凍れる女神   作:蕎麦饂飩

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第七話 『おもい』

敢えてこの時代における最大宗教に喧嘩を売る女神。

 

かの宗教の唯一神に喧嘩を売る様な愚行を正義のライダーが見過ごすわけには行かなかった。

 

「主の敵の元で戦わなければならないとうんざりしていましたが、

主の敵と戦う機会が得られるとは僥倖です。」

 

いや、顕れた敵のサーヴァント聖女マルタは黒いジャンヌ側として呼ばれている以上、

間違いなく『悪』なのだが、女神の普段やっていることを考えるともうどちらが正義かわからない。

 

「そうですか、フェニックスやバアルも『あの神』には貶められていきましたし、

天使の信仰が過熱した際には、部下すら切り捨てた『あの神』の僕と戦えるだなんて私も幸せです。

貴女も運が良かったですね、もし運が悪ければ別の聖女のように魔女として、

神の敵として切り捨てられていたかもしれませんよ。」

 

マルタは知るべきであった。皮肉合戦において女神に勝つことは非常に分が悪いと。

他人を煽る事に関してはそこら辺の神々の比ではない圧倒的煽り力。

 

「それとそこの爬虫類にも伝えてあげてください。高貴な竜の血を引いただけの出来損ないにも。

信仰の無力さを、神効の儚さを、そして侵攻の恐ろしさを。」

 

 

マルタの信じる神だけなく、彼女と共にあったタラスクさえもナチュラルに侮辱する女神。

とてもではないが許せるものではない。赦しておけるものではない。

 

「貴女はこの子の何を知っていると言うのっ!!」

 

 

「うふふ、うふふふふ――――――――――――――――――――」

その怒りに対して女神は笑いを堪えきれないといった風に口元を押さえる。

 

「だって、出来損ない(タラスク)母親(リヴァイアサン)に捨てる様にさらしたのは私ですよ?」

 

 

 

 

 

 

それは何処までも残酷な現実だった。

リヴァイアサンはこの世界ではこの女神自身が作った神造生物の完成品の一つだ。

言い方を変えれば、女神はリヴァイアサンの母であり、タラスクの祖母だった。

 

 

「貴女っていう女神(ひと)はっ!!」

 

 

マルタの手から投げられた杖を躱す女神に殴りかかるマルタだったが、

それは突如現れた巨大な何かによって阻まれた。

 

 

「極小規模での権限で申し訳ないですが、解かるでしょう?

この貌、この力。理解できたでしょう?

 

 

 

さあ、リヴァイアサン、出来損ないとそのお友達を抹殺しなさい。」

 

 

 

 

 

マルタを包み込む竜の息吹。

それを自身の体で庇うタラスク。

その防御力は大したものだったが、所詮は出来損ない。

本家本元の成功品には遠く及ばない。

 

タラスクはあっけなく消滅し、そこにはボロボロになったマルタだけが残された。

女神が意図的に残させたのだ。

 

リヴァイアサンを還すと、倒れ伏したマルタに女神は歩みを進める。

 

そしてその耳元で呪いを呟く。

 

「一つ問いかけをしましょう。

どうして貴女の神は聖人とそうでない者に恩寵の差をつけるのでしょう?

どうして隣人を愛さない者をこの世に生み出したのでしょう?

どうして不幸になる前に、闇に堕ちる前に全ての人を救わないのでしょう?

解かっているでしょう?

神は自ら助く者を救う。その者『だけ』を救う。

即ち、本来自分で何とかできる者だけを選別して後押しして恩を着せる。

まるで、返せない無能には貸さず、返しうる者には押し付けて利子を請求する高利貸しの如く。

助ける者を選ぶという点において、あの神も私も大差はありません。

価値が無い者は切り捨て、価値がある者だけを救い、祝福するのです。

ですから、その爬虫類にも貴女の弟たちにも祝福は無く、

貴女にだけ、選ばれた貴女にだけ祝福を齎したのでしょう。

最初から神の眼中にも無い爬虫類や貴女の血縁であるだけの有象無象を救おうとしたことが、

貴女の神の思し召しに見合う事だったのでしょうか?

 

だから、貴女の罪を告白しましょう?

さあ、私の言葉を受け入れなさい。

―――――私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。私は不信心な反教徒です。」

 

その言葉は文字となりマルタの身体中に刻まれた。

 

「あああ亜亜唖嗚呼あゝああああAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!」

 

 

苦痛と絶望と後悔に沈むマルタ。

 

「折角の聖人です。母体(ぼくじょう)にするもよし、喰らうもよし、配下にするもよし。

因みに私のお勧めは配下にして連れ歩いてここぞという時に美味しく頂く事です。」

 

 

 

あんまりにもえげつない女神に慣れた二人は兎も角、新規加入の王妃と音楽家はドン引きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れたマルタを踏みにじる女神。

その間も不信心の言葉がマルタの身体中に刻まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あう、あうううあ…。私は主の敵――――」

 

 

マルタが自身の悪を認めようとして、女神がそれに笑みを深くした時だった。

 

 

 

 

女神の足が掴まれた。それが誰によるものかなんて考える必要すらない。

「ふざけた真似してくれてんじゃないわよっっ!!」

 

 

 

足を掴まれて投げ飛ばされた女神は華麗に着地する。

そしてそれに向かい合うように起き上がるマルタの体からは呪いの言葉が消え、

身体の半分ほどが竜化していた。

 

 

 

それはまさしく仲間の死を背負ってパワーアップしたヒーローだった。

だが、

 

 

「残念ですね。聖女であるなら良い個体だったのですが、

不良品の混ざり物では使い道が喰らう他無くなるではないですか。」

 

それは想いを踏みにじる悪逆の言葉。

聖書の獣でも此処迄は言わないだろう。

 

 

鱗に覆われた拳を腰だめに構えて聖女はタラスクのジェットを再現した奔流で流星のように女神へと肉薄した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、女神には届かない。

指1つ。僅か指1つだけでその猛攻を堰き止めた。

 

 

それでも、マルタは止まらない。止まれない。

主を友を侮辱するこの悪を生かしては置けないからだ。

 

 

もう片方の拳で殴りつけ、

再び指1つで封じられた。

女神は変わらず優雅に微笑んでいる。

 

だが、マルタも獰猛な笑みを隠さない。

 

 

「お上品な貴女には想像も付かないでしょう、ねっ!!」

 

ならばと繰り出されたのは頭突き。

それが驚く女神の顔に吸い込まれ―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――そう、吸い込まれた。

マルタの頭部だけが光の粒子になって女神の口へと入っていく。

次いでその身体も粒子へと変わっていく。

 

 

 

 

 

 

彼女の勇気と信仰は、女神には至らなかった。

その理由を付けるとしたら圧倒的な格の差。存在としての差。

 

ただ、それだけである。

想いも信念も希望も、ただそれだけの為に無意味に躙られたのだった。




とことん英霊たちに嫌われていくスタンス。
果たして最終決戦で皆は来てくれるのか?
というか寧ろ敵にまわりそうな勢いでヘイト稼ぎ中。
次回予告
Q獣耳系美少女をガチ切れさせるには?
ヒント:その為の手段は既に公開済み。




想い
思い
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