SF   作:黒神 真夜
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SFと改革の初まりの初まり

今日の自動車科は、みんなざわついている。

 

「葵ちゃん、なんでみんなざわついてんだろうね?」

そう言うと、葵ちゃんが携帯の画面を私に見せた。

 

「お姉ちゃん、今日はSFの開催日決定日なんだよ。ほら」

そう言って、携帯に書いてある日にちと今日の日付を確認する、えーと来週の日曜日か。

 

「来週の日曜日かー早いね。」

 

「うん、お姉ちゃんだって、今日初めて、新しいスープラに乗ることになるから、早いうちに慣れないとね。」

 

「うん、頑張らないとね。」

そう言って、ガレージに向かう。

 

「ええ、今回は地方大会第1戦で使われるサーキット、岡山国際サーキットの特徴について説明しますね。」織田が先生がいるからか、丁寧な口調でプリントを見ながら説明する。

 

「まず、SFは地方大会が3戦、8月までにあり、本戦が8月から次の年の2月まで5戦あるという感じです。地方大会の上位2台が本戦に行けると言うことらしいです。」自分達の地域は、中国、四国地方と合同地方でまとめられていると、言うことも織田さんが付け足した。

 

「それでは、岡山国際サーキットの説明に入りますね。」

そう言うと、織田はレーザーポイントを取り出して、説明の準備をする。レーザーポイントってこのために...買ったのかな?違うよね...

 

「岡山国際サーキットのレーシングコースは、コース全長3703m、コース幅12~15mのコースです。路面は超速乾製のアスファルト舗装となっています。全部で13のコーナーと2本のストーレートで構成されていて、シンプルかつ大胆なコースですね。」織田の見事な、まとめに感動する。

 

「なるほど、それでラップ数はどれぐらいなのかな?」

岩森がそう聞いてくる。岩森って真面目になったら、すごい真剣になるよね。と思いながら聞く。

 

「えーと、42ラップで1回以上のピットインが条件ですね。」

スーパーGTなどで、ひとつの醍醐味はピット作業だと言われている。ピット作業で不具合が起き、抜く抜き返される。というドラマがよくある。それぐらい、ピット作業は戦場として大事なところである。

 

「なるほど、織田ちゃんなら、私達が練習するのは...」

 

「はい、ピット作業で時間短縮のための練習ですね。」

そう言うと芳村は了解と敬礼する。

 

「それで、蒼井さんは、グランドで岡山国際サーキットでの13のコーナーを再現した物があるので、そこで練習してください。」

 

「りょーかい!」

そう言って私達のSFに向けての練習は始まった。

 

スープラの車内に乗り込む。エンジンを始動させると、岩森が言ってた、人工知能「希」に声をかけられる。

 

「初めまして、私は希です。よろしくお願いします」

私達と同じ制服を着ていて、可愛かった。

 

「宜しくね、私は蒼井って言うわ。」

 

「蒼井さんですね、これからは、要らないかもですが、私がレース等をサポートさせて頂きますね。」

 

「お願いね、要らないなんて、絶対ないよ」

 

「はい!お願いします。それでは、再現コースの説明をさせていただきます。」

 

「こちらこそ。お願いします。」

そう言うと、希が指定した場所まで移動する。

 

「岡山国際サーキットは、ストーレートが2つもあり、馬力勝負な部分もありますが、2つのコーナーが連続する、レッドマンコーナーと言うところがあります。ここで蒼井さんには勝負をつけて欲しいんです。」

 

「OK、やって見るよ。」

そう言って、アクセルを全開にする。

ブォォと言う音がその気にさせる。

だけど...芳村と岩森、何をしたんだ、速すぎる。

超軽量化と598馬力でスープラは、戦闘機へと化けた。

 

「これは...ちょっと、本気でやらないとね...」

葵ちゃんから貰った、宝石を眺める。今日もよろしくね。蒼弾。

それに応えるかのように、甲高い音がグランドに響いた。

 

エアーインパクトの音が鳴り響く中、お元気ですか?私、芳村は約1時間、タイヤを外してはつけてを繰り返しております。

 

「流石に疲れましたね。」

そう黒神ちゃんが言ってくる。確かに...この単純な作業をずっと繰り返すと、体力もだけど、精神的にくるものがあるよね。

 

「休憩にしますか?」

けんちゃんがそう言って、休憩に入る。

この時期に、つなぎを着ると、ものすごい暑い...これが夏になると...悪夢だね。そう思っていると岩森に声をかけられる。

 

「芳村、自動販売機行くけど...どうかな?」

 

「いいけど、自動販売機って丁寧に言うんだね。意外」

 

「いや、本当は自販機だけど、通じなかったらいけないから」

そう言って、岩森も暑かったのか、つなぎの袖を捲る。

 

「暑い...岩森って、自販機で何買うの?」

そう言うと、一瞬考えてすぐに

 

「炭酸飲料かな、やっぱり」

まぁ、部屋にあれだけあるし、そりゃそうかと思った。

 

「私は...コーヒーかな」

 

「へぇ、意外だわ。」

岩森が正気か?と目で訴えてくる。

「ちゃんと、飲めるもん、ブラックも」

 

「す、すごいもんだ、あ、私が奢るよ。」

そう言って、岩森が私の前に立つ。

 

「え?いやいや、いいよ。」

そう言うと、岩森が頭に付けている、リボンを指さす。

 

「ほ、ほら、こんなものでし返せないけど...」

そう言って、岩森がブラックコーヒーの缶を渡してくる。

 

「うん、ありがとうね。嬉しいよ。」

そう言って岩森から受け取った缶コーヒーは冷たかった。

 

 

「暑い...」

岡山国際サーキットのコーナーを再現したコースを練習していたが、集中が切れてたので、車を出る。

スープラは、純正のクーラーはレスされて、小さいクーラーを直接自分に当てることによって、パワーの減少を少なくしている。

直接当てているので、涼しいのだが...暑いものは暑い。

 

「自販機行こうかな...」

そう悩んでいると、けんちゃんが炭酸飲料を抱えてやってきた。

 

「真夜ちゃん、お疲れ様、これどうぞ。」

そう言って、炭酸飲料をくれた。

 

「ありがとう、けんちゃん、あ、お金払うよ。」

そう言うと、けんちゃんはいいよいいよ。と言って拒んだ。

 

「真夜ちゃん、どう、本番行けそう?」

 

「うん、けんちゃんがしてくれた軽量化と芳村と岩森のエンジンチューンのおかげで。完璧だよ」

 

「そっか...それは嬉しいことだね。頑張ってね。」

 

「うん。ピット練習はどんな感じ?」

 

「タイヤ交換と給油の練習ばっかりだけど、本番でミスしないためにも、頑張ってるよ。」

 

「そっか、よーしこっちも負けてられないな。頑張るよ。」

そう言って、スープラの車内に戻る。

 

「真夜ちゃん、頑張ってね。」

その言葉で、やる気が蘇る。

さて、頑張りますか。

そう言って見た、葵ちゃんからもらった宝石の色は蒼かった。

 

日が沈むのが、少し遅くなった気がするなと...思いながら帰り道を歩く。

 

『ただいま』

葵ちゃんと一緒に家に帰る。

 

「お姉ちゃん、お疲れ様、晩御飯作るけど、何が食べたい?」

葵ちゃんが、制服から部屋着に着替えるとそう言ってくる。

 

「そうだね...うーん、たまには外に食べに行く?」

葵ちゃんもゴールデンウィーク明けの学校だし、あまり負担はかけたくない。

 

「え?いや、お金勿体無いし、いいよ。お姉ちゃん」

 

「そ、そうなの、けど、葵ちゃんも疲れただろうしたまには...良いかなと思うんだけどな。」

 

「...それじゃあ、お言葉に甘えて」

葵ちゃんも疲れていたみたいで受け入れてくれた。

 

「葵ちゃん...ここに行こう。」

私がネットで適当に検索して見つけた、温泉と飲食店がセットである場所を見せる。

 

「う...生き返るね...」

温泉に入って一番感動することは、足を伸ばしても全然平気と言うこの浴槽の広さだと思いながら、お湯に浸かる。

 

「お姉ちゃん、髪洗いっこしようよ。」

そう言って、葵ちゃんがはしゃぐ。

 

「家でも、毎日それだよね...まぁ、いいけど」

葵ちゃんの髪を洗いながら思ったことがあったので、言ってみた。

 

「そう言えば、私と葵ちゃんって一応、姉妹だけあって、髪も、今となっては...目の色も一緒だよね。」そう言って私は、ゴールデンウィーク中、眼科に通っても治らなかった、蒼い目を指して言う。

 

「そ、そうだね...全く一緒...」

そう言うと、地雷を踏んだのか...と思うぐらい、葵ちゃんの気分が落ち込んだ。

 

「え、えーと...」

 

「すごい、嬉しいよ。お姉ちゃんと一緒なんて嬉しいな。」

あ、いつもの葵ちゃんだと、安心して髪洗いを続行する。

 

「そう言えば、お姉ちゃんさ、岡山国際サーキットって走るの初めてなの?」今度は、葵ちゃんが私の髪を洗ってくれながら、そう聞いてくる。

 

「うん、走ったことないし、行ったこともないよ。」

私の記憶は、私が中学の頃走ってたサーキットしかないと言っている。

 

「そ、そうなんだね...大変だね、それは...」

そう言うと、葵ちゃんは私が未走行だからか、知らないが残念そうに言ってくる。

 

「大丈夫だよ、みんなが改造してくれたスープラだもん、絶対1位を取ってみせるよ。」

 

「うん、頑張ってね。私も応援してるよ。」

そう言って葵ちゃんは髪についている、シャンプーを洗い流す。

 

そこからは先は、疲れてたからか、あんまり覚えてないけど、ご飯が美味しかったのだけは、覚えている。

 

 

次の日、偶然、岩森と芳村に通学路で会ったので、葵ちゃん含め4人で登校した。

私達のスープラが眠るガレージに向かうと、先生と社会人であろう2人が話をしている。

みんなで、社交辞令である、挨拶をして、ガレージに向かおうとすると、先生に呼び止められた。

 

「あ、こいつがその、スープラのドライバー蒼井です。」

そう言って、先生に前に押し出される。

 

「へぇ、この子があの時の...」

そう言うと、悪意は無いのだろうが...ジロジロと全身を見られる。

 

「え、えっと...あの時って?何でしょうか?」

正直、会ったことがない気がするので聞いてみた。

 

「あ、ああ、まぁ、覚えてたらすごいよね。ちょっと待ってて」そう言うと、走ってどこかに行き、激しいエキゾーストノートと共にシビックのFK2がこちらに来る。

 

「え、えっと...こ、これで思い出してくれたかな?」

そう言うと、何故か、後ろの岩森達が激しく動揺した気がするが、全く思い出せない。

 

「え、えーと、どこかでバトルかなんかしましったけ?」

 

「はい、あの時、戦場で君の走りを見てこれだと思ってね」

戦場...ってどこだよって本気で思って後ろの岩森達に聞こうとしたが、彼女達も戦場という言葉を知らないのか、かなり焦っている。

 

「そ、そうなんですか...褒めていただいて...嬉しいです」

取り敢えず、話に合わせることにした...戦場ね、後で調べるか、絶対リアルな戦場についてしかヒットしないだろうけど。

 

「あの時、GTOを抜いた時は、もう本当に感動したんだ、君の走りに...なにか、コツとかあるのかな?」

GTO...え?最近、絶滅したと思われる、GTO...どっかで戦ったの...それに、どうやって抜いたか、分からないのにコツとか言われてもな...

 

「え、えっと、取り敢えず、諦めないで...努力することだと思います...」我ながら何言ってんだこいつと思う。

本当に、助け舟が欲しいので、後ろの岩森達に、目で助けてと送ったが、彼女達もどうするんだ、みたいな顔をしてるので...助けは来ないだろう。

 

「ま、まぁ、こんな話をするためだけに、ここに来たんじゃないんだ。」そう言って、社会人であろう方×2は、タイヤ〇ゼンのCMで見た事のあるような感じで、タイヤを転がして来た。

 

「この、我社のタイヤをSFで使ってくれないかな?」

いい物は、何となく、オーラと言うと違う気がするけど、これは絶対いい物って思える確信的な何かが纏っていると思う。

このタイヤは、そのオーラ的な物が纏われている。

 

「これは...普通のタイヤ...ではないですよね?」

 

「これは我社のタイヤのプロトタイプ『Zeke』です。」

そう、タイヤをポンポンと叩きながら言ってきた。

 

「Zekeは、どんなタイヤなんですか?」

そう言うと、待ってましたと言わんばかりに

 

「この、タイヤは...エアロタイヤなんですよ。」

エアロタイヤは、ロードバイクの空気抵抗軽減を目的として生まれた、タイヤである。

近頃のロードバイクは、ワイヤーはフレームに内蔵、ブレーキなども、フレームの太さに合うように専用のブレーキが作られるなど、徹底的に空気抵抗軽減を目的としてきている。

ロードバイクの軽量化は、タイヤやワイヤーと面白い所まで、軽量化出来るとして、マニアックやファンから愛されている。

しかし、そんな、タイヤの軽量化も限界が来たのである。

そこで、着目されたのは、軽くて、ロードバイクの目的である、空気抵抗軽減を両立した物それが、エアロタイヤである。

 

「車には、あまり恩恵が得られないかもしれないですが、しない物より、した物が良い、それをコンセプトに開発しました。」

あ、Zekeの由来は、空気抵抗の少ない戦闘機で有名な零戦のコードネームから取りました。と付け加えてくれた。

 

「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね。」

 

「はい、感想などありましたら、連絡ください。」

そう言って、連絡先を渡されて、去っていった。

 

「黒神...あ、あのFK2って...」

後ろから、岩森の声が聞こえてくる。

 

「え?何のことですか?」

葵ちゃんの瞳に虹彩が無い気がするが...気にしない。

 

「い、いや...何もないです。」

岩森もそれを悟ったのか、深く追求しないことにした。

 

今日も、岡山国際サーキットの模擬コースで練習をし、明後日がレース当日、一日前の明日から岡山に行くことになったので、家に帰って、荷造りしないといけないので、早めの解散となった。

 

「お姉ちゃん、荷造り終わった?」

隣で、わざわざ、チェック表を作り、チェック作業をしている葵ちゃんに声をかけられる。

 

「うん、終わったよ。と言っても1泊するだけなんだけどね。」

学生服に着替えとウェアを入れただけのリュックを叩く。

 

「そう言えば、葵ちゃん荷物ちょっと多くない?」

葵ちゃんは、私の荷物の1.5倍ぐらいある量をリュックに入れていたので聞いてみる。

まぁ、せいぜい6個ぐらいの準備物の1.5倍って些細なものだけど、自分でツッコンだら負けな気がしてきた。

 

「これはね...朋ちゃんの衣装なんだけどね...」

 

「そうなの?見てもいい?」

そう言って、見せてもらうと...

 

「こ、これ芳村が望んだ物なの?」

 

「いいえ、岩森さんと企画して作ってもらいました」

そう言って、笑顔で言ってくる当たり、凄いなと思う。

ってか、外の時オーラーが出てるよ。

葵ちゃんって、家では結構言葉崩すけど、外だと優等生になるからな...いい事だけども。

 

「ってか、え?これ必要なの?」

私がここまで、ビックリするのも無理はない...

だって、私が今手に持ってるものは、レースクィーンが着る、あの衣装なんだから。

流石に、スク水見たいなやつではなく、スカートタイプなのだが、それでも、露出部分は多いと思う...可哀想に...

まぁ、しかし、結構芳村に似合いそうな感じの衣装なのが、無駄に凄いと思う。

 

「お姉ちゃん、ちゃんとSFの出場条件でレースクィーンは必要って書いてあるんだよ。」

 

「そ、そうなの?ま、マジですか...」

...ドライバーで良かったと心底思った。

 

「けど、なんかもう1着あるけど?これは?」

 

「それはね...予備だよ...予備。」

葵ちゃんって、結構オーラー出る人なのね...と思いこれ以上深入りするのは、危険だと判断した。

 

「そっか...破れたら、失格になるからね...うんうん。」

そう言うしか、なかった。

 

「それじゃあ、そろそろ寝ますか。」

そう言って、布団に入ると当然ながら、葵ちゃんも布団に入ってきたが、流石に慣れたのか、普通に寝ることが出来た。

 

今日は、最近あまり、行ってなかった夢の世界に行った。

 

今日は、家で誰かと話してる途中からスタートした。

「...いいか、真夜の蒼創は感情を無くすことじゃないんだ...」

 

「蒼創ってなに?」

私は、蒼創という言葉すら知らないので聞いてみる。

 

「おいおい、新しいボケか?面白いな」

そう言って、肩を緩く叩かれながら、笑われる。

 

「え?ハハハ、お、面白かった?」

駄目だ...こいつ、使えねぇ

こういう人って、大体都合よく事情とか説明してくれる物じゃないのかな?

 

「まぁ、ここから先は、自分で試してみな。」

い、イヤイヤ...結局なんのヒントも得られませんでした。

え、これで終わりなの...今日のは、ハズレだな...

 

「お姉ちゃん...朝だよ」

妹が激しく揺さぶって来たので、起きた。

私に来世があるのなら、朝に強いDNAが欲しいな...

 

「葵ちゃん、おはよう...朝ごはんありがとうね」

そう言って、葵ちゃんが焼いたパンを食べながら、意識を回復させる。

 

「うんうん、今日は集合時間が思ったより早いから、急がないとね。」

 

「りょーかい。」

そう言って、私の平凡?な日々が始まる。

 

家のドアに鍵をかけて、葵ちゃんと登校する。

電車に揺られて、電車を降りて、徒歩で歩き、やっと学校についた。

東雲工業高校、いい加減に車通学常時OKにしてくれないかなと思いつつ、校内に入る。

 

「おーらーい、おーらーい」

ガレージに到着したら、丁度、織田さんがスープラをトラックに誘導していた。

ガシャンと音を立て、トラックの荷台がしまっていく。

 

「お疲れ様です、織田さん」

スープラの車内から出てきてた。けんちゃんが織田に声をかけている。

 

「お疲れ様、いやー朝からいい仕事したねー」

そう言って、織田がミネラルウォーターを飲みながら言った。

 

「おはようございます。2人とも」

葵ちゃんが、そんな二人の元に今来たかのように、入っていった。

 

「おはようございます、黒神ちゃん、いい朝ですね」

 

「はい、佐々木さん、昨日はよく眠れましたか?」

...2人の会話レベルが高すぎて...2人だけの会話を聞くとお嬢様校と間違えられるのじゃと心配してしまう。

 

「おはよう...けんちゃん。」

 

「おはよう、真夜ちゃん、体調は大丈夫?岡山楽しみだね」

そう言って、けんちゃんは岡山のパンフレットを見せてくる。けんちゃんも、この通り、一部の人限定で素が出てしまう。

 

「今日の夜ご飯って、どこ食べに行くんだろうね?楽しみ」

織田がけんちゃんから、パンフレットを借りて、飲食店を探している。

 

『おはようございます。』

岩森と芳村が仲良く歩いてくる。

 

「おはよう。加奈江ちゃんって最近、学校来るの早くなったよね。」

織田が皆が聞きたかったけど、聞にくいことを聞いてくれた。

 

「まぁ、部活の朝の活動のために、早く来ないとだから」

 

「へぇ、あれ?加奈江ちゃんって部活入ってたの?」

恐らく、この場の皆が思ったことを聞いてくれた。

 

「うん、情報電子部に芳村とね入部したんだ」

 

「へ、へぇ...活動内容とかは?」

織田が又又、皆が思ったことを聞いてくれた。

 

「...」

岩森が、芳村にSOSを出してる気がする。

 

「えっとね...普通(先生の絵のモデル)かな...」

芳村が含みのある感じで言ってくる。

 

「普通か...他には...」

「えっと...後は、話す(薄い本についての討論)ぐらい...」

芳村がオブラートに包みまくった感じで言ってくる。

愛想笑いが、ここまで冷たいと思ったことは無い。

 

「そっか...大変そうだね。」

織田も流石にこれ以上は深くは入らなかった。

 

「よし、みんな揃ったか?出発するぞ?」

先生がナイスなタイミングで来てくれたのでそのまま、出発する。SF初陣、絶対に1位を取って見せると...心に決めて、東雲工業高校を後にした。

 

今回のバスの車内は、前回の呉に行った時のような沈黙はなく、賑やかだった。みんな大分仲良くなったなと思いながら話を聞いた。

 

「芳村さん、これ...貴方が今日の主役ですよ。」

そう言って、葵ちゃんが芳村に早速チェックメイトを決めにかかる。

 

「ありがとうございます...え、えっと、これ?」

みんなの前で恐る恐る、芳村が布を広げると、昨日私が見た、レースクィーンになるための衣装が生まれた。

 

「...え、え、む...無理です、こんなの...え、え、」

芳村が、悶えている。え、可愛いな...これは...

 

「芳村...着てみよう。」

岩森が攻め継する。

 

「い、嫌だ...む、無理だよ...こんなの...」

うん、分かるよ...芳村、私も無理だと思う。

そう同情していたが、周りは...も、もう消火不可能だった。

 

「あ、私...自分の親の会社のロゴ入り傘ありますよ。これでフル装備ですね。」けんちゃんまで、乗り気だった。

 

「私の...心の中に傘をさして欲しいです。」

どうやら...いや分かっていたが、芳村の心の中は大雨らしい。

 

「ほら、早速着てみなよ。試着、試着。」

織田がそう言って、急かす。

 

「い...嫌です。こ、これを着るぐらいなら...せ、切腹します」そこまでか...う、うーむこれは...あれだな...

 

「大丈夫です。朋ちゃん。こんな時のために、もう1着用意してたんですよ。」

そう言って、葵ちゃんはもう1着を取り出して...岩森に渡した。

 

「え、黒神様...これは...」

岩森が、様をつけるぐらいに、動揺している。

 

「朋ちゃんのために、着てあげてください。」

葵ちゃん完全にSだった...

 

「え、いや......え?」

岩森は、もはや声にならない声で、助けを求めている。

 

「岩森...いや、加奈江ちゃんやろう。」

芳村が岩森がやるならば...と言った気で迫る。

 

「く、黒神...謀ったな...」

岩森が断末魔に近い形で叫ぶ

 

「ふふ、貴方はいい奴だったが、目の前のことに集中しすぎることがいけないのだよ...」

 

「く、こうなったら...この衣装を大量生産して、みんなに着させてやる...」なんか、昔辺りに流行った機動戦士のパロコメントが飛び交った気がするが...気にしない。

 

ここから、4対2による。楽しいお着替えのお時間が始まった。

 

「え、やばい...岩森も芳村も可愛すぎる...」

織田がそう言うのも、分かる気がする。

 

「2人とも、似合ってますよ。」

そう言いながら、携帯のカメラを連写しながらけんちゃんが言う。

 

「2人とも...眼福です。」

あ、葵ちゃん、化けの皮が、もうビリビリだよ。とツッコミたかったが辞めておこう。

 

『世の中から...存在を抹消して欲しいです。』

2人が、そんな感じのことを言った気がするが、無視だ。

衣装作成者様、これは...ナイスです。

そう思いながら...今のこの光景を目に焼き付けた。

 

そこから、またしばらく、バスに揺られ遂に目的地が見えてくる。

 

「おーい、岡山国際サーキットに着いたぞ。」

先生が、さっさと降りろと急かす。

 

バスを降りると、ピットで使う備品とスープラを乗せたトラックも到着していた。

 

「さてさて、私達はピットの準備してるから、蒼井ちゃんは、走ってきなよ。」そう言って、織田からスープラの鍵を貰う。

 

さてさて、バケットシートと4点式のシートベルトをして付けて、コースを見渡す。

SFは、予選タイムによって、明日の決戦でのスタートポジションが決まる。

予選タイムの順位によって、前線からスタート出来るので、気は抜けない。

 

「お姉ちゃん、今サーキット内に4台マシーンいる見たいだから、全開走行時は気をつけてね。」

 

「葵ちゃんありがとうね、行ってくるよ。」

そう言って、タイヤを温めながら走っていく。

 

「蒼井さん、路面温度、気温に適切な空燃比などに設定しました、いつでも全開で行ってもらって結構ですよ。」

希が、耳にすっと入る声でそう言ってくる。

 

1周軽く回った所で、全開走行に入る。

お願いね、葵ちゃん。そう言ってドリンクホルダーに付けられた、蒼い宝石を見つめると、感情がログアウトした気がする。

 

「蒼井さん、お疲れ様でした。」

希が10周ぐらいサーキットを走った時にそう行ってくる。

 

「ありがとうね、タイムは?良いかな?」

 

「はい、良好だと思いますが3位ですね。」

希が励ますように言ってくる。

 

「ありゃりゃ、私より速いチーム名は分かる?」

結構いい感じで走れてただけに悔しい。

 

「えーと。広島国際工業高校と山口県立工業高校ですね。」

 

「...流石NSX、凄いね。」

国際工業高校がNSXと言うことは知ってるが、山口の高校の車は知らない。

 

「山口県立工業高校は、RX-9ですね。」

RX-9か...RX-8の水素エンジンの後継エンジンを搭載した車で、車会では、かなり人気の車...と言うぐらいしか私は知らない。

 

「水素に負けるなんて...悔しいけど、そろそろ、時間だから帰らないとね。」SFの予選タイムをとっていい時間は20分と決まっている。

明日は負けないからねーと捨て台詞を言って去っていった。

 

自分達がお世話になる、旅館に着くと夜ご飯を食べに行かないと行けない時間だった。

広島県工業高校生一同と書かれた、食堂に行くと、呉工業と、国際工業生は集まっていた。

 

「東雲工業高校のみなさん、お待ちしてました。」

竹下さんがそう言って、私達の席を指してくれた。

席につくと、隣は、国際工業高校のNSXのドライバー井手元響子がいた。

 

「響子久しぶりだね、元気そうで何よりだよ。」

 

「真夜も、元気そうだね。」

早く褒めてよ、オーラが出てたので本題に入る。

 

「響子...すごいね、予選タイム1位なんて何事?」

 

「ふふ、そりゃだってなれ...いや、何もないわ。」

そう言って、響子は何か言おうとしたが辞めた。

 

「そ、そうなんだ...本番では...負けないよ」

 

「ふふ、私達のNSXは普通の車とはひと味もふた味も違うんだよ。」

 

「こ、こっちは、本気の9割ぐらいしか...出てないもん」

私も負けじと、アピールらしきものをする。

 

「真夜...それ結構ガチで走ってたってことじゃ...」

...真相を突かれてしまったので、何も言えない。

 

「まぁ、明日は...お互い楽しもう。」

そう、響子と誓って、夜ご飯を食べ始めた。

 

「に、逃げたな...」

そう、響子が言った気がするが、気にしない。

 

自分達、東雲工業高校生用の部屋に戻ってきて、私は疲れたのか...そのまま寝てしまった。

 

今日の夢は、確実に創造話だろう。

どこかのサーキットで私が走っている夢だった。

私の前を赤い車が走っている。

どんなに頑張っても、抜けない、相手の車が速いのは勿論、上手い...突如前を走る車がウィンカーで付いてこいと言っているようなので付いて行く。

車を降りると、響子が赤い車から降りてきた。

 

「き、響子...なの?」

響子は、勿論運転技術は高い方だけど、ここまで上手かったのか...と感動する。

 

「なに、言っての真夜。抜けないからって...」

響子が、そう言って、笑ってくる

 

「そ、そうだよ...速すぎない?なんで...」

これが、もし現実の速さなら付いていけないと思う。

 

「そりゃ、って...あんたも結構走ってるでしょ?」

響子が熱はないのかとおでこを触ってくる。

 

「え?冗談キツイな...コツとかあるの?」

イマイチ会話が成り立っていない気がするが...進める

 

「うーんけど、私このコースで苦手な所があるんだよね。」

 

「え?そうなの?どこどこ?」

これが、予知夢なのだとしたら...使えるものは使いたい。

少々強引でもいいので聞きにかかる。

 

「えー、それは内緒ってことで。」

そう言って、響子は、ほらほら走るよと車に乗っていく。

 

「この夢...最近需要なくね?」

そう叫んでしまった。

 

「真夜ちゃん...朝だよ」

その声と同時に毎朝揺らされるのとは、違った揺れがくる。

 

「朝か...ってけんちゃん?」

あ、そう言えば、岡山来てるんだったと思い出す。

 

「そうだよ、真夜ちゃん、ほらほら朝の支度しないと」

そう言って、けんちゃんに強制的に布団を出される。

 

朝の支度をさっさと済ませて、ようやく気がつく。

 

「あれ、けんちゃん皆は?」

そう言うと、けんちゃんは隣の部屋を指さす。

確かに、結構暴れ回ってるみたいだが...何事なの。

 

ドアを開けると、そこは...修羅場?だった。

 

「ほらほら、岩森さん、芳村さん着てください。」

そう言って、葵ちゃんが芳村達に布を押し付けている。

 

「む、無理だよ、次着たら...私、風邪引くの」

い、いや、何でだよって思ったが置いておこう。

言い訳も、可愛いしね。

 

「時間がないんだよ...早く受付行かないと失格になる」

織田が核心を刺したらしく。2人とも黙る

 

「こ、今回...だけ、ですからね。」

芳村が赤面しながら、着替える。

 

「あ、あれ加奈江ちゃんは?」

そう、加奈江ちゃんは、今さっきから全く動いていない。

 

「まさか...寝てる...」

え?この修羅場でよく寝れたなと感動する。

 

「と言うことは...無抵抗ですね。」

葵ちゃんが微笑み始める。

あ、これは...なんだその、岩森...ご愁傷様。

そう言って、私はドアを閉めた。

その後、後ろの方が騒がしくなった気がするが気にしない。

 

後ろのドアから4人が出てきたので、受付に行くが、芳村と岩森は重りでもついてるのか、脚が重そうだった。

 

受付に行くと、受付員の人が不思議そうに聞いてくる。

 

「あの、別に不備とかはないんですが、レースクィーンはどの高校も1人なんですが、大丈夫ですよね?別に些細なことなんですが」

 

「あ、はい。本人の希望みたいなので」

葵ちゃん...も、もう岩森達のLIFEは零よ...

 

とりあえず、これにて不備なく出場できるので、良かった?とみんなでスープラの眠るピットに行く。

 

「レース開始まで45分を今切りました。選手達は、スタートポジションに着いてください。」

そうアナウンスされる。

 

「よし、東雲工業高校!初陣...絶対勝つぞー」

私らしくなく、掛け声を放つ。

 

『おーー』

そう言って、私達はスタート位置に出向く。

 

ピットを出た時に見た空の色は...晴れていて蒼かった。







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