どうやら俺はテンプレ能力を持って転生したらしい   作:通りすがりの外典マン

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遅くなりますた。アガルタ普通に面白かったです。つまりグレンラガンってことやろ......?







最近天丼を食ってない気がする。

 

 

 

「始末した......ですって?」

 

 その瞬間、エレノア=シャーレットから濃密な殺気が放たれる。普段真意を隠す彼女にしては珍しい感情の発露である。

 シオン──否、シオンの名を騙る青年は思わず頬をひきつらせた。

 

「お、落ち着いてくれ。あんな異能者の一人や二人程度、他で調達すればいいじゃないか」

「そんな掃いて捨てるような有象無象の能力とは違うのですよ、シェロ=イグナイトは!」

 

 歯噛みする。あの規格外の能力を取り逃がしたどころか殺したとあれば、大導師様に対して面目が立たない。

 直感的に理解しているのだ。あの能力は、使い方によればあのセリカ=アルフォネアにすら届く牙になりうると。

 

「......《天位》の方々であれば記憶改竄など容易いこと。生かして連れ帰れば如何様にもできるというのに、こんな所で殺したなど......!」

 

 第三団(ヘヴンス)天位(オーダー)》。天の智慧研究会において最高幹部に近い彼等であれば肉体の改造はおろかゼロからの人格改竄すらも可能だ。寝返らせる手などいくらでもあるというのに、この男は。

 

「......あなたの処罰は追って通告します。まあルミア=ティンジェルを回収出来たならば最低限の目標は達せられておりますし、ええ......」

 

 自分を納得させるように呟き、しかし爪を噛んだ。エレノア自身、異常に執着してしまっていることは理解していた。だが理屈など抜きにして本能の領域で察知していたのだ。

 

──あれはいずれ"英雄"の領域に届く。今は弱者であろうと、最終的な到達点は人の域を越える。人外と称される第七階梯(セプテンデ)と同じ、超越者(エクシード)と呼ばれる存在へ──。

 

「そんな駒を(どぶ)に捨てるなど......!」 

 

 苛立ち混じりに吐き捨てる。

 

 しかし。バークスはルミアという最高の素材を手に入れたことで狂喜乱舞し、シオンの姿を借りた青年が怯え、エレノアが激怒している混沌の最中──リィエル=レイフォードは、ただ無表情で立ち尽くしていた。

 

 否、それはいつもの無表情とは異なる。未だに痛みの残る頬を撫で、リィエルは僅かに眉を寄せて思案する。

 

「シェロ......」

 

 自分を殴り飛ばしてせせら笑った少年。血塗れで瀕死、しかしそれで尚戦意を失わなかった同級生。

 システィーナ=フィーベルは撃たなかった。グレン=レーダスでは届かなかった。そんな中で唯一自分を殴ってでも止めようとした少年の名を反芻する。

 

「......シェロ、イグナイト」

 

 自分は止めて欲しかったのだろうか。だが止まってしまえば意味を失う。兄のために生きると誓った自分にはこんな生き方しか出来ないというのに、止めて欲しかったのだろうか。

 

......答えは出ない。暗く濁った瞳を揺らして、リィエルは思案し続けた。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 契約せよ。

 

 契約せよ契約せよ契約せよ契約せよ契約せよ。

 

 力ならばくれてやろう、とその声は謳う。

 

 全てを救わせてやろう、とその声は嗤う。

 

 故に寄越せ。その身体を寄越せ。その記憶を寄越せ。その魂を寄越せ。その血の一滴に至るまで全てを捧げよ。

 

 さらば与えよう。無限の剣を。

 一部のみではなく、真に英雄足り得る力を。

 

 

「......黙れよ」

 

 否定する。

 誰の記憶かは知らない。呪いのような声は歯車のようなシステムじみた何かだ。切り離されたそれに意味はない。

 

 

──狂い哭け、お前の末路は英雄だ。

 

 

 だというのに。嘲笑うようなその声は、嫌に耳についた。

 

 

 

 

 

 

......目覚める。

 

「............ぁ」

 

 小さく呻き声が洩れた。目を開けば、まず視界に入ってきたのはここ二三日で見慣れた旅籠の天井だ。状況を把握出来ず起き上がろうとするが──上半身が持ち上がらない。

 

「うん......?」

 

 首を傾げる。そして首をぐるりと巡らせた先にあったのは、何故か俺を枕にしてすやすやと寝息をたてるフィーベルだった。

 

「......、............どゆこと?」

 

 よくわからない。とりあえずフィーベルの頭をベッドサイドへとずらし、ひきつるような胸の痛みに顔をしかめつつ泥のように重い身体を起こす。体調は最悪。最低限動けはするようだが──。

 

「ようやく起きたか、シェロ=イグナイト」

 

「ッ!?」

 

 驚いて部屋を見回す。よく見ると、暗い部屋の壁に寄り掛かるようにして一人の男が立っていた。紺色の髪に鷹のように鋭い瞳の青年は、確か。

 

「アルベルト......フレイザー......?」

「こうして顔を合わせるのは二度目か。では手短に状況を説明しよう」

 

 黒い軍服に身を包んだ男は淡々とそう告げる。そうして一分とかからず簡潔に語られたのは、俺が右胸を貫かれ海にポイ捨てされた後のこと──即ちリィエル=レイフォードによってルミア=ティンジェルが拐われ、俺が白魔儀【リヴァイヴァー】によってかろうじて蘇生されたという事実である。

 

「そこの娘に感謝しておくがいい。私とあの間抜けでは到底蘇生させるには足りなかった。潜在魔力量(ポテンシャル)で言えば私すら上回る逸材だぞ、そのフィーベル家の娘は」

「......そう、ですか」

 

 助けられたこと、というよりは巻き込んでしまったことに対する罪悪感が湧く。俺のような壊れかけ──いや、壊れることが確定している人間ならばいい。ルミア=ティンジェルのように尋常でない精神力であれば耐えられる。だが、システィーナ=フィーベルにはそんな異常性も覚悟もない。才能が突出していたとしても精神面、人格面で言えば驚くほどに普通で正常なのである。

 

 だから恐らく、こうした帝国の闇に踏み込めばきっと彼女は"壊れる"。傷付いて、悔やんで、病んで、そして苦悩した果てに死ぬのだ。

 

──彼女はきっと、英雄にはなれない。

 

「......さて。状況が理解出来たようならば一つ問おう」

 

 フレイザーがそう発言した瞬間、ぐっと部屋の温度が低下したような錯覚に襲われる。冷徹に細められたその瞳がこちらを射抜いた。 

 

「シェロ=イグナイト。君は何者だ?」

 

「......質問の意図がわかりかねます」

「そうだな。なら簡潔に問おう。君の傷口の剣、あれはなんだ?」

「............、......それは」

 

 一瞬だが、表情が僅かに歪んでしまったことを自覚する。そして向こうもそれを把握していることだろう。どう言ったものかと思考し、正直に言ってしまうかと口を開いたが──寸前で閉じる。

 帝国において異能者に対する忌避感を覚える人間は少なくない。その中には過激派も存在している。もしアルベルト=フレイザーがそれだとしたら──?

 

「......イグナイト公爵家の眷属秘呪(シークレット)、というわけではあるまい。あれは一定範囲内の炎熱に対する絶対制御能力だ。かといって通常の魔術にあんな効果を発揮するものはない。そして固有魔術(オリジナル)かと思いもしたが、あくまで魔術の範疇にあるそれが無意識状態で発動する可能性は低い」

 

 一拍。

 

「シェロ=イグナイト。君は異能者だな?」

 

 無言で応じる。相手がどのような立場にあるのかすらわからないのだから、ここで下手に答えれば危険だ。沈黙は肯定と受け取られるだろうが、何か言う方が余程危険──

 

「っ、異能者ってのは本当なのか!?」

 

 と。そこで突然の声に驚いて俺は扉の方を見る。そこには真新しいシャツを着たレーダス先生の姿があった。やはり戦闘でぼろぼろになったから着替えたのだろうか。

 

「貴様は少し黙っていろ」

 

 鬱陶しげにフレイザーは眉を潜める。そして答えを促すように此方へ再び目を向けた。

 

「......ええ、そうですよ。俺は異能者です」

 

 諦めてそう答える。どうせほぼ確信しているのだ、隠し通せるものではない。

 

「じゃあ、前に固有魔術(オリジナル)だって言ってたのは......」

「いえ、あれは別に強ち間違いでもないですよ。俺の異能は多少魔力を食う......異能か魔術か未だによくわからない、奇怪な能力です」

 

 自分でも未だその全容は把握してないのだ。第一原典の【無限の剣製】とは似通っているようでいて全くの別物に近い。

 

「君の能力は剣を生成すること。それだけなのか?」

「......ええ。ただ剣を早く錬成することしか出来ない能力です」

「そうか。確かに素材を要求せずに一瞬で錬成することは確かに驚異的ではあるが......解せんな」

「何がです?」

 

 ちらりと此方を一瞥し、フレイザーは言った。

 

「何故あのエレノア=シャーレットが、君にそこまで執着するか──だ」

 

「ッ......!?」

 

 あいつが裏にいるのか。そう言えばまた会うことになる的な事を言っていた気がしないでもないが。

 

「......奴は君が瀕死となり海に落とされたと知った瞬間、明らかに狼狽していた。つまり君は奴等にとって相応の価値があるらしいな」

「......どう、でしょうね。単に珍しい異能だというだけの理由かもしれませんよ」

 

 正直なところ俺にもわからない。あのクソアマとは一度しか遭遇していないはず。そうまで狙われる理由などこの異能以外にないはずだ。

......ふむ。ひょっとして一目惚れというやつか。やだ、僕様ちゃんってば罪な男......うぇっ。

 

「どうした?」

「いや、ちょっと気持ち悪くなっただけですから......」

 

 正直自分の手でピンク色の脳獎を撒き散らして殺した女が笑顔で迫ってくるとか悪夢以外の何物でもない。思わず真顔になりながら次こそは殺し尽くすと誓い、身体機能を確かめつつ立ち上がる。

 

「それで、レイフォードの処断はどうなるんです?」

「......あれは元々こうなることを危惧されていた。こうまで明確に裏切ったのだ、最早擁護できる域にない」

「へぇ......それで"処分"しろと?」

 

 ぎり、とレーダス先生が歯を噛み締める音が響く。見れば、無言ながらもフレイザーの目も暗い火が灯っているのが見てとれた。何とも既視感のある光景であり、俺はうへぇ、という顔になった。

 

「......結果として不穏分子を処理し、かつ敵の拠点を洗い出すことに成功。ただし囮に利用されたのは本来護衛対象であるはずのルミア=ティンジェルで、まんまと誘きだされた天ぷら研究会とやらへの迎撃命令がようやくフレイザーさんに下された」

 

「っ──何故知っている」

「わかりますよ、そりゃ。うちの姉は控えめに言ってもクズですからね。護衛対象だろうが、天ぷら同好会をぶっ潰す手段になり得るなら喜んで捨て石にしますよ」

 

 あれは良くも悪くも"イグナイト"だ。代々特務分室の室長を受け継いできたのはイグナイト公爵家だが、同時にそれは百年以上続いてきた天の智慧研究会との因縁をも引き継いでいるということだ。

 大導師を殺すためならば如何なる犠牲をも払う。姉は──イヴ=イグナイトは眷属秘呪(シークレット)【第七圈】を継承すると同時にその殺意までも背負ったのである。

 

......それは長男である俺が無能であるが故に起きた悲劇だ。本来継ぐべきは俺だったのだ。しかしきっとそれを言えば容赦なく張り倒されるだろう。

 そして彼女は、燃え盛る業火のような瞳でこう言うのだ。「自惚れないで頂戴」──と。

 

「ですが、まあ。姉は合理的です。結果さえ見せればどうとでもなります」

「......なに?」

「わかりませんか? つまり──」

 

 長年の付き合いだ、異母姉弟とは言え性格くらいはわかっている。甘いことは好まず、ただ結果が全てだと割り切る冷徹さ。だが融通が利かないわけでは決してない。

 

「ルミア=ティンジェルを救出し、天ぷら同好会のアジトを潰し、そしてリィエル=レイフォードを正気に戻せさえすれば揉み消せるということですよ。例えば"潜入捜査"扱いにしてもらうとか、ね」

 

 手綱を握りきれていないとしても、レイフォードはそう簡単に切り捨てられるような性能ではない。可能ならば再び連れ帰ることが出来ればいいが、しかしルミア=ティンジェルが死亡した際の責任転嫁先として簡単に切り捨てられるようにしておきたい。そんな思考が透けて見えた。

 

「要するに、万事解決すればどうとでもなるってことですよ」

「......成る程、確かに君はあの女の血縁のようだな。その目は......よく似ている」

 

 その言葉にはぁ、と間の抜けた声で返す。いや他にどうしろと。俺と姉貴じゃ若干目の色違うんだけど。

 

「ま、どうせその事は俺が寝てる間に散々ぱらレーダス先生と話し合ったんでしょう? 行くならさっさと行きましょうよ」

「なっ──お前、まさか同行するつもりか!?」

「当たり前でしょう、それともここでエレノア(クソゾンビ女)の襲撃を手をこまねいて待てと?」

 

 そう言うと、複雑そうな顔で黙りこむ。俺がここにいれば生徒が巻き込まれる可能性は高く、かといって連れて行っても危険。数秒間迷った後に、レーダス先生はでかでかと溜め息を吐いた。

 

「気は進まんが......いいんだな?」

「ええ」

「死ぬかもしれないぞ?」

「死ぬ気なんて毛頭ありませんよ」

 

 まだ死ねない。そんな俺の返答を予想していたのか、アルベルト=フレイザーは頷いた。

 

「ならば行くぞ。ついてこれるな?」

「ええ。これでもそれなり程度には鍛えてるんで」

「そうか。では、一応これを持っていろ」

 

 ついでのように手渡されたそれを目にして息を呑む。内包されているのは膨大な魔力。即ち、魔導士にとって生命線とも言える貴重な道具たる魔石である。市場価格でウン十万はするそれを凝視する。

 

「いや、でもこれいいんですか......?」

「いい。そして返す必要もない。お守り代わりにでも携帯しておけ」

 

 唖然とする。そんな俺の肩を叩き、レーダス先生はこっそり耳打ちした。

 

「やけに気に入られたな、シェロ」

「えぇ......?」

 

 何処にそんな要素があったのだろうか。フラグ立てた覚えはないんだけど。

 そう困惑の表情を浮かべる俺だったが、真剣な顔で此方を見つめるレーダス先生に顔を引き締める。

 

「いざという時は自分の命を優先しろ。頼むから......死んでくれるなよ」

「......わかってますよ。それに、もうレイフォード相手に遅れを取るつもりはありません」

 

 そうか、とレーダス先生が頷く。俺を連れて行くのは彼の本意ではないのだろう。だが恐らく俺が目覚める前にフレイザーが話をつけていた。

 

「まあ、あとは何だ。白猫にちゃんと礼は言っておけよ?」

「そーっすね......どうやら、助けられたみたいですし」

 

 そう言うと、何故か微妙な表情で返された。え、なに?

 

「いや、助けられたついでにご褒美というか人生の墓場入り御愁傷様と言うべきか......」

「はい?」

「ああ、うん。とりあえず"御馳走様でした"とでも言っときゃいーんじゃねーの?」

「はい?」

 

 どーゆーことやねん。説明を求めてレーダス先生を見れば、そっと目を逸らされた。おい。

 そのまま足早に離れていく姿を半眼で見送り、俺は疑問符を浮かべながらもベッドに俯せになっている少女へと振り返った。

 

「よくわからんが......ありがとな。お陰で助かった」

 

 システィーナ=フィーベルの髪に僅かながらも俺の血がこびりついてしまっている様子を見て心苦しくなる。本当に優しい少女だ。だからこそ、もう巻き込みたくはないと強く思った。

 

「じゃあ──征ってくるよ」

 

 死ぬ気はない。ただこの少女の友人を殴り飛ばしてでも連れ帰る、それだけの話だ。

 そして俺はもう一度その横顔を一瞥し、レーダス先生を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、馬鹿」

 

 誰もいない部屋の一室。粉砕されたベランダから射し込む月光が室内を照らす中で、少女は呟いた。








アラヤ「契約、しよ?」
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