筍が三度の飯より大好きな主人公は、山の中で土に埋まり、筍の気持ちをしろうと……
「そんはことしてねぇぇえええ!!」
とまぁ、続き、ゴーイングです。
「と、とおりゃんせ……だと……」
化け物の少女が言った言葉に、不意に思いだしたトムの言葉が重なった。
『とおりゃんせをしている時は、決して後ろを振り向かないこと。後ろから誰かに呼ばれたとしても、家に帰るまでは……』
僕が後ろを振り向いた時はいつだっただろうか……
確か、玄関で靴を脱ごうとしていた時。あれ、それって帰宅してるんじゃ……
でも、もしそれが家の中に完全に入ることを意味していたら……どうなるんだ……
中途はんぱだったら……俺はどうなるんだ? もしかして……殺られる?
『あのぅ……聞こえてますか?……無視してたら殺りますよ?』
「いえ、全然無視などしておりません。ちっとも。一欠片も。一切」
少女はいらいらしているのか、鍵爪をこちらの顎に押し当ててくる。
このままだと僕はあっという間に殺られてしまいそうなので顔を一瞬で仮初めの笑顔に包ませ、わざとらしい返事をした。
もしかして、後ろを向いたら……ってやつがこれなのか?
デスまで一直線の新幹線に乗ってしまうことなのか?
見たところ、少女の鍵爪は相変わらず僕の首筋を狙っている。(少女のほうは、今度は学習したのか袋を開けて惣菜パンを貪っているが……)
しばらく、惣菜パンを貪っている少女の様子を観察していると……
『……たく。てめぇのせいであちら側に帰れないじゃないですか……』
そう、小さく少女が呟いた。
その意味のよくわからない単語に思わず「あちら側?」と口を滑らせてしまう。それが聞こえたのか、「キッ!」という効果音が出そうな目で睨むと、少女は怒れる獅子かのごとく叫び散らした。
『そうですよ! てめぇがちゃんととおりゃんせを行わないから、てめぇを殺さないと帰れなくなっちゃったんですよっ!!』
「え? えぇ? あちら側って……」
『俺達妖怪は大抵、人間達がある一定の条件を満たさないとこちらの世界に出てこれないし、帰れないんです! そこをあんたは『ちゃんと来た道を帰る』という条件を無視しやがったから「目標を殺す」という帰還条件しかなくなっちゃったんですよっ!』
「え? い、いやそれはそっちが後ろから急に引っ張るから……」
『いいわけ無用!! 大人しく責任とって殺されなさいやぁああああっ!』
少女は昔の「キーッ!!」と叫んでとびかかる戦隊モノのザコキャラのような跳躍でおそいかかってきた。
そ、そんな……僕の人生がこんなところで終わるだなんて………
そう、覚悟を決めた。さよなら……僕の高校生活……君の高校生活はオカルトなモノによって幕を引くことになるよ……
そう、最後のあまりにも嫌な遺言を心で呟いた時………
『ぐ、ぐぎゅるるぐぎゅるる………』
「へ?……」
変な音がなり響いた。
一瞬状況が読めなくなる。
なんだ? 今、何が起こったんだ? 僕のお腹がなったのか? いや、まさかこんな緊迫した状況に……
ふと、少女のほうを見るとお腹を押さえて悶絶している。
あ、あれ~………もしかしてさぁ……
「だ、大丈夫ですか?」
『お、お腹痛い……』
あ。さっきの惣菜パンの袋だね。
こうして、僕の命は惣菜パンの袋によって救われたようだった………
凄いね。惣菜パンの袋。
命救ったね。あと、食べたら毒だぞ。
これで第一話は終わり。
次回も読んでいただけると嬉しいです。