幻想郷に住まう(潜む?)一人の神と素敵な楽園の巫女様のなんでもない普通の会話。
前作、「狩るモノ」の主人公が神社を去ったあとのお話です。



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謎に包まれた月影の色々が知れます。


神と巫女が話すだけ

「巫女様、ありがとうございました!」

 

「はいはい、どういたしまして。」

 

「じゃ、失礼します。」

 

私に相談に来た男は、元気に階段を降りて帰っていった。

色々と戸惑いもあったようだけど、彼が悪いものでは無いと知って安心したようね。

とりあえずは良かった。

さてと....

 

「まだいるのかしら?"駆除神様(くじょがみさま)?"」

 

私は、さっき一瞬だけあの男の背後に現れて姿を消した彼を呼んでみた。

 

駆除神様。

 

それはこの幻想郷の人々から呼ばれている"彼"の異名。

理由として、まず今回の悪党達の様な奴等をまるで虫を殺すかのようにバッサバッサといとも簡単に斬り殺して殲滅しちゃう事から。

彼にギリギリの所で助けてもらった者も少なくないわ。

でも、実際"彼"をまともに見たものは一般人の中では、まず居ない。

だから、"彼"は幻想郷では伝説のような扱いになっちゃってるのよね。

今回のあの男は本当に貴重な経験をしてるわね。

私も実際、彼の姿を見たのは今日がまだ2回目なのだけど。

そんな彼と久々に話がしたくて、声をかけちゃった。

 

 

 

 

....。

 

 

 

 

返事が無いわね。

もう居なくなっちゃったの?

 

「....呼んだか?」

 

「!?」

 

ビックリしたぁ!!

何よ、居ないと思ったら後ろから突然現れるなんて。

全く心臓に悪いわ....。

 

「あの....返事くらいしてくれるかしら....?」

 

「フフッ、すまないな。」

 

そういって彼は微笑んだ。

悪びれる様子も無いあたり呆れるけれど、これは神としての余裕なのかしら?

 

「まぁ、良いわ。

せっかくまた会えのだから、ちょっとお話しない?」

 

「あぁ。」

 

そういって私たちは縁側へ腰を下ろした。

さっき振り返った時に改めて思ったけど、彼はデカイ。

巨漢とかって言うわけではなく、単純に背が高い。

しかも体型が細身だから余計に高く見えちゃう訳ね。

(決してガリガリに痩せてる訳じゃないから勘違いはしないでね。)

目測でも2mは超えてるのは確実ってくらいじゃないかしら?

そして何より、立ってお話をすると必然的に私が彼を見上げる形になっちゃうから、ものすごく首が痛いのよ....。

 

「久々だな、巫女殿。」

 

「ええ、そうね。」

 

「何故、我が居ると分かった?」

 

「いや、分からなかったわよ。

でも、もしかしたらと思って当てずっぽうに呼んでみたのよ。」

 

「そうか。」

 

「ええ。」

 

何故だか分からないけれど、彼と会うのはまだ2回目なのに、気兼ねなく話が出来てしまう。

最初に晩酌して色々とお互いに語り合ったのが良かったのかしら?

 

「ねぇ、なんであの男には姿を見せたの?

あなたは....実力を認めた者にしか姿見せないのでしょう?」

 

そう、幻想郷で彼を見たものが殆ど居ないのはこれも一つの理由。

彼は自分の目で見て実力を認めた者には、敵味方関係なく姿を見せるし、戦うときもそのままで堂々と戦う。

けれど、実力を認めなかったものに対しては、決して姿を現さない。

敵に向かうときも姿を消したままだから、相手は訳も分からないうちに死んでいくっていう訳ね。

1歩間違えたら、凶悪な魔物として認識されかねないけど、幻想郷の賢者である八雲紫と面識があるのと、何よりも必殺仕○人みたいな感じで襲われた人達を助けてるから、そういう風に見られなかったのかもだけど。

 

「善良な若者に対しての...."さーびす"というものだ。」

 

「....ぷっ!」

 

「ん?」

 

あまりにも思った通りの答えだったから、ちょっと可笑しくて笑ってしまった。

彼は何気にお茶目さんなのかもしれないわね。

 

....見た目によらず....。

 

「いえ、なんでもないわ、気にしないでちょうだい。」

 

「そうか。」

 

「ええ。」

 

「....。」

 

「....。」

 

「....。」

 

「....。」

 

しばしの無言。

ふと、隣をみてみると彼風になびく銀色の長い髪を気にすることもなく、どこか遠くを見つめていた。

一体何を考えているのかしら?

仮面越しだから良く分からないけれど、口元が僅かに微笑んでいるから少なくとも退屈はしていないはず。

....してないわよね??

 

「ねぇ、お茶あるけど飲む?」

 

「あぁ、頂く。」

 

「ちょっと待っててね。」

 

おもむろに、私は台所へ駆け込みお茶を用意する。

そして、彼の元へと戻っていった。

相変わらず遠くを見つめてじっと座っている。

本当に静かね....。

 

「はい、どうぞ。」

 

「ん、すまない。」

 

そういうなり、彼は一口お茶を飲んだ。

彼は"戦うとき"以外は一つ一つの所作が静かでゆったりしていて....なんだかとても優雅なのよね。

 

「ねぇ、あなたって本当に戦神なの?」

 

「ん、紛れもなく我は戦神だ。」

 

戦神(いくさがみ)

 

彼の種族。

言い忘れてたけれど、彼の種族は神。

そのなかでもかなり特殊な"戦神"っていう分類にはいるの。

軍神だとか、着土神だとか、祟り神だとかって居るじゃない?

あんな感じで。

ちなみに、彼はその戦神の中でも更に"異質な存在"だったんだって。

詳しくは"前作"を見てね。

 

ん?メタい?

何の事かしら?

 

「今のあなたを見てると、とてもそうは思えないのだけど....。」

 

「フフッ、紫殿からも言われた。

"荒ぶらない戦神なんて初めて見た"と。」

 

「そりゃそうよ。

私も伝承でしか本来の戦神を知らないけれど、初めて貴方と出会った時にはビックリしたわよ。

あまりにも伝承と違い過ぎるんだもの。

まぁ、いざ戦ってみると今のあなたからは想像出来ないくらい恐ろしく獰猛になるから、それはそれでビックリだけど。」

 

一応言っておくわ。

今隣に座って話している彼、戦いになると豹変するの。

別に奇声をあげるとかっていう訳じゃなくて、相変わらず静かなままなのだけど、とにかく動きが獰猛で素早いの。

デカイくせに。

動きに規則性が無いから目で追うのが大変だし、一撃がめっちゃ重いし、なにより突然消えたと思ったら考えもしなかった方向から現れるしで....。

訳あって彼と戦った事があるけど、あれは半分トラウマよ....。

 

「もう慣れたか?」

 

「すっかり。」

 

彼は私が己の異質さに慣れて受け入れている事に対して、何を思ったのか

今まで真っ直ぐ遠くを見ていたままだった顔をこちらに向け、微笑むのではなく、あからさまに口角をあげて嬉しそうに一言こう言った。

 

「随分と早いな。」

 

って。

それに対して私はこう返した。

 

「自分でもそう思うわ。」

 

すると彼は満足げに頷き、また一口お茶を飲んだ。

たかが湯呑み一杯分でも一気に飲まず、少しずつ口に含みながら味わって飲むあたりがまた彼らしいなと思ってしまう。

 

「ところで、あなたは神力は使わないの?」

 

そんな彼を眺めながら、ここで一つだけ気になった事を質問してみた。

出会ってから一度戦った時、彼は"能力"は使っていたが"力"は使って居なかったの。

彼は神様だから、神力を使えるはずなのにそれを纏わず、自分の武術と身体能力、それにほんの少しだけ能力を交えただけの戦法で私と戦い、挙げ句の果て私に半分トラウマを植え付けた。

 

「使わないと言うよりかは....使えない。」

 

使えない....?

 

「どうして?」

 

「枯れた....といえば良いのだろうか。」

 

「...."素のままの戦い"を続けてるうちに勝手に封印しちゃったってこと?」

 

「ん。

神力などに頼らず、 技と能力だけの戦いの方が我には合う。」

 

「なるほどね、それじゃあ実際神力なんてあっても無くても同じって事かしら?」

 

「ん。」

 

....もうこの神様はなんでもアリね....。

 

「あと、もう一つ良いかしら?」

 

「どうした?」

 

「あなたは....同族を殺した事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔してる?」

 

「....。」

 

一瞬彼が硬直した様に見えた。

ちょっと、ぶっ込んだ事を聞いちゃったと思うけど....どうしても聞きたかった。

 

「いや....後悔などしていない。」

 

落ち着いた声で彼は語る。

 

「我は確かに必要であれば躊躇いなく人を殺す。

妖怪もまた然りだ。」

 

「....。」

 

彼の言葉を黙って聞く。

 

「だが、奴らは違う。

無意味に、何の目的もなく、ただ混乱を生む為だけに殺す。

それが戦神の性であるとしても、我はそれを認めたくなかった。

同じ戦神として産まれた事を心底恥じた。

虫酸が走った。」

 

「....。」

 

「奴らが我を殺しに来たときはある意味では好機だと思った。

奴らを返り討ちにすることで人に害を為す連中を消せるのだから。」

 

「....。」

 

「我に向かってきた連中を皆殺しにしたあと、行く宛もなくなり、さまよい....結果的にこの幻想郷に行き着いた。

そして、影ながら悪と見なした者共を狩るうちに紫殿に出会い、巫女殿に出会った。

そして、今がある。」

 

「....。」

 

「我ながら勝手な考えだが、あの同族殺しは我にとっては必要な殺しだと思っている。

我も種族の性故か....他にやり方が見つからなかった。」

 

「....。」

 

「巫女殿。」

 

「....何?」

 

「....ありがとう。」

 

「....!」

 

意外な一言にビックリした。

まさか彼の口からこんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったから。

でも....

 

「どういたしまして♪」

 

やっぱりお礼を言われると悪い気はしないわね。

 

「では、我はそろそろ行く。」

 

「えぇ、久々に会えて良かったわ。」

 

「ん。」

 

彼は腰をあげ、去ろうとする。

あっ、一つお願いしてみようかしら。

 

「ごめんなさい、お願いなのだけど

その"巫女殿"っていうのやめて、名前で読んでくれない?

なんだか、むず痒いわ。」

 

「....。」

 

「....。」

 

「....。」

 

「....ではまた会おう、"霊夢"。」

 

「ええ、ありがとう。"月影"(げつえい)

 

「さらば。」

 

そう言うと、彼はその場からまるで溶け込むように姿を消して去っていった。

 

このあと、彼が何をしに行ったのかは大方予想が付く。

恐らく、彼の名前を知りたがっていたあの男に名前を教えに行くのだろう。

それも飛びっきりホラーなやり方で....。

 

....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、なんであの時あの男の背後に一瞬だけ姿を現して、振り向いた瞬間に消えたのかしら....?

まだまだ謎ねぇ....。

 

 

―――おしまい。

 




ありがとうございました。
本当にただ淡々と会話をしてるだけですね。

ちなみに、月影の姿が見えないのはそれが彼の能力だからです。

・能力詳細
"悟られない程度の能力"

・能力概要
能力を使用する事で、自らの姿を消してしまう能力。
いわゆる透明人間状態。
能力のレベルは非常に高く、並みの妖怪程度では姿は愚か、気配すら掴めない。
(実際霊夢ですら居場所を掴めません)
能力を解除すれば、人前に姿を現す事が出来るが
実力を認めた者の前以外ではそうそう滅多に能力解除はしない。

という感じです。
ありがとうございました!

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