後にセンチュリオンが発砲し、先程までⅣ号が居た場所に砲弾が着弾する。
「!! 麻子さん! 外周を回って下さいっ!!」
「分かったっ!!」
すぐにみほはそう指示を飛ばし、麻子はⅣ号を中央広場の外周を回る様に動かす。
「…………」
その後を追う愛里寿のセンチュリオン。
やがてⅣ号の前方に、富士山を象った展望台とその中を抜けるトンネルが現れる。
Ⅳ号は速度を上げ、トンネル内に突入する………
かに思われた瞬間、横に逸れ、富士山型の展望台の斜面を昇り始めた!
一瞬横滑りしたが、麻子の超絶的な操縦テクニックで持ち直す。
「…………」
だが、それを見た愛里寿のセンチュリオンもⅣ号に続いた。
Ⅳ号はそのまま、反対側のトンネルの出口の上からジャンプ。
微かにバウンドしながら再度地面に着地する。
「後退っ!!」
「!!」
そしてそこで、全速でバックして、トンネル内へ入り込む。
その目の前に、Ⅳ号を追って来たセンチュリオンが着地する。
「撃てっ!!」
「!」
即座に華が発砲する。
「…………」
しかし、愛里寿は少しも慌てる事無く、センチュリオンを超信地旋回させて装甲に角度を付けて、Ⅳ号の砲弾を弾き飛ばす。
「! 更に後退っ!!」
みほが即座に指示を飛ばすと、Ⅳ号をトンネル内をバック。
直後に、センチュリオンが放った砲弾が、トンネル内に命中し、崩落を起こさせる。
バックのまま、逆側の出口から飛び出すと、履帯から火花を散らしながら旋回し、先程とは逆向きに外周を前進するⅣ号。
そこへ、センチュリオンからの砲弾が、中央広場に存在する遊具の合間を縫う様に飛来するが外れる。
「…………」
しかしそれは、Ⅳ号の動きをコントロールする為に放った囮弾であった。
Ⅳ号の次の動きを予測し、偏差射撃を掛けようとする愛里寿。
「! いけないっ! 麻子さんっ!!」
「クッ! 間に合えっ!!」
それに気づいたみほが慌てて指示を飛ばし、麻子が慌てて制動を掛ける。
(取ったっ!!)
的中を確信する愛里寿。
………その瞬間!!
1輌の戦車が、中央広場の外周に並んでいた食べ物屋の建物を飛び越える様にして、中央広場へ突入して来た!
「!?」
「トゥータッ!!」
愛里寿が驚いていると、その戦車が発砲し、砲弾がセンチュリオンの砲身に命中。
砲身を破壊する事は叶わなかったが、衝撃で狙いが微妙にズレ、Ⅳ号の進路を予測した砲撃は外れる。
飛び込んで来た戦車は、履帯から火花を散らしながら着地を決める。
「! ミカさんっ!」
みほが驚きの声を挙げる。
それはミカ達、継続校のBT-42だった。
「! お姉ちゃん………」
「やあ、愛里寿………久しぶりだね」
愛里寿の方も驚愕し、ミカはそんな愛里寿に微笑みかける。
「! 今更何をしに来たの………」
だが、愛里寿はすぐに敵意を剥き出しにし、ミカを睨みつける。
「………島田の家を出てから、私はずっと風の吹くままに生きて来た………」
そんな愛里寿の顔を見たミカの表情からも、微笑みが消える。
「でも気づいたのさ………世の中には………逃れられない『さだめ』ってものが有るって」
「「…………」」
ミカの言葉に聞き入るみほと愛里寿。
「そう、人生に於いて大切な戦い………私にとって、この戦いがそれさ」
「ミカさん………」
「みほさん、申し訳ないけどこの戦い………介入させてもらうよ」
「………ありがとうございます」
やがて、Ⅳ号とBT-42が並び立つ。
「…………」
一方愛里寿は、無表情となる。
「私は………お姉ちゃんとは………違う………」
と、そう呟いたかと思うとセンチュリオンが発砲する。
「「!!」」
途端にⅣ号とBT-42は弾かれた様に発進。
左右に広がる様に走り出し、センチュリオンからの砲撃を躱す。
「………!」
対する愛里寿も、すぐさまセンチュリオンを発進させた。
「………~~~♪~~~~♪」
ふと愛里寿は、何かの歌を口ずさみ始めた。
それは彼女が愛するキャラクター………ボコられグマのボコのテーマソング『おいらはボコだぜ!』だった。
しかし、陽気な曲調の歌の筈なのに………
何故か愛里寿が口ずさんでいると、とても悲しげな歌の様に聞こえた………
◇
再び、弘樹とイプシロンの方は………
「………!」
イプシロンが放つM3サブマシンガンの弾丸を、大きな瓦礫の陰に隠れてやり過ごす弘樹。
そして弾幕が途切れると、素早く身を乗り出してイプシロンに向かって四式自動小銃を発砲する。
「甘いっ!」
だが、攻撃が来る事を予測していたイプシロンにはかわされる。
「喰らえっ!!」
そして今度は、弘樹に向かってバズーカを発射する。
「………!!」
弘樹が後方へと飛ぶと、バズーカから放たれたロケット弾が、弘樹の隠れていた瓦礫を破壊する。
「ッ!………」
爆風に飛ばされた弘樹は地面の上を転がるが、その状態で手榴弾をイプシロンに向かって投擲する。
「!」
だがイプシロンは、手榴弾が空中を舞っていた間にM3サブマシンガンを単射で放ち、手榴弾に命中させて撃墜した!
「………!」
その間に体勢を立て直した弘樹は、四式自動小銃をイプシロンに向けて構える。
(弾薬が残り少ないか………)
しかし、その残弾数は心許無い。
既にココまでの長期戦で、弘樹の方の弾薬は減りに減っている。
対するイプシロンはコレまで温存してきた分、余裕は有る。
(長期戦はコチラが不利か………)
「流石だな、舩坂 弘樹。私と戦ってココまで持ち堪えたのは貴様が初めてだ」
そう思っていると、不意にイプシロンがそう言って来た。
「…………」
弘樹は油断無く四式自動小銃を向けたまま耳を傾ける。
「………何故お前なのだ?」
「何………?」
「私は島田の家に生まれ、幼き日より最強の歩兵………パーフェクト・ソルジャーになる為に己を鍛え上げて来た。いや。そうなる事を宿命付けられた」
「…………」
「パーフェクト・ソルジャーとは誰もが成れるものではない。最高の訓練とそれを熟せる能力と精神が有って初めて成れるのだ。だが、お前は生まれながらのPSと称された。只祖先が優れた兵士であっただけで、雑多な存在の筈の貴様が!」
「言った筈だ。パーフェクト・ソルジャーなどと言う肩書きには何の興味も無い」
「憎い………私はお前が憎い。島田の家に生まれた事こそが私と愛里寿の未来を決定した筈だった。戦う事に誇りを持つ事によって!」
「戦う事に誇りなど無い」
「有る! 私だから持てる! パーフェクト・ソルジャーだからだ!」
「そう思い込んでいるだけだ」
「違う! 断じて!! 私はPSなのだ! 特別なのだ!!」
徐々に語気の荒くなるイプシロン。
「お前は元々普通の人間だ。そう思い込む様に教育されてしまっただけに過ぎん」
「お前は分かっていない! 私は只の人間を超越した存在なのだ!!」
「………哀れだな」
と、その瞬間弘樹から漏れたのは憐れみの言葉だった。
「何っ!?」
「決して超越などしていない。思考能力の一部を排除された切れ味の良い人間でしかない」
「私を批判すると言うのか! この選ばれた私を! 普通の人間であるお前が!!」
「無意味なプライドに縋っているだけだ」
「私はPSなのだ! 敵対する者を倒す事が私の最大の生きる道だ! 名誉なのだ!」
「…………」
「………フフ………そうだ。貴様と私………たった1つだけ類似点が有った」
そこで不意に笑うイプシロン。
「PSの私と同等………ある意味ではそれ以上のお前の戦闘力………恐らく意識の無いものだろう」
「…………」
「だから! 私はお前を必ず倒す! それが私の存在する意味だ!!」
「お前は………」
「私は戦う事! 勝つ事の為だけに生きている! それだけだ!!」
「…………」
弘樹とイプシロン………
この2人はある意味では同類なのだろう………
共に戦いの中に生きて来た者同士………
そんな2人の間に有るのは………
そう………
戦う事だけなのである………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
いよいよ島田兄妹と対決。
弘樹VSイプシロン。
そしてみほVS愛里寿………
更に、みほの方にはミカも介入。
島田ミカ説を採用しているので、やはりこの2人は対決させないとと思いまして。
最終的にはみほが決着を着ける事になると思いますが、ミカの存在も後々で重要なファクターになる予定です。
お楽しみに。
これからも、よろしくお願いします。