evangelion×fleet girls sequels ~BLESS FOR HOPE DRIVERS~   作:因果の紫音

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第壱話 Boy meets boys / 巡り逢う運命@二〇一八年四月

「提督養成機関・ワダツミ二期生諸君!諸君はこれから未知の中を歩んだ先達の航跡、その実りを学び、自らの手でその続きを描き続けなければならない……とはいえ、我々にとっても深海棲艦との戦いは未知に満ち満ちており、諸君が最後に頼れるのは、自分自身、そして諸君と共に歩む艦娘たちであることをゆめゆめ忘れてはいかん!」

 

提督養成機関・ワダツミ。

 

提督不足を解消すべく2017年9月に設立された、全寮制の育成機関であり、妖精さんが見える者、ベテラン提督により推薦された者、提督を志願する者はISOMCAP*1及び海軍の審査を経て問題無しと認められた後にここに入ることになる。

 

この少年――碇シンジ井伊雁 紫帆(いいかり しほ)もまた、ワダツミにいた。

 

 

「ミッチェルよ、さっきからなんだってため息ばかりついておるのだ」

 

「光輝だ――私が可愛い少年を拾った話はしたと思うが――」

 

「聞いてないぞ――氷雨光輝よ」

 

「――話さなかったか?」

 

「この初宮《ういみや》・ゴットヴァイス・元貴(もとたか)が覚えていないとは、つまりそういうことであろうよ」

 

「大した自信だな……それで、その少年、名を井伊雁紫帆とした」

 

「……ほーう?」

 

「……()()()ではなく、()()()というべきだったか」

 

「――実物を見ないことには本当に可愛いかどうか分からぬな……」

 

「見るか?」

 

「見せ給え」

 

「どーぞ」

 

「……イイカリシホ……ほーう、見る人が見れば少女と間違えてしまいそうな顔ではあるな……なるほど?光輝よ――」

 

「むっ」

 

「――貴公が拾ったのは第三の少年(碇シンジ)であるな?」

 

「否定はしない」

 

「是非会って光輝の愉快なエピソードを耳打ちしたいものだ……」

 

「元貴……私にはお前が愉快に思うようなエピソードの心当たりがないのだが」

 

「おねだりCDの無料配布に出くわして『金も出せないレベルの音楽をばら撒くのがお前らのやり方か?』とイースター社の社員に3千円を叩きつけたのはなかなか愉快だったぞ?」

 

「まあ、ほしな歌唄のシングルなら3千円でも安いからなぁ……もっと出しても良かったんだが、あいにくその時は持ち合わせがなかった」

 

「あれは全財産だったのか!馬鹿か!?」

 

「ほしな歌唄を知らないからそんなことが言える」

 

「しかし、今はそのCDを持ってないと聞いたが……」

 

「妙な――今にして思えば妖精さんだったか――を引き連れた少女に『危険だから返せ』、と言われてなぁ……妙に覇気があった、あれは信念を貫くものの眼だ……そして夢の価値を知る眼だった」

 

「フン……眼にやられたか」

 

「その頃、意識不明続出事件があっただろう?どうやらおねだりCDによるものだったらしくてね」

 

「なるほど――っと、話が逸れてしまったな、彼のことだが――天の聖刃(ヘヴン・エッジ)に狙われる危険が高い、貴公だけでは不安極まりない……」

 

「失敬な……なら元貴も手伝え」

 

「言われずとも――可憐な少年を守ることは高貴なる義務(ノブレス・オブリージュ)にも叶うこと故、な」

 

「単純に愛でたいだけだな……私が言えたことではないが」

 

 

 

「……で、溜め息の理由をまだ聞いておらんぞ」

 

「彼を提督にしようと思ってな、今日ワダツミに入るのだが……」

 

「待て待て、彼を提督に?――悪い冗談だな」

 

「冗談で言ってる訳じゃない……提督になれば当然艦娘がそばにいるわけだから、まあ少しは安全が増すだろう?」

 

「まあそれは一理あるが」

 

「深海棲艦との戦いの最前線に立つわけだから、印象も多少は良くなるかもしれない」

 

「……使徒戦役の前線にで奮戦したにも関わらず人類の敵呼ばわりされた少年を俺は知っているぞ――」

 

「しかし一度ならず二度までも人類の未来のために奮戦した、となればどうだ?」

 

「あまり期待はしない方がいいかもしれんが、……まあそれはそれか――いや待て」

 

「なんだ」

 

「そもそも妖精さんは見えるのか?」

 

「見える、ただまだ彼の周りの妖精さんは少ないようだが……これについては彼の心持ち次第だな」

 

「フン……まあ、少しぐらいなら協力してやらんことも、ない」

 

「感謝する」

 

 

「災いの子が蘇った……(しい)さねばならぬ」

 

「今こそ試しの悪貨を世に……良貨を駆逐し、災禍を粉砕せよ……虚奏の黒死(デッドエンドノワールレーベル)よ、今こそ断罪の刻、ゆめゆめやり損なうなよ……」

 

天の聖刃(ヘヴン・エッジ)が動く。

 

「かつて多くの災禍をもたらした領域……我らが活用してくれよう」

 

机上の地図には。

 

 

 

《《旧イースター社技術開発研究区域》、

 

 

 

と記されていた。

 

 

「霧崎教官、お疲れ様です……ところで、彼はどうでしょうか」

 

「おや青倉くん、久々ですねぇ……彼、というと誰かね??」

 

「井伊雁紫帆……既に噂で持ちきりです」

 

「ふうむ……今はまだ、ただ妖精さんが見えるだけの臆病者、でしょうな」

 

「それは……面白い、ですね」

 

「ほう……面白い、とな」

 

「臆病者ほど大きく伸びる、軍人で死ぬのは身の程知らずで血気盛んな奴から、と相場は決まっています」

 

「いや、彼は世界の全てに対して臆病ですからねぇ……まずそこから、ですな」

 

「心を閉ざしている、と……」

 

「まあつまらなく言ってしまえばそうなりますか」

 

「……彼と話してみたいですね」

 

「やめておきなさい、今彼に必要なのは静けさです」

 

「今日はやめておきましょう」

 

「それがいいですね」

 

 

その一時間後。

 

青倉貴志少将は呆れていた。

 

(……あまりにも知らなさすぎる!)

 

そりゃそうだ……イ級を魚の新種だと思う奴などいるわけが無い、提督を志すものならなおさら!

 

……いや、見ようによっては普通に魚にも見えるが……近海ではもっとも出現、目撃件数の多い深海棲艦である。当然知っていてしかるべきだろう……

 

「あれ、魚じゃなかったんだ……道理で血がまずいわけだ」

 

…………ん?

 

……んんん?

 

 

 

「なんで血の味知ってんの!!??」

 

直前とは別のベクトルで呆れる青倉少将、そりゃそうだ……深海棲艦の血を飲もうなんて普通考えない!

 

「一体何があったらそんな馬鹿げたことしようと考えるかね……!」

 

「昔、死にかけた事があって……食べ物もろくに無かったから、()()()の血を啜って」

 

「……島だったら食いもんぐらい……」

 

「荒れ果てていて草の一本もなくて……仕方なく、はい」

 

「そ、そうか……」

 

霧崎教官に「あいつイ級の血を飲んだことがあるみたいですよ」って言ったら面白い顔が見れそうだな……と思わず顔が綻んでしまったが私は悪くない。

 

 

「えー、鎮守府には各戦域への迅速な出撃を可能にするために量子跳躍安定化門とかクォンタポータルと呼ばれるものがある、これは赤木……ああ、ツリーの『木』だからな?キャッスルじゃないからな?空母の赤城とは字が違うからな?……んで、赤木リツコって」

 

「リツコさん!?」

 

「井伊雁、落ち着けー……んー、まあ、その赤木リツコが開発したワープシステムが、その量子跳躍安定化門(クォンタポータル)な訳だが……くれぐれも私用は厳禁だかんな?あれめっちゃ維持にエネルギー食うらしいんだわ……まあ接続先は軒並み深海棲艦がうようよする激戦区だから、私用のしようもない……おーいここ笑うとこだぞー」

 

「赤木リツコ……こんなもんも作ってたのか……」

 

「ネルフもなかなかやるな……」

 

「ストラスバーグ、浅利、私語は慎めよー」

 

「「申し訳ございませんでした!」」

 

「どこまで話したかね、あーそうそう、んでそのポータルなんだが、一応戦績に応じて順次解放することになってんだわ……近場も守れない戦力でサーモン海域行ったってお一人様艦隊(戦艦レ級)の良い的になるだけだからな……そーれーでー、だ……まずは鎮守府近海のポータルを解放するために……諸君には自力で資源をかき集め、建造をしてもらう」

 

「じ、自力で!?」

 

「そうだ!具体的にどうするかは自分で考えたり他の人と話し合ったりしろ、期限は――2週間、だ」

 

「ええっ!?」

 

「そして建造するためには妖精さんとのコミュニケーションも欠かせない、運が悪ければ資源が虚空に消えるだけだ……諸君が思うほど時間はないぞ、さあ急げ!解散!!くゎいさぁ〜んっっ!!」

 

 

5日後。

 

「はぁ……」

 

井伊雁紫帆、未だ建造せず。

 

「貴公……提督になる気がないなら辞めてしまえ、大体艦娘を信じられない時点で失格であろう」

 

「うぅ……」

 

「しかも信じられないならまだしも恐怖を抱きさえする、そのような輩はこの初宮・ゴットヴァイス・元貴の隣に立つことすら本来はとても叶わないのだが……とまあそういうわけで、だ」

 

「ふぇあ?」

 

「……この初宮・ゴットヴァイス・元貴が貴公――井伊雁紫帆を少しばかり揉んでやろう」

 

なにが『そういうわけで』なのだろうか……しかしツッコミは不在であった。

 

「……よろしく、お願いします」

 

「フッ……良い返事だ」

 

 

 

「待ちたまえ元貴!」

 

 

 

「……誰かと思えばミッチェルか」

 

「光輝だ」

 

「貴公も来るか?」

 

「えっ、えっ、光輝さんと……ええと、初宮さんが、知り合い?……なんですか?」

 

「ああそうだ……小学校からの腐れ縁でね」

 

「フッ……然り、とのみ答えよう――して、光輝よ、敢えて問おう――この軟弱者のどこに惚れたのかね」

 

「私は、彼は軟弱ではないとさえ思っているのだ……失うことの痛みを知る者こそ、真に強いとは思わないか」

 

「敢えて言おう、くっそどーでもいいと!」

 

「うん、少し落ち着こうムサシ!……うちのストラスバーグがご迷惑を……」

 

「ムサシ・リー・ストラスバーグに浅利ケイタだったね、私は大丈夫だ……多分紫帆と元貴も大丈夫、だと思いたいが……」

 

 

 

 

 

「ええい、天下に覇を競わんとする美青年たちの壮絶な語らいに生半可な覚悟で首を突っ込むな殺す覚悟も固まりきらぬ職業軍人の雛っ子が!―――と、貴公がうなだれる必要はないのだぞ紫帆……!」

 

 

 

軍人貴族かぶれの貴人(奇人)……初宮・ゴットヴァイス・元貴。

 

()()を見定め()の底にあるものを見通す商売人……氷雨光輝。

 

 

 

そこに井伊雁紫帆……もとい、碇シンジを加えたこの三人は、後にワダツミ三馬鹿トリオ、と呼ばれる事になるとかならないとか。

 

 

 

 

 

そこ、()馬鹿()()()で意味が被っているとか言わない。

 

 

 

 

 

「……で、とりあえず貴公の初期艦が誰になるのか……運試し、といこうじゃないか」

*1
国際特異海洋脅威対策推進計画(International Singular Oceanic Menace Countermeasure Advance Project)の略称。深海棲艦対策を目的に設立された特務機関。『例によって例のごとく国連直属ということになっているが、これまた例によって例のごとく日本がかなり発言力が強い立場にある。新世紀になって日本は奇貨に恵まれたといえよう』(出典 民明書房『失格カメラマン――相田ケンスケ、その半生――』より)




光輝と元貴はオリキャラです、念の為……


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