魅力的過ぎるとは言え、こうも毎回人が居る所に行くとあんな馬鹿共に引っかかってしまうのは考えようかも知れない。
でも仕方ない事でもある。だって真耶さんは可愛いから。
あんな目に遭ったというのに、気丈に振る舞える姿は流石だと感心させられる。そもそも俺がしっかりしていればこんな目に遭わせる事もなかったのだと後悔の念が押し寄せて仕方ない。でも、それを少しでも顔に出すと真耶さんはきっと見抜いて心配してしまう。だからそれについては考えないようにした。
パラソルの下に入った真耶さん達に、精神を落ち着けるためにも冷たい飲み物を渡す。
「どうぞ、麦茶ですけど」
「あ、ありがとうございます!」
「兄さん、ありがとう!」
「ふん! まぁ貰うがな」
3人は渡された麦茶のペットボトルを美味しそうに飲み、一息つく。
その様子にやっぱり緊張していたことが窺えた。
そのまま喉を潤した真耶さんとマドカは改めて俺に謝ってきた。
「すみません、旦那様……さっきはあんなことになってしまって……」
「兄さん、ごめんなさい。全然役に立てなかった……」
しゅんとした二人に俺は笑いかけながら優しく慰める。
「別に大丈夫ですよ。あの程度、どうってことないですから。逆に怖い思いをさせてしまって申し訳無いです。それにマドカも気にしなくていいよ。寧ろ良く手を出さなかったなって褒めたいくらいだ」
「旦那様……」
「兄さん!」
そう言われ二人の顔がパァっと晴れる。せっかく遊びに来ているのだから、暗い顔はよくない。
それに忘れがちだが、マドカは元亡国機業の戦闘員。その戦闘力は今も健在で、学園でも好成績を叩き出している。そんなマドカに一般人の相手をさせては、相手が可哀想だ。
それを考えても、俺がああしたのが正解だと思う。何だか今のマドカは幼すぎて力加減とかが出来そうにない感じだし。
二人はそれで安心したようで、気を落ち着かせてる。
そして改めて俺に向き合った。
「兄さん、せっかくの水着、見てくれないか」
「旦那様、この水着、似合ってますか……」
顔を恥ずかしそうに赤く染めて俺を上目使いで見つめながら窺う真耶さんに自慢するかのように見せつけるマドカ。
さっきのことであまり見ていなかったけど、改めて見ると二人とも良く似合っている。
マドカは青色のビキニを着ていた。
露出が多いが艶っぽさよりも健康そうな魅力に溢れていて、マドカにお似合いだ。
見ていて少し思った事だが、胸がぷるんと揺れたことに思った以上に胸があるらしい。その事を思った俺にマドカは気付いたのか、少し胸を持ち上げて嬉しそうに話し始めた。
「えへへ~、結構成長してシャルロットと同じくらいになったんだ~。もう鈴と同じとは言わせないぞ~!」
自慢げにそう語るマドカはどこか嬉しそうだ。
「マドカちゃんもちゃんと成長してるんですね~」
そんなマドカを見て真耶さんも喜ぶ。義妹の成長を喜んでいるようだ。
俺もマドカが成長しているようで嬉しく思う。普段がかなり幼いから尚のこと。
そして今度は真耶に目を向ける。
何と真耶さんが着ていたのは真っ赤なビキニであった。
その派手な色に目を奪われてしまう。
露出の多いビキニで肌が良く栄え、それでいて派手な色がさらに艶やかさを引き立てる。大きな胸は今にも弾けんばかりにその存在を主張しており、真耶さんの可愛らしい顔に反して妖艶な色香を醸し出していた。
その魅力的な姿に見入ってしまい、赤面しながら真耶さんに感想を言う。
「その……真耶さんの水着……とても似合ってます」
本当ならもっとさらりと言えた方が格好いいのだろうが、そんな真似は俺に出来そうにない。そんな俺の反応を見て真耶さんも恥じらい顔を真っ赤にしたまま微笑んだ。
「その……嬉しいです……」
お互いに恥じらってしまうこの空間にマドカは何やら興味深そうな目で俺達を見ていたが、それに耐えきれなくなったのか千冬姉が割って入った。
「こら、お前等はここでもやらかす気か。そんな些細なことで起こされるこっちの身にもなってみろ。缶コーヒーが何缶あっても足りなくなる」
「っ!?」
「ぁ、ぁぅ……」
千冬姉の言葉に俺と真耶さんははっとしてお互い気恥ずかしくなってしまう。
だって仕方ないじゃないか。真耶さんが可愛くて綺麗でたまらないんだから。
そう言いながら千冬姉はこほんっと軽く咳払いして俺に目を向けてきた。
「私の水着はどうだ?」
そう聞いてきた千冬姉が着ていたのは紫色のビキニだ。
持ち前のスタイルの良さが全面に出ていて、ぱっと見ではモデルと変わらないように見えるだろう。未だに周りからの視線を多く感じるくらい綺麗だとは思う。まぁ、真耶さんには適わないが。
「似合ってると思うよ。モデルみたいだ」
「そうか、ならいい。流石に似合わないと言われるのは嫌だからな」
3人の水着姿に周りの男女から多くの視線を感じる。
女性からは羨望の眼差しを、男性からは欲情の眼差しを。
だが、ここで男性が声をかけてこないのはさっき俺が暴れたのを見たからだろう。誰もああはなりたくないらしい。
そう思えば多少はあのゴミ共に感謝だ。出なければもっとたくさんの人が声をかけてきたかもしれない。毎回それで追い返していては真耶さん達が楽しめないだろうから。
そして千冬姉仕切りの元、各自で動くことにした。
マドカは千冬姉と一緒に行動し、俺と真耶さん波打ち際を一緒にゆっくりと歩く。直ぐに泳ぐのもどうかと思い、二人でゆっくりと過ごすことにした。
「キャッ!? 水が冷たくて気持ちいいですね」
「そうですね」
二人で肩を並べながら歩いていると、波に触れた足の感触に驚きつつも楽しそうに微笑む真耶さん。その無邪気な可愛らしさに俺も微笑んでしまう。
すると何を考えたのか、真耶さんが俺の前を少し早足で行くと、振り返り無邪気な笑顔を俺に向けて上半身を下げて海水を掬った。
「えいっ!」
そして俺に向けられて飛ばされる海水。それを避けるのはたやすいことだが、何がしたいのか分かった俺はそれを甘んじて受け入れる。素肌にかかった海水の冷たさに少し驚くも気持ちよさに笑顔になった。
そして無邪気に笑いやった~と楽しそうにしている真耶さんに向かって俺も同じように海水を掬ってかける。
「やりましたね~!」
「キャ~! 旦那様が怒りました~」
そして始まる二人の海水の掛け合い。やっていることは幼稚なのに、何故か楽しくて心躍る。それはきっと真耶さんが無邪気に楽しんでくれるからだろう。
その海水の掛け合いは真耶さんの息が切れるまで続き、止んだ頃には真耶さんの顔は真っ赤になっていた。
「はぁ、はぁ……何だか楽しくてつい張り切っちゃいました」
本当に楽しそうに笑う真耶さん。
その姿が夏の日差しを浴びてより輝いて見える。
それがより可愛く見えて、俺の胸は高鳴った。
「それじゃ今度はどうしましょうか!」
上目使いで俺を見つめてくる真耶さんにドキドキしつつ、俺は今度は一緒に泳ぐことを提案した。それを心良く聞き入れてくれた真耶さんと一緒に泳ぎ始めたのだが、そこで少しハプニングが発生し…………。
何と真耶さんのビキニの上が波ではずれ掠われそうになってしまったのだ。
前もこんなことがあったと思うからか、俺は即座に動いて流されかけた水着を捕まえた。それにより最悪な事態は避けたのだが、上に何も付けていない真耶さんは恥ずかしさのあまり俺の背に隠れる。
それで皆から見えないように水着を着直すことになったのだが、何故か真耶さんは俺に抱きついてきた。
「ま、真耶さんっ!? 一体何を!」
背中に感じる『直』の感触に頭が一気に沸騰しかける。
真耶さんはそんな俺が面白かったのか、更に抱きしめる腕に力を込めてくっつく。
「うふふふふ……だった旦那様にもっとドキドキして貰いたいですから。ここ最近、そんな風にドキドキしてもらってませんから。ね」
真耶さんは顔を真っ赤にしながら瞳を潤ませ、まるで悪戯をする子供のようにそう言ってきた。その破壊力は凄まじく、あまりの可愛らしさに俺はドキドキが止まらない。
そのまま俺は海水が蒸発するんじゃないかと思うくらい身体中が熱を持った気がして、それは真耶さんが水着を着け直すまで続いた。
「う~~~~~ん、どこだぁ~~~~~!」
真耶さんと泳ぎ終わった後、今度は皆でスイカ割りを行うことになった。
最初は真耶さんがやったのだが、割れなかった。その際、目隠しをしてふらつきながらスイカを探す真耶さんはちょっと危なっかしいかったけど、それが可愛く見えて笑ってしまった。その笑い声で俺が笑っていることを言い当てられたのは驚いたけど。
そして今はマドカの番。
マドカはふらつきつつ必死にスイカを探し始める。
その様子を見ている真耶さんはマドカの危うい足取りにハラハラしているようだ。
「あぁ、マドカちゃん、危ないです! はぁ、見ててハラハラしちゃいますねぇ」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。大丈夫ですから」
落ち着かない様子の真耶さんを落ち着けつつ、内心では慌てる真耶さんが可愛くてついつい見ていたくなったのは言うまでもない。
そんな思いを感じながら一緒にマドカを応援していると……。
「えぇいっ!!」
マドカは見事にスイカを割った。
それを見た真耶さんはとても喜び、テンション高めで俺に抱きついてきた。
「旦那様、マドカちゃんやりましたよ! 凄い凄い!」
「わぷ! 真耶さん、落ち着いて」
興奮して気付かないようだが、真耶さんは俺の頭を胸に思いっきり抱きしめていた。その所為で俺の顔は真耶さんの大きな胸に埋もれる。その感触に身体中から火が出るんじゃないかと思った。
「ま、真耶さん、苦しい……」
「え?…………キャァッ!? ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか」
「だ、大丈夫……です(ドキドキして大丈夫じゃないです!)」
その後、平常にもどった途端に顔を真っ赤にして恥じらいながら謝ってきた真耶さんは可愛かったなぁ。
そして皆で割ったスイカを食べる。
「兄さん、甘くて美味しいな!」
マドカはハシャぎながらスイカをぱくつく。その様子はまるで子犬のようで可愛らしく、見ていた者全てを朗らかな気持ちにさせた。
「スイカは美味いが、タネがどうにもな……」
千冬姉はどうにも面倒臭そうに食べていた。何でもタネを取るのが煩わしいらしい。
「う~ん、やっぱり夏らしくていいですね~。甘いです」
真耶さんは満面の笑みで美味しそうにスイカを食べていた。
やっぱり笑ってる真耶さんは素敵だなぁ。
そう思って見ていると、何やら少し困った顔をし始めた。
「やぁ、スイカの果汁が胸に零れちゃいました。べたべたしてきちゃいます」
どうやら食べていたスイカの汁が胸に垂れてしまったようだ。
その所為で真耶さんの胸の谷間は妙にテカってしまっていた。
それを困り顔で拭く真耶さんだが、その様子がちょっとエッチに見えてしまい、俺は固唾を飲んでしまう。
そのままドキドキしたままスイカを食べ、皆満足したようだが俺はドキドキしすぎて味を感じる事が出来なかった。
こうして午前中はドキドキしつつも楽しく過ごした。
何だか童心に帰ったようで、真耶さんと一緒にやることが何でも楽しくて仕方ない。
そんな幸せを噛み締めていた。
午後もこんな風に幸せなんだろうなぁ。
そう思っていたのだが、俺はこの場で最も聞きたく無い声を聞いてしまった。
それは結構遠くだというのに、よく聞こえた。
「御堂、一緒にかき氷を食べましょう。勿論、一つのを二人でね」
「何言ってるんだ、このクモ女! 湊斗さん、一緒に泳ぎませんか」
「あらあら、何を言っているのでしょうか、貴方たちは。景明様にはわたくしにサンオイルを塗って貰う約束がありますのよ」
「まったくしてもいない約束をさも当然の如く言うお嬢様、流石でございます」
「馬鹿3人が何言ってやがる! お兄さんはあてと一緒にしっぽりと寝るんだよ、このボケカス」
「俺は……一体どうすればよいのだ……」
「景明、私はあの焼きもろこしが食べたい!」
その声を捕らえた俺は、この後どうなってしまうのか不安で仕方なかった。