フェザーンについて俺、ラインハルト・ミューゼルが語るのは実は少々危険性を孕む。
というのも俺が俺として『生で知ってる”
なので、前世(?)と今生、二つの世界の知識が入り混じることもあるし、推測の部分もある。その辺を加味して聞いて欲しい。
自由惑星同盟の公的見解ではフェザーン国民というものは存在せず、あくまで居るのは『フェザーン在住の銀河帝国人』だ。
理由は、『フェザーンはあくまで銀河帝国の自治領であり、
”もう一つの記憶”の中でのフェザーンは、『帝国の統治下にある、名目上は中立の自治領。実質的には準国家』という立ち位置だったが、”今生での同盟の見解”はかなり異なる。
自由惑星同盟の公式見解では「唯一の外国」は銀河帝国のみで、”ダゴン星域会戦”が起きた宇宙歴640年、正式に銀河帝国は同盟の”敵性国家”として認定されている。
対して、銀河帝国は自由惑星同盟を国家として認めてないので公式な”国交”は存在せず、そのあたりの諸問題は外交で解決することはないだろう。
本来、帝国人扱いである”フェザーン自治区在住者”は亡命しない限り、同盟国内で商売どころか滞在することもできない。
当然だ。フェザーン在住だろうと帝国本国在住であろうと、”敵性外国人”であることは間違いないからだ。
だが、フェザーンは大量の賄賂で皇族を含む帝国貴族を懐柔、帝国より自治権を獲得すると同盟にも浸透工作を開始する。
収賄に応じる政治家をはじめとする権力者を抱き込み、反国家主義者や反動主義者、行き過ぎたリベラリストや人権主義者などの左派勢力、帝国融和主義者などの反戦/平和団体など複数の反政府勢力に合法/非合法を問わず資金をばらまき、手駒としロビー活動を開始。特に大衆の世論誘導ができるマスコミへの浸透は苛烈だったらしい。
(おかげでかなりの数マスコミがその本分を金で売り、
同盟は多数決の論理が幅を利かせる民主主義国家で、確かに政治家も当選したくば程度問題こそあれ大衆、同盟市民に迎合的にならなければならない。
言いたくはないが、フェザーンの目の付け所は悪くなかったのだろう。
民主主義の理想とは、選挙権を持つ全ての者が強い参政意識を持ち、正しき認識の下でリーダーを選出する……言うならば、国民全てが”
だが、それは人類が誕生以来ただの一度も成し遂げられていない、理想を超えた夢想の彼方にある姿だ。
ヤン先輩に言わせれば、
『プラトン的理想も、ニーチェ的な理想もおそらく人類が人類である以上、
そして、
『それに世の中が哲人と賢人だらけになったら、私のような怠け者がひどく生き辛くなりそうだ』
ニヤリと笑い、
『第一、それじゃあひどく面白くない世の中になると思わないか?』
それに民主主義は銀河連邦を例に出すまでもなく、常に衆愚政治の温床と紙一重だ。
衆愚政治の行き着く先は、どのような形であれ破綻と破滅でしかない。
同盟は幸いにして、少なくとも今の所は『良き労働者(=納税者)を生み出すことを最優先』とする教育はしていても、衆愚政策に舵は切っていない。
だが、それは同時に民主主義の理想像とは程遠い姿だろう。
つまり同盟市民全てが
大規模な贈収賄事件や疑獄事件を、毎年の風物詩のように頻発させながらも執拗に継続された一世紀に及ぶ活動の成果は確かにあった。
フェザーンを帝国とは別の独立国扱いにはできなかったが、生粋の帝国人では有り得ないフェザーンに対する特例事項、制限はあるが同盟内で経済活動とそれに伴う許可/登録された民間船舶の運行が可能となる『就労ビザ』や、制限があるが更新する限り同盟内に居住可能な『特別在留許可』などを勝ち得たのだ。
皮肉を込めて言うなら、支払った金額の対価を得るという意味では、資本主義という解釈の中では正しいのかもしれん。
とはいえ、永住権や選挙権(投票権)を含む市民権などは、『敵性国人』であることが考慮され獲得はできないことになっている。
執念めいたロビー活動で、なんとかそれらを解禁させようとしているが、少なくとも今のところは上手くいくようには見えない。
同盟市民は、色々思うところはあれど阿呆の集団ではない。敵国の人間に選挙権なんて持たせたらどうなるか火を見るよりも明らかだからな。
フェザーン自治区人に与えるのは、特例であっても
☆☆☆
多分、ここで気になったことがあると思う。
敵国人扱いのフェザーン人が、どうやって同盟に浸透工作できたのか?ということだ。
実は永住権やら市民権やらの問題を、一発で解決できる方法がある。
そう、うちの両親がしたような”亡命”だ。
建前上かもしれんが、同盟はフェザーンを帝国の自治領として扱ってる以上、フェザーン人も亡命申請できる(受理されるかどうかは別問題だ。後述するが、最近は原則受理されず棄却される)。
だが、フェザーン人にはそう簡単に亡命できない理由がある。
前にも触れたが、同盟に亡命が受理された時点で
銀河帝国は、帝国領土外に人類が居住してることは認めているが、それは国ではなく叛徒、平たく言えば反帝国武装組織とその組織に不法占拠された土地という扱いだ。
故に一度、同盟に亡命し国籍を取ってしまえば帝国の自治区であるフェザーンへの再入国は、事実上不可能となるのだ。
つまり、フェザーンに戻り商売できなくなる。
では、彼らはどんな奇策を使ったのか?
何のことはない。同盟工作用の人身御供を選出し、正当な方法……『
宇宙歴682年にフェザーンが銀河帝国より自治権を獲得し、まだ程ない頃……それこそ、フェザーン初代領主”レオポルド・ラープ”が生きていたどころか領主だった時代のことだ。
フェザーンというものをまだよく理解してなかった自由惑星同盟は、当時のフェザーンからの亡命者を『銀河帝国からの亡命者』として扱った。
『銀河帝国を
帝国からの亡命者がちらほらと出始め、同盟は銀河帝国の
無論、繰り返しになるが好意や善意で帝国人を受け入れた訳ではない。リスクを負ってでも、銀河帝国の情報を欲したのだ。
かの
そんな情勢下、まるで当時の自由惑星同盟の情勢を見切ったように突如、”未知の回廊”から『帝国の自治領民』として現れたのがフェザーン人だった。
自由惑星同盟に『
結論から言えば、当時の同盟市民はフェザーン人というものを理解していなかったが、フェザーン人もまた”
そう、その後にフェザーン人が”
読んでいただきありがとうございました。
勢力としては本格的に出てきてませんが、実は原作と同盟との関わりがだいぶ違うフェザーンでした。
この世界の