プロローグ
「何をごちそうしてくれるの?フレンチ?イタリアン?それとも和食?」
「誰も奢るなんて言ってないって!!」
「ええ〜っ!?女の子を食事に誘っておいて、奢りじゃないなんてありえる!?ありえないでしょ!?こういう時に女の子が払おうとするのは、相手の自尊心を傷つけることになるのよ?奢ってもらうことで相手を立てるの。わかる?」
「わかるかっ!」
「社交術ってヤツだよ。のび太も知っておくといいわ。フフフッ。」
勝手についてきておいて、こいつは何を言ってるんだ?
「もういい。僕は一人で食う。じゃあね。」
「ねぇねぇ、のび太はお昼なに食べるつもりなの?って、あっ、ちょっと待ってってばっ。」
「うるさい。ついてこないでよ!」
「もー、拗ねないでしよー。私もお腹減ったー。」
「うるさいって言ってるでしょう。」
「いいじゃない。なに食べるのかくらい教えてよー。」
「和食だよ、和食っ、ついてこないでっ。」
「和食!!なになに!?お寿司!?天ぷら!?あ、私、ふぐちりとか結構好き!」
「チェルシーの好みなんか知らないよっ!」
「なによ、もー・・・・・・」
チェルシーに背を向けたまましばらく歩く。だが、まだチェルシーが後ろをつけてくる気配はあった。ここで振り返れば負けだ。後ろの気配などはじめからないものとして自分は行動しなければならない。
「おぉ、なかなかの美少女。なになに一人なの?」
「はぁ?なによあなた。」
「あなただって。いいところのお嬢様って感じ。ひぇっひぇっひぇっ。」
後ろの気配などはじめからないものとして、自分は行動しなければならない。
「・・・・・・・・・。」
行動しなければならない、のだ。
「はふっ、お腹いっぱい。」
「・・・・・・・・・・。」
「でもさぁ、のび太。女の子を食事に誘っておいて、牛丼はないんじゃない?牛丼は。」
「だからついてこないでって言ってるでしょう。なんなんだきみはっ。」
「なに言ってるのよ、のび太は私を食事に誘ったでしょ?誘った口で即キャンセルなんて、許されるはずないじゃない?むしろ、おとなしくついてきてあげた私に感謝して欲しいくらいね。フフッ。」
「フフじゃないー。結局払わせやがって・・・・・・」
「うん。ごちそうさまっ。」
「・・・・・・ったく。こんなことなら・・・・・」
「あ、やっぱり助けるつもりでああしてくれたんだ。」
「ぅ。」
「フフフ、急に私の腕を、強引に掴んで引っ張ってくんだもん。びっくりしちゃった♪のび太って意外に大胆なのね〜。」
自分がして行動に、自分が一番驚いてる。
「なんで僕はこんなヤツを助けてしまったのだろう。」
「こんなヤツとはひどいわね〜。その『こんなヤツ』を会うなり食事に誘ったくせに。・・・・あ、もしかして。」
「なに?」
「・・・・・・のび太って実は、私に気があるんだったりして。」
普通の人間なら顔を真っ赤にして、否定するところだが、生憎彼女の目の前にいある男は違った。
「ない。」
のび太は涼しい顔で答えた。
「・・・・・一応、『大切な家族』だとは思ってるけどね。そんな人が落ち込んでたら声くらいかけるし、困った事態になってたら助けようと思うでしょう、普通・・・・・・」
「・・・・・そっか。・・・・・うん、嬉しい。ありがとう、のび太。」
「ど・・・・どういたしまして・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「ぷ。ぷはははははっ!な、なにそれ!あはははははっ!ど、どういたしましてって!」
「うるさいな!別に返事としちゃ間違ってないだろうがっ!」
「ご、ごめん!確かに間違ってない。間違ってないけど、ぷくくくっ!ダ、ダメ、のび太がどういたしましてって、くひぃぃっ。」
腹立つが、ヘンに暗い表情見せられるよりはいくらかマシだ。
「はーっ、はーっ・・・・・・あー、おかしー」
「・・・・・・それじゃあな。まださっきみたいなのがいるだろうから、あんまり遅くならないうちに帰れよ。」
「あれ?どこ行くの、のび太。」
「どこって・・・・帰るんだよ。」
「なにかやることがあるの?」
「・・・・・・ある。」
というのは嘘だ。本当は家に帰って昼寝するだけ。
「それじゃあ。」
さっきのお返しのつもりなのか、チェルシーは急にのび太の手を取って引っ張った。驚くほど滑らかでしなやかな指の感触に、のび太の心臓がトクンと一つ鳴る。
「ごちそうしてくれたお礼に、デートしてあげる!行こうっ♪」
「嫌だよ!僕は帰りたいんだ!」
「どうせ昼寝するだけでしょ?いいから、行くよ!」
この後二人はカラオケ、ゲームセンター、映画などのデートスポットに足を踏み入れたのだった。
のび太の結婚相手は?
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アカメ
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クロメ
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チェルシー
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シェーレ
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レオーネ