プロローグ
「さて、帰るか・・・・・・」
いつものように学校の廊下を歩くのび太。すると
「おーい・・・・・・・・」
どこからか、聞いたことのある声がした。亜空間からの誘いのような立体感に乏しい声。
「聞こえないのかなー。」
(まただ。また聞こえる。)
のび太は背中にゾクリと悪寒を感じ、立ち止まる。辺りを見渡すが、誰もいない。歩いている廊下には、時々ぱたぱたと残った学生が歩いているだけだ。
「ねえ、僕のこと、呼んだ?」
すれ違う女の子に、聞いてみるが、ふるふると首を横に振られる。気持ち悪い・・・・・。
「嫌いになっちゃうよー」
(嫌われちゃ、こまるなぁ・・・・・。どっちの方向から声が聞こえてるんだろう。)
「窓!窓を見てよー!」
(窓?違う世界に僕をいざなおうって言うのか?飽くなき戦いを続けなければならない世界に。)
のび太は、声に従い、窓の方を見やる。自分の姿が映る。相変わらず漫画みたいな顔をしているなぁ。
「下、下、下だよ。」
「下?」
視線を下に移す。ああ、黒髪ショートの女の子がのび太に向かって手をぶんぶん振っている。のび太はガラリと窓を開け、首をひょっこり出す。
「気づいてくれた?」
「最初っからきづいていたよ。」
中庭の芝生の上に立っているクロメに、声をかける。
「ウソばっかり。」
「やっぱり?」
クロメにはお見通しか・・・・。
「せっかく、のび太が見えたから、声をかけたのに、全然気づいてくれないんだもん。」
クロメが、ぷうっと頬を膨らませて、わざとかわいくない顔をする。
「今、下に降りるよ。」
膨れた顔も、いつもとは違った魅力があり、そんな表情もあるんだと、思わず笑みをこぼれそうになった。急いで階段を下り、中庭に出て、クロメのいた場所に急ぐ。
「おつかれさま。」
「やあ・・・・・」
クロメは、にこにこと屈託のない笑みを浮かべながら、にぱにぱと手を開閉する。
「冬休み、楽しみだね。何かぱぁーっとどこかに行く?」
「先立つものの都合によるな。」
「まあ、そうだけど・・・・・。先立つものがない時は、安くて楽しいところへ行けばいいんだよ。」
お金がないというのは、かくもつらいことだとは。
「私は、のび太と一緒だったら、どこだって楽しいんだから。」
「そうだな。この町だっていろいろ遊ぶところはあるしね。」
「そういうこと。ところで、のび太は、冬休みで一番楽しみなことはなに?」
「普通はクリスマスじゃないのか?」
「うーん、じゃあ、クリスマス抜きで。」
クロメは、『せぇので言おうね』と言い、なにやら口の中でぶつぶつ喋りながら考えていた。
「いっせぇの、せ!」
「初詣!」「くらげごっこ!」
二人の間に、沈黙が訪れた。瞬間的に凍り付いた空気。
のび太の結婚相手は?
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アカメ
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クロメ
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チェルシー
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シェーレ
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レオーネ