気付いたら赤木しげるの娘だったんですが、   作:空兎81

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異彩

 

※天視点

 

 

赤木さんの娘だという蓮はやはりその血を受け継ぐかのように勝負の神様に愛されていた。

 

初戦、あの原田と同じ卓でトップを取った。

 

初めての戦いということでおそらく原田は本気を出していなかっただろう。それでもあのメンツ相手に勝ち切るのは並みの技量ではない。蓮は間違いなく麻雀の才能を持っていた。

 

だが、その後蓮は打たなかった。ひろに出番を譲り自分は会場の端で横になる。

 

蓮は何故かひろを買っていた。ハワイで打った時に何か感じるものがあったのかもしれない。卓を囲んだ者同士にしかわからないもの、そういうものもあるだろう。

 

最初の戦いは原田を後一歩のところまで追い詰めたが取り逃がしてしまった。だがそれによりひろゆきの麻雀が変わる。綺麗に勝とうとする打ち方からがむしゃらに何が何でも勝ちにいくやり方に。

 

結局蓮は最後の予選通過者を決める卓までひろに譲り、ひろもそれに応えるように最後の一席をもぎ取った。

 

この戦いを経たことでひろは格段に強くなった。これが蓮の狙いだったのだろうか。

 

予選が終わり3日後に本戦となる。本戦までに向こうに柄を攫われないように皆同じ場所で過ごそうという話になったのだが、そこでとんでもない事実を知った。蓮は麻雀をたったの3回しかしたことがないらしい。

 

役もあやふやで点棒計算もできないという初心者丸出しの状態だ。だからこそあの原田相手に突っ走れたというのもあるのかもしれないが、どんなルールになるかわからない本戦にその状態で連れていくわけにもいかない。

 

本戦までの3日間は蓮に麻雀を馴染ませることにした。それまでも打てていたのだから蓮が麻雀をしっかり呑込めるようになるまでにそう時間はかからなかった。

 

予選から3日後、仕上がった蓮と東のメンツとともに本戦へと向かう。新たなルールをいくつか決めていよいよ勝負が始まる。

 

最初の打ち手は蓮と俺だった。いらない牌を整理しつつ場を見ていく。その中で蓮の捨て牌は一際目立っていた。

 

いきなり索子のど真ん中が捨ててありその隣には筒子が並ぶ。混一色か清一色か、明らかに蓮は萬子で染めていた。

 

3日一緒に打っていて思ったのだが蓮はよくこういった打ち回しをする。自分の手の内を隠すことをしない。何を狙っているか周りにアピールしリーチすることにも躊躇いがない。一見、自分の手の内を晒すことは愚かに見えるが蓮の狙いは別にある。

 

初牌の字牌を蓮がツモ切る。混一色ではなく清一色、蓮の手の高さを感じ周りの空気がピリピリとしたものに変わる。

 

となれば皆もう萬子が切れない。手を回す。あるいは安牌の確保に移る。豪腕の麻雀、自分の手を曝け出し周りを下ろしにかかる、蓮の麻雀は降しの麻雀だった。

 

そしてついに蓮の手の内から萬子が溢れた。張ったのだろう。場の緊張感もいよいよピークに達する。

 

このまま上がられるわけにはいかないと思ったのか原田が東を鳴く。ここで交代だ。

 

10巡たったので順番に皆入れ替わっていく。蓮が赤木さんと交代し俺も銀さんと交代する。少し空気が緩んだがテンパイ濃厚なのが2人もいるのだから気が抜けない。張っていないものは降りだろう。銀さんも現物を切る。

 

そして何巡かした後赤木さんが三井から出た四筒をロンといった。え、と皆が驚く中赤木さんが手を倒す。四・七筒待ち、萬子ではなかった。

 

赤木さんは交代してから全てツモ切っていた。つまりこれは蓮が用意した手役なのだ。

 

清一色で押していたかと思えばこっそりと手の中に筒子を紛れさす。剛の中に柔を、相手を討ち取る柔軟な見事な打ち回しだった。

 

赤木さんが嬉しそうに蓮の頭を撫で回していた。やはり自分の娘の活躍が嬉しいのだろう。

 

蓮は相変わらずの無表情だが嫌そうには見えない。意外と仲が良いあの2人を見ていると自分も娘が欲しくなる。嫁2人に頼もうかな、この戦いが終わったら俺もがんばろう。

 

そこからはしばらく場は動かなかった。満貫縛りがある以上そう簡単に手は作れないし作れたとしても味方からやツモでは上がれない。軽い手で相手に流されてしまうこともある。

 

その中で蓮はやはり異彩を放っていた。手を緩めない、わかりやすく高い手を張っていることをアピールしてくる。あがり切ることがなくともそれは西に圧力をかけていた。

 

蓮が仕掛けているとなるとまっすぐ行きにくくなる。牌を回し、手が縮む。だがそんな風に突っ走れば当然蓮が振ることもあった。

 

リーチをかけ、手を変えられなくなった時に僧我のロン牌を掴み振り込んでしまう。

 

だがそんな時ですら蓮は平然としていた。顔色ひとつ変えず点棒を払いその次の局ではドラを鳴き手牌を短くしながら平然とドラ三を確定させる。

 

死ぬことを恐れない、そんな打ち方、死ぬときはあっさり死ぬとばかりの強い切り方に西は圧倒されていた。

 

結局蓮は僧我と原田にそれぞれ振り込んだが代わりにあの僧我から1度直取りをしてその上さらに相手の親被りで満貫をツモあがりしている。

 

満貫を2度振り込んでいるから16000の支出だがその代わり最初の三井からの振り込みも入れると22000点分の点棒を西から奪っている。しかも僧我や原田相手にだ。蓮は東に充分過ぎるほど貢献してくれている。

 

だが蓮の残りの点棒も少ない。満貫2つに加え相手がツモあがりした時にも点棒を持っていかれているから今の蓮の点棒はあと7000だ。満貫振り込んだら終わる。だが、そんなこと関係ないとばかりに蓮は突っ走る。

 

 

「リーチ」

 

 

箱から千点棒を一本取り出すと蓮は卓の上に放り出した。振れば終わりという状況なのに蓮は緩めない。西の連中の顔色が変わる。

 

もう手の変えることのできない蓮を殺りきりたいというのが本音だろうがまだ3巡目、手も煮詰まっていないこの段階では仕掛けることが難しいだろう。

 

結局その5巡後蓮がツモった。リーヅモ、一盃口、ドラ一、マンガン。振れば終わるという状況で見事に西から点棒を奪った。

 

次の局、原田が早々に仕掛けて索子の二鳴き、染めてそうな感じだがドラが絡めば満貫はいく。おそらくあの索子はブラフで本命は筒子。

 

蓮もそう読んだのか切ってきたのは索子のど真ん中、五索。いくらブラフだと思っても中々切れないものだが蓮は自分の読みと心中できるらしい。肝っ玉が据わってやがるぜ。

 

こんな打ち回しをしていたら蓮はそうそうに振りそうな気がするが意外と蓮が振ることはない。振ったのはリーチをかけていて手替わりできない2度のみ、守備に回った蓮は鉄壁だった。

 

相手の手の中を見透かし相手の思考すら読み取っているのではないかと思うほど蓮の打ちまわしは完璧だった。流石は赤木さんの娘、打ち方が神がかっている。

 

リーチをかけなければ振らずに打ち回せるのだからかけるべきではないはずなのに蓮は満貫振ったら終わる点棒で平気で突っ込んでくる。その打ち方が西にプレッシャーを与えているのだろう。流れは東にあった。

 

蓮だけではない、銀二さんもついに仕掛けてきた。得意のガン牌を使い原田を翻弄する。しかし肝心なところで僧我に阻まれ原田を殺り切れてない。

 

あと一歩というところで原田が休憩を言い出した。勝負は後半戦になるだろう。

 

 

 

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