艦隊これくしょん ~いつかまた、この場所で~   作:哀餓え男

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朝潮出撃 3

 ヒトハチマルマルを少し過ぎ、日がとっぷり暮れた頃に鎮守府へ到着した私たちは、買い込んだ荷物の多さに少し辟易していた。

 

 荷物の大半は駆逐艦同士で何かを取り引きする際に使う甘味だが、大潮さんと荒潮さんは両手いっぱいに服屋の袋を下げている、どうも自分のだけでなく私に着せる分まで買ったようだ。

 

 「うふふ、今夜が楽しみねぇ。」

 

 まさか夜通し私で着せ替えごっこをする気ではないですよね?私はフタヒトマルマルには眠くなってしまうのですが。

 

 「安心して朝潮ちゃん!寝てても着せ替えは出来るから!」

 

 それのどこを安心しろと!?

 

 「それでは自分らはこれで失礼するっす。」

 

 「朝潮さんに貰ったお土産は末代までの家宝にしますね。」

 

 食べてください、お土産って言ってもお店で買った鯛焼きですよ?末代までどうやって保存する気なんですか。

 

 「ええ~、部屋まで荷物運んでくれないのぉ?」

 

 いやいや荒潮さん、送り迎えして頂いたのにさらに荷物運びなんてさすがに二人に悪いですよ?

 

 「そうしたいのは山々なんすけどねぇ。」

 

 「俺らこのまま呉に出発するんで。」

 

 今から呉に?それなのにこんな時間まで私たち付き合ってくれたんだ。

 

 「呉?この車で?誰か迎えに行くの?」

 

 「ええまあ……満潮さん達も知ってる人っすよ?」

 

 「私達も知ってる人?」

 

 「姐さんっす……。」

 

 姐さん?女性の方?二人の顔が急に曇ったけど怖い人なのかな。

 

 「姐さんって……、ちょっと待って!あの人が帰ってくるの!?まだ東南アジアにいるって聞いてたけど!?」

 

 東南アジアに?艦娘が少ないあの辺はシーレーン周辺を除いてほぼ敵の勢力圏って習った覚えがあるけど……。迎えに行くのは艦娘?

 

 「どうも提督殿に呼び戻されたらしいっす。三日後に呉到着予定らしいっすから余裕を持って今晩出発するんす、もし遅れでもしたら……。」

 

 「ああ、魚の餌ならまだマシだな……。」

 

 魚の餌になる方がマシって、それ以上に酷いことされるってこと?それに二人とも顔真っ青ですよ!?大丈夫ですか!?

 

 「そっか、あの人の迎えか……、アンタ達も大変ね……あ、ほら、これあげるから道中食べて?」

 

 「これも持って行って、元気出して?ね?」

 

 「ちゃんと生きて戻ってくるのよぉ?」

 

 嘘でしょ!?この三人がモヒカンさんと金髪さんを気遣った!?姐さんって人はそれほど恐ろしい人なの!?

 

 「なんと優しいお言葉!いつもは悪魔みたいなのに!お三方くらいっすよ、自分らの気持ちをわかってくれるのは。」

 

 ふ、二人が本気で泣いてる、よっぽど嫌なのね、そこにさっきまで罵倒しかしてなかった三人からの優しい言葉、泣くなと言う方が無理ですよね。

 

 「ああ、チンチクリの糞ガキなのに、やっぱ同じような目に遭ったことがある人がいるってのはいい な。」

 

 「アンタらやっぱ死ね」

 

 「気をつけて事故ってください。」

 

 「もう帰って来なくていいからねぇ。」

 

 「「酷えぇ!!」」

 

 いや、今のは二人が悪いです、さすがにフォローできません。

 

 「おバカな二人は放って置いてご飯行きましょう、お腹ペコペコです。」

 

 「そうねぇ、あ、そうだもし生きて帰れるようならお土産よろしくねぇ。」

 

 「贅沢言わないから、広島のお土産ランキングトップ10全部ね。」

 

 十分贅沢なのでは……二人が戦場で孤立して絶望したような顔してますよ?

 

 「アンタの荷物貸しなさい、部屋まで持って行っとくから。」

 

 「いえそんな、自分で運びます。」

 

 私も満潮さんも量は少ないけど二人分を一人で運ぶとなったら重いでしょうし。

 

 「いいから、アンタはさっさとソレを渡してきなさい。」

 

 そうだ、私にはまだ先代のプレゼントを司令官に渡す用事が残ってたんだった。

 

 「わかりました、中庭でしたよね?」

 

 たしか執務室の下、『エ』の字になってる庁舎の西側の凹んでる所だったわよね。

 

 「そうよ、居なくてもしばらく待ってなさい、その内来るから。」

 

 「わかりました、行ってきます!」 

 

 私は満潮さんに荷物を預け、絶賛絶望中のモヒカンさんと金髪さんにお礼を言ってから、庁舎の外周に沿って走り出した。

 

 私は今から司令官に会う、最後に会ったのはいつだったかしら。

 

 しまった!私服のままだ、休暇中とは言え司令官に私服でお会いするのは失礼じゃないかしら……でももう、角を曲がれば中庭だし……。

 

 「……?なんだろうこの匂い。」

 

 中庭の方から風に乗って甘い香りが漂って来る、これは……サクランボ?そうだサクランボの匂いに似ている、どうしてこんな香りが中庭から?

 

 「ん?そこに居るんは誰じゃ?そんな所居ったら煙たいじゃろ。」

 

 中庭に据え付けられたベンチに座ってタバコを吹かしている人が私に気づいた。

 

 煙たい?じゃあこの匂いはタバコの匂いなの?私が知ってるタバコの臭いはもっと臭い、出来れば近づきたくないような臭いだ。

 

 でもこれは違う、全然タバコ臭くない、むしろ嗅いでいると落ち着いてくるような気さえしてくる。

 

 「もしかして朝潮か?私服じゃけぇ一瞬わからんかたわ。」

 

 それにしてもすごい方言、聞き取れないほどじゃないけど、前に大潮さんに見せられたヤクザ映画に出てきた言葉遣いに似てるなぁ、格好も着流し姿で白鞘とか似合いそう。

 

 まあそれはそれとして、この人はどうして私の名前を知っているの?誰だろう、顔も声も司令官に似てるような気がするけど、私が知ってる司令官は標準語だし、上から下までキチッと士官服を着込んでる人だし……。

 

 「お~い、聞こえちょるか~。」

 

 そうか!きっと司令官のお兄さんか、もしくは弟さんさわ!それなら顔も声も似てるのに説明がつきそう!

 

 「もしかして俺が誰かわかっちょらん?」

 

 「い、いえ!そ、その、司令官のご兄弟の方……ですよね?」

 

 司令官の身内の方なら失礼のないようにしないと。

 

 「いや?たしかに兄弟はおるが全員田舎暮らしじゃ。」

 

 「え!?で、では貴方は……。」

 

 「これでどうだ?私が当鎮守府の提督だ。」

 

 キリッとした顔、頭の先からつま先まで漂うような威厳、さっきまでのどこか戯けたような態度が吹き飛んだ貴方は間違いなく司令官!

 

 「し、失礼しました!その、普段とあまりにも雰囲気が違うので……そのぉ……。」

 

 どうしようどうしよう!思いっきり失礼なことを言ってしまった!

 

 「ああ、気にせんでええ、今はプライベートじゃ。」

 

 またさっきの言葉遣いと雰囲気に戻った、『カチッ!』とスイッチが切り替わる音が聞こえそうなくらいの変わりっぷりだわ。

 

 「し、司令官はプライベートではこんな感じなのですか?」

 

 「ああ、まあ知っちょるのは大潮ら三人と俺の部下どもくらいか、他の艦娘と会っても今の朝潮みたいな感じで気づかんぞ。」

 

 そりゃあ普段の司令官しか知らなかったらそうなりますよ……、顔が同じ別人みたいですもの。

 

 「おっと、すまん、タバコに火付けっぱなしじゃったの。」

 

 「あ、かまいません、私この香り嫌いじゃないです、なんだか気持ちが落ち着きます。」

 

 タバコを灰皿に押し付けようとした司令官を慌てて止めて私は司令官の隣に腰を下ろす、一言断った方がよかったかしら。

 

 「そうか?じゃけどタバコはタバコじゃしなぁ……。」

 

 頭をポリポリと搔きながらタバコをどうするか思案する司令官、ホントに気にしないでください。

 

 「まあ、できるだけ朝潮の方に煙が行かんようにするけぇちょっと我慢してくれ。」

 

 すみません、私が来なければ司令官の一服を邪魔しないですんだのですが……。

 

 それにしても、司令官のタバコって少し変わってるわね、火がついてる方が太くて吸い口に向かって細くなってる。

 

 「ん?やっぱり煙いか?」

 

 「い、いえ、司令官のタバコって変わってるなと思いまして。」

 

 「あ~、これは手巻きタバコじゃけぇな、それにコニカル巻きじゃし。」

 

 手巻き?コニカル?すみません、全然わからないです。

 

 「普通の紙巻きタバコと違って自分の手で巻くんじゃ、コニカル巻きっちゅうんは巻き方の一種でな。」

 

 へぇ、タバコにも色々あるのね、私が知ってるのはその紙巻きタバコってやつなのかしら。

 

 「紙巻きより安いし美味いし、自分好みの味に調整もできるしでメリット多いんじゃ、巻くのがちょいと面倒っちゅう所と入手場所が限られるちゅうとこがデメリットか。」

 

 「それに体にも悪いですよね?」

 

 お体を労わってください、ただでさえ司令官の仕事は肉体的にも精神的にも重労働なのですから。

 

 「まあ、そりゃそうじゃがの?由良にもええ加減やめぇ言われちょるんじゃが、俺の唯一の楽しみじゃしなぁ……。」

 

 「でも意外でした、タバコってこんな甘い香りがするんですね。」

 

 「ああ、手巻きはこういうフレーバー系の葉っぱも多いんじゃ、チョコとかブルーベリーとかもあるぞ。」

 

 チョコの香りのタバコかぁ、味も甘いのかな?

 

 「司令官は甘いものがお好きなんですか?」

 

 「いやいや、甘いものはあまり得意じゃない、普段はフレーバー系以外のタバコ吸うちょる、コレを吸うのは久しぶりじゃ。」

 

 「どうして今日はそれを?」

 

 あんまり質問ばっかりするのはまずいかしら……でも司令官の嗜好を知るチャンスだし……。

 

 「ぶっちゃけわからん、なんでじゃろうなぁ、急に吸いたくなった……。」

 

 「特別なタバコとかでもないんですか?」

 

 「朝潮が……先代のな?彼女がこの香りが好きじゃったんじゃ……、普段はタバコなんてやめてください!っていう癖にこれを吸う時だけは何も言わずに隣に来てな……、じゃけぇ吸いはせんでも一袋はいつも買っちょる。」

 

 そっか……先代もこの香りが好きだったんだ……。

 

 少し複雑だな、なんだか先代の後追いばかりをしてるような気がしてきた。

 

 「そういやあのタバコ屋のおじさんは元気かいな、最近は通販で買うか部下に買いに行かせるかじゃったけぇしばらく行っちょらんなぁ。」

 

 タバコ屋のおじさん?あの商店街の?……あ、そうだわ、コレを渡すために私はここに来たんだった。

 

 「司令官、コレを……。」

 

 私は、チェスターコートのポケットに入れていた包みを司令官に手渡した、先代が司令官のために注文したプレゼント、中身は何なんだろう。

 

 「これは?」

 

 「今日行った商店街にあったタバコ屋のおじさんに預けられました、先代が司令官のために注文していたそうです……。」

 

 「朝潮が?開けてもいいか?」

 

 「は、はい、どうぞ開けてあげてください。」

 

 開けてはダメと言う権利なんて私にはないですし……。

 

 「これは……まったく、俺にはタバコをやめぇ言うちょった癖に……、こんな物送られたら余計やめれんじゃろうが……。」

 

 司令官、すごく嬉しそう……そうよね、例え数年遅れだとしても好きな人からの贈り物なんですもの。

 

 「それは何なんですか?箱……に見えますけど。」

 

 包みから出てきたのは手のひらにすっぽり収まるサイズの金属製の箱だった、タバコ用品とは言ってたけどどんな使い方をするんだろう。

 

 「これはシガレットケースちゅうてな?手巻きタバコは吸う直前に巻くのが一番ええんじゃが、そんな暇がない時は時間があるときにある程度巻いといてこれに入れて持ち歩くんじゃ。」

 

 「へぇ、シンプルな感じですけど、すごく綺麗ですね、あ、裏になにか掘ってありますよ?」

 

 From A to S?メーカー名かしら?いや、違うわね……これは。

 

 「まったく、洒落た事をしよるのぉ。」

 

 『朝潮から司令官へ』かな……、妬けちゃうな……、二人の間には私が入り込む余地がないように思えてくる……。

 

 「ありがとう朝潮、たしかに受け取ったよ。」

 

 でもよかった、司令官がとても嬉しそうにしてる。

 

 「渡せて良かったです、きっと先代も喜んでくれてますよね……。」

 

 「ああ、おかげで沈んでいた気分がマシになったわ。」

 

 「何かあったんですか?」

 

 「少しな、昨日部下に叱責されてしもうた、情けない事に。」

 

 司令官を叱責?副官だっていう少佐さんかしら?まさかモヒカンさんや金髪さんじゃないわよね?

 

 「そいつが言うにはな?俺はお前たちを……艦娘を道具として扱っちょったらしい……自分の復讐のためにな。」

 

 復讐……先代の仇討ちですか?そのために艦娘を道具として扱ったと?

 

 「それは……いけない事なのでしょうか……。」

 

 「え?」

 

 だって私たちは、ベースはたしかに人間だけど深海棲艦に対抗するための兵器だ、そしてそれを使うのは司令官ではないですか。

 

 「どういうことだ朝潮、俺は……私は君たちを道具扱いしていたんだぞ?人間である君たちを。」

 

 「たしかに道具扱いされるのは気持ちのいいことではないでしょう、ですが、少なくとも私は、司令官に道具として使われる事に抵抗はありません。」

 

 それは司令官が貴方だから、他の人が司令官だったらこんなこと言わない、貴方は私の命の恩人です、それにたぶん……私の初恋の人……。

 

 「司令官は覚えておられなかったようですが……、私は幼い頃、司令官に命を救われたことがあります。私が当時住んでいた、地方の小さな田舎町が深海棲艦に襲われた時に……。」

 

 「私が命の恩人だからとでも言う気か?だから道具扱いされてもいいと?だがそれは……。」

 

 「はい、私個人の考えです。他の艦娘がどう思うかなど私にはわかりません。」

 

 自分の本心を自覚してしまった貴方はその事で悩んでいる、苦しんでいる……今の私にはその苦しみを取り除いてあげれるだけの言葉はないかもしれない、でも言わずにはいられない。

 

 「君の気持ちは嬉しいが……だからと言って私のために命を投げ出すような事は考えないでくれ、例え私がどんな命令を出しても……。」

 

 「それは私に命令違反をしろということですか?」

 

 「違う!そうではない!そうではないのだ……。」

 

 「私は、司令官の命令ならばどんな事でもする覚悟です、初出撃で怯えてしまった私が言っても説得力はないでしょうが。」

 

 もう二度とあんな醜態は晒さない、皆も傷つけさせない、強くなるって誓ったんだから。

 

 「私は絶対に帰ってきます、貴方の命令を完遂して、例え特攻しろと言われたって完遂して帰って来て見せます!」

 

 「しかし、私の復讐に君を巻き込むのは……。」

 

 貴方の復讐の相手は先代が仕留め損ねた奴なのでしょう?だったら私とも無関係ではありません。

 

 「貴方の復讐は私の復讐でもあります!私は朝潮です!二代目朝潮です!先代の仇を討つのは当然ではないですか?」

 

 先代が戦死しなければ私は艦娘になれなかったし司令官に再会も出来なかったかもしれない、でも先代を失ったことでこの人は深く傷ついた、艦娘を、人を道具として扱ってしまうほど深く傷ついたんだ。

 

 「だが、君と先代の朝潮に直接のつながりはないだろう?」

 

 はい、赤の他人です、ですがそんな事は関係ありません、適合試験の夢の中で先代は復讐などどうでもいいと言った、先代の仇討ちなど方便です。

 

 私は貴方を傷つけた奴が許せないんです、これから貴方を傷つけようとする奴が許せないんです!

 

 「司令官が復讐を果たすことで、その心の傷が少しでも塞がるなら、どうぞ私を復讐の道具としてお使い下さい、私は貴方の剣になります!」

 

 「バカな事を言うんじゃない、君がそんな事をする必要はないだろう……。」

 

 「司令官は艦娘を犠牲にする前提で考えているのではないですか?だから道具扱いすることを気に病んでいるのでは?」

 

 「ああ、部下に言われたよ、私は艦娘を犠牲にする前提で物を考えている、道具扱いするのではなく仲間として頼れとな……。」

 

 「その人の意見を否定する気はありませんが、私は道具扱いすることが信頼していない事とは思いません。」

 

 「……どういう事だ?」

 

 「司令官にも愛用の道具はあるでしょう?軍人なのですから信頼を置いてる武器もあるはずです。」

 

 「だから君を道具として信頼しろと言うのか?」

 

 「そうです、それに私は先ほど言いました、私は貴方の剣になると、剣には鞘が必要です。貴方という鞘が。」

 

 私にとって帰る場所はここです、貴方の元です。

 

 「私が君の鞘に……?」

 

 「先日、満潮さんが第八駆逐隊のモットーは有言実行だと教えてくれました。」

 

 きっとこれを決めたのは先代だ、先代の思いは今もあの三人に受け継がれている、三人を通して私にも……だけどそれだけじゃダメ、先代を超えなきゃ仇はきっと討てない。

 

 司令官を苦しみから解放してあげられない!

 

 「だからお約束します!私は何があっても必ず貴方の元に帰ってきます!貴方に悲しい思いは二度とさせません!」

 

 交わした約束は必ず守る!これが私が掲げるモットーだ!

 

 「約束……か……。」

 

 「はい、だから安心して私をお使いください!」

 

 例え他の艦娘すべてに見限られたとしても、私は貴方の道具として尽くします!

 

 「はははは、情けないな、昨日に引き続き、今日は倍以上歳の違う君に諭されてしまった……。」

 

 しまった!調子に乗って言いたい放題言ってしまった!

 

 お、怒られるのかしら……。

 

 「で、出過ぎた事でした!申し訳ありません!」

 

 「いやいい、目が覚めた気分だよ。」

 

 よかった、怒ってはいないみたいね……。

 

 「朝潮、私は昨日、部下が言った言葉が間違ってるとは思っていない、だがすぐには思い直せない。」

 

 そうでしょうとも、それほど貴方は傷ついたのですから。

 

 「私はかつて以上に彼女達に犠牲を出さないよう努力する、彼女たちの強さを信じて送り出すよう心掛ける、しかしすぐには無理だろう、私の心は復讐に支配されすぎている……。」

 

 わかっています、貴方の心が晴れるまで私が貴方を支えます、貴方の心を守ります。

 

 「だからそれまで、私の剣になってくれ、そして必ず、私の元に帰ってきてくれ。」

 

 「はい!お約束します!」

 

 両側に聳え立つ庁舎に切り取られた中庭で、私と司令官は固く指切りをした、今度は私が勝手に誓ったのではない。

 

 私が司令官と交わした大切な約束。

 

 私と司令官の間にできた決して切れることのない繋がり。

 

 ご安心ください。

 

 この朝潮、司令官との大切な約束は必ず守り通す覚悟です!

 


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