凍れる女神   作:蕎麦饂飩

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第十五話 『あくま』

朝、オルガマリー達は再び集まり次のレイシフト先について話し合っていた。

 

「次の場所は何処かしら?」

 

「正確には、次の場所と時代だね。」

 

オルガマリーの疑問に茶々を入れるダ・ヴィンチ。

揚げ足を取られたオルガマリーは少し不機嫌そうに頬を膨らませていた。

 

決して自分のマスターのフォローをしようとしたわけでは無かったのだろうが、

女神はそのからかいに厳しく反論した。

 

「マスターの言う意図を理解しているならそれを説明すればよいのです。

貴方には貴方に与えられた仕事をこなす事、それだけを私達は期待しているのですから。」

 

 

オルガマリーが彼女なりにムキになって怒ったら怒ったで可愛らしいモノであり場を和ませるに一役を買っただろうが、

そこはこの女神。場を一瞬で氷点下に引き下げるのは朝飯前である。

そしてなまじ逆らうには恐ろしい存在で、味方に付けると優秀な分だけ誰も反論が出来なかった。

何を言うか以上に、誰が言うのかで言葉の価値が大きく変わる良い例である。

 

 

基本的に無機質で、有効的に相手を追い詰める時だけ有機質な女神様に促されたダ・ヴィンチは次の行先を、

1世紀のローマだと告げる。

 

それを聞いた女神は少しだけ興味をそそられたようだった。

 

「ローマ…ですか。不必要な慈愛と友愛を声高に叫ぶことが正しいと主張するあの宗教を制圧出来なかった7匹の獣、

即ち皇帝たちが存在した時代ですね。社会進化論の為にはあの宗教は邪魔でしかないのですけれど。

あそこで弾圧し切れなかった事が大きすぎる失敗でした。

…ですが、逆にあの宗教を拡大させて他の宗教を絶滅させることで宗教戦争を未然に防ぐのも良いかもしれませんね。」

 

彼女にとって改善するに重要な時代であったという事だろう。それが言葉からは滲み出ている。

勿論その表情は何時もの微笑から変化は無かったが。

 

 

 

 

 

正直に言って、大凡女神の見当がついているロマニからすればその存在は必要悪だと思っている。

悪であるが必要。必要であるが悪。言葉の通りである。

故に、その胸の内より滲み出る嫌悪感を見なかった事にして透過させた。

 

「人類の存続は君たちの双肩に掛かっている。どうか、成功させて欲しい。」

 

 

その言葉の後ろにある、なるべく悲しみを広げずしてくれれば…、

と言う言葉は女神の手前、押さえながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二特異点 永続狂気帝国七丘の獣(セプテム)  『敗北者の絶望』

 

 

 

 

 

 

 

蒼く果てしない空の下、オルガマリー達はレイシフトに成功した。

 

「フォーウッ!!」

 

「着いてきちゃったみたいですね。」

 

今回はマシュの胸元から飛び出てきた淫獣もといフォウ君も一緒だ。

 

本来彼女達は、ネロ・クラウディウスの下で歴代の皇帝たちを敵に回したのだろう。

しかし、オルガマリー達が舞い降りたのは、赤い皇帝の御前ではなく始まりの皇帝の前だった。

 

「お前達は何だ。」

 

突如現れた者達に対して当然の疑問とローマそのものである槍を向けるローマ帝国初代皇帝ロムルス。

その神々しさすら感じられる威圧力の前に、オルガマリーは思わず女神の腕にしがみつき、

フォウは尾を逆立て、マシュはその身を硬直させたが、

女神だけは何時もの通りの微笑で優雅に微笑んでいた。

 

 

「私ですか? ああ、貴方の産みの母を助け、貴方の育ての母を生み出した女神です。ロムレスよ。」

 

 

本来の歴史とは違い、アレス神では無く女神が神狼を創り出した。故の言葉だった。

要するに血縁の親ではないが、育て親の系譜である、と。

そう答えた女神とロムレスとの間に只管無言の緊張が続いた。

そして、

 

「…非を詫びよう。」

 

ロムレスは信用したのかその槍を収めた。

それに対して女神は、

 

「…良かったです。育ての仔をあのこに食らわせるハメにならなくて。」

 

言わなくてもいいようなクソ外道な事をあっさり言った。うっすらと顕現しかけて消えた巨大な狼を背後にして。

ロムレスは女神が自身の証明として狼を召喚したのだと思っている様であるが、普通に攻撃用である。

ロムレスの対応によってはローマ建国の礎となった双子を育てた神造狼を召喚してロムレスを滅しようとしたのだ――――と、

他者を追い詰める時や誘導するとき以外は、

本当に言わなくてもいいようなことをさらりと口に出してしまうあたり女神は今日も平常運転である。

 

「……いつもこうなので。」

 

マシュが案に自分達も被害を日頃受けているということを告げる。

 

 

マシュの一般的な感性が想像はできない事も無いロムレスだったが、

皇帝であるが故の高い目線と自尊心、また彼の大きすぎる器量の為に女神の言葉に不満を感じた様では無かった。

共感されなかったマシュには少し不満であったようだったが、それは仕方のない事であった。

 

「そうだ、余の仲間を紹介しよう。」

 

 

 

「誠に残念だが、此度はセイバーとして召喚された。ガイウス・ユリウス・カエサルだ。」

 

ガイウス・ユリウス・カエサル、又の名をジュリアス・シーザー。終身独裁官と最高神祇官を兼任し、

皇帝を意味するツァーリの語源となった男でもある。

 

彼を見て女神が思い出したのは、彼の全盛期である。もう少し、いやかなり引き締まった体躯をしていたと記憶している。

今の姿はどちらかと言えば、色々あって比較的性格が暗くなってきたあたりの姿だったと記憶している。

英霊は全盛期の姿で召喚されるというルールが良く解からなくなる事象だった。

それと、

 

「色目を使われるのも甚だ不愉快ですが、色目を使う振りをされるのも大いに不愉快なので以後禁止とします。宜しいでしょう?」

 

カエサルの目が不愉快であった女神はそう彼に釘を刺した。

その言葉で初めて輝きを持たなかったカエサルの目の奥に僅かな光が灯った。

 

 

 

その次は、

 

「…女神よ…女神…ぐっぐぉぉぉぉぉ、」

 

狂気に侵された皇帝ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスことカリギュラ。

会話になっていない彼に対して、色々な事情があるから許して欲しいとフォローを入れる先程の皇帝2人に、

 

「そもそもは、あの無駄にお節介な女神と、定番染みた近親相姦の噂と他者を陥れる事が大好きな当時のローマの責任でしょう。

そもそも彼の狂気の理由こそあのお花畑のせいですが、原因は彼の支配を妬んだローマそのもの。

それ故に、暗殺に怯え、怒り、疑い、溺れ、そして狂った。強く正しくある彼を恐れ貶めようとした民と貴族たちによって。

彼とその周囲が皇籍と無縁であれば――――いえ、それは在り得ない事でしょうね。彼はいずれにせよ皇帝なのですから。」

 

女神はそもそも気に障ってさえいないことを告げた。寧ろ女神を知る者からすれば優しさすら感じる様に聞こえてしまう程だった。

やっぱり、狂気を操る程度の能力があるどこぞのスイーツなお姉さん風妹系女神には色々思う事があるのだろう。

因みに彼を狂わせた月の女神曰く女神はお友達であるが、女神の側にはそこまで仲が良いつもりはない。

 

女神はカリギュラには少なくともあの月の女神には色々と影響を与えられたという共通点があるので、

狂気の仮面に堕ちて人格を歪められた状態のカリギュラには理解を示せた。

勿論共感まではする事は出来なかったが。

 

 

そして―――――――――――、

 

 

「おっ、お久しぶりです…。我等が女神様ッ!!」

 

 

 

 

女神の姿を見るや否や目を合わせるのも恐れ多いと五体投地もかくやと言う勢いで礼を行った男こそ、

レオニダス1世。女神の愛したスパルタ王国最大の英雄であり、王であった。

女神が色々やらかしたせいで、スパルタは『世界最大の敵』として歴史に残り、

その伝承からこの場にいるローマ連合における最強格のサーヴァントとして存在している。

 

 

因みにそんな歴史改変により凄まじく強化された彼だが、

何だか東洋系のスナイパーみたいな名前の通り、

狙った旦那様(叔父さま)は逃がさないHappy Happy Girlで年下のクール系ロリなレオニダスの奥様である賢妃ゴルゴ―は言いたいことをズケズケという性格で、

彼は様々な意味で毎日ガッツリ絞られていた。

 

また、彼が所属したアテナイの連合はエロス神を篤く敬い、

ホモだらけの精強(意味深)な槍の達人(凄く意味深)の集まった軍隊で有名であり、

故にペルシア軍の兵士達が槍を棄てて盾だけを後ろに構えて逃げたのも、

(色んな意味で)何の不思議も無い恐ろしい軍隊であった事は後世にも多くの者が知る所である。

 

そんなレオニダスの最期は愛する普段はクールで毒舌な幼な妻と、一見彼女に似ず素直過ぎて色々不安になる息子、

そして栄光あるスパルタ王国と、同盟との信義の為に、

戦えば生きては還れぬが、『おめおめと逃げ出すのならそれらを犠牲にして生き延びる事を許す』という女神の神託に勇敢な笑みの仮面をつけて、

後者の選択を振り返る素振りも見せずに、(栄光)へと走り進んだ男である。

その心の奥底の恐怖と未練をひた隠しにして。

 

その妻、賢妃ゴルゴ―は彼の最後の出陣の時、

普段の冷静で知性ある女性ではいられなかった。只の一途な女性として彼を見送った。

得意の言葉もう上手く紡げず、己の死は定められた故に次の夫を探せという夫の気遣いに感情的にその頬を手で打った。

そしてその事を、最後に笑顔で送り出せなかった事を後悔し続けた。

女神はそんな彼女にも神託を送っていた。

 

 

 

即ち、―――――――――――『彼を引きとめて共に逃げるのならそれを赦そう、』と。

彼女を責めるであろう裏切られた国民達も皆滅びる故に、追っ手の心配も無い、と。

ゴルゴーはその場では何時ものように感情の映えない冷静な声で、

「夫の意志を無駄にしたくはありません。」と答えたが、それでもその内心は揺れに揺れていた。

 

結局の所、この夫婦は似た者同士だったのである。

やらねばならぬことの為にその心をひた隠して勇敢を振る舞う臆病な勇者達であった。

その勇気故に、その選択肢を決断する様を公開し、ゴルゴーを貶めようとした元老院たちの手を塞ぐことになった。

 

 

 

だが、そんな事は本当は女神にとってはどちらでも良かった。

スパルタ人と言う国民の遺伝子もスパルタ王族の遺伝子もどちらも捨てがたかった、

実はそれだけでしかなかったのだ。

 

故に、彼ら夫妻の息子の死も見過ごした。

息子が未成年という事を利用してレオニダス亡き後、権力の後釜に入った小賢しい後継者も見捨てた。

 

だが、女神は介入を起こし塗り替えた事がある。夫婦の息子プレイスタルコスに子孫を遺させた事だった。

お相手は女神自身の娘の残滓から記憶を削って創り出した乙女であった。

エロス神を脅しまくったり、親友面をしてくる月の女神に貸しを作る形でそれを実現させた。

エロスの野郎が珍しく役に立った例である。

基本エロスはコルなんとか王国のメディなんとか姫様の例よろしく碌な事をしないのが普通なのだから。

流石放任主義のアフロディーテ神の息子だけはあるというものだ。

 

女神の主観的にはごくありふれた、人間の主観的には極めて珍しいこの女神による善行であった。

それは女神が単純に優れたDNAを惜しんでだけの事だったが。

 

プレイスタルコスには多くの信託と試練を女神は与え、妻として出地不明の奴隷に落ちた少女を用意した。

 

その結果、のんびりとした幼少次代の面影が覗かなくなり、

彼の母親のように(少しヤンデレが入ったところも似てしまったが)賢く冷静になったプレイスタルコスは本来の歴史より勇敢に散る事で歴史書に名前を残し、

その血はスパルタ王国民の中に残り、例え地図からスパルタが消えた後でも、

『スパルタ王国の誇り』をより堅固に残す事になった。

 

 

故に、只当時最も信仰があり、最もスパルタに益を齎したというだけの理由だけでなく、

レオニダスは女神を尊敬しているのだ。

 

女神の実体を知る者達からすればレオニダスが騙されているとしか思えない構図だが、

女神はスパルタへの執着(あいじょう)が、スパルタは女神への感謝が実際にある以上、本当に何も問題は無いのである。

寧ろ結果だけを見ればスパルタにとって実害が無く恩恵だけを振りまいた女神は、その他の神々よりも遥に有益であった。

割と自分勝手に人間を破滅に追い込む太陽と月の兄妹神よりは遥かにスパルタにまともな祝福を齎していたのである。

後にゴルゴーがまるでギャルゲーのヒロインだと考古学者が達が萌えの暗黒面に堕ちたり、

プレイスタルコスが黒いジャンヌの様な歴史系乙女ゲー大好きJKに大人気な王子様として有名になったりしたが、

それすら些細な問題だった。

 

更に息子の方は知名度だけで言えば父親を超えてしまった。それは主に後の世の腐女子のせいでもある。

それにはスパルタ的に栄光ある内容も多いが、どちらかといえばそれ以外の部分も多い。

だが、それでもその事をきっかけとして彼の武勲にまで注目が行くのだから父親のレオニダスとしては満足である。

オルガマリーもレオニダスを見た時、

「確かプレイスタルコスの父親よね…。」

 

と認識した位、この世界においてはプレイスタルコスは(腐った女性に)有名なのである。

主に、乙女ゲーによくいそうなリアル闇を抱えた退廃型クール系王子様として。

勿論、戦闘力では父親を超える事は無いのだが、それはそれで父親を超えようと苦悩する王子というフィルターが掛かってしまうのだろう。

とはいえ、オルガマリーもそれほど乙女ゲーに詳しい訳ではない。…決して嫌いな訳でもないのだが。

 

兎も角、自身の孫が存在する原因ともなり、

結局敗北の憂き目にあったものの、スパルタの誇りに大いに祝福した女神にはレオニダスは敬意を払っているのである。

 

 

だが、女神はやりすぎた。やりすぎてしまったのだ。

スパルタを偏愛するがあまり他の国を守護する神々の反感を買ってしまい、

最終的にはスパルタはペルシャとアテネの挟撃という本来在り得なかった最悪のシナリオによって滅んだ。

本来よりも遥かに多くのスパルタ人の犠牲を伴って。

 

だが、ペルシャの不死隊を大きく削り、その滅亡の遠因となり、

アテネ同盟軍を敗走させた上に追い込んだ先で病気と毒と兵糧攻めによるえげつない戦術でその力を削いだ。

神託通りペルシャ・アテネとの戦争自体はスパルタの勝利で終わった。

女神の働きかけにより未曽有の危機すらプレイスタルコスの犠牲を以って乗り越えたのだった。

 

それでも、プレイスタルコスの戦死で言論と世論操作によって勝者を後から主張したペルシャとアテネによって、

両国の共同の下で自治区としての存続をスパルタは求められた。

 

その為に当のスパルタ人たちがその屈辱を拒否し、戦争の再開を選び、

その最中に戦中から続いていた内部からも奴隷たちの反乱が最盛期となり、

前後だけでなく内側の敵とも戦わざるを得なくなり滅んでしまった。

奇しくもアテネやペルシャの幾つもの町を囲んで封じ込め、内側に毒や裏切りや疫病を操作して滅ぼしたプレイスタルコスを皮肉る様に、

スパルタと言う国がアテネとペルシャに封じ込められて反乱する奴隷と言う毒であり裏切りであり疫病に滅ぼされたのである。

 

僅か三〇〇人という寡数で大軍と戦ったレオニダスと同様に、その後継者はスパルタとほんの僅かな同盟国という寡国で、

世界という大軍と戦って滅ぶことになったのだ。

 

故に特にその直後の時代であるローマの文明ではスパルタは『ありえないほどドン引き』という意味、

その後は同じく僅か数国で世界を敵に回した枢軸国側の様なハードモードな陣営にも使われることになった。

かねがね女神のせいである。

 

結果的には女神に迷惑を掛けられたスパルタだが、女神以外の者は本来の世界と比較する事も出来ず、

女神がスパルタに齎してくれた恩恵しか理解できない。故に女神は罪悪感を見せる必要すら感じていなかった。

しかし勿体無い事をした、自身が存続を望んでやったのに上手くいかなかった、そんな思いが無いと言えば嘘になるが。

彼女は人類種をより高める手段としてスパルタ人を愛していたのだから。

その内心を垣間見せる事無く、女神は微笑みを湛えてレオニダスに答える。

 

「レオニダスよ、残念ながらスパルタは滅びてしまいましたが、その誇りは歴史に遺されました。

故に、その栄光を燃やし尽くさんという悪魔の所業に立ち向かうのです。」

 

言っている事は美しく、また嘘をついているわけでもない。

ただ、この女神が悪魔の所業に立ち向かうなどと言うと物凄い嫌悪感と違和感がマシュの中では湧き上がっていた。

それは仕方のない事だろう。まともな人間の感性をしていれば女神に恐怖や忌避感を持たぬ筈が無いのだ。

 

レイシフトの向こうではロマニもダ・ヴィンチも同じような言いようの無さを感じていた。

結局の所、女神の言葉は事実でしかないのだ。

何の間違いでも嘘でもない。しかし、その事実に付き添う付加価値的な情報をこそ、人間は重視する。

それを、自身を構成する際に不要だと切り捨ててしまった女神には理解する事が出来ないのだった。

勿論、女神はそのような人間の感情など考慮しない。

 

 

「それと、そこにいるのはアレクサンドロスですね、イスカンダルと呼んだ方が良いですか?」

 

赤髪のショタ王に視線を向けた女神はそう語りかけた。

 

「僕の呼び方は何でも良いよ。」

 

基本的に呼ばれ方などに拘りも無いアレキサンダーはそう返答した。

 

「ではアレクサンドロスよ、貴方がフィリップスの仔であるのなら、

折角なので次回の侵略には斜型式陣・改(ファランクス)を用いてみせて下さい。」

 

そう告げられたアレキサンダーはチラチラとレオニダスの方を見た。

レオニダスの国スパルタは、奴隷の内部反乱でボロボロになったところをマケドニアのファランクスでぶち抜かれた。

正直味方への配慮を考えると使うのは気が引けるのだろう。

 

「…案ずるな、戦術には罪も恨みも無い。」

 

レオニダスは割と人間が出来ているし、女神を筆頭とした神々が人間の感情など考慮しない事には慣れているので、

寧ろ、アレキサンダーを気遣うようにそう答えた。

 

「さて、今ここに集うはこの私とロムレス、カエサル、レオニダス、アレクサンドロス、カリギュラ、そしてマシュ。

この7人を以って此処に7匹の獣を名乗りましょう。

目的はこの世界に芽生え始めたばかりの異教を壊滅する事。宜しいですね?」

 

この場にいるサーヴァントとしてはもう一人諸葛亮孔明がいるのだが、

女神はこの際、イスカンダル付きの軍師としてカウントはしなかった。

その事を孔明は少し不満そうにしているが、女神は気にしない。

 

不満そうにしているのは勝手にカウントされたマシュもだった。

寄りにもよって女神と共に7匹の獣を名乗らされるとは思わなかった。

マシュの中にいる敬虔なキリスト教徒もかなり憤慨していた。

 

 

そして、基本女神にはYESマンのレオニダスと狂ったカリギュラと楽しんでいるカエサルは兎も角、

ロムレスは少し疑問を唱えた。

 

「…宮廷魔術師はどうする。」

 

案に、ロムレスらに強制力を持つ召喚者の束縛があると言っているのだ。

女神も大凡その意図を理解した。

だが、ロムレスはそう言ったが、この場には宮廷魔術師と言うものはいない。

仕方が無いので、女神はロムレスの思考の中でその姿を覗く。

 

そして、薄く笑みを深めた。

 

「なるほど、ここででも首を突っ込んでいるのですね。アレは。

何とも、斥候であり、伝令であり、捨て駒の様な扱いで可哀想ですね。」

 

そう宮廷魔術師とやらに同情したような言葉を述べるが、マシュやオルガマリーには良く解かる。

アレは、絶対に同情とかそんな善意なんか存在しない。

単純に嘲笑っているだけだ、と。

 

 

「折角なので、喚んであげませんか?」

 

 

女神がそう言った直後の事であった、

 

 

「それには及ばんよ。」

 

 

ローマ連合の宮廷魔術師こと、レフ・ライノール・フラウロスがこの場に顕れた。

 

「お久しぶりですね。」

 

「ああ、そうだ、逢いたかった。麗しき敵対者よ。」

 

 

女神と悪魔、そのどちらもが笑みを以って相対する。

平然とする女神の笑みに対して、悪魔の笑みには凄味があった。

 

「人間に期待するのは止めるのだ、女神よ。

此方に来ぬか? 人類よりも遥かに高尚な我々の側に。」

 

「それはこの私に堕ちろ、と?」

 

「そうだ。」

 

 

女神の笑みが少しだけ深まった。

女神に恋心にも似た執着心が芽生えていたフラウロスはその返答に感触を得た。

そして女神の回答は、

 

女神(ひと)に堕ちる提案をする悪魔(ひと)が足元がお留守なのでは、信頼性に欠ける。

そうは思いませんか? 序列64位フラウロス。」

 

 

 

 

 

 

フラウロスが立つその下には幾多もの三角が重なり合った光の陣がうっすらと浮かび上がっていた。




空く間
悪魔
あっクマ―






多分特に使われることの無いレオニダスの家族とその敵対者などの設定。

ゴルゴ―
「お気をつけて、栄光と共に帰還されるのをお待ちしております。」
「元老院は押さえておきますので王はどうぞご自分の仕事をお済ませください。」
「大丈夫です、王は必ず勝利して帰ってくる、スパルタの男なら当然でしょう? …手厳しい? それも当然です。私はスパルタの女ですから。」
「お疲れ様でした。夕食は既に用意しております。食べ終わる頃には湯あみの準備もできています。……そ、その後…、ですか?」
「不用意に後ろに立たないで下さい…。びっくり、するじゃないですか。」
「悪い子は捨てられてしまいますよ。…笑えない冗談でした。」
「王からも勉強をするように言ってください。次代の王が脳筋に染まらない様に。」
「……忘れていました。あなたもスパルタ人(のうきん)でした。」
「因みにそこの答えは4です。途中で2を代入するのをお忘れではないですか?」
「私に落ち度があるのでしょうか。 ありませんよね?」
「そんなことは解かっています。」
「当然の帰結ですね。」
「くだらないですね。時間を無駄にしました。」
「そのフルーツはっ……涎? いえ、気のせいです勘違いです見間違えです。…仕方ないので今日はそのフルーツで戦勝を祝いましょう。」
「不意打ちは…卑怯です。スパルタ人なら―――いえ、ここは素直にありがとうと告げるべきですよね。
ありがとうございます、あなた。  ……何故、信じられないようなものを見たような顔をしているのですか? お説教が欲しかったのならそう言ってください。」
「ええ、既に手配は済ませております。」
「自分で靴紐も結べない男はスパルタにはいません。そう嗤ってやりました。…少しはお淑やかにですか? ――つまり私はお淑やかではない、と言いたいのですね?」
「愚かですね。」
「ふふっ、愚かですね。」
「ロリコンと呼ばれても良いでは無いですか事実なのですし………です…よね?」
「時が経つのは早いですね、私の身長だって今ではこんなに伸びたのですから。」
「ばっかじゃないっ、私があなた以外を夫になんてっ!!」
「はい…、いってらっしゃい。」
(死後)「これは『おーえる』という衣服らしいの。義娘からのプレゼントです。…どうかしら?」

プレイスタルコス
幼少期
「ねーおかーしゃまー?」
「おとーしゃまー。」
「そのぴかぴかのかびゅとぼくもかぶりたーい。……おもいー。」
「やだーあついもーん。」
「もんもんもんあついもん。よるはさむいけどあついもん。」
「うわーん、おかーしゃまがぶったー。おとーしゃまにもぶたれたことないのにー。」
少年期
「お父様は返ってこないの?」
「…お父様は残酷ですね、その首さえ見せに来て下さらないのですから。」
「探し出せ、見つけ出せ、奪い返せ、父の亡骸はこの地にこそ眠るべきだっ!!」
「不死だろうが何だろうが殺しつくしてやる。」
「歓べ不死の軍団よ。貴様たちに死の眠りを与えてやろう。」
「お母様……今は話しかけない方が良いよね。今日はペルシャを食い止めた英雄を讃える日、つまり、お父様が死んだ日だ…。」
「うらぎ…った?」
「そんな…、うそだ、…あはは、あはははは、あはははははははははははははははははははははははは――――――」
「ははは、そう、そうなんだ。馬鹿な僕にもようやく理解できた。誰かに理解して貰いたいだなんて願ってはいけなかったってことを。」
「裏切り者と、裏切り者に仕立て上げようとする者。そんな者になるくらいなら身体だけを鍛えておけば良かったものを。」
「僕は騙されたのではなく、騙されたと思い込まされるように騙されていたわけか、愚か者は僕だったということだな。」
「権謀術数を憎んでいたはずの僕が、気が付けばその権化となってしまったと言う訳だ。」
「このツケは払わせてやる。血と恐怖と絶望によって、だ。」
「ようこそ、どうして此処にあなたがいるのか、そして此処に僕がいるのか理解しているのだろう?」
「先王の嫡子として生まれただけで? だからなんだ、要するに不幸な境遇に共感して潔く死んで欲しいと?」
「此処に誇り無きスパルタの民はいない。貴様にはスパルタの死は惜しすぎる。」
「言っている意味が解らない? 身体以外を鍛えていないからか。仕方ないな、―――――その魂に教育してやろう。」
「ああ、僕が本物か、だって? ああ間違いなくここにいるのはプレイスタルコスだ。そして僕をこうしたのは貴様だ。」
青年期
「何だ…お前は、この度は見逃してやろう。不敬罪だと誰かに叫ばれる前に去るが良い。」
「また、遇ったな。」
「二度ある事は三度ある、か。不思議なものだ。」
「勘違いするな、別にお前を探していたわけではない。」
「気まぐれで買ったが役に立ちそうにないものだからお前にやろう。 …似合って、……いや何でも無い。」
「そんなに優しくされると我慢できなくなる…。いや、意味が解らないならそれでいい。」
「お前は、僕を裏切らない…? 置いていったりはしない…?」
「約束しろっ!! 二度と僕の下から消えたりなんかしないとっ!! そう考えたりすらしないとっ!!」
「愛している。この気持ちだけは絶対に嘘じゃない。」
「ところで初めて出会った時に着ていたあの『征服』という名前の衣服はどうした? 何? その『せいふく』ではない?
まあいい。アレを今度着てみて欲しい。いや…、そうだ、興味が無いと言えば嘘になる。正直な所、かなり好みだ。」
「皮肉なモノだ。父と同じ神託を受ける事になるとはな。」
「今なら、父の気持ちが解かる気がする。……すまない、僕が約束を破る側になってしまったみたいだ。」
「裏切ったなアテネよ。――僕は裏切りが一番嫌いなんだ。」
「アテネとペルシャの二面攻撃…本気で神々はスパルタを滅ぼしたいようだ。
皆の者、僕は生存を齎す事は出来ないだろう。だが、代わりに齎せるものが一つだけある。スパルタの名と誇りだ。」
「見ろ、精強なるスパルタの兵どもよ、不死にすら死は訪れるのだ。」
「真の勝者は歴史に語られる。」
「つまらない報告なら後にしろ。―――嘘だろう? アイツが、ころ、された? 嘘では…無いのだな。 子供を産んで母になったばかりだというのに…。
――――――構わん、奴隷どもは全員皆殺しにしろ。老若男女の区別は問わん。奴隷を生かしてやっていた僕たちが愚かだった。」
「『弱き者が付け上がり強き者を貶める――――』。こういう意味だったのか、くそっ、アイツは何も強くなんかない。犠牲になるべきでは無かったはずなのだ!!」
「アイツも一度は奴隷に落とされた。いわば奴等にとっても仲間だったというのにっ。」
「妻と子がいるから生かして捕虜にしてほしい? ――――ああ、いいだろう。スパルタにおける新たな捕虜の待遇を用意してやろう。」
「捕虜の足と喉を潰して点在して置いていけ。近寄る者があれば捕虜の足元にある火薬に火矢をかけろ。」
「この壁の周囲に死体を置け。壁から出る者は射抜け。 慈悲だ。奴等にも出て死ぬか籠って死ぬかは選ばせてやろう。」
「何故、あの果実をくれてやったかだと? 慈悲深い? まさか。 アレは我らが女神が敵に喰わせるために用意されたものだ。
あの子供はじきに魔物となり自分の家族を始め周囲の者を殺して殺されるだろう。」
「これは女神に与えられた弓だ。射ち放つと敵の周囲で煙と消え、その周辺全ての生命を息もできない苦しみの中絶命させる。
今からあの城壁の中に打ち込むから見ていると良い。苦しんで城壁から出てきたら殺せ。…どうせ助からない。」
「こっちの弓は打ち出した矢が姿を消して鎧や城壁をすり抜け、生きたものだけを刺し抜き発火させるものだそうだ。試しに射ってみよ。」
「この弓は、疫病を齎す鳥の嘴へと矢を変えるもの…。効果的ではあるが、効果的すぎる、な。…構わない、射よ。」
「敵の上空に射ると飢えと渇きを齎す雨を降らすという弓だ。…言うまでもないだろう、射よ。」
「生命力の所有権を曖昧にして弱き者の魂を強制的に強き者の糧とする弓と、愛憎を流転・分解させる弓だそうだ。
…止めになるであろうな、射よ。」
「今城壁をよじ登って来た化け物を射よ。身体中に子供の頭と手足が生えて萎んだリンゴのようで黒ずんで溶けかかったあの化け物だ。」
「女神の齎す神託も武具も恐ろしいモノばかりだ。天真爛漫なアイツが巫女をやっていたというギャップが未だに不可解だ。」
「アルテミス神よりも美しくて素敵な射手の護り手と大いに崇めよ、か。するにせよせぬにせよ恐ろしい事だ。」
「プレイスタルコスよりもオリオンやアタランテの方が素敵な射手? アルテミスはもっと美人? なんだそれは…、月の女神の神殿からの神託だと? まさか?」
「…子供心に若くして亡くなった父には思う所はあったが、自分の子供には両親ともに亡くさせる悲しみを味あわせる事になるとは、な。」
「お前は目が見えなくなったのか。…何たる奇縁。よい、父にならってお前を伝令に任ずる。
スパルタ王プレイスタルコスと戦士たちは此処に誇りに散る。そう皆に伝えてくれ。」
「最期に思う事が国の事では無い…だなんて王…失格だな。死後には興味も、無かったが、もし、次があるのなら、また、きみと…めぐりあいた…い。」

(死後)「父上、どうぞ私よりも母上にお構いください。私は妻に構うので忙しいので。…母上、これがWinWinと言うものですね?」


プレイスタルコスの妻
「えーっと、ここは何処なのかしら? 映画のロケ地、でもないような…。」
「はじめましてー、うーん、日本語だと通じない?」
「解っちゃった。私は何処かの女子高生の生まれ変わりなんかですらない。未来の世界の記録情報に不用意に感情が乗せられた、
ううん、乗せられたんだと勘違いしていただけ。」
「『ヒト』じゃないから、神託の守護対象にはならなかったか。」
「例え、この身が、この気持ちが造り物だとしても、あなたを心から愛していました。」
「この子を連れて逃げて下さい。この時の為にあったのなら作り物である事を喜べます。私の元(わたし)、その力を貸してっ。」
「もっと、生きたかったなぁ…。」





クレオンブロトス
「まさか、先王の妻であり、次の王の母であるというだけであからさまに女が表立って政治をするのは反感を買うというのは想定できるであろう?」
「勘違いしないで欲しい、これは善意だ。スパルタと言う国に対してのなっ。」
「ふん、レオニダスの子はまだ若過ぎる。今あれに何ができるというのだ。」
「スパルタには、この身が必要不可欠なのだ。姪よ、なぜ判らない。」
「誰に何と言われようと、スパルタに対する愛だけは絶対に否定させん。」


パウサニアス
「スパルタを実質的に支配している父上の息子である僕と、形だけの王位を掴む君のどちらが次の王かだなんて明白なんだよなぁ。」
「別に…僕は君が嫌いだなんて言ったことは一度も無かったんだけどなぁ―――――。」


ペレクレス
「地上のゼウス此処に在り。」
「スパルタが恐ろしい? 案ずるな、ただこのペレクレスに任せておけばよい。」
「個人の意志と能力と利益を追求する事こそ、何より国の為になっていることを理解してほしい。」
「アテネあっての同盟であるという事は何の傲慢でもなく只々当然の事実だ。」
「自分の資産を使う事に何を咎められることがあるというのだ?」
「結果を出して利益を生み権力を掴んだものがそれを振るって何が悪いというのだ、それによってアテネに更なる栄光を齎すというのに。」
「存外に皮肉なモノよ、スパルタの寡頭政治連合に敵対するアテネ民主主義の指導者がこの独裁者であるということがな。」
「世界がスパルタが負けたのだと納得するなら、それはスパルタの敗北に他ならない。例えどれだけの事実があったとしてもな。」
「どんな醜い事象でも美しい言葉で化粧すれば人々は受け入れる。女性と同じようなものだ。」


アスパシア
「貞節を護ると上品さを騙った結果、その無様、その惨め、その情けなさ。…何かしら言いたいことがあるの? 言っていいわよ、言えるのなら、ね。」
「目に見えて音に聞こえて男に媚びる事が卑しいというけれど、男に察して欲しいと無言で訴えるのは浅ましくないのかしら?」
「女性が弱いとされるアテネでも私は権力があるし、守護神も女性よねぇ。―――結局カテゴリーで無く個人として強いか弱いかなのよ。」
「異民で女性でも権力者の私、民主主義でも独裁者の夫。確かに矛盾はあるわ。でもそれを誰が問題にできて?」



アルキビアデス
「ボクは美しいからね、何をしても許されるのさ。」
「美しいボクがこう言ってあげているんだ、従ってくれていいんだよ?」
「美しいボクの何処に不満があるんだい?」
「そんな、だってボクは美しいだろうっ!?」
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