金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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サブタイ通りの内容ですが……なんか、その方向性がある意味、斜め上にすっ飛んでるような?





第030話:”有能な危険物 ~ラインハルト様が本気になったようですよ?~”

 

 

 

「イゼルローン攻略戦なんて益体(やくたい)もない出兵、私自身が参加したくないからさ」

 

ヤン先輩は事も無げに言い切った。

 

「勿論、私だけじゃない。ラインハルト、ラップ、ワイドボーン、アッテンボロー、フォーク……まあ、キャゼルヌ先輩は部署が部署だけに要塞攻略に参加することはないだろうけど」

 

そう苦笑し、

 

「あそこは本来なら命を懸けるような場所じゃない。命と戦費の無駄遣いは、軍人としても納税者としても止めるべき案件だろ?」

 

……そこまで言うなら、俺は少しだけ聞いてみたかった。

いや、確信が欲しかったのかもしれない。

 

「先輩、荒唐無稽の前提に聞こえるかもしれないが……もし、」

 

もしも、

 

「姉上と民主主義、あるいは国家を選ばねばならぬ事態となったら……どうする?」

 

答えを聞くのが少し怖い質問だ。

 

「そりゃ、当然アンネだよ」

 

”がたん”

 

ドアの外で物音がした。

一応、軍規に触れる話題が出るかもしれなかったので部屋から退出してもらってたが……

 

(盗み聞きとは、姉上にも困ったものだ)

 

だが、

 

(答えに迷いも躊躇いもなかったのは高く評価していいな)

 

 

 

「その理由は?」

 

先輩は少し怪訝な顔をして、

 

「軍人として国を守るのは役職上の責務さ。だが、同時にアンネとの生活基盤に自由惑星同盟は不可欠だ。だから守るし戦うことに躊躇いはない……これじゃあ不満かい?」

 

捻くれた言い回しだが、

 

「姉上との生活を守る()()()()同盟を守る、か……序列が不可逆であるならばそれでいい」

 

「当然だね。人を守れず何が国家なんだい? バグダッシュ大尉に言わせれば、”政治や国家など、所詮は人が生きるうえに必要な方便”らしいしね。まあ、至言だと思うよ」

 

「バグダッシュ?」

 

どこかで聞いたことがあるような……ああ、”もう一つの記憶”の方か。

 

「今回のレポートに資料提供してくれた情報部の将校だ。中々優秀だよ」

 

「そうか……」

 

「ラインハルト……君の懸念はもっともだが、こう見えて私は自分が思っているよりもずっとアンネとの生活を気に入ってるらしいんだ。我ながら信じられないことにね」

 

……もしかしたら、姉上というのは俺が思ってるより遥かに化け物なのか?

ヤン先輩が、”顔を赤らめながら照れくさそうに頬をかく”なんて誰得(姉得か?)なシチュエーションを生み出す状況が、俄かには信じられないんだが……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(まあ、先輩にここまで言わせたなら上出来と言えよう)

 

姉上が、どのような手段を用いて先輩を完膚なきまで陥落させたのかは興味はあるが、それを聞くほど野暮ではないぞ?

自慢ではないが、こう見えて割と空気は読めるほうだ。

ん? 今、誰かに無言で視線を逸らされたような気がするが……ふむ。気のせいか?

 

「先輩……その怪文書、もとい。イゼルローン要塞の考察レポートは教官に提出するだけなのか?」

 

「ん? どういう意味だい?」

 

「キャンパス・ライフの挨拶状代わりのレポートとしちゃあ内容が剣呑過ぎる。提出するなとは言わないが、提出窓口は一つに絞らないほうがいい」

 

”姉上が、国家や主義主張より優先される”

 

この天才(ヤン)が、ここまで啖呵を切ったんだ。

信用してやろう。

だが、

 

(覚悟しておけよ?)

 

「最低でもいくつかの人物に同時に郵送した方がいい。窓口が一つだけならば、握り潰され闇に葬られてもわからんわけだし」

 

なるべく早く出世してもらうぞ?

それも有無を言わさずにだ。

 

 

 

「言わんとするところはわかるけど……例えばどこにだい?」

 

「最低限、シトレ中将……いや、そろそろ辞令が出るって話を小耳に挟んだから、シトレ大将か? あとリンチ中将は必須だな」

 

シトレ校長は、間違いなく出世するだろう。繋がりも万全だし、むしろ安牌だ。

現状、先輩も俺も階級が低いために上層にコネは薄いが、唯一のコネと言えるあのロック親父……いや、リンチ中将は戦死さえしなければ悪くない選択肢だ。

 

「バグダッシュ大尉には、”意見を聞きたい”って名目で完成版ではなく原案の方を渡して反応を見るべきだろう。内容が内容だけに上司に相談するだろうし、できる上司がいればそこで目にとまるはずだ」

 

うろ覚えだが……バグダッシュはグリーンヒル(父親の方な?)と繋がりがあったはずだ。

別の人生の出来事とはいえ、俺が言えた義理ではないが……クーデターに引っ張り込まれる時点で微妙な評価の男だが、まあヤン・ウェンリーの理解者ではあった実力者だ。

 

(それに確か、リンチ中将とも繋がりがあったはずだ)

 

バグダッシュが繋がってないとしても、リンチ・ルートで完成版が届く可能性があるのも都合がいい。

 

「後は……切実に政治家の味方が欲しいな。それも軍事に明るい……できれば国防族議員で、国防委員会に所属していれば言うことはない」

 

「ヲイヲイ」

 

先輩、何戸惑ってるんだ?

 

「先輩自身が、”同盟軍はシビリアン・コントロールを前提とした軍隊”だとわざわざレポートに書いてるではないか? その状況で政治家を味方につけないでどうする?」

 

「いや、しかし……軍人と政治家の癒着と言うのは、」

 

「綺麗事はいい」

 

俺は容赦なくばっさり切り捨てる。

 

なんとなくわかったぞ。

先輩は、政治的配慮ができないんじゃなくてしたくないんだ。

だが、そんな甘ったれた思考あるいは指向は俺が許さん!!

 

「先輩、少しは自分が”有能な()()()”だって自覚を持ってもらおうか?」

 

全ては姉上の為、俺に妥協の二文字はない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラインハルト様が本気になるのは、アンネローゼが関わった場合だと思います(挨拶

ヤンデレ(ヤン、デレる)状態→ヤン:「国よりアンネだよね♪」→ラインハルト:「上等ではないか。なら姉上との将来の為に出世してもらうぞ?」

大体、合ってる(^^
階級が上がるってのは、それだけ発言権も増えるし権力も増える。上手く使えば、そう簡単につぶされる事はない……それを一番わかってるのは、前世の記憶持ちのラインハルト様だと思います(^^



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