随分と商店街をうろついてはみたが、ツクモを探しているような大人はいなかった。時々、街をゆく人に聞いてみたりもしたのだが、知らないという答えしか返ってこなかった。場所を変えてみたりもしてけれど、やっぱり答えは同じで、ただ街をウロウロしている時間だけが過ぎていく。
「ねぇ、パパ、ママ。」
「なに?足でも痛くなった?」
「お腹でもすいたの?」
「足も痛いし、お腹もすいたの。」
のび太は、ツクモの前に背中を出してしゃがみ込む。
「はい、おんぶしてあげる。」
「うんッ。」
ツクモは、嬉しそうな声をあげ、のび太の背中にどっかりと飛び乗った。そして、お尻の方にしっかりと手を回し、ゆっくりと立ち上がった。
「わぁ!高い、高い!」
背中の方から、きゃっきゃっと騒ぐツクモの声。なんだか、本当にツクモの父親かなにかになった気分だ。
「ツクモは、どら焼き好き?」
「好き!どら焼きとかも大好き。」
「では、このままお菓子屋へ突撃だ!」
のび太は、ギュウウウンと自動車だが、飛行機だかよくわからない擬音を出しながら、走り始めた。
「ああっ、いきなり走り出すなんて、ずるい!ちょっと待って〜」
「ツクモね、こしあんどら焼き〜」
ツクモの前に、綺麗なあんこがたっぷり入ったどら焼きが置かれる。
「あんまり急いで食べちゃダメだよ。」
「うん、わかってまふ〜」
と言いながら、がぶりとどら焼きに食いつくツクモ。口の周りをあんこだらけにしながら、どら焼きをおいしそうにパクつくツクモを見ていると、なんだかそれだけで微笑ましかった。店員さんは、のび太達の同級生で、のび太達を見て、
「最初はどこの若い親子かと思ったわよ。そしたら、野比くんとクロメちゃんなんだもん。」
その言葉にのび太もクロメも苦笑せざるをえなかった。
「まさか、本当にあなた達の子供じゃないわよね。」
のび太とクロメはまだ付き合ってもいないのだ。
「迷子のこねぇ。まあ、そういう事にしといてあげる。」
その子は、そう言って、けらけらと笑いながら、お茶のお代わりを入れて、厨房に戻っていった。そういうことってなんだっての。
「ねぇ、のび太。やっぱり私達って親子に見えるのかな?」
のび太は、ちらりとクロメを見て、ツクモの方も見る。
「見えない・・・・・とは思うけど、この状況って、そう言われてもおかしくないよね、多分。」
「うん。」
「パパー、どら焼き食べる?」
「え?ああ、もらうよ。」
「じゃあ、あげる。ハイ、あ〜ん。」
のび太は、ツクモの差し出す食べかけのどら焼きに口を持っていき、パクリと食べる。
「ママもー」
「あ、はいはい。」
クロメもツクモの手からどら焼きを食べる。しかし、なんだか、『パパ』とか『ママ』とか呼ばれる度に、店の中から突き刺さるような視線を感じる。理由は分からんでもないが、誰だって、この歳でパパ呼ばわりはされたくない。
「パパー」
「ん?どうしたのツクモ?」
「ここのどら焼き、おいしいね。ツクモ大好きだよ。」
「そっか。よかったら。おかわりしてもいいんだよ?」
「うん、じゃあ、今度はこしあんじゃなくて抹茶どら焼き!」
・・・・・また渋いところを攻めてきますな。それとも、誰かの影響か?のび太は、懐の財布を取り出し、こっそり見たけど、微妙に足らないかも知れない。ちらりとクロメの方を見ると、クロメは小さく頷いていた。ーーこれで安心だ。
「ツクモね、ずっと前パパとママと3人でレストランでご飯を食べたんだけど、それもすごく美味しかったなぁ。今日みたいに、3人でご飯やお団子食べるの、ツクモだ〜い好き。」
「僕もだ〜い好き。」
なんだか、自分でも少し似合わないなと思いつつも、ツクモの口真似をしながら、頭をナデナデしてしまった。
「ママもツクモだ〜い好き。」
「えへへ。」
ツクモはパパとママに頭をナデナデされながら、どら焼きにがぶりとパクついた。
のび太の結婚相手は?
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アカメ
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クロメ
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チェルシー
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シェーレ
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レオーネ