金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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今回はちょっと長めの前書きです(^^
ご感想を読んでてちょっとアキレウス級をまとめてみようかと。

えーと、この世界線で同盟軍の旗艦型戦艦の現行モデルは、全体で言うと”アキレウス級”です。

ただ、これは厳密に言うと1~5番館までの先行量産型といえる”アイアース級(アイアース型)”と、本格量産型の”6番艦以降パトロクロス級(パトロクロス型)”に分かれます。

級と型の表記ゆれがあるのは、同盟軍の公式資料でも両方見受けられるから……う~ん、対帝国の情報攪乱でしょうか?(笑
更にパトロクロス以降は、改アイアース級(改アイアース型)と表記されてる資料もあるので、更に混乱しやすくなる罠(笑

基本、アイアース型で技術的な模索や実証を行って、本格量産型のパトロクロス型にフィードバックされたって感じです。
この前期型と後期型には割と違いがあるのですが、それはいずれチャンスがあれば裏設定でも書いていこうかなと。

あと、実はこの時点でアキレウス級は、30隻前後が既に建造されてるみたいですよ?
現在、同級での最新艦はリンチの”ニルヴァーナ”だったりします。

金持ち同盟軍(苦笑




第067話:”再会 そしてゴツいニューフェイス”

 

 

 

『やあ、ラインハルト。いや、それともミューゼル大尉と呼ぶべきかな?』

 

しばらくぶり……という程ではないが、少なくとも月単位で顔を合わせてなかったヤン先輩は、立体画面の向こう側でとぼけた表情でとぼけたことを言ってくる。

なるほどそういう趣向か。

いいだろう。乗ってやる。

 

「どっちでもかまわんぞ? ヤン()()殿()。遠路はるばるお疲れ様でした。”エル・ファシル特別防衛任務群”一同を代表して心より歓迎申し上げます。全員、起立! 中佐殿に敬礼!!」

 

俺はブリッジの全員を起立させ、俺を含めた教科書通りの敬礼を一糸乱れずやってやる。

 

『……やっぱりやめよう。こういうのは私達のガラじゃないな。うん』

 

勝ったな。ガハハハ。

笑いが棒読み? ほっとけ。

 

「まあでも、歓迎してるのは本当だぞ? 息災なようで何より。義兄(あに)上”

 

『カウンターはひどいよ、ラインハルト。そちらも相変わらずのようで安心した』

 

そう苦笑するヤン先輩は、前よりはいくらか様になってる敬礼で、

 

『ヤン・ウェンリー中佐麾下”YS11特務護衛船団”、只今アスターテ星域に到着した。エル・ファシル特別防衛任務群拠点まで案内願いたい』

 

「アイアイ・サー」

 

こうして俺、ラインハルト・ミューゼルが率いる駆逐艦10隻から成る小戦隊は、アスターテ星系最外縁で迎えに向かったヤン先輩の船団と無事合流したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

アスターテ星系、エル・ファシル特別防衛任務群、旗艦”ニルヴァーナ”

 

 

 

「よお、ヤン。よく来たな」

 

「ご無沙汰してます。リンチ中将」

 

執務机の椅子に腰かけたままのリンチにヤンは小さく敬礼した。

リンチは崩れた敬礼を返しながら、

 

「つもる話もあるが、その前にだ」

 

リンチは艦内通信の通信を入れ、

 

「入れ」

 

その言葉を待っていたかのように装甲スライド・ドアが開き、いずれも中佐の階級章を付けた、ヤンと比べれば屈強な四人の男が入室してきた。

 

「悪いが、先に顔合わせを済ませちまうぞ? ヤン、まずはお前から頼むぜ」

 

「アイサー」

 

ヤンは四人に向き直り、再びラインハルトに「以前に比べればマシ」と評されたばかりの敬礼を先に作り、

 

「この度の作戦で()()()()により中佐を拝命したYS11特務護衛船団、船団司令官のヤン・ウェンリーです」

 

要するに、「この作戦限定の階級だよー。貴方達より本来の階級は下だよー」と遠回しにアピールしたヤンだったが、

 

「チュン・ウー・チェン中佐だ。宜しく頼むよ。ヤン船団長。ああ、ちなみにE式でチュン・ウーまでが苗字だよ」

 

にこやかに返礼するパン屋の跡取りっぽい温和な雰囲気のチュン・ウー・チェン。

 

「こりゃまた随分と優男が来たじゃねぇか? グエン・バン・ヒュー中佐だ。グエンでいいぜ」

 

と獰猛に笑うのは、黒髪をオールバックにまとめ、同盟軍人というより武闘派アジアンマフィアの若頭と言ったほうがしっくりくる風貌のグエン・バン・ヒューに、

 

「ラルフ・カールセン中佐だ。よろしく頼む」

 

と言葉少なに告げるのは、髭面に巌のような巨躯を持つ筋骨隆々の大男だ。

とりあえず呼ばれた四人の中では一番図体がデカく、アドミラル・シートより炭素クリスタルの大型トマホークの方が似合いそうだ。

 

「ライオネル・モートン中佐。この中では一番年長だが、同じ階級だ。遠慮はいらん」

 

同じ階級ながら、士官学校を出てないがため最年長のライオネル・モートン。

言ってしまえば、ビュコック爺様と同類である現場叩き上げなのだが、30代中盤~後半で中佐というのは実はビュコックよりも出世ペースが早い。というより、士官学校卒業者と比べても極端に遅いわけではない。

おそらくこの世界線ではビュコックが若い頃にはまだ制度として整ってなかった非士官学校卒業者への救済措置、”幹部候補生養成所”を出たのだと推測される。

 

 

 

「この四人は、俺が率いてる中佐の中じゃ、戦上手だ。全員が100隻ちょいを率いてもらってんだが……」

 

リンチはニヤリと笑い、

 

「お前の注文通り、”襲おうと思えば襲えるけど、でも小艦隊では厳しい程度”を用意してやったぞ?」

 

前に描いたことのおさらいになってしまうが、イゼルローン要塞の駐留艦隊は正規で15000隻。無論、力のある貴族が私設艦隊や個人所有の軍艦を持ちこむ場合もあるので実際にはもう少し多いが、それでも現在20000隻に届くことはないだろう。

 

ただ、個人所有艦や私設艦隊を持ち込めるのは、それを所有する権力や財力がある貴族だけで、基本的にマールバッハやランズベルクなどの”爵位持ち”だ。

それらを持たない貴族……イゼルローン要塞に詰める帝国貴族の大半を占める”フォン持ちであっても爵位を持たない、爵位の継承権がない”貴族の次男以降の面々は、当然正規艦隊を率いることになる。

正規艦隊の場合、最小行動単位は基本1個戦隊500隻とされ、3個戦隊1500隻を1ルーチンとして10ルーチン制でイゼルローン回廊同盟側出口方面の装甲パトロール、定期巡回などを行っているのだが……

 

貴族たちの決起集会で、マールバッハ(ロイエンタール)が「あさましい」と評していたように、爵位なし貴族は非常に功名心が強い。かなり悪い意味で”功名餓鬼”だ。

当たり前だろう。

豪腕帝”フリードリヒIV世”の方針により、『帝国貴族(せんそうきぞく)に相応しい戦功』を打ち立てれば、念願の男爵位と領地が転がり込んでくるのだ。

まさに本当なら自分が爵位を継承したかった輩にしてみれば、まさに一攫千金の大チャンスだ。

 

繰り返すが、500隻が最小行動単位で、1ルーチンは最大でも1500隻……

更に指揮官、司令官は帝国のパワーエリート階級である貴族が多い。

 

(宝船を守る護衛艦が500隻だった場合、彼らはどう動くか……? まあ、考えるまでもないか)

 

「ありがとうございます。閣下」

 

素直に礼を言うヤンだったが、無論話は素直に話が進むわけはない。

リンチは笑みを強め、

 

「それじゃあ計画通り、お前さんが率いてくれ」

 

気楽な調子で言われた言葉に、ヤンは一瞬固まり……

 

「はっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

義兄弟の初顔合わせと、そしてサブタイ偽りなしのゴツいニューフェイス(?)がまとめて登場しました。

実は、名前だけは”第038話”で出てたりして(^^

顔合わせメイン回ですが、何やらヤンの予想しない方向へ話が吹っ飛んでゆく予感が(笑


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