ロクでなし魔術講師と超電磁砲 作:RAILGUN
やぁ、年齢=彼女いない歴史の諸君!
ルミア=エンジェル……おっと、あまりの天使っぷりに間違えてしまったよ。ともかく、ルミアの彼氏のラクス・フォーミュラという者です。おっす、おっす。
今は馬車に揺られて絶賛、学院に戻ってる最中なのだが、女性がいる荷台とは別で寂しいなぁ。
「おい、ラクス」
「どうした
「殺すぞ、てめぇ!?」
弄りやすくて大変よろしい。
こんな感じでなんだか女性陣の荷台も騒がしい。
愛しいな、俺の平穏。明日からルミアファンクラブの連中に命を狙われっかもしんねぇからな!
「ま、それも愛し、愛されてるからってことで!」
「「「……う、うぜぇ」」」
FUHAHAHAHAHA!!!
モテない諸君の妬みはやめてくれ。ほら、人の不幸は蜜の味というだろ?
嬉しくなってしまうのさ、君達が羨ましいと感じるほどにねぇ!
「……すげぇ変わり身早いな、お前」
「おやおや、グレン先生ではないですか。ご機嫌よう」
「ご機嫌すぎるんで一発、ぶっ飛ばしていいか?」
「やんのか、この世帯持ちの俺を相手に?」
「てめぇ、やっぱりネジが吹き飛んでるな。いいぞ、放課後特別授業だ、構えな」
馬車の上で激しく燃え盛るオーラ。
先生は空気の流れに逆らわず、流水のような動きで右腕を出した。俺もそれに応じる。
グレン先生に売られた喧嘩は買う主義だ。
俺と先生の燃えるような熱が偶像となり、男性陣は目を覆う。
「レディ……ファイ!」
カッシュが審判役として開戦のゴングを鳴らした。
「人様が血ぃ流して、四苦八苦してる最中に女とイチャコラとはどういう了見だ、テメー!?」
「それが先生の仕事ってやつだよなぁ!? つか、こっちだって色々大変だったんだからな、先生こそアルベルトさんとイチャコラしてたじゃねぇか!」
「薄ら寒いこと言ってんじゃねよ!? はっ倒すぞ!?」
試合形式:腕相撲。
俺とグレン先生は頭突きしあいながら、汚い言葉を吐き続ける。
「しかも、ルミアに手ェ出したとか命知らずか!」
「「「何ぃ!?」」」
「手ェ出してねぇから!?」
グレン先生は言ってしまった。その禁断の語句を。
ちなみにまだである。予定はしっかりとあります。なんなら赤線で二重枠になってると言っておいた方がいいか?
アレ、クラスの男性陣ってばつぶらな瞳に殺意宿してんじゃん!?
俺はグレン先生がニヤニヤするのを見て、覚悟を決める。どうやら先生も同じ気持ちだったようだ。
「「《その剣に光在れ》」」
重なる詠唱。
軋むテーブル。お互いの腕が悲鳴をあげてる。
「うぉぉぉぉぉおおお!! 先生ぇぇぇぇぇ!!」
「おらぁぁぁぁぁぁぁ!! ラクスぅぅぅう!!」
魔術師式腕相撲。
ラストスパートだ。己の全てをここで出し切れ。
魔力を全てつぎ込め。ここで負ければ明日は無いと思え。
俺は先生とは賭ける思いが違うんだよぉぉぉ!!
「ラクス……今、賭ける思いが違うと思ってたな?」
「な、なんでそれを!?」
「はーはははっ! 全く同じことを俺も考えてたからだ! 《まぁ・とりあえず・負けとけ》」
うぉっ!? グレン先生の腕力が急に強くなる。
なんだ、先生の腕が放電してる……まさか!?
「ラウザルクを模倣したってのか!?」
「学生の技を先生ができないわけないよねぇ、ラクス君? オラァァァァ!!」
「ぬおぉぉぉぉおお!!?」
こんなところで負けるのか……?
俺は、俺は……まだ。
ーーーラウ……ザルクッ!
「ぜぇ、はぁ、や、やるじゃねぇか」
「はぁ、はぁ、せ、先生こそ」
「あっ、ルミアが手ェ振ってるぞ?」
「なんですと!?」
「おらっ!」
「うぉ!?」
グレン先生は俺の気を引いて、一気に勝負を決めた。
ルミアが手を振ってないぞ、この野郎!?
「はいっ、俺の勝ちー。偉大なるグレン大先生の神様的超頭脳プレー」
「おのれ、グレン=レーダスッ!」
「ハーなんとか先輩みたいになってるぞ」
そんなこんなしながら、俺たちは帰路についた。
「はーい、それじゃ各自、今回の旅行で思い出に残ったことを感想文にして提出しろよー」
「ちょっと、先生! 旅行じゃなくて『遠征学修』、立派な授業なんですよ。それに感想文だなんてーーー」
「ほぅ、白猫。俺は魔術は人の心を突き詰めるもんだって言ったよな?」
「は、はい。言いましたけど、それとこれは」
「関係あるんだな、これが」
解散間際にはシスティがいつものようにたしなめる。
しかし、今日の先生は一味違うようだ。感想文にしたのは魔術の訓練だとほざく。
「いいか? 自分の気持ちを素直に表現できないのに、心を突き詰めたなんて言っちゃいけないな。それは突き詰めた気になってるだけで、俺から言わせると一番危ない状態だ」
「素直に……表現」
……すげぇ、っぽいこと言ってるけどさ。感想文と魔術は絶対に関係ないと思うんだ。
「だから心のままを綴れよーーーそうッ、女生徒諸君! 誠に眼福でしたっ、ありがとうございます!」
「「「ありがとうございましたっ!」」」
「《このっ・お馬鹿》!」
ひゅーう、どかん。グレン先生に加担した男性陣は飛ばされた。
システィのゲルブロはどんどん強くなってくなぁ。即興改変も今じゃ、クラスどころか学院でもぶっちぎりのスキルを持ってる。
感想文……かー。適当にぴゃーって書けば、終わるだろ。さっ、勉強、勉強。
「だぁー、くそ。書けねぇ」
家に帰って早速、取り掛かるのだが書けない。
いや、俺ってさビーチバレー以外、まともに旅行してないやん? 施設見学も適当だし、夜の街に出歩くとかいう完全にOUTなこともしてるわけだし。
「リィエル、単位落とすぞ?」
「単位? それは美味しい?」
「おいしい、おいしい。だから、感想文書け。留年は心に来るぞ」
「ん……ラクスがそういうなら書く」
リィエルが筆をとって30分。
一向に書く気配がない。
「ZZZ」
「寝てんじゃねぇか!?」
天に昇る龍のように背筋を綺麗に伸ばして寝てた。おそるべし、特務分室エース。
どうすっかーと割と本気で頭を抱えていたら、家の呼び鈴がなった。
誰だろうか、こんな時間に?
「えへへ、来ちゃった」
「ずきゅーん!」
我が愛しのマイスゥイートハニィーじゃないか。
「私もいるから」
「私もですわ!」
「よっ、ラクス」
システィ、ナーブレス、カッシュが居た。
「お前ら、帰れ。ルミア以外は帰れ」
「相変わらずの温度差ね。ま、いいわ。上がるわねー」
「おっす、お邪魔ー」
「失礼いたしますわ」
「ごめんね。でもね、実を言うとシスティがーーー」
「あぁ! もうっ、ルミア! その話はなし!」
なんだ騒がしい奴め。
グレン先生絡みでなんかあったのか?
ま……いっか、とにかくお茶を用意してっと。
「おい、リィエル。お客様だぞ、起きろ」
「……システィーナ? ルミアにウェンディも……それに」
「カッスだ」
「そう、カッス」
「カッシュだ! カッシュ=ウィンガーだ!」
「ウィンガーだって、かっこいいねー」
「ん、多分グッドネーム、だと思う」
「うわぁぁぁぁ!!」
泣き真似のカッシュ。
うん、天然ボケはやっぱり強かったね。リィエルは可能性の獣だ。
はい、みなさんどうぞー。
「口じゃ、ああ言う割に気が利くじゃない」
「えぇ、毒物が入ってないか心配ですが」
「ねぇ、お前ら遠慮って言葉知らないの? 叩き出すよ、ねぇ?」
ルミアにどうどうと落ち着かされて、俺は椅子に腰掛ける。
さ、リィエルがまたスリープモードに入る前に話を聞こうか?
「んで、どうした急に。ただ、世間話をしに来たってわけじゃないんだろ?」
「えぇ、そうね」
システィは重苦しくティーカップを置いた。
なんだ、本当にヤバイ案件なのか?
「ラクス、あなたーーー」
ごくっ。俺は緊張に当てられ、生唾を飲み込んだ。
「学修をサボりすぎて感想文書けないでしょ?」
「はぁい、その通りでぇす!!」
俺は全力でシスティに頭を下げた。
話を聞けばルミアがどうにかしようとシスティに持ちかけ、どうせなら頭数が多い方がいいってことでカッシュとナーブレスが参加してくれたらしい。
スィートハニー、マジで天使だった。
「あっ、でもシスティもすごく心配してたみたいだよ?」
「る、ルミア!」
「システィ先輩、本当にありがとうございます! 影でゲルブロヤクザとか言ってスンマセンシタ!」
「《噂の元は・アンタかぁぁぁぁ!》」
家の内壁に激突する俺。
壁が壊れないような威力調整まで完璧なシスティ、すげぇ。
「とにかく、ありがとうルミア!」
「うん、どういたしまして」
ひしっと抱きつく俺の頭を優しく撫でてくれるルミア。あぁー癒されるんじゃぁ。
「コーヒー貰うわ。とびきり苦いやつ淹れる」
「おう、そこらへんにあるから適当に」
急にコーヒーを欲したカッシュにコーヒー豆の保管場所を教える。
リィエルは俺がルミアの膝を占拠しているのを見ると、システィの膝を凝視し始めた。
「だーめ、リィエルはこれから感想文を書くの」
「……それは厳しい。糖分が足りない」
「お前、糖分が必要なほど頭使ってるか?」
「ラクス、それはわたしにとても失礼」
「お、おう、すまん」
「頭の中でいつも次の食事のことを考えている」
「うん、予想通りで安心した」
俺はリィエルにいちごタルトを頑張ったあかつきには提供することを誓い、作業を始める。
さすがはシスティにナーブレスだ。理解度が違う。
ただ、ルミアもシスティも頑なにProject:Revive Lifeの話はしなかった。
そう、ナーブレスとカッシュが爆弾を投下するまでは。
「そういばシスティ達は所長さんとなんか小難しい話をしてたよな?」
「Project:Revive Lifeですわね」
「そ、それは……」
システィはリィエルに視線を配る。
うん、わかる。俺もめっちゃ心配だ。
この空気を察したのか、ナーブレスとカッシュは冷や汗を流す。
「もしかして罠でも踏んでる?」
「うーん、リィエルはその計画に一家言あったんだよ。だから、バークスさんの意見と対立しちゃったの」
「あぁーそれで」
カッシュはおずおずとした様子で質問してルミアがナイスフォローを入れるが、リィエルに一家言とかそれこそいちごタルトの製法くらいだぞ。
ちょっと、どうにかしてぇシスティ!
「……ん? どうしたの、みんな暗い」
「いいのか、Project:Revive Lifeを題材にして?」
「問題ない。それよりも早くマスを埋めていちごタルト」
ふんすっ、と意気込むリィエルに俺はもちろん、ルミアにシスティも毒気を抜かれてしまった。
そっか、俺らが気にしすぎていたんだな。反省。
「「「あはははっ!!」」」
「「「?」」」
話を知らないカッシュにナーブレスはハテナマークだが、俺らは自然と笑っていた。
そっか、リィエルはそういう奴だったな。身構えすぎてんだよ、俺たちは。
俺は計画について感じた私見を感想文に書くことで感想文を埋めることにした。元々、知っていた研究だ。勝手がいいし。
おぉ、おお! 進む、ペンが進むぞぉ!
なんだろう、この自分の領域に引きづりこめた感。気持ちいい。
Project:Revive Life……ずっと昔から研究されていた死者蘇生の方法の一つ。この場合は難しいので要約すると、姿形は同じだが、中身は本体の記憶を受け継いだ全く別の誰かが生まれる。
真の意味で死者蘇生が成されたとは言えないが、それはまごうことなく生命の創造だ。
ぶっちゃけ言うと、人が手を出していい領域じゃない。嬉しいのはその束の間だけで、終わりには悲劇が待ち構えてる悪趣味なものだろう。
ブラウモンは天の智慧研究会ーーーめんどくさいな、オカルトサークルでそれを成そうとした。
成功する方法は二つ。
一つ、既存のルーン言語では機能が足りないために龍言語や天使言語を扱うこと。
二つ、この計画のために生まれてきたと言っても過言じゃない魔術特性を持った者が固有魔法で成功させること。
結局、前者は発音できないし、後者はそんな人物が存在する確率が天文学的数字になるということだ。
事件の当事者としてグレン先生から話は聞いたのだが、どうやらリィエルはその実験の成功例のようだ。
方法は後者にあった天文学的な確率で存在する固有魔術の持ち主が成功させたらしい。しかし、固有魔術の持ち主は既に他界されていて、計画は陽の目を見ることはなくなったはずだった。
ここからは俺の勝手な推測だ。
ルミアの持つ異能は感応増幅じゃない。
これは今回の事件で明白になった。マナの譲渡や増幅如きでなる魔術ではないのだ。コレは。
ここで前者の方法について注目してみよう。ルーン語の機能限界という奴だ。
俺の予想ではルミアの異能はここら辺に関わるもんだと睨んでる。
ブラウモンがいくら天才といえ、竜言語や天使言語は使えない。人にはルーン語しか扱えないことを前提にして考えるとルミアの異能はルーン語の機能拡張……もしくは
最早、異能と呼ぶことすら疑問に思われるが簡単な話だ。
広く普及されたものは開発者の意思によって恣意的なバグ、もしくは欠陥を残すことがある。
これは単に悪用されたときの最後のセキュリティーのようなものなのだが、ルーン語にそれが施されてるとなるとちょっとマズイかもしれない。
歴史上、それに気づいた人間は俺だけじゃないはずだ。
末路はDEAD END?
「よっしゃ、終わり」
やめだ。全て仮定の話だ。
「ラクス君、急に水を得た魚みたいに生き生きとしてたね」
「お前、意外と頭いいのな。テストだけかと思ってたぜ」
「ま、まぁ? 成績上位者ならそれくらい出来て当然のことでしてよ」
「……いちごタルト食べたい」
「ラクスは自分が得意なことになると人が変わるわね」
今はこの光景を見ていられることに満足だ。
実りのない話は無粋。
ルミアがいつの間にか机の下で手を握ってくれていた。
「ふふっ」
顔を見合わせれば、いつものように微笑みかけてくれる。
俺はこの光景を見るために拳を握った。だれ一人欠けることなく帰ってくるために。
「よっしゃ、今日はラクス大先生の奢りで鍋パーティーだ!」
女性陣が露骨に嫌な顔をするのでコラーゲンの話をして、承諾させる。
調理中にリィエルの感想文の語尾が、途中から『いちごタルト』になっていたために書き直したとかは面白い話だ。
研究所は研究された資料や貴重な合成獣を見ることが出来ていちごタルト食べたい、ってなんだよ。
「んー! 美味しい! これでお肌が潤うなんて2度美味しいね、システィ!」
「え、栄養が然るべきとこにいけばだけどね……ああっ、もう、いっぱい食べてやるんだからー!」
「貴族ともあろうものがはしたないですわ……で、でもっ、肌が潤うのはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ興味がありますわ……美味しい!」
「ビネガー、いちごタルトをあげる。鍋と一緒に」
「ウィンガー! 西洋酢じゃない! いちごタルトをくれるのすごい嬉しいけど、それって闇鍋だよね!? というかリィエルちゃんもやってないよね!?」
みんなで騒ぎながら鍋をつつくの見て、自分でも気づかない内に笑みが溢れた。
そうだ。これから先もこんな風景を見ていたい。
オカルトサークルなんかにこんな幸せをくれてやるものか。
俺は追加の具材を鍋に突っ込みながら、自分に喝を入れ直した。
さっ、明日からシャキシャキと学生すんぞ!
そういや、グラムド先生が倒れたって話だが代わりの先生は誰なんだろうな。グレン先生だといいな。ロクでなしだけど分かりやすいし。
カッシュ君、弄りやす過ぎんよぉ!
なお、途中にあったルミアの異能考察はラクス君の仮定の話のため、今後の話には活きてきません。
最近は戦闘続きだったのでラクス君はちゃんと勉強してるんだぞってところを表現したかったんです(ただし、実技は雷系の魔術以外はお察し