夕焼けに誓う幼馴染達 作:椿姫
フードを取った男の素顔は俺達が知る人物だった。その正体に驚きを隠せない。
「………え?」
「なんでアンタが……」
「………どういう事だよ!なんでアンタがこんなことしてんだよ……先生!!」
「久しぶりだねぇえっへっへぇ〜雄天くぅん〜?」
俺が先生と呼んだのは俺達が中学時代の時に担任だった教師だ。名前は谷村 楔「たにむら くさび」と言って数学を担当していた人で学校を辞めてからは一切連絡がとれなかったのだ。それが何故今になって俺達の目の前に現れた?ましてや蘭を人質にとるなんて……
「何でだよ谷村先生!!」
巴が声を上げた。
「アンタはそんな事をするような人じゃないだろ!?いつも生徒の事を考えてたじゃねぇか!?……どうしてなんだよ!?」
先生はニヤニヤしながら俺たちを見て、いきなりキレ出し声を荒らげた。いや、もう狂乱と言った方が過言ではない。
「確かに昔はそうだったなぁ!!昔はなぁ!!……でも私はぁ、あの時あの言葉を言われてなければなぁァァ!!こんなことせずにぃ、こんな事ならずに済んだんだよぉぉ!!お前のせいでなぁ、滝河雄天ぁ!!!!!!」
そう言って先生は俺を指差しながら捲し立てた。俺には何のことだか分からなかった。
「ま、待てよ谷村先生!ユウがそんな事する訳ないだろ!?」
巴はフォローするがそれでも尚先生は聞く耳を持たずに怒鳴り散らすように続けた。
「宇田川の意見なんか聞いてねぇだろうが!!私は滝河雄天に用があるんだよぉ!!うるせぇと美竹ぶっ殺したあとテメーも消すぞ!?あぁん!?」
反論しようとする巴を制止し俺が前に出る。
「巴、どうやら先生は俺に対して怨みがあるみたいだ。お前は……」
小声で巴に呟く。巴は少々驚いてたがすぐに理解した。
「……いいのか?ユウ?」
「あぁ」
「分かった……けど無茶はするなよ?」
そう言って巴は書物庫から出た。その行動に蘭はかなり驚き気味だったのか思わず声を漏らしていた。
「ちょ、巴っ!!」
「大丈夫だ蘭。今巴が鮫島先輩に電話しに行った。直に警察も来る!そしてそれまでにお前を助けて先生を警察に突き出すからよ!!」
俺がそう言い先生に問いかける。
「なぁ先生、何で怨んでるか全部話してくれ……話してくれないと俺も納得出来ねぇよ…」
俺がそう言うと先生は話す気になったのか饒舌に喋り出した。けども蘭に突きつけた銃口はそのままだったため蘭も黙って聞くしかなかったようだ。
「……あれはテメーらが中1の後半の時の俺の授業の時だよ…」
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あれは普通に私が数学の授業をしていた時の滝河雄天の発言が事の始まりだった。
「先生、そこの問題なんですけどx=8じゃなくて6ですよ?…」
「……全く、これで何度目なんですか滝河くん?そんなに先生の授業に文句があるんですか?」
「違いますよ、僕はただ…」
「じゃああなたが代わりに授業してください!先生はあなたの席に座ります!」
少し苛立った私はそう言って滝河くんに押し付けた。すると彼は私よりも上手く説明してみんなを納得させてしまったのだった。私は顔が青ざめていくのが自分でも分かってしまうほどだった。
「滝河スゲー!先生よりもわかりやすいよ!」
「お前は教えるのが得意なフレンズなんだな!今度勉強教えてくれよ〜」
みんな滝河雄天を評価して尊敬の目で見ていた。それに比べて私には
「先生立場ねーぞー!」
「怒らなきゃ良かったのに……」
「……ダサっ」
と、声を荒らげて茶化したりクスクスと笑ったりしていた。授業が終わってからはダサっと言った生徒がいて職員室に呼び出してさっきの憂さ晴らしをしようとした。
「美竹さん、あなたさっき私に対してダサいと言いましたよね?」
美竹は黙ったまんまだった。ムカついた私は思わず美竹を平手打ちしてしまった。そしてそれを偶然居合わせた校長に見られてしまい、私は教師を辞めされられた。その事が家族に知られた際には私は妻と子供にゴミを見るような目で見られた後離婚されられ、更には美竹の娘を叩いたということで父親までにも知られ教員免許の剥奪までされた。そして家に独りでいる時に私は怒り狂った。
「……滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天滝河雄天ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
怒り任せに次々家の物を破壊する。
「テメーがいなけりゃ私はぁ!!うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぶっ殺してやるぅ!!テメーだけは私の手でぇ!!消し去ってやるぅうぁぁぁあぁあぁあぁぁァァァァァァァァ!!!!!!殺してやる!殺してやる!!絶対許さねぇぇ!!」
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「…………こうして私は滝河雄天殺害計画を考えついた。同時に美竹蘭も、美竹仙寿も殺ってしまおうとも考えた。そして今に至るんだよぉ!!分かったかグズ共が!?」
………長ったるい話を聞き終えて俺は怒りを覚えた。
「……黙れ」
「あ?なんつった?」
「黙れっつったんだよこのクズが」
こんな奴のくだらない計画の為に蘭が、蘭の家族が傷つけられたことと、俺に対する恨みのくだらなさが混ざりあって今まで以上にキレている。そんな中ドタドタと走ってくる音がした。
「ユウマさん!!大丈夫ですか!?」
木刀片手に息を切らしながら走ってきたのは若宮イヴだった。
「若宮、来たってことはアイツを倒したのか?」
「はい!すごく強い御方でした!!」
「それでソイツはどうした?」
「あの人は自ら警察に自首に行くといって去っていきました」
「そうか…じゃあこっちも終わらせないとな!若宮、木刀借りるぞ!」
そう言って俺は若宮から木刀を受け取り向かっていく。
「バカが!正面から気やがったな!撃ち殺してやるよ!!」
銃口を蘭から俺に向けて放った。俺は何とか紙一重でそれを避けて木刀を振り上げて銃を払い除ける。そして突きつける。
「アンタはもう終わりだ。大人しく罪を償ってくれ…それとも…まだ痛い目みたいか?」
俺がそう言うと先生はズボンからあらかじめ隠しておいたのか折りたたみ式のナイフを取り出し蘭に突きつけた。蘭は驚いて飛び上がりそうになってたがすぐに拘束されてしまう。
「ら、蘭!!」
「ランさん!」
「う、動くんじゃねぇぞテメェら!!少しでも動いたらコイツの動脈切るからな!?」
そう言ってナイフを近づける。
「テメェ…どこまでクズなんだよ!?……もう許さねぇ!!」
「ゆ、ユウマさん!」
俺が木刀を振り上げて攻撃しようとすると若宮に止められてスマホを見せられる。そこにはひまりから「準備完了!!巴と蘭の親とも合流出来たよ!」との事だ。……じゃあそろそろアレの時間だな。
「先生、申し訳ないですけど終わりです…」
「ハァっ!?テメェ何言っt」
その声を遮るようにパトカーのサイレン音が聞こえた。
「はあぁっ!!こんなに早く警察かよ!?あ、有り得ねえ!!………クソがっ!!」
先生は蘭を連れたまま、外まですごい勢いで向かっていった。しかしこれは俺達の作戦のうちだ。だって……警察なんて来てないんだから。サイレン音は携帯端末から流しているサイレン音で書物庫の外にはさっき出ていった巴と、罠を仕掛けてもらっていたひまり、つぐみ、モカの3人がいて書物庫近くで流してもらうように巴に伝えたからな。
そして先生が出ていったタイミングを見計らいひまり達に一斉送信する。
『犯人が蘭を連れて表門に行くからドアを開けた瞬間に作ったトラップをぶつけてくれ。表門までは距離はないからすぐ行けるはずだ』
後はそれで動きが鈍ったところを鮫島先輩がガッチリと捕まえる。そして蘭を犯人と引き離す。
「若宮、俺達も後を追うぞ!!」
「ハイ!」
俺達は書物庫から出て蘭達を追う。先生はやはり裏口の存在を知らないのか真っ直ぐ玄関の方に向かっていきそのまま出ていった。そして真っ直ぐ門の方に向かっていく。オレはそれを見て声を出す。
「今だぁぁ!」
それと同時にひまりたちが門の前に現れ粘着質のモノを先端につけた角材を先生に突きつけて押し倒す。それと同時に蘭が離れる。俺はその瞬間を逃さずにダッシュして蘭が地面にぶつかる前に抱き抱える。
「大丈夫か!!蘭!!」
抱き抱えた後、先生が落としたナイフをとって腕を縛っていたロープを切る。その瞬間蘭は俺に抱きつき泣きじゃくる。それと同時にひまりたちも駆け寄って来る。
「ゆ、雄天ぁ!……あ、あだじっ…ご、怖がっだよぉぉ!ありがどゔぅ…みんなぁ……ありがどゔぅ…うわあああん!!」
「蘭ちゃんも雄天くんも無事で良かったよ…うぅ」
「マー君…蘭…エグッ……よかっだぁ…」
「良くやったなユウ…」
「ゆうまぁぁぁ蘭んんんんん……無事で良がっだよぉぉぉ……」
「ちょっとひまり!?俺のハチマキで涙と鼻水拭くな!?ってうわっ!?めっちゃベトベトするし!!」
急いでハチマキをほどくともうそれはハチマキと言えるかわからないほど涙と鼻水でベトベトのびちょびちょだった。僕は泣いてるひまりの頭を蘭に抱きつかれながら撫でる。
「……心配してくれてありがとひまり……蘭も無事で良かった」
その後は警察を呼んで先生と、鮫島先輩が捕まえた大柄の人が連行されていくのを見送った。仙寿さんと蘭のお母さんも蘭の元に来てしっかりと抱きしめていた。仙寿さんからはお礼がしたいとの事だったが僕は
「気持ちだけでいいですし、何よりも蘭や皆さんが無事だった事が何よりものお礼ですよ」
と言って家に帰った。家に着いてからは今まで溜めてた疲れが一気に来た為、すぐに風呂に入った。上がってからはすぐに部屋に行って寝ることにしたのだが…当然と言わんばかりにひまりが僕のベッドに座っていた。
「……どしたのひまり?」
僕が不自然そうに聞くとひまりは黙って脚を軽く開いて「ここに座って」と言った。意味がよくわからないままそこに座るとひまりはいきなり僕の事を抱きしめた。そして涙声になりながら僕の頭を撫でる。
「……よがっだぁ…ゆうまも蘭も…大切な人だから…死んじゃやだよぉ…どこにも行かないでぇ…」
僕の頭を撫でるひまりの手を僕は優しく包む。
「どこにも行かないし死なないよ…僕も蘭も。それにひまりを残して僕だけ死ぬなんて事は絶対ないからさ……」
僕もひまりもこの後すぐに同じベッドで眠りに入った。翌日学校では全校集会が開かれこの事件の事を理事長達に賞賛され全校集会で警察から感謝状も貰うこととなった。
ようやく物語が後半に差し掛かりました。
ここまで見てくれた皆さんに感謝です。
次回からは第5章に入ります。
質問や感想等はいつでも受け付けます!気軽に思ったことを書いてくれるだけでも僕としては嬉しいです!
追記
今までひまりの一人称が、「あたし」だったんですがゲームに合わせて「私」にしようと思います。
そのため今までのストーリーのひまりの一人称を変更します。今更ながら申し訳ないです。