ロクでなし魔術講師と超電磁砲 作:RAILGUN
RAIL 1
突然だが、俺ことラクス・フォーミュラには魔術の才能がない。
というか、どう頑張っても理論が不明なもんで暗記ゲーなわけで、クソゲー確定。
大まかなルーティンとしてはルーン語を翻訳して書き取りして覚えて、発動。
そしてまさかの発動に付きまとうリスク不明と来たからね。よくこの学校の生徒はドヤ顔で魔術を披露できる。とてもじゃないが真似できない。
というのが、俺みたいな落第ギリギリの生徒の考え。ハイハイ、勉強不足ですよーだ。
そんな俺が2年に上がれたのは同級生の天使がお情けで勉強を教えてくれた上で、先生方にゴマ擦ったのがでかい。
そこまでなら学校やめろよとか思われるかもだけど、この世界じゃ魔術が使えるだけで生涯年収が違う。
俺の夢はできるだけ早く隠居して(目標は30歳)、ギャンブルでもして老後を満喫することだ。
つまり、魔術は俺の夢の足がかり。
まぁ、こんなんだから天使のお付き人であるシスティーナ=フィーベルには会うたびに睨まれたりしてる。
こんな欲望まみれな夢を持つには色々と理由があったりするのだが、やっぱり1番大きな理由はこれが
あっ、転生だからと言って神に会ったわけとかじゃない。だから格闘実はチョーできますとかいった展開は期待してはいけない。
ただ、使い勝手の悪い雷を扱える能力が少しばかりあるだけだ。
「にしても新任の先生はぶっ飛んでんなー」
朝の出来事だ。
珍しくアルフォネア先生(大陸随一のスゲー人)がHR中に教室に来てまで宣伝したレーダス先生だがこれまたぶっ飛んでいた。
一ヶ月前にやめた先生(おそらく学院の中で最もお世話になった人)の代替えできたレーダス先生は栄えあるアルザーノ帝国魔術学院の卒業生で、着任一日で体調不良でもないのに黒板に自習と書いて寝る始末。
やることもないので俺はマジで自習していた。
「ラクス君、わからないところはない?」
「あぁ、うん。多分大丈夫だと思う」
そんなこんなでレーダス先生が来てから1週間。
先生が来るまでの間にうちのクラスの天使であるルミアが話しかけてきた。ちなみに彼女は俺の勉学の師だ。
俺の単位を握ってるといっても過言じゃない。
なにを隠そう昨年俺が進級できたのはルミア大先生のおかげなのだ。
「レーダス先生が自習を繰り返すおかげで他の教科はばっちし。ただ、あの人ってばテストどうするのかな?」
「はは……ラクス君は講義よりも点数が取れれば良いって感じだね」
もちろんだ。
俺は成績がよけりゃ後はなんでも良い。
わかんなければルミア大先生の猿でもわかる講義を受けて納得すればいい。
「ご迷惑おかけします」
「ううん、好きでやってることだからラクス君が気にすることじゃないよ」
「……天使か」
「うん?」
「いいや、なんでもない。いつもありがとね」
「どういたしまして」
それからルミアと二、三程度の話をして席に戻る。
今日もこれからレーダス先生とシスティの喧嘩が始まるだろう。
それまで自習、自習。
と、そこまで考えて卒業研究のことを考えた。
本当にふと、という感じでちらついたものだ。
俺は成績だけが取り柄で実際理解しているかと聞かれるとそうでもない。
なので実力が問われる卒業研究については今の時期から考えてないと単位が死ぬ。
一応、電気系統の魔術を使った研究をできればいざという時に誤魔化せそうなのでそっち方面でいこうかなー、とか考えている。
電気だろ? 転生者だろ? なら超電磁砲やりたいやんけ?
実際にはコインを打ち出すときに生じる熱が莫大すぎてまずはそっちをどうにかしないといけない。
超電磁砲には熱遮断(既存のものより強力なやつ)にコインを打ち出す強力な電気の魔術が必要となる。ぶっちゃけ、熱遮断さえどうにかしてしまえば、あとは使い勝手の悪い俺の能力でどうにかできたりする。
「いい加減にしてください!」
教室中に響いたシスティの声で俺は卒業研究(仮)をやめた。
隣のやつに聞けばどうやらシスティの怒りメーターが上限を振り切ったらしい。
流れで勢いそのままシスティは手袋をレーダス先生に投げつけた。
「いやいや、おいおいおい。マジかよ」
システィは魔術の名門一家の生まれで誇りがあるのは分かるが、相手は仮にも先生だ。
ぶーたれようが、やる気がないロクでなしでもレーダス先生が積み上げた経験がなくなるわけじゃない。
案の上、ルミアがシスティを全力で止めるが無視。
レーダス先生が勝てば今後のお説教を禁止、システィが勝てばレーダス先生が態度を改めるそうだ。
クラス全員が中庭に移動する中で俺は一人で教室に残った。
めんどくさいのが九割であとは試してたいことが一つ。
俺は中庭の方に手を銃の形にして意識を集中する。
「へぇ……」
俺の使い勝手の悪い雷の能力は細かい操作ができない代わりに出力だけなら馬鹿でかい。
体に電気を流して肉体強化しようものなら30秒で筋肉が焼き切れて動けなくなる。劣化版のラウザルなんちゃらだ。
今は電磁波を飛ばして離れた中庭の映像を目ではなく脳で見ている。
「これは、先生は手を抜いているのか?」
状況はまさかのシスティの優勢。
どうやら先生はネタかマジか、一詠唱でショック・ボルトを放てないようだ。
映像は拾えるが音声は拾えないので大凡のことはでっち上げだがまぁ、だいたいの察しはつくというものだ。
正直なところ、拍子抜けだ。仮にも先生なんだろうに。
『違う』
「あ?」
そうだ。違う。
頭の中によぎった言葉でレーダス先生の実力をもう一度検討する。
妙に既視感があるこの感覚は時たま訪れるお告げみたいなもんだ。
転生前にこの世界について書かれた本でも読んでいたのかもしれない。なにせ、電気を操る体だ。細かいことはショートするたびに吹っ飛んでいたりする。
「まぁ、いいか。俺には関係のないことだし。雨降って地固まる的なサムシングがあるだろ」
俺は中庭の観察をやめて研究についてまとめたノートに色々書いていく。
それは少しして顔を真っ赤にして憤慨するシスティが教室に入ってくるまで続けた。
当然授業は休講。課題はなし。やったぜ。
◇
放課後になって俺は特にやることもなく、外をぶらついていた。
図書館で勉強するのもいいものだが、毎日やるのは流石に辛い。一緒にぶらつく友達? いるかよ、んなもん。
とはいえ、街遊びには慣れてないので行くところの検討もつかない。家に帰っても寝るだけだし。
ダラダラと、街を歩き続ければいつの間にか街の中心部まで歩いてきてしまっていた。
ここら辺はショッピングモールを始め多くの小店が立ち並んでいる。その中に魔術に使う触媒や教科書など一風変わった専門店も多くある。
制服を着た熱心な魔術学院生もちらほらと見かける。
そんな中で俺は数少ない見知った顔を一つ見かけた。
「あっ、ヒューイ先生!」
「ッ!? あぁ、ラクス君ですか。お久しぶりですね。元気にしていましたか?」
「めっちゃ久しぶりですね。学校を急にやめちゃうから、俺の単位が悲鳴をあげてましたよ……それで、先生?」
「はい?」
「俺が声をかけた時に見せた焦りよう。もしかして―――」
「……」
俺と先生の間に流れる緊張。
大丈夫だぜ、先生。俺は全部わかってるから!
「援助○際とかですか?」
「ゲホッ!? な、なにを言っているですか、ラクス君!」
「違うんですか!?」
「なんでそこで真剣に疑えるんですか、君は」
「でも、先生は良い歳で」
「余計なお世話です」
「給料も良くて」
「否定はしません」
「家に帰っても迎えは誰もいない」
「……残念ながらそうですね」
「なら援助○際ですね」
「先生、そろそろ怒りますよ?」
「調子に乗りましたごめんなさい」
ショッピングモールで援助○際とか言ってると注目を集めるので俺と先生は近くのカフェ―――オシャレすぎて俺一人では到底入れない―――に入った。
私生活がオシャレすぎてヒューイ先生マジリスペクト。
「学院はどうですか?」
「先生がいた頃よりかは酷いもんですね」
「というと?」
「先生の後任できたレーダスっていう先生がこれまた適当に授業するんですよね。この間はシスティと決闘して負けてたし」
「生徒と決闘? いえ、システィーナ君の性格からしてそうなるのは当然ですね」
「あ、やっぱりそう思いますか」
あいつは普段はめっちゃ良いやつなんだが、いざっていう時には暴走機関車みたいに暴れるからな。
芯が強いって意味じゃいいことなんだろうけど。
「でもあの先生はきっと強いですよ」
「いつもの
「気をつける? なににですか?」
「僕の講義の人気を抜かれないようにです」
「つーことは先生はしばらくしたら学院に帰って来るんですか?」
「どうですかねぇ。どうも長い旅路になりそうですから、当面の間はどうとも」
「先生いないと俺の単位が消し飛ぶじゃないですか!」
「怒るところはそこですか」
そうだよ(便乗)
ヒューイ先生はマジで極めるっていうよりは多方面に箸を伸ばした感じでパーフェクト学生の味方マンだったからね。
放課後は先生の研究室に入り浸った。
そんで、今日みたいにコーヒーご馳走になるわけだ。
「先生」
「なんでしょうか」
「最近はコーヒーを淹れることが趣味になりまして。まだまだ、豆の挽き方もなってないモンですが、今度ご馳走しますよ」
「……毒味ですか?」
「今先生が生徒の成長に感動するシーンですよねぇ!?」
「はっはっ、ラクス君と話しているとつい子供っぽくなってしまいます」
「会話のレベルを合わせるっていう遠回しのディスりですかね?」
「はっはっは」
「なんとか言ってくださいよ!?」
この後めちゃめちゃ話した。
◆
ヒューイ=ルイセンは然るべきときに自らの意思で動く人間爆弾だ。
彼の教師生活と呼べるものはとある少女の秘密の発覚と同時に崩れ去った。
崩れ去った日常というのは思いの外、新鮮だった。普段ではチョークを握って本を開いている時間に街に繰り出し準備を行う。
夕日が出るまでそれは続き、普段では研究をする時間に床につく。
存外に悪くないかもしれない。
それは少しばかりの違和感を感じながらも過ごしていたある日のこと。
学院を失踪という形で辞めてからしばらく経ち、
「先生!」
「ラクス君……」
遠くから声をかけてきたのはかつての生徒。学院を辞めた今でも先生と呼ぶ印象深い生徒の一人だ。
おそらくヒューイの研究室に最も長く居たであろう人物だ。
彼は成績は良いのだが実技は致命的に出来が悪い。
放課後特別教習と称して、多方面からの質問に答えていた。ラクスからの質問は的外れなものがほとんどだが、中にはヒューイにも即答できない鋭い質問もあった。
「援助○際ですか?」
「ゲホッ!?」
今のは紛れもなく的外れな質問だ。
まぁ、知らない仲ではない。
ヒューイは先生時代によく通っていたコーヒーショップにラクスを案内した。この隠れた名店は学院の中でもヒューイくらいしか知らないとっておきの場所だった。
ラクスに紹介したことに特に深い意味はない。
コーヒーを啜りながらラクスが話すのはヒューイが居なくなったあとの学院のこと。
新任の先生はどうやら生徒と決闘をおこない負ける三流魔術師のようだ。
が、ラクスによればそれは手を抜いているとのこと。
「いつもの
「気をつける? なににですか?」
「僕の講義の人気を抜かれないようにです」
うっかりボロが出てしまったが、うまく誤魔化せた。
動揺を表に出さないようにコーヒーをまた啜る。
「つーことは先生はしばらくしたら学院に帰って来るんですか?」
パリパリとどこかからかガラスにひび割れる音が聞こえた。
(あぁ、なるほどずっと感じてた違和感、それは―――)
「どうですかねぇ。どうも長い旅路になりそうですから、当面の間はどうとも」
気がつけばコーヒーはすでになくなっていた。
「先生いないと俺の単位が消し飛ぶじゃないですか!」
「怒るところはそこですか」
だが心配は杞憂だ。
ラクス・フォーミュラとはこういう生徒だ。他人の浅瀬に入ったり入らなかったりするものの沖までには絶対に入ることはない。
意図してなのかそうでないのかはヒューイにはわからないが、それがラクスを放ってはおけない理由なのかもしれない。
―――もしだ。
テロリストによる自爆テロがあったとしても。
熱を遮断することに特化した生徒が偶然にも魔法の効率をあげる触媒を持っていれば、幸いにもそこにいる人達には最悪の事態は訪れないかもしれない。
甘い考えだろう。これではテロリスト失格だ。
そう自重気味に笑いながらもヒューイは切り出した。
「そういえばラクス君は熱に関する魔法に興味がありましたよね?」
「はい?」
◇
今日も学院で筆を取る。
昨日とは違い右手でジャグリングするように弄ぶのは赤い宝石。
ヒューイ先生がくれた熱遮断の魔術を使う触媒の一つだ。
既存のものより効果をあげるにはなんらかの手段を用いる必要がある。
二重詠唱とか時差を使った詠唱よりも触媒を使った方が手っ取り早いし実現が容易だとのこと。ヒューイ先生はやっぱり天才だった。
これには初期設定として熱遮断の魔法がデフォルトで封印されてるらしい。砕けば発動するそんな感じで。
宝石砕くとかいう種族ゴリラじゃないのでそこらへんは魔法のマジカルパワーでどうにかなるんだろう。ヒューイ先生が粗悪品を渡すわけないからな!
「なんだかラクス君、嬉しそうだね」
「昨日は偶然、ヒューイ先生に会ってな。ちょっぴりイイもんを貰っちまった」
「綺麗な宝石だね。ヒューイ先生って急に退職しちゃったから心配だったけど、元気そうだった?」
「ショッピングモールで財布(が入ったカバン)片手に(男子)学生を待つくらいには元気だったよ」
「そ、それってもしかして―――」
「さぁ? 真相は闇の中、ホテルの中ってね」
「うわわわわわ」
やばい引くに引けなくなったわ。ヒューイ先生ごめん。
ま、人の噂も75日とか言うし。しばらくすれば忘れるだろう。
「ど、どうしたのルミア。顔が真っ赤よ?」
「シ、システィ!? なんでもない。なんでもないから」
いや、確実になんかあった時の対処だから、それ。
現にシスティは俺のことをガン睨みである。
「睨むなよ。ただの世間話だ。昨日はラッキーデイだったんだ」
「それがどうしてルミアの顔を真っ赤にするのよ」
「音楽性の違い?」
「バカなの?」
「あうぐっ!?」
辛口システィの素直な感想はガラスハートを容易く砕いていく。
とりあえずヒューイ先生と会ったんだって話を噛み砕いてシスティにした。するとマジで羨ましがられて話題の転換に成功した。ま、ルミアが真っ赤な理由は誤魔化せた。
今日も楽しく授業、授業!
「魔術ってそんな崇高なもんかねぇ?」
……レーダスェ。
システィ曰く、魔術は世界の理を突き詰めていくもので。
レーダス先生曰く、魔術はめっちゃ役に立ってるらしい。ただし、人殺しに限るもよう。
生徒と先生の喧嘩を見て思ったことはあーうん、そうだねって感じだった。
まぁ、勉強熱心のシスティはともかく先生に形がどうであれ理念を持ってるのは驚いた。きっと昔に何かあったのだろう。
曲がりなりにも学院を卒業した人だ。学生時代とかは大きな夢でも持っていて挫折したのだろうか。だとすれば、これはシスティに対する八つ当たりとも取れる。
……真偽不明なので大きくは出れないが。
結局、システィがレーダス先生の頬を叩いて退室。授業もいつも通りお流れとなった。
すると、俺がやることっーのは。
「リン、別にお前のせいじゃねぇーから。気に病むなよ」
「あっ……うん、ありがとう」
「おう、どういたしまして」
こういうときに一番精神的に来るのはリンみたいな気が弱くて、キッカケを作ってしまったと誤解するやつだ。
ソース? 昔の俺だよ。
さぁ、今日も素敵な放課後ライフだ。実験室でも借りて熱遮断すっか。
「まさか許可が下りるとはなぁ。さすがはアルフォネア教授、話が分かる人だぜ」
まぁ許可が下りなくてもやったんですけどね!
実験室にはいろんな設備があるが、ただひたすら頑丈なところは最も評価できるポイントだと思うね。
さて、問題の熱遮断魔法だが。これは普通の火を操るものとは異なる。
系統では運動とエネルギーを扱う黒魔術なのだがそこらへんの理解は大切だ。
「遮るよりも超電磁砲にエネルギーを譲渡すれば更に高威力になるんじゃね?」
圧倒的閃きだ。俺は天才かっ!?
ただし、そんな魔術はないので俺の固有魔術の製作から始まるわけだ。
一応候補はヒューイ先生に教えてもらっているが、それは遮断であってエネルギー変換じゃない。
遮断でも超電磁砲のエネルギーは消しきれないし。俺の腕どころか体が消し飛ぶ計算だ。
「《炎の精霊よ 来れ 我らを祝福せし偉大な万象よ 閉じよ》」
って寒っ!?
うぉぉぉぉなんか熱遮断してるっぽい。けど、マナがごっそり持ってかれた気がする。
とりあえず解除っと。
「これでも超電磁砲の余熱を消しきれないとか効率わるすぎぃ!」
厳しいものがある。
と、そこで扉の開く音が。
「あ、あれ? 放課後の実験室の無断使用は禁止だよ?」
「お前も同じクチじゃねぇか、おい」
「てへっ」
ルミアはとても可愛いので許す。
勉強熱心だなー。なんでも錬金術の復習に実験室を使いたいらしい。
どうぞ、どうぞ。俺はやること終わったし。
「たまにはラクス君が勉強を教えてくれてもいいんだよ?」
「……まぁ、見てるだけなら」
だからルミア先生が分からないのに俺が分かるわけないだろ、いい加減にしろ!
とか思いながらもルミアの描く魔法陣は綺麗なもので文句のつけようがない。が、発動しない錬金術。
はえー、やっぱり魔術はゴミやわ。
「おいお前ら。放課後の実験室の使用は禁止だぞ」
「あっ、レーダス先生。許可なら取ってますよ、アルフォネア教授に」
「アルフォネア? あぁ、セリカか。よく出したな」
「なんか面白そうだから出したって感じでしたね。レポートの提出を要求されました。悪魔ですね」
「同感だ」
と、アルフォネア教授の陰口で意気投合してしまった。意外と馬は合うのかもしれない。
先生は俺と少し話すと水銀の入った瓶を片手にルミアの錬成陣に継ぎ足し始めた。
どういう風の吹き回しだろうか。
「詠唱は省略するなよ」
「はい、わかりました」
そしてルミアが詠唱をした錬金術は光輝く粒子となって実験室を満たした。
「……ファンタスティック」
ルミアは水銀を継ぎ足してくれた先生に礼を言い、先生は9割はお前が描いたんだから誇れと先生らしいことを言う。
先生ってば若干だけど目が楽しそうにしてるぜ。
言うだけ野暮ってもんかな。
「ところでラクス。お前は何の練習をしてたんだ?」
「軽い熱遮断の魔術を」
「熱遮断か……授業ではやってないはずだが?」
「趣味の一環です。今のうちに卒研に向けて動かないと完成しないんで」
「たしか成績は悪くないだろ」
「そうなんですよ。ラクス君は成績は悪くないんだから自信持てばいいのに」
「いやー【ショック・ボルト】を省略詠唱とかできないし。実技が全然ダメで。つか怖いですね」
「怖い? 略式詠唱センスとかじゃないな、そりゃ。どういうことだ?」
俺は素直に日頃から感じている魔術への不満について話した。
ついで【ショック・ボルト】の詠唱の仕方で生じる失敗が何らかの規則性を持っていることも。俺が間違えてやったときは左に曲がったが、180度ターン決めてきたらマジで魔術恐怖症になるところだった。
「……まっ、そこそこには分かってるみたいだな」
「はい?」
「なんでもねぇよ」
はぐらかされてしまった。一体、今の会話で先生は何を掴んだんだろうか。やはり、底の知れない先生だ。
「ともあれ、錬金術の復習は終わったんだ。学生は学生らしく、家に帰って飯食って寝な」
しっし、と手で邪険に扱われる俺とルミア。
なんだか近所のメンドクセー親父みたいですね。
しかし、先生のいうことも一理ある。今日はさっさと帰りたい気分だ。
そして部屋の片付けをして帰る準備をしていた時だ。
ルミアは突拍子もないことを言い出した。
「先生も一緒に帰りましょうよ」
「……いやだ」
ゔぉおいい。
この場面でそりゃないだろうが。
と、内心で罵倒しまくっていると。
「ついてくるのは勝手だけどな」
ツンデレさんのようだ。
全く需要がない。
ともあれ、その言葉ですっかり機嫌をよくしたルミアはせっせと後片付けをして下校準備しゅうりょー。
どういう因果か美少女&教師と下校中な訳だ。
ま、話の内容と言ってもルミアが魔術をどう思ってるーとか、明日システィにどうとかっていう話だ。
え、俺が魔術をどう思ってるかって?
そりゃ、道具ですよ。先生。つーと、面白いもんでも見てるような顔をされた。
俺は見世物じゃねーよ。
なんて言えるわけもなく、自然解散。
ルミアのアドバイスはレーダス先生の次の日の行動に現れた。
「その、なんつーか。いろいろ言いすぎたつーか、まぁ、なんだ。人それぞれ価値観はある。悪かった」
マジで誰だこいつ状態だ。
挙句の果てには―――
「授業を始める」
なんつーもんだから。
「ちょっと待てや、誰だ。あんた!」
「グレン=レーダス大先生だよ。なんだ、ラクス、トイレか? 全く、そういうのは授業開始前に済ませておけって。まぁ、行っていいぞ、早くしろよ」
あぁ、このわかってて煽る感じはレーダス先生だわ。
「あんたこそ熱があんのか、どうした? 授業なんてらしくないですよ。レーダス先生!?」
「なんでキレてるのお前!? 授業してもしなくても文句言われるとか魔術講師ブラックすぎない? つーわけで、遊びは終わりだ。授業を始める……最初に言っておくが、お前らバカだよな」
「ふがっ!?」
同時に教科書が顔面に飛んできた。
それからのレーダス先生は、なんつーか。圧巻だった。
今までの講師とはスタイルの違う講義。
教科書を読むのではなく、放棄した斬新なやり方。
その実、中身は実に計算されていて、完成されていた。
マジでリスペクト。すげぇ。
中でも心に残る言葉は―――
「魔術ってのは世界の真理を突き詰めるもんじゃなく、人の心理を突き詰めるもんなんだよ」
あぁ、これだと感じた。
ビビっときたね。間違いなく、自分の頭の中にあるピースがはまった。
「ねぇ、ちょっとラクス? さっきからニヤニヤしてどうしたの?」
「システィか……東方は赤く燃えているな」
「意味不明なんですけど」
「いや、なに。レーダス先生の授業を受けてからアイデアが湯水のように湧き出したんだ」
「そんな湯水枯れちゃえばいいのに」
「俺、何かしましたっけ!?」
「ふふっ」
おかしい、システィが辛辣すぎる……いつものことか。
隣で微笑むルミアは今日も天使です。
アニメ版のルミアが可愛すぎてつい書き始めた作品。
これからもっとオリ主を変態にしていくんだ(迫真