evangelion×fleet girls sequels ~BLESS FOR HOPE DRIVERS~   作:イミテリス紫音

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第伍話 Progress/出会いがいっぱい@二〇一八年四月

「……これは大きすぎるのです」

 

「電にも私にも、とても積める代物ではありませんね……」

 

「え、無理なの!?」

 

「無理ですね」

 

「無理なのです」

 

電と鳳翔の両方に無理と言われ落ち込むシンジ。三人が見ているのは――

 

 

二人が遠征に行っている間にシンジが開発した、3()5().()6()c()m()()()()であった。

 

……しかし、軽空母にも駆逐艦にも大きすぎるので、今はまだむやみに場所を取るだけのただの飾りである。

 

「35.6cm連装砲は大事に取っておくのが良いのです」

 

「そうだね……さてと、新しい子誰か来ないかなぁ」

 

「建造ですね、碇提督」

 

「そう。……お願いします、ほら二人も」

 

「「お願いします」」

 

「まかされた」

 

「あのー…おかしは?」

 

「もちろん準備してるからね…はい、エクレア」

 

「これはよいものです」

 

「ばっちりこころえた」

 

「ばんじおまかせを」

 

溶鉱炉から光が迸る――

 

 

 

「僕は白露型駆逐艦、時雨。これからよろしくね」

 

「碇シンジと言います、こちらこそよろしくね」

 

 

 

「……って、まだ光が収まらないみたいだけど……」

 

「そういえば、出てくる時に誰かを追い越したような気がしたけれど……」

 

 

 

「まったく、困ったものだわ。本当なら暁だけが出る予定だったのに……こほん、まあいいわ、暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね」

 

(いかづち)よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!」

 

「響だよ。急に押しかけて済まなかったね……ともあれこれからよろしく頼むよ」

 

 

 

「ま、待って、ええと……」

 

「また会えたのです……!嬉しいのです!」

 

「ん?また……って?」

 

「碇提督、あの四人は姉妹艦の関係にあるんです」

 

「それで何となく雰囲気が似てたんだ……雷ちゃんと電ちゃんは似てるどころの話じゃないけど」

 

「昔も非常によく間違われたのです、漢字もそっくりだったので手紙の宛先が間違ってることもしょっちゅうだったのです」

 

(……その記憶が今の二人に影響を及ぼした、のかな?)

 

「みんな、改めて……これからよろしくね」

 

 

所変わって……

 

第3新東京市郊外、資材倉庫群の一つ、その地下に……

 

祭火(フェスタ・イグナイト)の異名を持つ鎮守府があった。

 

無尽蔵の資源資材を溜め込み、最前線で戦果を挙げ続けるその鎮守府は、開戦当時からトップを走り続けていた――

 

その、祭火(フェスタ・イグナイト)が、今、揺れていた。

 

「相田元帥が、演習に……!」

 

ここ最近、祭火(フェスタ・イグナイト)が他の鎮守府と演習を行う時に提督が出張ることは滅多になかった。

 

彼女たちを率いる相田元帥は高校生の身。普段は通学、休日は最前線で攻略部隊の指揮……なかなか演習に顔を出すことは少なかったのだ。

 

ところが、今回珍しく、相田提督自ら演習に顔を出すという。

 

「まあね……まあ、演習はついでなんだけど、ね」

 

「では……本命は」

 

相田元帥の初期艦にして秘書艦である、大和が問う。

 

「姫や鬼の群れから生き延びた奴がいるらしい……人間だぞ」

 

「……ちょっと拍子抜けしました」

 

「うん、オレも正直大した話題ではないと思うんだけどな……ワダツミじゃかなりの大ニュースらしくてね」

 

「それで、仕方なく……ですか」

 

「そしてもう一つ。――惣流のことだ」

 

「彼女も提督として艦隊の指揮を取ることとなったのでしたね」

 

「そう、そこでISOMCAPのユーロ支部とISOMCAPのアメリカ支部が取り合いを始めた……まあどっちも主戦場だからね、優秀な提督は喉から手が出るほど欲しいわけさ」

 

「でもそれだけでは相田元帥は興味を持ちませんよね」

 

「大和さんさぁ……オレをなんだと思ってるわけぇ?いや〜んな感じ!ま、冗談はともかく、だ……惣流がエヴァパイロットなのが不味かった、ISOMCAPの争いにNERVのユーロ支部とアメリカ支部が首を突っ込んできたわけ」

 

「はぁ……あれ?我が国は動かないのですか?」

 

「なにしろ本部分裂、下手したら解体の危機だもんな、他所の争いに首を突っ込んでる余裕はない……ってのがネルフ上層部の本音、逆に葛城二佐たちは惣流を日本に呼び寄せたい……とはいえ呼び寄せるのは惣流がどこに所属していてもできるし、わざわざ首を突っ込んで三つ巴にするまではない」

 

「ネルフが動かないのはそういった事情があるのですね」

 

「んで、こっちの海軍としては……正直、惣流を呼ぶメリットが薄い」

 

「ゴットヴァイス提督……いや、初宮提督?がいるからですね」

 

「あいつのおかげでオレたちはドイツとの協力関係を結べた、ネルフのどさくさに巻き込まれる危険を冒して惣流を巻き込む必要はないわけだな」

 

と、思案顔の大和、他の可能性を提示し――

 

「ネルフは、惣流さんを呼び戻せば、艦娘の……あっ」

 

現状に気付いて自分で打ち消した。

 

「それこそ葛城女史が提督のサポートをしている訳ですから、艦娘についての情報をある程度は得られ……さらに我々との協力関係を結ぶこともできていますね」

 

「そういう意味でもいまさら、というわけだね……ほい」

 

「ありがとうございます」

 

お茶を飲みつつ、話は続く――

 

 

さて、ワダツミでは……

 

「ええと、電ちゃんでしょ、鳳翔さんでしょ、そして……」

 

接続振動強度測定を終え、艦娘接続振動強度確認システムから自分が指揮している艦娘たちの接続振動――つまり、艦娘と提督の共鳴しやすさ――を確認するシンジ。

 

(接続振動とか、共鳴のしやすさ、とか言われても理解できなかったけど……多分シンクロ率みたいなものかな、と思ったらなんか腑に落ちたんだよね)

 

「……さてさて、と」

 

艦名艦種接続振動(Linkage Vibes)
駆逐艦〇二・四五±〇〇・二五
鳳翔軽空母〇二・二六±〇〇・〇八
時雨駆逐艦〇一・一五±〇〇・二五
駆逐艦〇一・〇八±〇〇・一二
駆逐艦〇一・一三±〇〇・一五
駆逐艦〇一・〇四±〇〇・二六

 

「初めて使ったけど読みにくいよ……」

 

「なんでもアラビア数字と小数点を用いた表示にしたら不具合が起きたらしい、それを解消するためにとりあえず漢数字表記にして、その後改修が行われずに今もこの有様、という訳だ……なに、そのうち慣れる」

 

「元貴さん、いつの間に」

 

「ふうむ……」

 

「――ちょっと、電源落ちた!」

 

「俺が落としたのだ、接続振動強度(レベル)*1はあくまで目安に過ぎないからな?もっとも、改装の際は一定の接続振動強度(レベル)がないと許可されないから、改装の際は多少大事にもなるが……やはり最も注視すべきは個々の艦娘の経験だ、忘れるなよ」

 

「わかりました」

 

「フッ……良い目ができるようになったではないか」

 

 

「青倉教官、――陣形についてご教示いただけませんでしょうか」

 

「……ろ、6人!?ほう……よし分かった、では井伊雁君、――陣形について教えよう」

 

「ありがとうございます」

 

「基本的に、よく使われる陣形は5種類ある」

 

「そんなに……」

 

「まず単縦陣、まっすぐ縦一列で突っ込む攻撃的な陣形だ……基本的にはこれを使うことが多い」

 

「なるほど……縦に、一列」

 

「次に複縦陣、縦に二列だ。攻撃力は単縦陣と比べ若干劣るが、命中精度が高い」

 

「よく避ける敵に効くわけですね……」

 

「ここからは使うシーンを選ぶ陣形だ。主に輪形陣と単横陣を抑えておけば良い」

 

「単横陣は……横一列、ですよね。横だと何が嬉しいのでしょうか」

 

()()()()()()()()()()()敵を見つけ、より優位を持ってことができる」

 

「そんなことって……あるんですか」

 

「ある。――潜水艦だ。いいか、潜水艦隊に対抗するには単横陣だ、よく覚えておけよ」

 

「……あの」

 

「なんだね」

 

「……もし、潜水艦がいるにはいるけど、潜水艦ではないのが多い場合、攻撃力が落ちますよね」

 

「む、いいところに気づいたな……その場合は複縦陣だ、単横陣ほどではないにしろ、こちらも潜水艦にはそれなりに優位を取れる。対潜と対水上艦を両立させたいときに有用だな」

 

「ありがとうございます……それで、5つ目は?」

 

「梯形陣、斜めだからはしご形だ。戦闘において意図してこの形を取ることはあまりない。本来は突撃用の陣形だが……深海棲艦相手にわざわざ突撃してもいい的になるだけだからな、そんなに使わない……全く使わないわけでもないが。意図しないケースとしては、単縦陣と単横陣の切り替えの際になるくらいだな……さてここで問題」

 

「はいっ」

 

「戦闘以外で梯形陣を用いるケースが少ないながらかつてはあった。それは何か」

 

「……」

 

「……」

 

「……わかりません」

 

「そうか、では正解だ。正解は、観艦式」

 

「……うーん?」

 

「もっとも、艦娘の話ではなく、艦艇……彼女たちがまだ船だった頃の話だ。船の場合、斜めだと……よく映えるんだ」

 

「――あっ!」

 

「どうした」

 

「確かに……ケンスケが見せてくれた映像、斜めだったかも!」

 

「……ケンスケ、か」

 

「はい、相田ケンスケ、といって――」

 

「その話はまた今度にしよう、それよりも……陣形の理解はできたか?」

 

「はい、多分……しっかり復習します」

 

「うむ。――では、ここからは演習だ」

*1
『接続振動、即ちLinkage VibesはLvと略されるが、これがレベルとも読めること、また接続振動強度と艦娘の強さの間にはある程度正の相関関係が認められることから、いつしかレベル、と呼ばれるようになったらしい……もっとも、いちいちレベルを気にする提督はそこまで多くはないし、数字でしか艦娘を評価できない提督には、艦娘はそんなに懐かないようである』(出典 民明書房『失格カメラマン――相田ケンスケ、その半生――』より)


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