ロクでなし魔術講師と超電磁砲   作:RAILGUN

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RAIL AFTER 1

 我がクラスは優勝記念に打ち上げをするらしい。

 

「寝てる場合じゃねぇ!」

 

 そうだ。

 マナ欠乏症になってまで競技で勝利したんだ。美味しいモノでも食わないと割に合わない。

 お医者さん、ごめん。でも俺には行かないといけない場所があるんだ。

 

「はい、ラクスさん養生してくださいねー」

「脇腹、脇腹っ! 傷口ダイレクトに触ってるから!!」

「ははっ、面白いわねラクスさん。気のせいですよ、気のせい」

「気のせいで痛みはでるかぁぁぁ!!」

 

 恐怖、顔なじみと化した看護師さん。

 

 割と容赦なく押さえつけてくるし、脇腹をガツガツ触ってくる。すなわち抵抗は死を意味する。

 つか、グレン先生が絶対に何かを吹き込んだ。間違いない。

 だって、二人が内緒話してるの見たもの。

 

「グレン先生ってかっこいいわよねー!」

「見てくれ良くても中身がなぁ」

 

 何を隠そうロクでなしだ。最近はナリを潜めてるが、奴はお目付役が手綱を握らないとどこまでも暴走するクソヤロウだ。

 そういう意味ではシスティとの相性はバツグンだな。

 人のことを言えた義理ではないけども。

 

「金を握らされた?」

「……」

「おい露骨に目をそらすなよ、嘘だと言ってくれ頼むから」

「嘘だ」

「はっきり分かった。今必要な治療は俺の脇腹じゃなくあんたの頭だ」

「ひどーい、合コンにも先立つ物は必要なの」

「どけ……俺はいかなきゃならないんだ……っ!」

「えいっ☆」

「あぐうああやあぁぁぁ!!!??」

 

 ピクッピクッ。

 あまりの衝撃に未だに震える手足。

 

「殺される……ッ!」

「殺さないわ、癒してあげる。全力で」

「万力の間違いだろ?」

「えいっ☆」

「ふぁががへっはははっぇぇ!!!」

 

 余計なことは言わない方が身のため。

 冗談抜きで入院期間が長引く。

 

「頼む、騒げる日は今日、この日しかないんだ!」

「自業自得よー。もう、右腕を三度熱傷したばかりなのに全身に真皮到達レベルの切り傷が何箇所も……ひょっとしてスパイさん?」

「んな訳ありますか。こっちはフツーに祭りをしてただけなんですから」

「じゃ、呪いね。残念」

「人ごとだからってね、軽く流していいもんじゃないと思うですよ!」

 

 だから……最終奥義!

 

「そういやバッグの中に封筒が入ってたようなー気がするなー!」

 

 気がするだけだ。入ってるとは言ってない。

 

「車椅子の場所はわかるかしら」

「この病院、大丈夫か?」

 

 ちょろすぎて怖い。

 ま、車椅子の場所くらい分かればあとは大丈夫だ。

 下手に体を動かすと傷口が開くので魔術で動かそうか、そのための【磁気操作】だし。

 

「そういえばグレンさんは金髪の可愛い子と一緒にいたわね。夜道で襲っちゃうのかしら、きゃー肉食系大胆、ステキ!」

「……」

「ら、ラクスさーん。目が据わってますよー?」

「車椅子でも時速60くらい出せば殺せるだろ」

「あら、私ってば余計なことを言っちゃうドジっ子!」

「キャラ、立ちすぎなんだよ!」

 

 この看護師はキャラが濃すぎる。

 これ以上一緒に過ごせばツッコミすぎで過呼吸になるかもしれない。

 俺は車椅子に乗って【磁気操作】を軽く使って窓から脱出。着地する前に【グラビティ・コントロール】で衝撃緩和。

 そして加速、加速、右ブレーキ!

 

「ラクス選手の華麗な車椅子ドリフトぉ!」

 

 ギィィィィイイ!

 フレームがヤバめの音を出すが、俺の峠最速伝説に些事を気にする必要はなし!

 待っていろ、グレン=レーダスッ!

 あんたは俺が轢き殺す!

 

 ◆

 

 ほどなくしてラクスは直線コースに入った。

 馬力だけなら自信があるラクス。夜道に人がいないので安心して爆走する。運転適性は下限側に未知数だ。

 そしてレーダーを使いルミアとグレンを捕捉したラクス。次の十字路を右に曲がってすぐだ。

 

「おっ!?」

 

 が、十字路には珍しく人がいた。

 レーダーに映らなかったのは気が散りすぎていたからか。ラクスは人影を目視した瞬間に急ブレーキ。

 車椅子のフレームは若干歪んで、転倒した。

 

「せわしない人ね。怪我はないかしら?」

「あぁ……大丈夫です。怖い思いをさせてすい……ま、せん……」

 

 言葉が詰まるとはそういうことだろう。

 盛大にすっ転んだ病院にいるはずのラクスに気付いたグレンとルミアが駆け寄ってくるが、そんなことはどうでもいい。

 車椅子を立てて、ラクスを座らせるのは金髪に碧眼の女性。佇まいは人形のように儚くなく美しい。

 しかしラクスは完成された美に対して言葉が詰まった訳じゃない。

 

「ニ……コラ?」

「うん、久しぶりね。ラクス。あなたはいつもそそっかしいわ」

 

 その女性とは知り合いだった。

 名をニコラ・アヴェーン。

 ラクスが孤児院の時にお世話になった先輩であり、恩人。

 

「なっ……どうして?」

「うんうん。質問はたくさんあると思うけど、それはまた今度。今日は我儘で抜け出して来ちゃったけど、あまり長くは居られないの」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! お前は……」

「またね、()()()()

 

 茶目っ気を出してウインクしながら曲がり角に消えるニコラ。

 

「おい、ラクス。お前は病院で絶対安静だろ?」

「凄い勢いだったけど、怪我してない?」

 

 やれやれと言って頭に手を当てるグレンに膝を擦りむいてないかを確認するルミア。

 しかし、当のラクスは車椅子に座ったまま虚空を見つめている。

 

「ニ……コラ」

「あ? あの美人さんと知り合いか?」

 

 ラクスはニコラが消えた曲がり角に向けてレーダーの指向性を向けるが、反応はない。

 そしてようやくラクスは口を開いた。

 

「なぁ、ルミア、グレン先生」

「ん、どうした?」

「なにかな?」

「……幽霊、初めて見たわ」

 

 ギョッとするルミアとグレン。

 ニコラ・アヴェーン。ラクスが孤児院の時にお世話になった先輩であり恩人であり━━━

 

 死人だ。

 

 ◇

 

 幽霊の存在は魔術的に証明されているらしい。

 どんな理屈だとか、どうやってとかは知らないが幽霊は存在する。

 だとしたらあいつ……ニコラは死んでも死に切れなかったのだろう。あいつはまだ若かった。

 歳は俺とそう変わらずに二、三、上くらいで、あんなにクール気取ってるが実はポンコツ。

 無理をして背伸びしていつか盛大にひっくり返るタイプの人間だ。

 ……あいつは俺を恨んでるのだろうか?

 

「ラクス君、ダメだよ。それ以上は」

「……すまん、ありがとう」

 

 本当にありがとう。

 考えずにはいられなかったことだ。

 それをルミアは俺の顔を見ただけで察したのだろう。

 ありがとうルミア、お前のおかげで帰ってこれた。

 

「いろいろあると思うけど今日はどんちゃん騒ぎを楽しもっ、ねっ?」

「そうだな、今日はそのために抜け出してきたわけだし」

「あ、それは別ね。後でお話しがあります」

「うそーん」

 

 嘘じゃないらしい。

 パーティ会場は学院近くのいいとこの店屋。

 俺は皿の上にあった野菜をヒョイっと一口。うまい。

 なんだかんだでみんなも騒ぐ口実ってのが欲しかったみたいで、会場荒れまくっている。

 まず、酒。アウト。

 てめーら、歳はいくつだボケェ。

 いや、倫理語るほど俺もできちゃいないのだけども。

 ということで駆けつけ一杯。

 

「ダメだよ、体に障るから」

 

 いい酒がタダで呑める機会をルミアに阻止された。

 

「……ねぇ、俺ってば今日は何を口にしていいの?」

「野菜、お肉、水くらいかな」

「ですよねー」

「あっ」

「どうした?」

 

 俺は仕方なく酒を置いて、水を飲む。

 あれ……これって焼酎?

 

「コショウ、塩、ハバネロ、オーリブオイル!」

「ぶふっ!?」

「あーもう、汚いなぁ」

 

 お茶目で可愛くこの前の俺の馬鹿の真似をするルミア。

 美しく手をあげてなんつーか天使って感じだ。俺がやると汚く見えるのになぁ、違いはなんだろうか。

 俺は人で……ルミアは天使だからか、なるほどそれは自然の摂理。

 しかし、焼酎を吹くと唇がヒリヒリするなぁ。

 

「……この匂い、もしかしてお酒?」

「飲んで気付いた。悪気はないんだ」

 

 そして匂いでバレる俺氏。

 必死の弁明で極刑は免れた。

 

「置いてある飲み物は触れない方がいいな」

「そうみたいだね」

 

 ルミアと一緒にカウンターに座る。

 マスターっぽい人に新しくコーヒーを頼んだ。

 

「あいよ」

 

 うーん、うまい。

 やっぱ普通の飲み物は美味しいね。

 量を考えないと俺とルミアの後ろで広がる地獄絵図となる。

 グレン先生、システィが酔っ払うと素直になるからって照れんなって。

 あ、いや。あれはマジでめんどくさがってるわ。

 システィが残せたのは二日酔いと黒歴史と。

 

「ねぇ、ラクス君。聞いてもいいかな?」

「いいけど、どうしたよ。あらたまって」

「こういうときじゃないと聞けないことだから」

「そんなもんか」

「うん、そんなもの」

 

 それじゃ、と姿勢を正すルミアに俺も釣られる。

 紳士的にいこうか。

 

「問一、私とラクス君は幼い頃に出会っている?」

「いいや、アルザーノ帝国魔術学院が初対面だ」

 

 なぜこんな質問するのかと聞けば、ルミアとグレン先生は昔に会ったことがあるとのこと。

 詳しく経緯も話してくれた。

 本当に昔のこと。ルミアがシスティの家に下宿を始めた頃。ルミアは拐われたらしい。

 

「拐われ属性でもついてるの?」

「自分でもわからない……けど、そういう事が続くと運命って思っちゃうよね」

「ごめん」

「いいよ、気にしなくて。今はそう思ってないから」

 

 ほんのからかいがルミアにとっては重いことだったみたいだ。自分の思慮浅さにヘドが出る。

 ルミアの笑顔が見てたくて、駆け回ったのに俺が曇らせるとかなにごとだよ、くそ。

 

「ラクス君風に言えばね。運命の一つくらい殺してみせるって思えるようになったから」

「ぐあほええぇぇっぇ!?」

 

 それは俺の所有する禁忌教典に書かれていた【超電磁砲】のキャッチコピーじゃないですか!

 ったく、天使のような顔をして小悪魔のようなことをするんじゃありません。ただの天使だから。

 

「あはは……それじゃ、問二。ここからが本題かな。ラクス君は本当に助けが必要な時に必ずやってきて私を助けてくれます。もしかして……未来がみえますか?」

「それは……」

 

 俺にもよくわからない。

 あれは未来なのだろうか。にしては局所的で結末は見せずに内容が変わることもある。

 神託というには仰々しいが、わざわざそんなことをするのだろうか。

 ()()()はあるが、奴らはそこまでの親切心はない。アフターケアなど御構い無しだ。

 だとすれば、原因はなんだろうかと聞かれ答えに詰まるのが現状。俺の能力、というか異能は【電気操作】これで間違いない。

 仮にだ。俺の本当の能力が別のもので副作用として扱うのが【電気操作】なのであれば説明はつくのだろうが、本当の能力とはなんだ? 電気を副次的に扱う能力など存在するのか?

 

「あのね。ラクス君には黙秘権があるんだよ」

「いや、ルミアにはどこまでも誠実でいたい。答えるよ、少しまとめるから待って」

「急にそんなの……」

 

 ルミアが耳を真っ赤にしてコーヒーを飲む。

 ……無意識だったが、よく考えればどんだけこっぱずかしいことを口にしてんだよ。

 

「答えは多分YES。未確定の未来が俺には見える時がある」

「やっぱり……」

「俺の行動がそのビジョンにどんな影響を与えるか分からないけど、大筋はそのまま現実になる」

 

 トリガーは……多分、俺の命の危機。

 このままいけば確実に死ぬという未来を避けるために俺の生存本能が働いたときにだけ未来が見える。

 今日もおそらくルミアを助ける動きをしなければあのメイドになんらかの手段で接触され、殺されていたんだろう。

 最初のテロもそうだ。

 俺が動かなければ学院はまとめて吹き飛んでいたかもしれない。

 けど、それももうダメだ。

 未来予知という大それた力と【電気操作】という大層な力を持ったとしても俺はただの一般人。

 泣きたくなって、それでも諦めたくなくて。

 捨てないように大切に抱えてきたものは既に両手一杯になりそうだ。

 

「ルミア、正直に言う」

「……うん」

 

 そうか、やっぱりルミアは分かっていたか。

 

「俺はもう、闘えないかもしれない。もって二回。あと、二回だけなら死の恐怖と戦える。けど、それ以上はもう━━━」

 

 きっとこれが挫折ってやつなんだろう。

 テロリストと戦っていた時を思い出す。

 あの時は頭に血が昇って何も考えていなかったが、今なんて思い出しただけで手が震える。

 今日もそうだ。

 ルミアのキスでアドレナリンがドバドバでどうにかって感じだったが、ゼーロスの目が忘れられない。

 あいつらの人を殺す目が忘れられない。

 

 それを考えてあと二回。

 本当だったらもう戦いたくなんてない。

 でも、ルミア=ティンジェルという子は闘争を宿命づけられている。

 それがなんとなくわかってしまう。

 他人の俺がそうなんだ。本人はずっと昔からその奇妙な感覚に悩まされてるはずなんだ。

 

「ごめん。本当にごめん……あんだけ偉そうなことを言ってたのになぁ……」

 

 体が震える。

 手足の感覚が薄くなっていく。

 背中が寒い……寒い。

 そしてなにより俺が諦めたことでルミアが遠くに行ってしまうことが怖い。

 

「大丈夫だよ。私はどこにもいかない。あなたを置いて行ったりしない」

「……あっ……あ……ありがとう」

 

 ルミアが俺の肩を抱いてくれている。

 背中の寒さはいつの間にか消えていた。

 手足の感覚も戻っている。

 体の震えはおさまった。

 

「私こそごめん。ラクス君の思いを知らなくて……知ろうとして。裏目に出ちゃったなぁ。本当に嫌になっちゃうよ」

「なんだか謝ってばっかだよなぁ俺たちって」

「変なところが似てるんだよ。謝ってばかりだからもう謝らなくて済むようにって意気込んで、つまずいて」

「勢いよく立ち上がれば、辺りは真っ暗で帰り道しか照らされてない」

「うんうん。でも戻ることはできなくて手探りで進むしかないの」

「精一杯悩んで進んできた結果は合ってるかも間違ってるかも分からないし、もう手遅れなのかもしれない」

「それでも私達は悩み続けるしかないんだよ。その時間はまだたくさんあるんだから」

 

 あぁ、その通りだ。

 俺は暗闇をルミアという松明で照らすことで進んできた。けど、松明は光り続けても支える俺の腕が限界なんだ。

 ルミアはこれから誰を杖にして歩いていくのだろう。

 絶望を打ち砕くのはいつだって英雄だ。

 ルミアを支えて支えられるのは英雄しかいない。

 そして、俺は英雄足り得ない。

 悔しいが、そういうことなんだろう。

 

「今日もありがとうラクス君。私を助けてくれて……」

「あぁ、あん時に助けてって言われたからな」

 

 それはルミアが初めて口にしてくれたわがままだ。

 俺を頼ってくれたことが嬉しかった。

 

「アリシアさんも騎士団に連れてかれた時にルミアを頼むって言ってたよ」

「うん、私とお母さんって結構似てるんだよ」

「幸せそうだな。見てて俺も嬉しくなってくる」

「ありがとう。これからももっと幸せになっちゃうからね」

「そうか。それは楽しみだな」

 

 ところでそろそろルミアさん。

 

「離れた方が良くないですか?」

 

 ルミアさんは未だに俺に抱きついたままだ。

 大半が酔っ払いの連中とはいえ、グレン先生とかは正気なわけだし恥ずかしいというか。

 

「大丈夫? 震えはおさまった?」

「あぁ、おかげさまで」

「それじゃ名残惜しいけど離れるね」

「そうしてくれ、精神衛生的によろしくない」

「精神衛生的って……ッ!」

 

 やっと分かったのか離れてくれるルミア。

 これは散々言われてることだが、ルミアはプロポーションがとてもよく、出てるとこは出て引っ込んでるとこは引っ込んでる。

 夢のボッキュボンだ。

 

「えっち」

「……すみませんでした」

 

 なにこの超可愛い生き物。

 胸を覆うようにするから更に強調されるし、赤く染める頬とか心に訴えるものがある。

 ルミアは顔の熱を冷ますように近く水に手を伸ばす。

 

「ごくごく……うー? ぷはぁ」

「おいおい、嘘だと言ってくれよ」

 

 ルミアが一気飲みしたのは焼酎。

 あーシスティと似たようなもんか。

 

「らくひゅきゅん。今日もかっこいいよー、ひっく」

 

 酔いが秒で回り、俺に絡むルミア。

 指で胸をグリグリしながら上目遣いとか、男が狼であることを忘れてないだろうか。

 ウルフラクスさんになっちゃいそうだ。

 

「あいあい、ありがとさん」

「あー、またそうひゃってうけながすーっ」

「メンドクセー」

「めんどきゅさくないもん! らきゅひゅんくんのいじわるー」

 

 らきゅひゅんってもう誰だよ。

 俺の名前が原型をとどめてないくらいに分解されたんじゃが。

 

「きょうはのむからねー、らきゅひゅくんものむぞー」

「おー!」

 

 体に障るとか言ってたのは忘却の彼方らしい。

 ちなみに俺は【電気操作】のせいでアルコールを摂取したそばから自動分解してしまうので酔えない。

 

「マスター、水道水を」

「学生も大変だねぇ」

 

 すっと出てくる水。

 用意がいい。

 酔っ払いの基準として水と酒の違いがわからないというのは十分に機能すると思う。

 ルミアは水を呑んでどんどん酔っ払っていく。

 偶にはこういうのもいいだろう。

 システィとかルミアはこういう時のガスを抜いてやらないといつか自爆してしまいそうで危ういし。

 

「えへへー」

「もうまじなんなの俺を照れ死させる気なのそうなんだな?」

 

 来週からは酔いどれ女に恋をして〜酒と女に御用心〜をお送りします。枠は火曜夜9時のサスペンスだな。

 主人公は開始1分で謎の変死を遂げる。

 つまりは照れ死。関わる人が天使に対する耐性がないのでアナフィラキシー的なサムシングで死んでいくのだ。

 嘘だ。つかアナフィラキシーってそういうもんじゃないし。

 

「撫でて」

 

 撫 で て

 

 それはつまり頭を。

 天使の黄金の糸に手を触れる権利が与えられたと!?

 今日はどうしたんだ、俺。やけに幸運が過ぎないか!

 えぇ、えぇそれではルミア=エンジ……ティンジェルさん失礼します。

 

「んっ……らくひゅきゅんは撫でるのが上手だー」

「俺は萌えキャラかなにかか」

 

 受け答えをしながらも俺は着実に天使の感触を覚えておく。この情報はメモリの最上級、一番大事なところに保管しておかねば。

 トップシークレットだ。軍事機密よりも大事なところに保管する。

 

「すぅ……すぅ」

「やっぱり疲れが溜まってたか。お疲れさん、そしておかえり」

 

 可愛いらしい寝息を立ててカウンターに突っ伏したルミア。

 俺はマスターからタオルケットを貸してもらい、体を冷やさないように掛けた。

 

 そしてようやく事件が終わったと思った。

 事件は犯人を捕まえてハッピーエンドなんじゃない。無事に平穏を取り戻して初めてエンディングなんだ。

 そういう意味じゃ間違いなく今回はハッピーエンド。

 グレン先生もルミアもアルベルトさんもリィエルも……俺も。誰もが等しく傷つき、膝をおりかけた。

 けど、誰も死んじゃいない。

 死ななければ後は続く。残せるんだ。

 逃げることも、立ち向かうことも生きてなければならない。

 

「ったく、これ誰が片付けるんだよ」

 

 俺はクラス全員が酔いつぶれ、グレン先生までもが目を回してる状況に頭を痛めつつ笑った。

 望んでていた状況とは大分異なるが、これも一つの結末だ。

 なにはともあれ、第2部完ってところか。

 

 ◆

 

 

 これは一人の少女が少年へと向けた一つのわがまま。

 過去の少女であれば諦めて流されていただろう。

 しかし、少年は助けると口にした。

 もっと楽しくなると。

 そうだ。少女は心に決めていた。

 こんなところでつまずいてる場合じゃない。

 ならば声を上げなければ。

 これは少年へと向けるSOS。

 

「ふふふ、そうだね。でも、私はやっぱりこういう運命なんだよ。だからね━━━」

 

 運命という言葉に少女は顔に影を落とす。

 逆に少年は怒りを顔にだす。

 少女が諦めたと勘違いしてるのだろう。

 そう、それでいい。少女は思った。

 周りの目を欺いて少年を守れるのならば喜んで、汚れ役を引き受けよう。

 たとえ、少年が怒りを向けたとしても。少女は知っている、それが自分のためであることを。

 だから口にしよう。

 これから始めよう。

 

 私とあなたの逆転劇を。

 

「私とお母さんを助けて」

「おまっ━━━」

「《雷精の紫電よ》」

 

 少女の魔術で少年は倒れこむ。

 しかし、それは演技である。

 少女の知る少年はそんなことで倒れたりはしない。

 少女は願いを口にした。

 少年はそれを聞き届けた。

 ならば奇跡はなる。どんな絶望的な状況でも少年は少女を助けにくる。しかし、それが間に合うかは別問題ではある。

 ただ、付け加えるなら少年の魔術特性は【調和の逆転・転化】。

 気にくわないちゃぶ台をひっくり返すことが性に合っている。

 

 そう始まるのだ。

 ここを起点に。

 未来の改編はなされる。

 

 さぁ、始めよう。

 

 少年と少女の逆転劇を。

 




さぁ、やってまいりましたAfter。
お察しの通り、ニコラの存在感が3、4巻で大きくなります。
半分くらいはオリジナルになるかもしれないです。
つーかプロット書いてるとルミアが全然出てこなくて萎える。いいし、少ない登場でもルミアは天使だから存在感あるよね。
その内容は既に2万文字超えてたりする。
ま、3巻と4巻の内容だしね!
しょうがないね!
投稿はまたまた2週間くらいお待ちを。
その間に頑張っちゃいますので。

それとUAとお気に入りがとんでもないことになってました。
みなさんありがとうございます。やる気出ちゃいます。
感想も書いていただいて……本当、作者冥利につきます。

あ、来週でロクアカ終わっちゃうんですよね。悲しい。
しかし、言い聞かせろ諸君、ロクアカが来週終わりだとしてもまだ俺らにはOVAがあるじゃないか。


そしてこの場を借りて誤字報告の感謝を申し上げます。
英国紳士?様 矛盾無数様 ありがとうございます。
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