ふと、夜景が見たいと思い立った私は大学の裏山に登ることにした。
裏山に登るといっても、そう大したものではない。大学が標高300m程の山の中腹辺りに鎮座しめされており、そこから少し登った場所へ行きたい訳なのである。裏山があるというのは大した事だと思う。しかしその立地が参拝する学生達を毎朝苦しめているということをどうか忘れていただかないでいただきたい。
ところで、大学で暮らす中で最も脅威的なものは何だろうか。怠惰な学生生活を送る者たちが教育の現場へと輩出されているという現実だろうか。それとも年々削られていく大学予算だろうか。はたまた睡眠音波を発し、学生達の単位を根こそぎ削りにかかる某教授だろうか。もし貴方がこれらの内に脅威を見出すというのなら、それは全くの否であると申し上げさせて頂く。
大学の中に潜む圧倒的な脅威。それは
元来大学構内に生息している生物は多岐に渡る。しかし、その生物相は日中と夜間とでは大きく異なるのだ。
勿論のことながら日中はにんげん達が大量に生息し、単位なるものを獲得すべく怠惰に怠けている。
しかし、夜間になると一変しにんげん達はその数をみるみる減らしていき、空いた隙間を埋めるかの如く様々な生物達が跳梁跋扈し始める。
諸兄らもご覧の通りそれは修論が通らなかった院生の亡霊であったり、機を逃して時代に取り残された学生達であったり、侵略的外来生物のたぬきであったりする。
そしてその中に謎に包まれた
昼間に遭遇したのなら明瞭にも記憶できるものだろうと推測する者も居るが、どうやら日中はその姿を転じるらしく未だにその正体は曖昧なままである。
しかし、目撃者の記憶を継ぎ接ぎしてみるに、その具体的な正体について幾ばくかの予想はできるのである。
友人達から集めた証言を元に考察してみると、その正体は高さ10尺(≒3m)あまりの落ち武者めいた姿をしており、その姿を目にした途端に得られる啓蒙的発露により意識が朦朧とし始めるという。 また、朦朧とした意識の中に二本の大きな牙ばかりが記憶に残るというのだ。