「困ったな。どうします、監督?」
「う〜ん。」
公園ではスタッフと監督らしき男が頭を悩ませていた。
「どうしたんだろう?」
「何かあってのかな?」
のび太とチェルシーが野次馬をかき分けて、列の前に立つ。
「ん?」
するとのび太とチェルシーの姿が監督の目に止まる。
「き、君たち!」
監督は椅子から立ち上がり、二人に声をかける。
「ちょっと、頼みがあるんだが・・・・・・」
「『???』」
「へ?本気ですか、それ?」
「・・・・・・・・・・・・。」
監督の頼み事にのび太とチェルシーは唖然とする。
「頼むよ、俳優さんが二人とも事故で入院してしまったんだ。」
「俺たち、一般人ですよ。演技なんて・・・・・」
「いや、私は君たち二人なら出来ると信じている。そう、あの劇の主役を務めた君たちなら。」
のび太とチェルシーはキョトンとする。
「息子の文化祭に行った日。私は見たのだ!君たちの才能溢れる演技を!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
のび太は文化祭でやったロミオとジュリエットの劇の事を思い出す。
「頼む、もう君たちしかいないんだ!」
監督は泣きながら、のび太とチェルシーの手を握ってくる。
「『・・・・・・・・・・・・・』」
「・・・・・僕はなにも・・・・君・・・・から・・・・奪っては・・・いない・・・・と。」
のび太は必死でセリフを暗記していた。こんな時、ドラえもんいればとつくつぐ思う。アンキパンさえあれば、こんなことお茶の子さいさいなのだから。
「ねぇ!」
チェルシーに声をかけられ、顔をあげる。
「シナリオなんて、何度読んだって同じだよ。それよりそのシーンの流れを掴んでおけば、少しセリフが違ったってかまわないんだから。」
「そんなこと充分わかってるけど、演じる側に立つなんて初めてだから。ちょっとパニクってんだよ!」
「ちゃんとリードしてあげるからさ、あとはドン!とその場の流れでパパッと行こうよ。」
「気楽に言うなよ。」
「監督〜っ、本人ヤル気マンマンで〜す!」
能天気なチェルシーにのび太は不満げな声をあげる。
「言ってないよ!!」
「シーン8、カット15、よおい!スタート!!」
撮影用のカメラがチェルシーとのび太に向けられる。
「あなたは私から、肉体と意識を奪っていったわ・・・・。でも、それで全てと思わないで。私はなにも君から奪っていない。それはあなたが気づいていないだけ・・・・」
素人とは思えない演技。まさかチェルシーにこんな隠れた才能があったとは。
「でも、まだ残されていたものがひとつだけ・・・・私の存在・・・・あなたはわざと残していったんでしょ?存在だって手に入れようと思えばできたのに・・・」
チェルシーはのび太に抱きついた。
「正直に答えて・・・なぜ残していったの?」
「ぼ、僕は・・・・いつも正直だよ。僕自身の考える・・・言葉でい、いつも・・・」
チェルシーとは真逆にのび太はガチガチに緊張している。
「ちがうわ、無意識の中のあなたの声が聞きたいの・・・・」
チェルシーの豊かな乳房がこれでもかってほど押し付けられる。
「////ぐっぅぅ・・・・(ここで・・・・ここで、背中に手をまわして抱き寄せ・・・そしてセリフ!!)////。」
そんな二人を遠くから見ていたスタッフたちは
「なにやってんだあいつ?動きゃしねぇ。」
「自分で『間』を作ってるとか?」
「そうだといいんだが・・・・・」
異変に気づき始めた。
緊張という名のストレスに支配されていたのび太はとうとう限界を迎えた。
プシューーーーーーーー!!
「わあっ!」
バタン!!
のび太は後ろざまに倒れる。
「どうしたぁ?」
突然の事にスタッフ、監督、野次馬たちがざわめき始める。チェルシーはおずおずと監督に口を開いた。
「あの、鼻血だして気失ってます・・・・・」
チーン
「カァーット!!」
監督は呆れ果てて、撮影を中断させた。
のび太の結婚相手は?
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アカメ
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クロメ
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チェルシー
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シェーレ
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レオーネ