リハビリ作です。

要望があれば連載も考えたいと思います。

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リハビリ作です。

一番最初の段落というか塊は、めんどくさければ読まなくても大丈夫です。
要望があれば、連載も考えたいと思っています。
尻切れ感が強いと思いますが、少し目を通していただければ嬉しいです。

個人的に、鳳翔さんは外来語が日本語読みだったら可愛いな、と思っています。
なのでこの鎮守府の鳳翔さんの外来語は全て平仮名です。


とある鎮守府のとある居酒屋。鳳翔さんと提督の会話。

提督と、艦娘。

 

突如として現れた深海棲艦の襲撃により世界の海が制圧された現代において、この二者は切っても切れない関係にある。

艦娘がいなければ提督は戦えず、提督がいなければ艦娘は十全に力を発揮することができない。

正直なところ、鎮守府を運営するだけなら艦娘にも可能なのである。

しかし、データとして、艦娘のみで構成された鎮守府はそのほとんどが深海棲艦の襲撃により壊滅している。

残っているのは襲撃される前に提督が着任した場所のみ。

実質艦娘のみの鎮守府は、生き残ることがないと証明されたのである。

また、同様の傾向が、艦娘への対応が著しく悪い鎮守府、所謂『ブラック鎮守府』にも見られる。

対して、艦娘との良好な関係を築いている鎮守府(これは提督に対する印象を秘密裏に艦娘へとアンケート調査した結果、3分の2以上が『好ましい』を選択した鎮守府を《良好》の基準としている)では、深海棲艦に対する戦果が非常に高いことから───

 

「『艦娘は守るべき人間を強く実感することでその力を引き出していると考えられる』ねぇ…」

 

この鎮守府に置いて「提督」と呼ばれる青年は、上から送られてきた、『艦娘の運用に関するレポート』を投げるようにカウンターに置く。

 

「俺は守る為に隊に入ったんだけどなぁ…」

 

これではあべこべだ。

上は俺に、隊員に、『守りたくなる存在になれ』と言っているのか。

 

「あら、私は素敵だと思いますよ。それってつまり、愛の力ということなんでしょう?」

 

ろまんちっくじゃありませんか、と違和感しかない横文字を使って微笑むのは、鳳翔。

提督が現在いる居酒屋、「ほうしょう」を構える()艦娘である。

 

「意外だな、鳳翔がそんな乙女な事を言うなんて」

 

「あら、私はれっきとした乙女ですよ?」

 

今日の提督は意地悪ですね、と少し拗ねたようにそっぽを向いて答える鳳翔。

角度は90°。

珍しい鳳翔の姿が無性に面白く感じて笑ってしまった。

外でカタン、と音がした。風だろうか。

全く気にならなかった。

そしてますますそっぽを向いてしまう鳳翔。

角度は135°になった。

もう少し弄ったらしまいには一周するのだろうか。

癖になりそうだが、ヘソを曲げられてしまうのは嫌なので取り敢えず、すまん、と謝っておく。

そんな提督に、「誠意が足りません」と溜息をつきつつもこちらに向き直ってくれる鳳翔はやはり優しい。

 

「さて、それで提督、そちらの具合(・・・・・・)は如何ですか?」

 

前言撤回、やはり鳳翔は優しくない。

 

 

 

♢♢♢

 

 

──提督は、恋をしている。

 

病気と言ってもいい。

彼は、──好意を抱いてしまったのだ。

その姿に、声に、動きに、心を奪われてしまうのだ。

別に、それは悪いことではない。

恋愛禁止令などない。

他の鎮守府でも一線を越える提督と艦娘は多い。

ケッコンカッコカリを複数の艦娘とする、所謂ジュウコンをしている鎮守府さえもある。

 

しかし提督は艦娘と提督(部下と上司)がそういった関係になる事を良しとしなかった。

提督は、真面目であり──それ以上に、臆病であった。

 

部下の中の誰か1人を、贔屓してしまうのが恐かった。

 

それによって職場が荒れるのが恐かった。

 

恋した人が、いなくなってしまうのが恐かった。

 

そうして、何もできなくなる事が恐かった。

 

だからこそ、艦娘と必要以上に関わることを避け、笑顔を見せず、常に気を張って生活してきた。

訓練生時代から付き合いがあり、既に艦娘を引退している鳳翔の店で飲む。

ただその時だけ気を緩める事ができた。

 

それが、どうしたことか。

秘書艦を採用した事が間違いだったか。

 

気付くと、彼女を目で追っていた。

 

気付くと、彼女の近くに寄っていた。

 

気付くと、会話が弾んでいた。

 

 

 

気付いたら、恋をしていた。

 

 

 

 

「───なんて甘々なぽえむを聞かされたんです。その続きくらい聞く権利があると思うんですが?」

 

………やってしまった…。

 

「酔っていたとしても、そんな事を言ったのか…」

 

大きく頷く鳳翔。…がっくり。

 

「それで、どうなんですか?秘書艦の瑞鶴さんとは」

 

「…何もないよ」

 

溜息をつく鳳翔。幸せが逃げるよ。

 

「提督の事だから本当に何もないんでしょうね…」

 

ジト目で此方を見ながら言うのはやめて欲しい。

 

「そも、別に俺は瑞鶴と交際したいとは思ってない。別に今のままで問題ないしな」

 

「『今のままで満足』なんて、何生娘みたいなこと言ってるんですか。それに支障は出ているでしょう?」

 

「うっ、どうして知ってる…」

 

ニコニコするだけで答えない鳳翔。

実は、最近書類があまり手についていない。

それよりも風向きが怪しくなって来た。

この話題は避けよう。

 

「鳳翔、つまみそろそろじゃないのか?1日の楽しみだから早く食べたいんだが」

 

と、同時にキッチンタイマーがなる。

 

「もう。提督はずるいです」

 

「状況判断が上手いと言ってくれ」

 

くすりと笑ってオーブンを開けに行く鳳翔。

中ではホイルの中身がじゅうじゅうといい匂いをさせていた。

 

「召し上がれ」

 

ホイルを剥かれ、目の前に現れたのは鰊だ。

ディ・モールト・ベネ(実に素晴らしい)

思わず呟いてしまった。日本酒も頼もう。

 

「??べね…?」

 

「気にしなくていい。それより獺祭をくれ」

 

おっ、と言う顔をする鳳翔。

 

「今日は奮発しますね。何かいいことでもありました?」

 

「特には。ただこんな美味そうな肴が出たんだ。いい酒で摘みたい」

 

まあ、鳳翔の出すつまみがまずそうだった事なんてないが。

 

早速箸を付ける。信じられないくらい簡単にほぐせた。

口に入れると程よい塩気。

これはいい。酒が進む。

 

ふと視線を感じた。

見ると、鳳翔がニコニコと此方を見ていた。

その瞳に一抹の寂しさを感じたのは何故だろうか。

 

「…提督は、いつも美味しそうに食べますね」

 

「…美味いからな」

 

そう言うと、鳳翔はにこりと笑った。

 

 

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
はあ?ここで終わりかよ、となった方、申し訳ありません…
要望があれば、少しずつ書いていきたいと思います。


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