艦隊これくしょん ~いつかまた、この場所で~   作:哀餓え男

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朝潮編成 6

 神風さんのお料理教室と、第八駆逐隊の旗艦にもだいぶ慣れて来た11月18日、私達四人は、司令官から預けられた手紙を持って呉鎮守府まで来ていました。

 先代が生きていた頃の霞はこの距離を往復してたんですね……。

 

「で?何をしにわざわざ横須賀から呉まで来たの?」

 

 司令官から私たちが来る事が伝わっていたのか、桟橋に着いた私たちを出迎えてくれたのは霞でした。

 でも相変わらずツンツンした態度ですね、ラインでは別人みたいに可愛いのに。

 素直に手紙を届けに来たと言わずに、お仕置きを兼ねて少しからかってあげましょう。

 

 「霞に会いに来たんです。そろそろ寂しくなってるかと思って。」

 

 「は、はぁ!?そんな訳ないでしょ!?」

 

 一瞬で湯気がでそうなほど赤面しましたね。

 言葉とは裏腹に、よっぽど嬉しかったのかスカートの裾や髪を弄ったりしてオロオロしています。

 動画撮るのってどうやるんでしたっけ。

 

 「大丈夫よ朝潮、バッチリ録画したから。」

 

 満潮さんがスマホを構え、親指を立てて動画撮影の成功を告げて来る。

 流石です!

 後で私のスマホに送ってください!

 

 「な!何撮影してんのよ!消してったら!」

 

 「ちょっとやめなさい霞!スマホが落ちる!落ちるから!あ……。」

 

 ゴン!

 

 おお……スマホが霞のオデコに直撃しました……けっこういい音がしましたけど…….

 スマホは大丈夫でしょうか。

 

 「くうぅぅ……角が……角が直撃……。」

 

 痛そうですね、オデコを押さえてうずくまっちゃいました、うっすらと涙まで浮かべてますね。

 

 「満潮、スマホは大丈夫!?壊れてない!?」

 

 「見た目は大丈夫そうだけどぉ……。中身は大丈夫ぅ?さっきの動画消えてない?」

 

 「平気みたいよ、ホントよかったわ……。」

 

 本当によかった、霞は最悪高速修復材(バケツ)に浸ければなんとかなりますがスマホはそうはいきません。

 霞が動揺してるシーンは貴重ですからね、失うわけにはいきませんからね!

 

 「アンタ達私の心配をしなさいよ!あ、なんか膨らんできた……コブになってない?コレ!」

 

 「霞、アンタの犠牲は無駄にはしないわ。」

 

 「ねぇ、この動画売れないかしらぁ?お小遣い稼ぎになるかもよぉ?」

 

 「呉なら売れるかもしれないけど横須賀だと微妙だね……買いそうなのは司令官くらいだよ?」

 

 なんだかよからぬ事を考えてますね、呉で売るのは見ないふりしますが司令官に売りつけるのは看過できません!

 司令官には私の動画を差し上げます!

 

 「売るな!ホント何しに来たのよアンタ達!」

 

 〘だから、霞に会いに。〙

 

 うん、三人ともすごくいい笑顔です、声までそろえちゃって。

 愛されてますね霞、私も嬉しいです。

 

 「だから!それはもういいったら!」

 

 無駄ですよ霞、この三人はイジる時はとことんイジって来ます。

 私も普段よくイジられてますから詳しいんです。

 

 「でもこうして私たちが並ぶと満潮ちゃんが浮いちゃうわねぇ。」

 

 お、荒潮さんが満潮さんイジりにシフトしました。

 満潮さん以外は改二の制服だから、たしかに満潮さんが一人だけ浮いちゃってますね。

 

 「そうね、満潮姉さんだけ幼く見えるわ。」

 

 霞が、ここぞとばかりにニヤァっとして満潮さんに反撃を始めた。

 でもやめてあげてください、満潮さんは八駆で一人だけ改二じゃない事を何気に気にしてるんです。

 

 「しょ、しょうがないじゃない!妖精さんが改二にしてくれないんだから!」

 

 そうです!妖精さんが悪いんです!

 満潮さんのせいじゃありませんから泣かないでください!

 

 「あ~あ、霞ちゃんが満潮を泣かせちゃった。」

 

 「私のせい!?いや、私のせいか……でも元はと言えば荒潮姉さんが!」

 

 「霞ちゃん、人のせいにするのはよくないわぁ。満潮ちゃん大丈夫ぅ?」

 

 大潮さんと荒潮さんがサラッと霞に罪を擦り付けました、なるほど満潮さんイジりも霞イジりの一環だったんですね。

 満潮さんの手に目薬がチラッと見えました、いつ用意したんですかソレ。

 

 「ご、ごめん……え、どうしよ……。泣かせるつもりなんてなかったのに……。」

 

 霞が、今度は顔を真っ青にしてオロオロし始めました。

 赤くしたり青くしたり器用ですね、血圧大丈夫ですか?

 

 「満潮、撮った?」

 

 「バッチリよ、抜かりはないわ。」

 

 「さしずめ、赤霞と青霞かしらぁ。お酒でありそうな名前ねぇ。」

 

 『イエ~イ♪』と頭上でハイタッチをする三人、対して霞は再び顔を赤く染めて怒り心頭です。

 そろそろ本題に入った方がいいかしら。

 

 「アンタら……ケンカ売りに来たんならそう言いなさいよ……買ってやるから……。」

 

 「まあまあ落ち着いて霞、三人なりの愛情表現ですから。」

 

 「あれが!?おちょくってるようにしか思えないんだけど!?」

 

 否定はしません。

 ですがおちょくりたくなる程、霞が可愛いと言う事でここは収めてもらえないでしょうか。

 

 「それより霞、執務室に案内してもらえないかしら。司令官からの手紙を預かって来てるの。」

 

 「手紙って、このご時世に?メールか電話でいいじゃない。」

 

 「私も最初そう思ったけど、情報を漏らさず、かつ確実に内容を伝えるためだと思うの。」

 

 軍の専用チャンネルくらいありそうだけど、それすら使えな程の物なのかしら。

 と言う事は、預かってる手紙にはそうとう重要な情報が詰まっているのね。

 

 「わかった、ついて来て。大潮姉さんたちはどうする?」

 

 「部屋の場所を教えてくれたらそっちで待機しとくよ、ゾロゾロ行っても仕方ないからね。」

 

 「そう、部屋は大会の時の部屋を開けてるからそっちに行ってちょうだい。あ、工廠の場所はわかるわよね?」

 

 「うん、大丈夫だよ。朝潮ちゃんの艤装も貸して、ついでに持って行くから。」

 

 「あ、お願いします。」

 

 工廠に向かう三人と別れた私は、霞に連れられて庁舎の方へ歩きだす。

 左手に戦艦大和が見えますね、中はどうなってるんだろう?

 

 「大和が気になるの?」

 

 「え?ええ、少しだけ。」

 

 昔はあんな巨大な物が動いて戦ってたんですよね。

 

 「ここだけの話だけど、アレってまだ動くらしいわよ。」

 

 「ほ、本当に!?」

 

 70年以上前の代物ですよね、それが動くなんてにわかには信じられないんですけど……。

 

 「噂だけどね、本当に動いたとしても動かすのは無理だと思うわ。呉の象徴みたいになってるから。」

 

 「へぇ……。」

 

 少し残念ですね、動いてる所を見てれるなら見てみたい気もするんですが。

 

 「解体すれば艦娘の大和が建造できるんじゃないかって意見もいまだにあってね、軍も扱いに困ってるらしいわ。」

 

 動かそうとしても、解体しようとしても反対意見が出るか、確かに扱いに困りますね。

 維持費も凄いでしょうし。

 

 「それより旗艦には慣れた?あの三人が相手じゃ大変でしょう?」

 

 「そんな事ないですよ?三人ともとっても素直に言う事を聞いてくれます。」

 

 実際ビックリしてます、私のような未熟者の指示で歴戦の三人が動くなんていまだに信じられません。

 戻った後にダメ出しはされるんですが……。

 

 「ふぅん、あの三人がねぇ……。」

 

 「霞も少し見習った方がいいと思いますよ?普段もラインみたいに素直なら、変な軋轢を生まなくて済みます。」

 

 「じょ、冗談やめてよ!アレは相手の顔が見えないから出来るの!面と向かっては……無理……。」

 

 満潮さーーん!動画の取り方を今すぐ教えてください!

 霞がデレてます!

 赤面してうつむいてモジモジしてます!

 

 ここ?このカメラのマークを押せば撮れるのかしら。

 あ、カメラは起動した、これで撮れるのかな?

 

 「ちょ!何しようとしてるのよ!やめなさいったら!」

 

 気づかれた!

 自分の無知さをここまで悔しいと思った事は今までないわ、なんで私はカメラの使い方を勉強しなかったの!?

 

 「や、やめなさい霞!操作中に奪い取ろうなんて卑怯よ!」

 

 「知るか!勝手に撮影しようとするアンタが悪い!」

 

 く、撮影は断念しるしかないわね、完全に警戒されてしまったわ。

 警戒してる霞もネコみたいで可愛いんだけど……この様子じゃスマホを取り出しただけで叩き落とされそうね。

 フシャー!!って言いそう。

 

 「着いたわ、ここが執務室よ。」

 

 「見た目は横須賀とそんなに変わらないんですね。」

 

 横須賀の執務室のドアと似たような洋風のドア、こっちの方が年季がはいってる感じはするけど。

 

 「霞よ、朝潮を連れて来たわ。入るわよ。」

 

 「失礼します。」

 

 と言って執務室に入ったのはいいんだけど……アレ?部屋を間違ったのかしら、執務机の前に設えられた洋風のテーブルで呉の提督と巫女服を魔改造したような服を着た女性がお茶を飲んでますね。

 あふたぬーんてぃーと言うやつでしょうか。

 

 「金剛さん……何してるの……?」

 

 「Hi! 霞、見てわかりませんか?Afternoon tea デース。」

 

 「そんな事はわかってるわよ!なんでこんな所でやってるかを聞いてるの!」

 

 激昂する霞に、金剛さんがあくまで余裕そうに答える。

 毎日こんななのかしら、霞の血圧が心配になるわね……。

 

 「提督が望まれたからデース。霞もどうデスカ?そっちの貴女も。」

 

 ご馳走になるデース。

 じゃない、私まで参加したら霞の血管が切れてしまうかもしれないからご遠慮しときます。

 

 「司令官も!仕事はどうしたのよ仕事は!」

 

 「大丈夫だママ、金剛がやってくれたから。」

 

 今ママって言いましたか?

 母になってくれと霞に言ったのは覚えていますが、まさか本当にママって呼んでるとは思いませんでしたよ。

 

 「はぁ!?金剛さん!司令官を甘やかさないでって前にも言ったわよね!?」

 

 「霞、仕事はやればいいというものではありまセン。提督自らやらなくてもいい事は下の者に任せるのが一番デース。」

 

 なるほど、これがラインで霞が愚痴っていた金剛さんですか。

 金剛さんの考えも否定はしませんが、今は霞が秘書艦なんですから立場を考えてあげないと。

 ラインで『ちゃんと仕事が出来て偉いわね。って褒めてあげたいのに邪魔される。』って言ってたのはこういう事だったんですね。

 

 「私は必要な事しかやらせてないの!この子は知らない事が多すぎるんだから!」

 

 今この子って言いました?

 いい歳した大人に向かってこの子呼ばわりはどうなんでしょうか……。

 

 「まぁまぁ二人とも、お客さんも居るんだしその辺で……。」

 

 こういう場面をどこかで見た事がありますね、どこでしたっけ?

 

 「提督が気にする事ないデス。霞が大袈裟に騒いでるだけネー。」

 

 意地でもお茶を飲むのを辞めようとしませんね、悪い人ではないんでしょうけど霞とは相性が悪そうだわ。

 

 「ふぅん、あくまで私の方針にケチつけようってのね……。」

 

 霞と金剛さんが見えない火花を散らして、段々と嫁姑戦争の様相を呈してきました。

 嫁と姑の年齢が逆な気もしますが。

 いえ、けっして金剛さんが御歳を召されていると言うわけじゃありませんよ?

 あ、でも思い出しました、満潮さんが録画してるお昼のドラマで似たような場面を見た事があるんだ。

 動画に撮っておいたら満潮さん喜ぶかな。

 

 「だったらどうしマス?」

 

 金剛さんが椅子から立ち上がり、霞も望む所だと戦闘態勢。

 ここでケンカする気?

 呉の提督は止めないのかしら。

 

 「あ……ちょっと二人と……も……。」

 

 ダメですね、二人の迫力に完全に腰が引けてます。

 霞はこんな人のどこがいいんでしょうか、私の司令官と違って頼りがいが皆無です。

 私が止めた方がいいんでしょうか、でも私は部外者ですし……。

 そもそも巻き込まれたくないし……。

 

 プルルルル……プルルルル……。

 

 「あ、電話……ぼ、僕が出るよ!」

 

 固定電話の呼び出し音に気勢を削がれた二人が動きを止め、呉の提督が慌てて電話に応対する。

 誰だか知りませんがナイスタイミングです、おかげでここが戦場にならなくて済みました。

 

 「あ、横須賀提督。え?ええ、今執務室に着いたところで……ええ、はい……いえいえ!そんな事は……はい、はい、では失礼します……。」

 

 司令官!

 さすが司令官です!まるで今の状況を察したかのようなタイミングでの電話、お見事です!

 それに比べて、呉の提督の受話器を大事そうに抱えてお辞儀をしながら話す様は小物感が凄いですね。

 ホントに提督ですか?この人。

 

 「横須賀の提督からだったの?」

 

 「あ、ああ。朝潮さん達が着いたかどうかの確認だったよ。」

 

 「他にも何か言われてたみたいだけど?」

 

 「いや、そのぉ……。」

 

 頭をポリポリしながら困ったように私を見られても困ります、私に関する事を何か言われたんでしょうか。

 

 「朝潮さんに手を出したら鎮守府ごと潰すと脅された……。」

 

 「what!? そんな事で鎮守府を潰すとか、横須賀の提督はCrazyデース!」

 

 何を仰いますか金剛さん、司令官ならそれくらい平気でやりますよ。

 霞と呉提督だって『ホントにやりそう……』って感じで苦笑いしてるじゃないですか。

 

 「あと、霞を今日は上がりにしてやってくれと。」

 

 「は?何で?朝潮たちが来てるから?」

 

 それだけじゃありませんよ霞、今日は貴女の誕生日です。

 今頃、大潮さん達が貴方を祝う準備を進めている事でしょう。

 

 「それは……。」

 

 呉の提督が『言ってもいい?』と言いたそうに私を見て来る。

 私は口元で人差し指を立て、ジェスチャーだけで言わない様に促す。

 言っちゃダメですよ、サプライズなんですから。

 

 「後で朝潮さんに聞いてくれ。」

 

 「朝潮に……ねぇ……。」

 

 なんですかその疑わしそうな眼差しは、別に霞が嫌がるような事はしませんよ?

 呉の駆逐艦も巻き込んで霞をお祝いしようとしてるだけです。

 

 「それより朝潮さん、手紙を預かっていると聞いたけど。見せてもらえるかな?」

 

 「はい、こちらです。」

 

 私は懐から司令官に預けられた手紙を手渡す、金剛さんのテーブルが邪魔ですね……霞が怒りたくなる気持ちもわかるわ。

 

 「なるほど……他の鎮守府にも同じ知らせが行ってるのかい?」

 

 「詳しくは私も伺っていませんが、佐世保、舞鶴、大湊にも駆逐隊が向かっているはずです。」

 

 「わかりました、横須賀提督には一言、『了解した』とお伝えください。」

 

 「はい、わかりました。」

 

 そう言って呉提督は手紙に火をつけ燃やしてしまった、おそらく司令官の直筆と思われる手紙を……なんと勿体ない……。

 

 「何が書いてあったんデスか提督。」

 

 「その場で燃やすほどの内容よ、軽々しく言えるわけないでしょうが。」

 

 再び火花を散らしだす二人、いつもこうなんですか?

 

 「すまない金剛、それはまだ言えない。時が来たら必ず話すからそれまで我慢してくれ。」

 

 さっきまで二人に翻弄されるがままだったのに、今度はハッキリと切り捨てましたね、いつもそうなら霞の心労も減るのでは?

 

 「うー……提督がそう言うなら我慢しマース……。」

 

 どうしましょう、霞のドヤ顔が凄いです、『この子、私が育てたんです!』と言わんばかりのドヤ顔を金剛さんと私に向けてきます。

 

 「じゃあ霞、今日の仕事はこれで終わりでいいから朝潮さん達と一緒にご飯でも食べて来なさい。明日には帰ってしまうからね。」

 

 「え……アンタ達明日帰るの……?」

 

 満潮さーーーん!!カメラを!カメラの使い方を一刻も早く私に教えてください!

 霞が寂しそうな上目遣いで私を見つめてきます!

 シャッターチャンスです!

 

 「あ、あの……呉提督……。」

 

 「ん?なんだい朝潮さん。」

 

 「霞を横須賀にお持ち帰りしてよろしいでしょうか!」

 

 「は?いや、何言ってんの?」

 

 何をキョトンとした顔してるんですか霞、貴女は横須賀に来るべきです!

 こんなダメ男や、男を甘やかすことしか知らない戦艦のそばに居ちゃダメです!

 

 「Yes! リボンで簀巻きにしてPresentするネー!」

 

 ほら、金剛さんもこう言ってくれてます!

 だから一緒に横須賀に行きましょう!

 

 「いやいやいや!それは困るよ朝潮さん!僕のママを連れて行かないでくれ!」

 

 何がママですかこのマザコン!

 少しは私の司令官を見習ってください!

 駆逐艦に母性を求めるなんて恥ずかしくないんですか!

 

 「提督、心配しなくてもNo problem ネー!私がいるじゃない!」

 

 「どっかの駆逐艦が言いそうなセリフ言ってんじゃないわよ色呆け戦艦!私が横須賀に行くわけないでしょ!」

 

 あれ?また二人に火が点いちゃいましたよ?

 どうしてこうなったんでしょう。

 私はただ、霞を横須賀に連れ帰りたかっただけなのに。

 

 「誰が色呆けネー!時間と場所はわきまえてマース!」

 

 「わきまえてないでしょ!暇さえあれば司令官にすり寄ってるじゃない!」

 

 これは当分収まりそうにないですね、困ったものです。

 仕方ない、先に戻って大潮さん達のお手伝いをしましょう。

 巻き込まれてケガとかしたくないですし。

 

 「え?ちょっと朝潮さんどこに……?」

 

 「先に部屋に戻ってます。いつ終わるかわかりませんので。」

 

 「焚きつけておいて!?せめて止めるのを手伝ってくれませんか!?」

 

 え?私が焚きつけた?人のせいにしてはいけません、私は何もしていませんよ?

 

 「提督は私のものネー!」

 

 「誰がやるか!少なくともアンタの所にはお婿にやらないから!」

 

 ほら、二人とも呉提督の事でケンカしてます、私のせいじゃありません。

 

 「では、失礼します。」

 

 「ちょ、待って!朝潮さん待って!」

 

 私は霞と金剛さんの罵り合いをBGMにして執務室を退室した。

 さて、霞に気づかれない様にパーティの準備をしないと。

 

 『やめて!やめて二人とも!せめて外で……あーーー!』

 

 室内から呉提督の悲痛な叫び声が聞こえて来ますが……まあ、呉鎮守府の問題なので私には関係ありませんね。

 

 「え~と、どうやって部屋に行けばいいんだっけ。」

 

 私は、騒ぎを聞きつけて集まって来た呉の職員や艦娘達をかき分けながら部屋に向かって歩き出した。

 


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