装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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これでこのシリーズは一応最後です。


ハロウィンにイタズラを

 十月もすっかり終わりを迎える三十一日。

IS学園ではあるイベントが行われることとなった。

IS学園は世界各国から生徒が数多く来る。そのためか、様々な行事を知ることになるのだが、皆のストレス解消のためにもそういった行事を企画し行うのも生徒会の役目というもの。

去年はばたばたしていてそれどころでは無かったが、今年はそれなりに余裕ががるということで、急遽会長がとある行事を行うと言い出してきた。その行事の名は……。

 

『ハロウィン』

 

まぁ、海外の古くからある秋の収穫祭なのだが、最近は専ら仮装パーティーとなっている。

その中でも、イースターエッグと呼ばれる絵の具でペイントを施した玉子を学園内に数多く隠し、それを仮装をしたまま探すというゲームを学園全体ですることになった。玉子の中には豪華賞品という名の食券などが入っている。

それを探すためには隠す事をしなければならないということで、当然企画した生徒会が隠すことに。

生徒の数を考えてか、結構な数の玉子を塗装し隠すのはある意味骨が折れた。

それに急遽発注した南瓜を皆でジャック・オー・ランタンにしたのは楽しかったけど、やっぱり苦労させられた。

そして仮装の衣装は購買で買える物を用意したり、各自自由に用意して貰ったりと様々だ。

御蔭でアリーナに集まった生徒達の恰好も実に色々とある。

良くある魔女や小岩さん、ドラキュラにお化け、変わり種で猫娘といったものや、大胆な露出が目を惹くサキュバスなど、あっという間にアリーナが怪物だらけになっていた。

生徒会の面々も仮装するとこになり、会長は妖しい雰囲気を醸し出すサキュバスに、更識さんはフリル多くあしらった黒く可愛らしい魔女に、何故か布仏さんは犬のような着ぐるみを着て『狼男』に扮していた。男では無いが。

俺も仮装することになったのだが………。

 

「何故俺だけこうなんだ?」

『知らぬ、御堂。寧ろ我はこの姿を仮装と称されてることが嘆かわしい』

 

俺は普通に正宗を装甲していた。

会長曰く、

 

「これもある意味仮装よね。歩く鎧武者なんて怖い以外の何者でもないもの」

 

だそうだ。

正宗は俺の刀なのだから仮装ではないというのに、あの人は……。

だが、いつまでもへこたれているわけにいかず俺達は仕事を始めることに。

出来れば………真耶さんの仮装した姿も見たかったなぁ……。(毎回見ているようだが突っ込んではいけない)

 そして始まったハロウィン。

生徒達は一斉に玉子を探すべく、学園の彼方此方へと散らばっていく。

その光景たるや、ある意味凄い物があったりする。

実はそれ以外にも用意してあるものがあり、教員にトリック・オア・トリートと言えばお菓子が貰えるようにしてある。

そのために教員の方々に大漁のお菓子を渡すことになったのだが、皆苦笑していた。

そのお菓子にも目がけてか、職員室に突入していく可愛らしいお化け達。

あまりにも多い物だから、まるで一種のデモにも見えなくもない。

そんな光景を目にしていると、頑張った甲斐があったと言うべきかなんというか……苦笑しか出てこなくなる。

でも、皆が喜んでくれるのならよかったとそう思えた。

出来れば、真耶さんと一緒に参加したかったなぁ……。

 

 

 

 そんな風に怒濤のハロウィンも終わり、今は自室のベットで横になっている。

流石に急遽決まって大急ぎで準備しただけに、色々と疲れた。

そしてそんな時に限って人恋しくなってしまうのは、俺がもう色々と駄目になっているということなんだろうか? 

はぁ……真耶さんに会いたい……。

別に仕事の邪魔をするわけではないが、今日のイベントは教員の方々にも協力してもらったこともあって、忙しくなってしまったのかもしれない。

そう思うと申し訳無い気持ちで一杯になる。

その罪悪感で胸を痛めつつ、ベットで寝返りを打つ。

改めて今日のイベントを振り返ると、本当に皆可愛らしいお化けになっていた。

だからなのか、真耶さんだったらどんな姿になっていたのか想像してしまう。

スタイルが良いからやっぱり会長みたいにサキュバスだろうか。それを想像した途端、脳裏にある光景が浮かんできた。

露出が多く妖艶な雰囲気を醸しだし、蠱惑的な笑みで俺を見つめる真耶さん。

そんな真耶さんに押し倒されている俺。

そしてゆっくりと、でもどこかイタズラめいた声で真耶さんが俺に問いかける。

 

「トリック・オア・トリート………」

 

そのまま俺の顔に迫る真耶さんの顔。そして………。

駄目だ、鼻腔が熱くなってきた。これは何というか、刺激が強すぎる。

最近いきすぎるきらいがあるというのに、これ以上暴走しては節度も何もあったものではない。

俺はまだ学生なのだから、結婚するまではそういうことはしてはいけないんだ。

別の姿を思い浮かべようと頭を切り換えよう。

すると何故か思い浮かんだのは、布仏さんが仮装していた狼男の姿だった。

ただし此方は着ぐるみではなく、少しとがった犬耳に肉球手袋をつけ、もこもことしたショートパンツに犬の尻尾。身体のラインが出て艶っぽい薄い茶色の衣装を纏っている。

 

「と、とりっく・おあ・とりーと……お菓子をくれないと……イタズラしちゃいますよ?」

 

恥じらい真っ赤になった顔で上目使いに俺を見つめながらそう言う真耶さん。

何というか……まったく怖くなくて寧ろ可愛すぎる。狼というよりは子犬だ。

寧ろ喜んでお菓子をあげたくなってしまう。

うん、少し落ち着いた。いや、落ち着いたと言うよりは和んだ。これは癒されるなぁ………うん。

そんな事を考えていたら、突然部屋の扉がノックされた。

それまで考えていた事も俺は驚いてしまう。別に卑しいことなんて………す、少しだけは考えたけど。

取りあえず待たせては失礼だと思い部屋の扉を開けようとドアノブに手をかけた。

だが、何故か動かない。

まるで何かで押さえつけられているかのように扉が開かないのだ。

ドアが壊れたか? いや、そんな感触はない。

だから少し調べようと屈むと、机に置いていた携帯が突然鳴り始めた。

それにまた驚きつつ、携帯を取ってモニターを見る。するとそこに映っていた名は真耶さんだった。

それを見た途端に喜びで胸が一杯になるのを感じながら俺は即座に出た。

 

「もしもし、真耶さん。どうかしましたか?」

『あ、はい……そ、その……お願いしたいことがありまして……』

 

スピーカー越しとは言え、声があまり良く聞こえない。

何かあったのか心配になり、少し声に力が入ってしまう。

 

「お願い……ですか? 別にそれはいいですけど、何かありましたか? 声が小さいというか元気がないというか…」

『い、いえ、大丈夫です! そ、そんな心配して貰うほど大げさなことではありませんし……。そ、それでお願いなんですけど……』

 

そこで一旦言葉を切る真耶さん。その緊張した様子がスピーカー越しでも伝わって来た。そのため俺も少しばかり緊張してしまう。

そして彼女は意を決したようで、そのお願いを口にした。

 

『その……今から私がいいって言うまで目を瞑っていただけませんか』

「目をですか? 別にそれはいいですけど……」

 

俺は言われた通り、通話を切った後に目を瞑る。

カギは先程見た時に念の為開けておいた。

真っ暗になる視界。だが、それ故に気配を感じようと感覚が鋭敏かされていく。

そして耳が扉を開く音を捕らえた。

中に入ってくるのは一人。抜き足差し足といった感じに俺にばれないよう部屋に入って来るが、寧ろバレバレだ。気配が全然絶ててない。

もう誰だということもない。気配だけで分かる。

真耶さんだ。

だからこそ、何となく胸がドキドキとしてきた。

俺にお願いしてまで内緒でばれないように部屋に入ってきた。一体どんな事をしてくれるのか楽しみになってくる。

そして真耶さんは俺に優しく声をかけた。

 

「そ、その……もう目を開けても……いいですよ」

 

そして俺は声がした方を向きながら目を開けると、そこには………。

 

魔女の衣装を着た真耶さんが立っていた。

 

胸の谷間を強調するかのような真っ黒く身体にぴったりと着いた上の服。レザー生地で光沢が輝き、少しばかりボンテージのようでエロく見える。

そして下は同じく真っ黒いミニスカートに蜘蛛の巣をイメージしたハイニーソックス。頭には魔女を連想させる黒く唾の広いとんがり帽子をかぶり、恥ずかしさから顔を真っ赤に赤らめていた。

その姿に目を奪われる。

それまで想像していたサキュバス姿よりも妖艶で、狼男よりも可愛らしい。

そんな真耶さんの姿に俺は見惚れてしまっていた。

真耶さんはそれが分かったのかさらに顔を真っ赤にする。だが、何処か嬉しそうに笑っていた。

そして俺を上目使いに潤んだ瞳で見つめ、艶やかな唇が期待以上の言葉を俺に問いかけた。

 

「と、トリック・オア・トリート! お、お菓子をくれないとイタズラしちゃいます」

 

その可愛らしさにクラクラきた。

やっぱり想像以上に可愛い。あんなに恥ずかしそうにしてるのに一生懸命俺に問いかける姿は一生記録しても良いくらい可愛い。

その可愛さに胸を打たれていたこともあって返答できない俺。

事実、この部屋にお菓子は置いていないのであげられない。

というか、そのことを真耶さんは知っているはずだ。つまりこの質問はイタズラすることが前提だということ。そう思うと笑みが浮かんでしまう。可愛いことをする人だなぁ。

すると真耶さんは手に持っていたバスケットを開けると中から何かを取り出した。

それは……パンプキンパイだった。

確かジャック・オー・ランタンを作ったときに出た奴を真耶さんは貰ってたんだっけ? それをこんなお菓子にしてしまうなんて……家庭的で可愛いなぁ……。

そう思ってるのも束の間、真耶さんは予想外の行動に出た。

何とそれを……自分の胸の谷間に挟み込んだのだ。

その少し卑猥な光景に赤面してしまう俺。そんな俺をからかってなのか、真耶さんは潤んだ、欲情が少し籠もった瞳で俺を見つめてきた。

 

「お、お菓子をくれなかったので……イタズラしちゃいます。さぁ、どうぞ旦那様。手を使っちゃ駄目…ですからね……」

 

大きな胸を、その間に潰れない程度の力で挟まれたパンプキンパイを差し出す真耶さん。

 

 

 その言葉に俺の理性は殆ど崩壊したことはいうまでもなく、最後の一線を超える以外、暴走してしまった。

イタズラしたのは真耶さんだが、結果としてはされる側に。

だって仕方ないだろう。

 

俺だけの魔女はこんなにも可愛らしくて、俺を魅了する魔法をかけ続けるのだから。

 

 

 

 


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