幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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久々の更新です!


第160回 「ステージEX1:無名の丘」

白玉楼にて幽々子と弾幕ごっこをして、幽々子に誘われプチ宴会をした。

これで弾幕取材は無事に完了となった、はずなのだが。

 

「なんか気に食わない顔してるな、文?」

 

冥界から幻想郷に戻る為飛んでいるが、さっきから文は飛びながら撮った写真を見て唸ったり考え込んだりしている。

これからはやる事もないので一先ず博麗神社に帰って、食料品の買い出しが必要か確認する予定だ。

 

「せっかく二人っきりなのにもう終わりですかぁ、思えば全く進展しませんでしたね……」

 

1人でぶつぶつ言っているが聞かない方が良さそうだ。

 

「改めて見渡すと意外と広いな幻想郷」

 

幻想郷のはるか上空を飛んでいるが、眼下に見える景色を眺める。

昨日はほぼ歩いていたし、空を飛ぶにしても低空を飛んでいたし冥界に昇る時も上空しか見ていなかったから幻想郷を広く見渡す事はなかった。

で、その幻想郷は花で覆いつくされているが、学園都市の店先とかでたまに見かけた花壇や庭園みたいに種類を揃えて整ってさいているわけではない。

種類もバラバラに不規則に咲き乱れているのでどこか違和感しかない。

 

「これはこれで壮観ではあるけど、やっぱり……ん?」

 

ふと、幻想郷の一角で目が留まった。

他の場所は様々な種類の花が咲いているから色も統一されていないが、そこは一面紫一色だった。

そういえばあの辺りはまだ行った事ないな。

幻想郷に来てまだ数か月、行った事ない場所は多い。

 

「文? あそこって何かあるのか?」

「えっ? どこですか? あぁ、あの辺りは無名の丘ですね」

「どういう場所なんだ?」

 

幻想郷には独特の雰囲気をする場所が数多くあるけど、なんだかあそこは特に異様な場所な気がする。

 

「妖怪の山の反対側にありますし、あまり気持ちのいい場所じゃないので人も妖怪も寄り付かないですよ。私もあまり行きませんし」

 

なんでも、博麗大結界ができる以前、まだ名付け前の名無しの幼子を鈴蘭の毒気で安楽死させて間引きに来る場所だった。

だから無名の丘、か。

 

「で、それを聞いても気になりますか? あそこには誰もいませんよ?」

「あぁ、とても嫌な感じがする場所だからな」

「そうですか……行くなと行っても1人でいきそうですし、なら私が一緒に行く方がいいですよね。ではでは、次の取材場所は無名の丘です!」

「誰もいないって今自分で言っただろ。そんな所で弾幕取材は出来ないぞ。それに、誰もいないなら俺1人でもいいだろ」

「そんないけずな事言わないでくださいよ~ずっと2人で頑張ってきた仲じゃないですか~?」

 

飛びながら身体を擦り付けて来る文。

朝から酔ってないか?

でも、確かに文が居た方がいいかもな。

 

「確かに誰もいないからこそ、何かあっても幻想支配使えないからな。万が一の為に文が居た方がいいか」

「ちょっ、私は電池扱いですか!?」

「電池と言うか予備バッテリーかな」

「あまり変わらないじゃないですか! はぁ~……いいですよ~バッテリー天狗としてユウキさんの側にずっといますから」

 

今度は、俺から離れて拗ねてしまった。

 

「文」

「……なんですか?」

「お前、暇なのか?」

 

そう言うとガクッと文が沈んでいった。

 

「なんで! あなたは! そう! なるんですか!!」

 

と思ったら、超接近してきてすごい顔して睨んできた。

忙しい天狗だな。

 

そんなやりとりをしていると、目的地である無名の丘にたどり着いた。

他の場所とは違い、無名の丘は一面鈴蘭の花が咲き乱れていた。

そして、この感じはまさか……この程度なら大丈夫か。

 

「あやや~やっぱりここはこうなっていましたか」

 

なんでも無免の丘は元から鈴蘭が咲いているから文から見れば違和感はないそうだ。

春に咲く鈴蘭が夏に満開と言うのは、違和感しかないけどな。

その時、鈴蘭の中から声がした。

 

「あれ? あれれー? 妖怪がいる?」

 

出てきたのは見た目は幼い女の子だった。

けど、どうみても人間じゃない。

笑顔を浮かべているが表情が読み切れない、まるで人形のようだ。

 

「スーさん、スーさん、妖怪だよ!」

 

よほど他の妖怪が珍しいのか、文を指差して……ではなく俺を指差してないか?

 

「初めまして、俺の名前はユウキって言うんだ。君の名前は?」

「私はメディスン・メランコリー! こう見えて人形よ!」

 

メディスン、本当に人形だったのか。

上海や蓬莱とはまた違った見た目だな、間接も丸くないし本当に人間みたいな見た目だ。

それを言ってしまえば文達妖怪にも見た目が人間に見えるのは多いか。

 

「人形、と言うよりは人形が妖怪化した、と見た方がいいですね」

 

なるほど、そういう事もあるのか。

で、知っている妖怪かと文の方を向いたが、文は知らないようで首を横に振るだけだ。

 

「普段、誰もここに来ませんから、流石の私でも知りませんね。あ、申し遅れました、私は天狗の射命丸文です。どうぞ、よろしく。ところであなたはこんな所で何をしてるんでしょうか?」

 

文は、メモ帳片手に取材モードだ。

と言っても、流石に初対面相手に弾幕取材はなさそうだな。

 

「私? うーんと、ここで人間から人形達を解放するの!」

「人形達を解放?」

「うん、人間は今までずっと人形を虐げて来たでしょ? だから解放するの!……あれ? あれれー?」

 

ここでメディスンが急に真顔になって俺に詰め寄ってきた。

近くで顔をよく見ると、瞳の輝き方とかは人形だな。

 

「貴方、やっぱり人間?」

「あぁ、俺は人間だ」

 

さっきまで俺も妖怪だと思ってたのか?

 

「そう……本当に? だって妖怪に食べられてないどころか一緒にいるでしょ?」

「むっ、私達天狗は人間を食べたりしませんよ! と言うかそもそもその定義自体古いです! あ、でも別の意味でならユウキさんになら……」

 

なんか後半こっちを見ながらブツブツ言っているけど、無視しよう

 

「でもでも。だったらなんでここにいて平気なの!? ここスーさんの毒があるんだよ?」

 

スーさんと言うのはどうやら鈴蘭の事らしい。

 

「あ、どうりで空気がピリピリする気がするなーと……って、ユウキさん大丈夫なんですか!?」

 

そもそも鈴蘭には毒があるが、それは直接食べたりするからの事であって、空気中には散布されない。

が、ここは幻想郷。俺のいた世界の常識は通用しない。

 

「あぁ、この程度の毒なら問題ないぞ」

「あーそういえば、ユウキさんは毒や薬物には抵抗力かなりありましたね。すっかり忘れていました」

 

俺は学園都市でずっと色々な実験や改造ともいえる事をされているので、少なくとも外の世界の自白剤等の薬物や毒物は俺には効かない程度には、すごく耐性がある。

なので、る幻想郷の鈴蘭の毒とはいえ、自然発生しているものなら効果はない。

パチュリーが俺の事調べた時もそういう結果でていた。

実は。少し前に永琳に頼んで幻想郷の花や薬草などにアレルギーがないかとか調べてもらった事があり、その時にも耐性の高さに驚かれていた。

 

「貴方、やっぱり人間じゃないんじゃない?」

「私も時折ユウキさんを人間じゃないと思う時ありますけど、間違いなく人間ですよ。驚くべき事ですが」

 

なんでそこまで驚かれるのか、何度もこういう事あったからその反応も見飽きてるけどさ。

 

「でもそっか、人間かー……」

 

さっきまでメディスンの瞳からは何も読み取れなかったが、急にどす黒いものを感じるようになった。

比喩表現じゃなく、彼女の奥底から何かが這い出てくる感覚。

何かは分からないけど、これは危険だな。

 

「じゃあ シネ

「飛べ!!!」

 

咄嗟に俺と文は上空に飛んだ直後、青紫色をした弾幕が地面に突き刺さった瞬間、乾いた破裂音が響いた。

次の瞬間、弾けとんだ弾幕から青紫の霧が四方へ広がっていく。

 

「っ、ユウキさん! もっと離れてください! それは猛毒です! 貴方でも危険です!」

「あぁ、そうみたいだな」

 

鈴蘭の毒とはくらべものにならない強力な毒ってのは見れば分かる。

流石にあれを食らったらタダでは済まないな。

と言う事は、毒がメディスンの能力か?

 

「ともかく幻想支配で止めなきゃ……あぐっ!?」

 

メディスンから離れた場所に降りて彼女を視て、能力を止めようとした。

しかし、彼女を視た途端に身体、いや、身体の内側が締め付けられるような激痛が走った。

すぐに解除すると激痛は収まった。

こんな事は、過去に何度かあった。

視れないわけじゃないが、視ると激痛が走る。

それは、相手が規格外の力を持っている時だった。

けど、今のメディスンにはそこまで規格外の力があるようには見えない、なら原因は別だろう。

それを考えている余裕はない。

今分かっているのは、メディスンの能力が毒を操る事で、俺を殺す為だけに猛毒を弾幕として撃ったと言う事だ。

 

「ユウキさん、大丈夫ですか!?」

「あぁ、なんとかな。メディスン、俺を殺すのはいいがそんな猛毒は、周りの鈴蘭にも害が出るんじゃないか?」

「大丈夫だよ。スーさんには無害だから……だから早く死んで」

 

メディスンは先ほどの弾幕を連射してきた。

すぐに文の力をコピーしなおして、上空へと逃げる。

毒の弾幕は鈴蘭にも当たったが、鈴蘭は何ともないようだ。

 

「ユウキさん、あそこみてください」

 

毒の弾幕が当たった木や地面が変色している。

木はすぐに腐って、崩れ落ちてしまった。

 

「鈴蘭以外には猛毒って事かよ」

 

このままやり合おうとしても、アイツが弾幕撃つ度に周りの被害がとんでもない事になるぞ。

 

「すぐに彼女を止めましょう。スペルカードルールも知らないようですし、彼女の能力は危険です。霊夢さんなら退治、ではなく排除を選択するでしょう。私も手伝います。これはもう取材どころじゃないです」

 

文が葉団扇を構え、攻撃しようとした。

珍しく攻撃的だな。

 

「待て、文。やってもらいたい事がある」

「? 何ですか?」

「ここの周囲を強風で囲って、メディスンの毒が外に漏れないようにしてほしい。彼女は俺が止める、元々彼女の狙いは俺だしな」

「えっ、それは危険です! あの毒は危険すぎますよ!」

 

文の言う通り、あの毒は危険だ。

見た感じメディスンが放っている毒は腐敗と酸性も混じっているみたいだからな。

毒に耐性がある俺でも、紙一重でかわしても致命傷になりそうだ。

 

「大丈夫だ。そのために幻想郷最速のお前の力借りるんだからな」

 

両手にナイフを構え、メディスンに向き直る。

 

「遺言は伝えた? なら死んでもいいでしょ?」

「ここで死ぬつもりはない」

 

文の力で起こした風を身体に覆わせて、即席の防護服とした。

これで毒を防げるとは思っていないが、ないよりはマシだ。

放たれた弾幕を飛んでかわし、上空まで飛び上がりメディスンの目を上空に向けさせる。

 

「あぁ、もう。仕方ありませんね! ユウキさん、死なないでくださいよ!」

 

文が葉団扇を振るうと竜巻が俺とメディスンを覆い、風の壁が出来た。

さっき放たれた弾幕も風の壁に阻まれて霧散している。

これで少なくとも広範囲に毒が広がる事はないが、それでも時間をかけてはいられない。

 

「速攻で、決める!」

 

竜巻で身体を覆い、ナイフにも風を纏わせる。

そして、そのまま地上へと叩き落とすような勢いで加速させていく。

メディスンも黙って見ているわけではなく、弾幕を撃ちまくってきた。

ただ、弾幕ごっこではなく俺を殺そうとする弾幕、そんなのをかわすのは、いや、かわす必要はない。

俺は身体を傾け、さらに風を集める。

竜巻が更に勢いを増し、握ったナイフの刃へと風が収束していく。

 

大紅葉崩風

 

別に弾幕ごっこではないので、叫ばない。

十数個の毒の弾幕を、通り抜け様に風の壁へと吹き飛ばす。

 

「……えっ?」

 

そして、メディスンが驚愕の表情を浮かべた瞬間には、彼女の首を斬り落としていた。

 

「あやや~思ったより早かったですね」

「まだだ、風を止めるな!」

 

斬った手ごたえはあった。

けど、今まで数多く首を斬り落としてきた時に感じた、殺したという感覚が全くなかった。

 

「もう、びっくりするなぁ。これだから人間は。人形を粗末に扱うんだから!」

 

振り向くと、首から上がないメディスンが自分の頭を抱えて立っていた。

頭からも胴体からも血が出ていない。

逆に、こっちのナイフが溶けてしまった。

 

「斬られると同時に毒を浴びせてきたか、甘く見ていたな。」

「いや、何冷静に分析しているんですか?」

 

そういうところですよ。と文がため息交じりに呆れていた。

 

「もう、これでも痛い物は痛いんだから、ね!」

 

メディスンが再度弾幕を撃ってきたが、今度は俺だけを狙ったものじゃなく、回転しながら周囲に向けてばらまくように撃ってきた。

 

「あっ、今度の毒は不味いです!」

 

よく見ると弾幕に籠められた毒は今度は液体状のも混じっているようで風の壁でも勢いを防ぎきれず、壁を貫きそうだ。

 

「これ以上風を強くすると、周りの木ごと吹き飛ばす勢いになってしまいます!」

「あははっ~これなら風でも意味ないでしょ? だから、しねしねシネ!!」

 

そう叫ぶメディスンの全身から青紫の液体が流れ落ちてきた。

あれも猛毒だ。

 

「ん?」

 

よく見ると、毒とは別に斬られた首や胴体から黒い靄のようなものが出ている

いや、よく見ると全身から出てきている。

あれは、なんだ?

 

「ユウキさん、急いでください! 何が起きるか分かりません!」

「分かっている!」

「あははっ、あははははっ!!」

 

メディスンはもう正気を失っていて、全身からただ猛毒をまき散らしている。

文の弾幕を数発撃ってみたが、メディスンに届く前に消えてしまった。

多分、毒に阻まれて消されているのだろう。

どうする? あの感じでは殺す気でスペルカードを撃っても効果がないかもしれない、。

ナイフはもう1本あるが、多分今度は斬る前に溶かされるだろう。

残る手段は、打撃しかないが、今のメディスンに近づくのはかなり危険だ。

でもやるしかない。

全身を風が駆け巡り、右手へと集束していく。

掌の中で風が渦を巻き、圧縮されていく。まるで小さな嵐を握り締めているようだった。

 

「――行くぞ!」

 

幻想風靡。

 

一気に加速し、視界が流れる。

その勢いのまま、右手に収束させた風をメディスンの身体の中心、黒い靄が集まっている部分へ叩き込んだ。

衝撃と同時に、黒い靄が弾け飛ぶ。

 

「これで……どうだ!」

 

身体から溢れていた黒い靄は激しく渦巻き、やがて霧散していく。

メディスンを覆っていた暴走の気配が、ようやく消えていった。

今ならメディスンを視れるはずだ。

 

「よしっ、これでは後は……」

 

幻想支配でメディスンの力をコピーして、周囲に散らばった毒を無力化していく。

正直、これが出来なかったらここら一帯は毒の大地に変わっていただろう。

 

「お疲れさまでした。いやぁ、どうにか出来ましたね」

「あぁ、文もお疲れ様。助かったよ、ここら辺一体立ち入り禁止にしてもらわないと行けなかったな」

「元々無名の丘は立ち入り禁止みたいな所でしたけどね。ところで、彼女はどうしました? やりました?」

「いや、最初はそのつもりだったけど。何か暴走してる原因ありそうだからそっちを排除した」

 

今のメディスンは、さっきまでの禍々しい気配が嘘のように、普通の女の子みたいに眠っているだけだ。

 

「そうですか。では、永遠亭に行きましょうか」

「あぁ、そうだな。メディスンを診てもらった方がいいな」

 

暴走したとはいえ人間を敵視して排除しようとしてるのは、多分彼女の本心だしな。

それに永琳ならメディスンの毒を調べて解毒剤を作れるだろう。

念の為ここら辺一体に散布した方がいいな。

 

「それもあります、が! あなたを診てもらうのが第一でしょう! いくら毒に耐性あって私の力で風で防御したからと言っても、猛毒まき散らす弾幕の中突っ込んだり、メディスンに接近したら毒に侵されてしまいます!」

 

そう言われても、別に毒にかかっている感じはしないんだけどな。

 

「ささっ、捕まってください。最高速でとっとと行きますよ!」

「ちょっ、自分で飛んで……っ!」

 

 

永遠亭

 

文は左にメディスンを抱え、もう片方の手で俺を掴み文字通り風となって一瞬で永遠亭にたどり着いた。

でも、今までにない高速飛行すぎて目が回ってしまった。

流石は幻想郷最速。

 

「永琳先生! 急患です!」

「あら、どうしたのかしらその子は。ボロボロね」

「いえ、先にユウキさんを見てください! 毒にやられています!」

「意識がないわ。大変っ、鈴仙! てゐ!」

「ユウキさん!? しっかりしてください! すぐに手当てします」

 

いや、これ毒にやられたんじゃなくて目を回してるだけだ、と言おうとしたがまだ意識が朦朧としていて言葉が出ない。

結果として、俺は毒に全く侵されていなかった。

 

「それにしても結構な毒があなたに振りかかったのは間違いないわ。それで後遺症もないなんて、あなた本当に人間なのかしら?」

「それ、色々な人に何度も言われて聞き飽きましたよ……」

 

俺はほぼ無傷だったが、メディスンの方は深刻で意識はまだ戻っていない。

永遠亭で入院して、彼女の暴走原因を調べてもらう事になった。

 

メディスンの事も気になるが、昨日から妙な視線を感じるようになった。

最初は、紫かと思ったが気配は感じないし、紅魔館の中でレミリアに見られている時の感覚とも違っているから、気になるんだよな。

 

続く

 




次はまた1年後に…多分ウソです。
あと2、3回でこの章も終わらせられる、予定
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