ロクでなし魔術講師と超電磁砲   作:RAILGUN

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Dance with iron sand
RAIL 1


 年に三回しかない魔術競技祭の季節がやってきた。

 そうだ。俺たち学院生はこの日のために日頃から切磋琢磨してきた力を蓄えてきたのだっ!

 おまけに大会開催1週間前は何かと練習時間や大会準備時間として授業が休講になることも多い。

 それでいいのか魔術学院……いや、いいんですッ!

 

 ガバガバ授業日程アルザーノ万歳!

 

 ぶっちゃけ、家で寝てるといつのまにか大会終わってることが俺の理想的な学院生活だ。

 ちなみに昨年はミッションフルコンプ。俺の安寧は保たれた。

 つーか、これはお祭りというか成績上位者のためのイベントだ。有能なやつの使い回しは当たり前。

 今しがた黒板の前でグレン先生に指示されたのか、各競技の出場者を決めてるシスティとルミアには悪いが徒労に終わるだろう。全員は出場できない。

 それにさっきもギイブルが言ってたが今年は女王陛下殿が視察に来る。皆が例年以上に気後れするのも無理はない。

 

「というわけでラクス君。どれか出てみない?」

「何がというわけなんですかねぇ?」

「優秀な成績を残せば、将来安泰だと思うけど?」

「それとこれとは話が別だと思うんですわ。俺みたいなお馬鹿さんが決闘戦出るなんて言ったらクラス中から反対が巻き起こるだろうし」

「えー、いい線行けると思うけどなー」

「いやー今日もいい天気っすね、ルミアさん!?」

 

 だからな。ニヤニヤすんのやめろって。

 なんで無限の眠りに入れる日にラウザルクなんて使わなきゃならん。過労死させる気か?

 クラス中の怪訝な視線が突き刺さる。

 だが、俺の全身の筋肉のために今回はしょうもなし。

 先日、退院したばかりなんですマジで勘弁してください。右腕は無事に見えて治療中です。

 

「そうか、そうよね。ラクスは攻勢魔術を使う競技ならいい線行けると思うわ」

「いや、なぜにそう思うんですかねぇ、システィさん」

「え? グレン先生が言ってたからに決まってるじゃない」

「あの駄目教師ぃぃぃぃぃ!!」

 

 全力で殴り合うしかない。

 いや、ていこくしきカクトージュツでフルボッコにされるのは俺の方なのだが。食らいつくくらいはできる……はずだ(甘く見積もった上に不備あり)。多分。

 と、グレン抹殺計画を立てていたところで教師の扉がパンッと開け放たれた。

 

「話は聞かせてもらった! ここは俺に任せろ。このグレン=レーダス大先生になっ!」

「しねえぃ!」

 

 得意技は飛び膝蹴りです。

 

「うわっ、てめぇなにしやがるラクス!」

「てめぇこそシスティに何を吹き込んでやがる!? おかげで俺の休日が台無しだボケェ!」

「何言ってんだ、知るかこの馬鹿野郎!」

「一目見たときから殺意を覚えてました、死んでください!」

「まさかの計画的犯行!?」

 

 と同時に俺の体は宙に舞って教室の壁に叩き込まれた。

 さすがだぜ、ていこくしきカクトージュツ!

 

「お前が強いんじゃねぇ。俺が弱いんだ」

「バカ言ってないで早く席戻れ」

「辛辣!?」

 

 つか、壁に叩きこんでおいてそれは厳しい。

 いや、なんか立てるけどもさ。テイコクマジカルパワーが背中に働いたのか……。

 

 そして話はトントン拍子に進む。

 流石はグレン先生だ。俺たちに意識の差はなんだとのいい、カリスマ講師的超英断力スキルFを発動。

 なんかテロリストに立ち向かった時並みの眼光で勝ちにいくらしい。

 

「それでラクス。お前は『闘乱戦』な」

 

 闘乱戦……それは各クラスから2名を選出して行われるタッグマッチバトルロワイヤル形式。

 ぶっちゃけ死ぬ。終わりない悪夢だあれは。

 マジで競技終了後には人間不信になる。去年は事前に協定を組んでいたのに一番最初に潰したとかで酷かったし。

 具体的には場外乱闘。当然のように飛び火した。

 

「殺す気か!? それならナーブレスとか優秀なやついるだろ!? ギイブルあたりと組ませてやれば勝てるだろ」

「そうですわ! なぜ、そこで私じゃないのですか?」

「えー、お前は呪文の数も知識もすごいけどどんくさい上に不器用だからな。たまに呪文噛むし」

 

 それはまずい。非常にまずいぞ、ナーブレス!

 あの地獄でそのミスはあまりにも致命的すぎる。

 

「というわけでラクスだ」

「なぜですの?」

「そーだ。そーだ」

「ぶっちゃけ、同じ呪文しか使えない奴が集まったところで勝てる奴なんて最初から決まってるんだよ。わかるか、ラクス?」

「……運のいい奴」

「大正解だ。だから、状況に臨機応変に対応できるように多くの呪文と知識を持ってる堅実な奴がいい。そうすりゃ、勝手に勝ちは拾える」

 

 理に適ってるわ。だとしても、どうしてって……まさか、このクソ講師!?

 

 俺は疑念を確認するためにグレン先生の肩を取り、隅で作戦会議を始めた。

 

「この駄目講師、俺に『ラウザルク』使わせる気か? 右腕もまだ完治してないんだぞ!?」

「任せろ、使い方は教えてやる」

「はぁ!? どうしてあんたがアレの使い方がわかるんだよ?」

「経験則だ。言っただろ、グレン=レーダス大先生に任せろってな」

 

 うわっ、マジで怪しすぎるぞ魔術講師。

 本来ならこういう催しは先生が苦手とするはず。

 

「ま、どちらにせよお前には前から稽古をつけると決めてた。ちなみに白猫は祭が終わったらトレーニングを始める。ルミアを守るだけの強さが欲しいんだと」

「……それはなんつーか、ずりぃよ」

「ま、休日は俺も返上してんだ。巻き込まれろ」

「それが本音か……いや、ちげぇな」

「ぎくっ!?」

 

 ぎくっなんて言うやつ初めてみたぞ。

 あーなるほど。頭が冴えてきたぞ。優秀な学生を育てる教師には報酬が必要ですもんね。

 

「祭で優秀な成績を残したクラスの先生には報奨金?」

「……大正解だ。勘のいいガキは嫌いだよ」

「それって俺がこの後、思いっきりぶっ飛ばしていいフラグになるんですが」

 

 ふざけてはいるがこの講師、実は超有能。

 動機は不純だが提案自体は俺の糧になる。はっきり言ってコールだ。

 

「ところでラクス。使い回しはいいのか? このままじゃ人数が足りない」

「当たり前じゃないですか。他のクラスは成績上位者使い回してますよ」

「な、なにっ!? それは本当なのか!? よしっ、それじゃ今から……」

 

 にやぁ。

 そん時の俺は邪悪な笑顔を浮かべてたに違いない。

 

 ギイブルがクラス優秀を考えるなら成績上位者を固めて勝ちに行こうとシスティに言ってるあたりで割り込む。

 

「システィ、全員で勝ちを掴みに行こう」

「そうよ、ギイブル! 先生が皆の得意不得意を考えてくれた編成にケチをつけないの! 皆も、先生がこんなにも考えてくれてるのに、尻込みするなんてそれこそ無様よ!」

「ソーダ、ソーダ!」

「ね、先生?」

「お、おう」

 

 システィの啖呵に全員の火がついたみたいだ。

 ざまぁみやがれクソ野郎。俺の使い潰される筋肉の怨念を受け取れッ!

 

「おい、ラクス。これじゃ、勝てるもんも勝てねぇぞ。賞与、俺の賞与を返せ!」

「しるか、精々頑張ってくださいね。頼りになるグレン=レーダス大先生」

「クソぉぉぉぉ」

 

 以上、小言のやりとり終了。

 

「勝ちにいきましょう、先生!」

「当たり前だ! 全員、黙って俺についてこい!」

 

 ふははははは、愉悦!

 

「うーん、なんだか微妙に噛み合ってるような噛み合ってないような……」

 

 それな、さすがはルミア。よくわかってる。

 

 ◇

 

 というわけで練習なう。

 いや、授業が減るっていいね! 即行で帰りたい気分だけど。

 

「ほらラクス、次行くわよ!」

「殺す気か、てめぇ!?」

 

 フィジカルブーストを使えるからってシスティとギイブルそれにカッシュの魔術を片っ端から相殺ないし避けてく。

 一応、バトルロワイヤル形式だと避ける技術ってのも重要なわけだが、それにしても限度がある。

 調整期間なのにここまでのことをしてるやつがいれば呼んでほしい。そいつとはうまい飯が食えそうだ。

 

「《凍てつけ氷雪》」

「《雷精の紫電よ》」

「《霧散せよ》!」

 

 やっべ、【トライ・バニッシュ】が優秀すぎるぞ。

 カッシュとシスティの魔術を正面から打ち消し、俺が距離をつめる。

 

「足元には気をつけた方がいい」

「マジかよ!?」

 

 ギイブルが仕掛けたのは【バーン・フロア】だ。

 あいつは錬金術が得意だが、他の科目もやはり優秀。

 一応、グレン先生が防御魔法をかけているので直撃しても熱いかなーってくらい。なのでやつらは一切の手加減をしないようだ。

 踏み込んだ足を止めるより前に魔術罠が発動する。

 

「《飛べっ》!」

 

 即興改変した【グラビティ・コントロール】で空中に飛んで大きく後退し炎熱の罠をなんとか凌ぐ。

 代わりに魔力はごっそり持ってかれた。即興改変センスはゼロのようだ。

 

「ほらーラクス、甘いぞー。しっかり罠は確認してけー」

「無理言うな!」

「《雷精の紫電よ》」

「あばばばばば!!」

 

 無茶な要求をしてくるグレン先生にブチ切れているとシスティの【ショック・ボルト】がヒット。

 痛んでいる()()をして俺は倒れた。

 もう無理立てない。つーこともない。

 いや、だってほら。俺ってば電気系の異能力者だし。自分だろうが、相手だろうが単純な電気エネルギーのみなら常に俺の味方なわけよ。

 それでも俺が倒れるのは純粋に厳しいから。成人男性なら下手な【ショック・ボルト】だと5、6発は耐えれるらしい……。

 が、システィは天才。俺は疲れた。

 なるほどWin-Winじゃないか。この際だグレン先生の視線なんて気にしない。

 

「だ、大丈夫?」

「全身がビリビリするだけだ。問題ない」

「大問題よね、それ!?」

 

 詰め寄ってくるシスティは相変わらずツッコミ役か。

 カッシュとかゲラゲラ笑ってやがる悪魔か。

 ギイブル? やつは既に本の世界だよ。

 

 近くのベンチに横になる。

 すぐ隣のベンチではうちの女性陣が魔術式の確認などをしていた。

 で、はたまた近くの木には魔術の練習のためかガンガン【ショック・ボルト】を撃ち込んだりしてる男性陣。

 あぁー平和だなー。

 この前テロが起きた学校と思えない。

 表向きには爆発事故とそこらへんしてもみ消したらしいので実際にテロが起きたことを知っているのは一握りだ。

 

「あー眠いなぁ」

 

 クラス上位のやつらを相手にしてだいぶ神経を使った。体にも頑張ってくれた褒美が必要だと思うんだ。

 だから、ちょっとだけほんのちょっとだけ眠気に身をまかせることにした。

 

 

「勝つ気のないクラスが使えない雑魚どもを集めて場所を占領するなど笑止千万! 自らを省みて思慮の浅さを自覚したのなら場所を明け渡したまえ!」

 

 目が覚めたらI組の先生が全力でウチのクラスに喧嘩を吹っかけていた件について。

 最近、寝落ちが多いような気がするが気にしない。

 というかいいのかハーレイ先生。II組でもI組でも魔術学院の生徒だぞ、PTAが怖くないのか。

 実はルミアよりもメンタル優れてる疑惑のあるハーレイ先生は言葉を続けながらベンチで寝ていた俺を指してピンポイントで攻めてきた。

 

「その証拠にベンチで寝ている生徒までいる始末! これで統制が取れているとでも言うつもりか? 全員で優勝するとまだ言えるか、グレン=レーダス!」

 

 大げさだなぁ。

 ちょっと休憩していたぐらいでなんでそこまでまくしたてるんですかねぇ?

 ひょっとしてこれが新人のグレン先生を先輩のハーレイ先生が虐めるというパワハラ現場なのだろうか。

 

 盛り上がっていたクラスの雰囲気が悪くなっているので仕方がなくベンチから立ち上がる。

 背中のポキポキが心地いい。

 で、グレン先生とハーレイ先生のところまでDASH。

 

「あーと、グレン先生。めんどくさいから体育館とかでいいんじゃね?」

「いや、そういう問題じゃねぇんだよ。自分の生徒が悪く言われて黙ってる講師なんているわけねぇだろ?」

「いやだ、情熱的。惚れちゃいそう」

「殴るぞ」

「冗談だ。本気にするな蹴るぞ」

「おん?」

「あん?」

「私を無視するな!」

 

 っせーぞ!? と言いかけるのを喉で留める俺と先生。

 インテリ先生はいつでもいじられ役になる運命なのか。

 

「悲しいな」

「貴様、人の頭を見て言っているのか……ッ!」

 

 は?

 あー、いや。そういうことか。年の割には後退してるよね。生え際。

 大丈夫、苦労してる証拠だって。優秀な魔術師さんだからね、尊敬尊敬。

 

「給料三カ月分だっ! 俺はこいつら優勝するのに給料三カ月分を賭ける!」

「正気か、グレン=レーダス!?」

 

 おっとここにきて更に熱い展開。

 だが、新人のグレン先生の月収と先輩のハーレイ先生の月収は同額じゃないだろうに。

 ここはグレン先生のよく回る舌に期待です。

 

「グレン先生……そこまで俺たちのことを」

「普段はだらしないけど頼りになる人ですわ」

 

 カッシュ、ナーブレス、違う。違うんや。

 グレン先生は勢いで後に引けなくなっただけなんや。

 額に玉水のような汗をかきまくってるし。

 

「ぐっ……!」

 

 相対するハーレイ先生もなぜか冷や汗が止まっていない。

 彼の担当するI組の前だからだろうか。

 先生というか生徒同士で煽れば勝手に賭けが成立しそうな予感。学内での賭博行為とか学院手帳には何も書かれていないのでセーフ。

 

「い、いいだろう! 私も自分のクラスが優勝するのに給料三カ月分だ!」

「ハーレイ先生さすがだぜ!」

「やっぱり担任がハーレイ先生でよかった!」

「ハーレイ先生カッコいいい!!」

 

 I組は煽りの天才しかいないのか。

 

「ふっ、そうこなくっちゃ。勝負っすよ、先輩!」

「望むところだグレン=レーダス! 無様に負けて吠えづらをかくなよ! 恥をかきたくなかったら尻尾を巻いて逃げ出すことだ!」

 

 なんだこいつら実は仲が良いのか。

 さっきから新喜劇の舞台を見てるみたいだ。

 

「いい加減にしてください!」

 

 そこでシスティが声を荒げた。

 

「先ほどからハーレイ先生の練習場所に関する主張にはどこにも正当性が見られません! グレン先生や二組に対する侮辱行為も不当です! これ以上続けるというなら講師として人格的に相応しくない人物がいることを学院上層部で問題にしますがよろしいですか?」

 

 すげぇ、システィ。そんなセリフをよく噛まずに。

 呪文噛みまくりのナーブレスも尊敬の眼差しだ。

 

「ぐっ……親の七光りめ」

 

 おう? ハーレイ先生、それは言っちゃダメなやつだ。

 当のシスティはどこ吹く風だが、状況がそうさせるなら殴り飛ばしてたところだ。

 ま、生え際がいくら後退していても第五階梯なので返り討ちだろうが。

 

「それに、グレン先生は逃げも隠れもしません。私達は先生の教えで正々堂々、優勝します。ね、先生!」

「お、おう! 覚悟していてくださいよ、先輩!」

「貴様こそ覚悟しておけ、1週間後が楽しみだ! 首を洗って待っていろ、はっはっはっはは!!」

 

 もうやだこの学校。まともなの少なスギィ!

 

「さっすが、先生。スカッとしました!」

「私達を信じてあんな賭けまで……見直しました!」

 

 グレン先生は力なくそれに答える。

 しょうがないね。ペース配分とか言ったところで地力ではやはりハーレイ先生のクラスは優秀だ。

 せめてグレン先生の指導期間がもう少しだけ長ければ杞憂なく挑めたとおもう。

 

「やっぱり……噛み合ってない?」

 

 そう、実にその通りだよルミア。

 

 ◇

 

 というわけで俺とグレン先生のパーフェクト魔術教室が始まる。

 まさかの朝練である。くそ眠い。

 右手? まぁ、動くんじゃね! 医者に許可もらってないけど。

 

「そうだ、お前のその術は常に力を流すからすぐにキャパシティを超える。つまりは筋肉等の異常発熱だな」

「なる、ほどっ、なっ!」

「そのデメリットを無くすには術のON、OFFを身につけろ。ほら、集中集中!」

「くっ、そ! 生半可にっ、先生っぽ、いな!」

「だって頼れるグレン=レーダス大先生だし」

 

 うがぁぁぁぁぁ!!

 傍目で腕立てしてる先生の隣で俺は木人を叩く。

 アクション映画でよく酔拳の人が叩いてるやつだ。

 しかも無駄に可動式。初心者に打たせていいもんじゃない。

 それでもそれなりに俺が打てるのはやっぱり元中二病患者だからだろう。基礎の打ち方は知ってた。

 帝国では木人は割とマイナーらしく、久しぶりに先生に泡を吹かせてやったぜ。

 

「どうらっ、しゃっ、そらっ、ぐへっ、どうだ、ゔぉいぃ、がはっ、どはっ、ちょ、とめ、あべし!?」

「あーあ、自分の力で吹き飛びやがった」

 

 俺の力で回転するものを俺の力で止める。

 当然のことだが、術の制御がうまく行かなければ地面に突っ伏すことになる。

 

「先生、助けてと小一時間」

「いや、あんな馬鹿みたいに動く木人に近づく馬鹿いねぇから」

「誰が馬鹿だこのやろう!」

「いつも以上にめんどくせぇ!」

 

 疲れてるんだ察せ。

 このグレン式木人魔術制御を始めて既に3日。祭りまであと少し。

 ラウザルクが使えればI組とかフルボッコなのだが。この調子では困ったときに一瞬だけ使える緊急お助け装置としてみた方が良いだろう。

 ちなみに全力戦闘はグレン先生からしばらく禁じられた。

 それよりもとっておきの新作でどうにかしていきたい。

 もちろん異能ではなく魔術だ。

 

「あ、ラクス」

「あい?」

「相方決めたのか?」

 

 そう闘乱戦は2人1組おこなうバディ・ファイト。

 グレン先生の神的采配も虚しく1人は使い回しが確定なのだ。

 問題はその1人をどうするか。

 俺がどっかの競技に割り込む選択肢はなし。既にこれ以上ない均整のとれた布陣だ。自分達から崩すなんて笑い話にもならない。

 そこでグレン先生は判断を俺に投げた。

 『決闘戦』に参加するシスティ、ギイブル、カッシュ以外なら誰でもいいと。

 

「いやーまじでアテがなくて」

「へー、それは意外だ。ルミアあたりを選ぶと思ったんだけどな」

「ルミアは慈悲を与える天使だけど弓を番えるキューピッドじゃないんですよ」

「言っている意味がさっぱりわからん。公用語で頼む」

「ルミアは天使だろ!? あんたは本当にアルザーノ帝国民か!?」

「なぜそこで戸籍を疑われる!?」

 

 つまりだ。ルミアはサポート系でありアタック系じゃない。あんな泥試合にルミアが出れば真っ先に狙わるだろう。

 それを庇えるほど俺は強くない。

 

「ぶっちゃけ、システィが安牌」

「けど白猫は後が控えてるからなー」

「それな」

 

 八方塞がりだ。

 このままでは当日まで相方を用意できずに1人でバトル可能性が……。

 

「ごくごくプハー……ともかくメンバー締め切りは今日まで。適当に的役でも引っ掛けるか……」

「なにげに物騒なこと言うのなお前……というか、とりあえず空白で出して当日に人を出せばいいんじゃねぇの? 別にそこまで悩むことじゃ……ど、どうしたラクス?」

「どうもこうもありませんよ!」

 

 何を言ってるんだこの人は!?

 それが去年一番最初に狙われた組の直接的な原因の一つじゃないか!

 

「メンバー提出というのはクラス同士の情報戦の開始でもあります! 故に直前のメンバー替え等は学生同士の情熱を損なうとして今年から原則禁止! おーけー?」

「お、おーけー。めんどくさくなったなアルザーノ魔術学院」

「激しく同意」

 

 ちなみに去年最初に狙われた組は直前のメンバー替えで非難殺到。しぶしぶ出場した2人は両方とも足に怪我をしていて、開幕【ショック・ボルト】で退場という流れだった。

 こういった地味にめんどくせぇなアルザーノ魔術学院といった理由から決闘戦や乱闘戦などの直接対決をおこなう競技でのメンバー替えは認められていない。

 人数が揃わなかったらそのまま不戦敗だ。

 

「とりあえず、昼間に飯食ってからだなー」

 

 というわけで食堂で飯を食べる。

 うん、おいしい。

 グレン先生はこの時期のキルア豆は美味しいだの言ってたが、俺はそんな繊細な舌はしていない。

 腹に入れば一緒ってところまではなくとも、美味いか不味いか、苦いか辛いか、熱いか冷たいかで十二分だ。

 ただ一つ、そんな俺でも無条件に美味しいと言える食事がある。

 

「相席いい?」

「おう、システィか。あぁ、座るとこもないようだし、どうぞ」

「ごめんね。ラクス君」

「寧ろ一緒に食事をして頂ける至高の時間を頂けて不肖、このラクス胸が張り裂けそうです。さっ、椅子をお引きいたします」

「えっ……その、うん。ありがとう」

「もったいなきお言葉」

「なんなのよ、あんたもグレン先生も!」

「?」

「こいつ何言ってるんだって顔、止めてもらっていい!?」

 

 ルミア大天使との食事は無条件でおいしい。つか色々と美味い。

 ただでさえ馬鹿な舌が歓喜狂乱で感受性が豊かになりすぎてぶっ壊れてるのかもしれない。

 今日も学校に来てよかったとおもいます。

 

 あーこのキルア豆美味しいなー。たぶん。

 

「そういえば、ラクス」

「ん?」

「『闘乱戦』の相方決めたの?」

「あーうん、いやまだ。ぶっちゃけ、お前が入れば問答無用で勝ちに行けて楽が出来るんだがそのあとに支障出るからなー。八方塞がり」

「しれっと舐めたこと言ってくれるじゃない」

「こら、お嬢様がそんな言葉遣いをしてはいけません!」

「誰がさせてんのよ!」

 

 これ以上は【ゲイル・ブロウ】、略してゲルブロによる制裁が来るので加減、加減。

 ちったぁ異能の扱いがまともになったとはいえ実戦で使えるはずもない。新開発の魔術でどうにかしたいもんだが、そう問屋が卸すわけもなし。

 となればハイエンドオールラウンダーのシスティがいてくれた方がいいですよねぇ。無論それは贅沢なのだが。

 

 そう思案していた時にルミアがスプーンを止めた。

 

「空いた席におさまるのは意外に身近な人かもしれないね」

「そりゃ、クラスの誰かだからな。だろうさ」

「……はぁ」

 

 なぜかシスティがため息をするが、どうしたのか。恋煩いか。

 にしてもルミアは急に当たり前のことを言いだしてどうした?

 

「たとえば、ラクス君と一緒に下校したりとか! お昼を食べたりする人とか!」

「……うーん、システィとかカッシュだな。二人ともダメだ」

「ねぇ、ラクス?」

 

 するとシスティがしびれを切らしたかのように切り出した。なんだろう、ツテでもあるのか?

 あれ、ルミア。落ち込んでる?

 

「今、ラクスと一緒に食事してるのは?」

「システィとルミアだ」

「仲が良くないわけじゃないわよね?」

「おう、仲はいいと思う……いいよね?」

 

 俺の勘違いじゃなければ。

 つか二人が陰でラクスちょーキモいとか言ってるのであれば俺は今からキルア豆の肥料になりにいこうと思う。

 最期くらいは誰かの役に立とう、俺。

 

「いいわよ。だから、変に勘ぐって落ち込まないで」

「今日も生きてける」

「チョロい」

 

 ん、なんだって?

 

「まぁ、私はともかくいるじゃない。仲が良くてあなたの『相棒』に一番向いてる適任が」

 

 言わんとしてることはわかる。グレン先生にも言われたし。

 そこでルミアもキラキラして目で見つめてこない。お兄さん、意思が揺らいじゃうでしょ。

 

「相棒に選ぶときに真っ先にリストから外したのはルミアだ」

「……理由を聞いてもいいかな?」

 

 ルミアのテンションメーターが振れまくってる。

 まじでごめんなさい。いじめる気はないんです。

 

 俺はシスティとルミアに1から説明をした。

 あのクソッタレなバトルロワイヤルじゃ、ペアのどっちかが圧倒的な破壊力を有するかお互いにそれなりの破壊力を持たないと押しつぶされる。

 俺じゃルミアの持たない破壊力をカバーできる自信はない。

 ただ、ルミアの得意な補助魔法や白魔法は魅力的だ。

 根性もある。実戦じゃ化けるタイプだろう。

 しかし、それを差し引いてもダメだ。

 

 一通り説明し終えたらルミアとシスティは納得したように笑顔になった。

 とてつもなく、嫌な予感。

 

「システィ、提出用紙にラクス君の隣に私の名前を書いておいて」

「任せて」

「おいおいおい!? お二人さんは耳に詰め物でもしてるんですか!?」

「え、だって……ねぇ、ルミア?」

「うん。ラクス君、クラスで『相棒』に採用するとしたら私は誰の次かな?」

「ぐっ!?」

 

 そうきたか。

 いや、確かにね。今の話を聞いてたら察しつくけどさぁ!

 

「嘘はダメだよ?」

「システィの次です」

 

 つまり第二候補。

 

「なら決まりだね」

「いや、俺じゃルミアを庇いきれ━━━」

「庇う必要なんてないよ」

 

 マジかよ。おいおい。

 ルミアの目は本気の本気。前とは違う正真正銘の生きる奴の覚悟が宿ってた。

 生きる覚悟なんて見たことないけど、この覇気。きっとこれが前を向いたやつのオーラなんだろう。システィも目を丸くしてるし。

 

「自分の身は自分で守るから。ラクス君の邪魔はしないよ……それに」

「ん?」

「楽しくしてくれるんだよね?」

「……こりゃ、一本取られたな」

 

 そこでそう言われたら引くに引けないだろう。

 システィもルミアも顔を合わせて笑ってるし。これは事前に打ち合わせでもしてたな。

 

「負けたよ、全く。悪い女だよルミアは」

「全部、システィのお母さんのおかげだよ」

 

 あぁ、あの人か。

 流水のように腕を回して鶏を〆るみたいに夫の意識を落とす人か。

 納得だ。

 

「落ちるところに落ちたってところね」

 

 あぁ、全くその通りだよシスティ。

 これは新作も完璧にしなきゃな。

 




オイオイオイ、来週でロクアカ最後とかまじかよ。
もっと動くルミアちゃんみたいぞ。つか、シルクハットのおじさんと会ってぶっ飛ばすの一話でやるとか危ない感じがするのですが。期待してます。
あ、エンドカード毎回毎回神ですよね。眼福です。

ちなみに二巻の内容は書き終えているのでこれから3話は1日おきに定期更新します。
AFTERを書かねば。


そしてこの場を借りて誤字報告の感謝を申し上げます。
ランドマーク様、Neuron様、舟屋 三途集様。ありがとうございました。
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