凍れる女神   作:蕎麦饂飩

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第九話 『ぎせい』

転移前の町の見捨てらるべき人々の魂を燃料に、弱り切ったジャンヌ・ダルクを探し出し、

暴風と共に転移したオルガマリー達。

 

そこには女神の目論見通りの二人と、

良く知った美女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然ではあるが、女神は神々の中ではアルテミスと特に仲が良かった。

…というより、アルテミス以外の殆どの神々から真っ当な感情は向けられてはいなかった。

あのゼウスですら、

 

「ああ、惜しい。あの中身が無ければ…、実に惜しい。(からだ)だけなら完璧なのに。」

 

そう言ったと言われている。

まあ、あの神はそう言いながらも結局手を出そうとして、未然に失敗しているのであった。

幾ら性格が悪かろうと、性欲を向ける分には善良な醜女よりも美しき悪女である。

未来においても永劫に変わらぬ真理は神話においても変わらなかった。

 

ただ、この女神は、人類をもっぱらカードゲームのカード程度にしか認識しないような神柄(ひとがら)だったので、

そう言われるのも仕方ない。

 

そんな女神をして割と交友関係があったアルテミスに対して、女神には疑問があった。

 

 

女神のアルテミスへの印象は、何故あんなファンシー系被守護存在(デッキ)であそこまでのプレイングができるのでしょう?

速攻攻撃が可能な可愛いだけの4つ星の攻撃力1438しかない存在(微乳系美女)をああも活かすだなんて。

そんな疑念と敬意を持ったものだった。

特に性格がアレなギリシャ神話群や狡猾な北欧神話群の神々とは違い、

アルテミスは特に邪念や偏見なく、『可愛くて綺麗な女の子』としか女神を認識しないある種のスケールの大きさがあったのだが、

女神は他者の好意的な感情など自分側が相手に好意的になるかどうかの判断材料には起因しない。

役に立つ優秀な存在であるかどうか。それが女神の他者への唯一の判断基準だった。

そしてその基準にアルテミスが上位区分として入っていただけだった。

 

尤も、そんなところさえも、

「もー、ホントにクールよねぇー。」

 

としか認識しない、クール系乙女が決して嫌いでないどころか好物に当たるアルテミス的には、

(彼女の被守護者によくいる)クールでハイスペックだけど空回り系のポンコツ系女神でしかなかった。

やはり、神々と人間では分かり合えないことが良く解かる一面である。

 

 

尤も、それは神々同士の話であって、アルテミスを信仰するものから見れば、

うちのアルテミス様は恐ろしい劇物をあんなに無警戒に扱うなんて―――

としかならないわけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今、ジルに呼び出されたサーヴァントの一体として、

アルテミスの庇護下に在った存在と女神は会合する。

 

 

 

「――――戦乱の女神…。」

 

「――お久しぶりですね、アタランテ。」

 

 

 

 

 

 

『純潔の狩人』アタランテ。

この世界においては、女性だけで子供を作る方法を広めまくったかつて処女厨最前線だった女神と、

基本的に、あくまで基本的に貞節を信者に要求するアルテミスの影響により、

生涯において本当に『純潔』だった野性味と気品の溢れる狩人である。

 

アタランテからすればダントツで関わりたくない存在の内の一つだが、

女神の存在を知る者であるが故に無碍にはできない。

 

気分は、本社の役員が視察に来て、早く帰ってほしいと願う支部の人間である。

勿論、アタランテは会社勤めとは生前無縁であったが。

 

とはいえ、女神のお蔭で貞操を死守でき、女神の広めた技術のお蔭で子宝にも恵まれた。

そういう意味では、感謝の念が無い訳ではない。

 

あくまで、――――――――――――――――――この段階ではそうだった。

 

 

「ねえ、美しきアタランテ、貴女はそちらに付いているのですよね。

此方に来なさい。殺すには惜しいのです。」

 

 

何時もの微笑のまま、本当に物惜しそうな声で話しかける女神。

それに対するアタランテの答えは、

 

 

「残念だが女神よ、此度は汝の敵として召喚された。

故に、その命を果たそうと思う。」

 

 

 

 

拒絶だった。

その言葉と同時に周囲に猛吹雪を顕現させる女神。

村中を寒波が襲った。

 

 

恐れおののく村人達。

大人でさえ恐怖に立ちすくんでいる。

子供であれば尚更だ。

 

「恐いよお姉ちゃん。うえーん。」

「助けて、お姉ちゃん。…ぐすっ。」

 

泣き出した子供たちがアタランテの後ろに回り込んでそのスカートの裾を摘まむ。

二人は兄妹であり、兄の方は妹の手前泣かない様に頑張ってはいるが、その限界も近そうであった。

 

「…大丈夫だ。大丈夫だから、今は少しだけ向こうに離れていると良い。

そうだ、良い子だ。」

 

子供たちの頭を撫でながら優しく微笑みかけて囁くアタランテは、聖母のようであり、女神のようだった。

少なくとも、この場にいる唯一の現存する女神以上に一般的な女神らしいイメージの慈愛が存在した。

 

「よし、良い子だ。偉いぞ。

お兄ちゃんも強い子だ。良く泣かなかった。頑張ったな。」

 

「ひっく、ひっく。」

「う…ん。」

 

顔を赤らめながら少年は俯く。

此処に少年の初恋は生まれたのかも知れない。

恋は爆発だ。その例えはまさしく、そう、まさしく正しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の子供の体は、内部からアタランテを巻き込むように爆発した。

下手人は一人しかいない。

今もなお、その笑みを崩さない女神だ。

 

「子供は良いですね。純粋で、無垢で、そして――――――――――――操りやすい。」

「貴ッ様ァァァァァッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですよ。優秀な子供は犠牲にはしません。そのヒトの仔は選別外品です。

ほら、言うでしょう? 『優秀な』子供は未来の宝だと。」

無能な子供は未来のお荷物ですから、せめて自爆要員として役に立ってもらいました。

ほら、肉体的損傷(ダメージ)はあったでしょう?

 

 

そう呟く女神を前に、

肉体以上に精神的な損傷(ダメージ)が大きかったアタランテであったが、

その悲しみは、その怒りは、その正義は、

 

 

――――――それよりも遥かに大きかった。




犠牲
擬製


もはや、映画館で人類の味方のはずなのに、
「ゴ□ラがんばれー」
と子供たちに応援されるメカゴ□ラのような状態。

「頑張れジルー」
「頑張れジャンヌ―」
「頑張れアタランテ―」










もし宜しければ、感想とか頂けたら嬉しいです。
と、乞食のように媚びてみます。
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