不器用なフォルテママが、恋をしたらどうなるんだろうなと思って書きました。
フォルテママは可愛い、いいね?

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不器用なフォルテママが、恋をしたらどうなるんだろうなと思って書きました。
フォルテママは可愛い、いいね?


グラブル短編 ~フォルテ~

「ふぅ・・・」

 

溜息をつきながら私は荷物をまとめていた。

私はフォルテ、騎空団ダークドラグーン団長・・・いや、元団長だ。

今では別の騎空団に所属している。が、それもそう長くはないだろう。

 

「・・・そういえば団を抜ける時はどうすればいいのだろうな、ダークドラグーンの時は一言団員に言うだけで抜けてきたが・・・」

 

流石に団長・・・グラン達とそれですっぱりお別れというのはやりたくなかった。長い付き合いだったし、私個人としてもこの騎空団は居心地が良かったし気に入っていたから。

 

「長い付き合い、か。思い返せばいつからこの騎空団にいたのだったかな・・・」

 

グランとの最初の出会いは忘れもしない。私はとある町の武芸大会に出場しようとしていた。勿論、強者との戦いを求めてだ。

だが武芸大会は中止となった。主催側が言うには、どうやら私が出場するという話を聞いた参加者たちが全員棄権してしまったらしい。

その話を聞いた私は酷く憤慨し、会場の前で吠えた。

 

「ああ、不愉快だ・・・!部党大会であるというのに一切戦えず帰還するというのは・・・!」

 

そして私は集まっていた聴衆に向かって叫んだ。

 

「貴様らッ!もう一度聞くぞッ!!私に挑まんとする戦士はいないのか!私の闘争心を、満たさんとする者は!」

 

静寂。誰もが静まり返っていた。失望と共にその場から立ち去ろうとした瞬間。

 

「僕が挑戦する。」

 

聴衆の中から、一人の少年が声をあげた。まだ幼く、強者を前に震えながらも、確かに戦意を宿した目でこちらをまっすぐ見つめていた。思えば、この時からグラン、貴様は私にとって特別だった・・・

 

戦いの結果は私の圧勝だった。無理もない、後でわかったがこの時グランは旅を初めてせいぜい3ヵ月程の駆け出し騎空士で、その話を聞いた私はそれを蛮勇だったと笑い飛ばした。決着した時、グランは傷だらけでその場に突っ伏し、私は一切息を荒げる事無く立っていた。戦いはどう見ても私の完勝だった。ただ唯一、久しく傷を負っていなかった私の体を傷つけられた事を除いては。

その時、私は思った。何度打ちのめされても立ち上がり、闘志の炎を消すことなく何度も挑み続けてくるグランの姿を見てこう思ったのだ。

-こいつは必ず強くなる-

 

そして私はグラン達の騎空団についていった。奴を鍛えれば、いずれ、必ず私と並ぶ程の強者になると確信していたのだ。強者と戦うのが私の趣味だったが、強者を育てるのもまた私の喜びの一つだった。

 

かくして私はグラン達と一緒に旅をした。依頼を共にし、強敵と戦い、数多の星晶獣を打ち倒し、大帝国エルステと剣を交えた。

その旅のさなか、何度もグランと戦った。最初の内は一方的に私がぶちのめすだけだったが、次第に奴は私の槍を止め、避けるようになり、こちらの隙を見つけ、確実に強くなっていった。そしてある日ついに、グランは私を打ち負かした。

 

「どう、フォルテ?」

「・・・ふっ、合格だ。貴様の勝ちだ、グラン。」

「やった。やっとフォルテに認めてもらえた。」

そういってグランは無邪気な笑顔で笑った。・・・本当に馬鹿な奴だと思った。私を負かした事よりも、私に認められて喜ぶなんて・・・

 

 

「・・・やはりグランには告げるべきだな。」

 

長い思考から意識を戻し呟く。そうだ、あいつは団長で、私は団員だ。団員が騎空団を抜けるというのなら、やはり一言あって然るべきだろう。

 

私は部屋を出てまっすぐグランの部屋に向かった。もう夜遅く、何人かの団員は寝ているだろう頃だったが、いつも通りなら、まだグランは起きている筈だった。

夜にグランの部屋に向かっている。そう考えると何故だか動悸が激しくなってきた。戦いを前に昂る感覚とは全く別の感覚だった。馬鹿な、私はダークドラグーンだぞ?湧いてくる邪念を振り払おうと私は自分に言い聞かせる。落ち着け、私。

 

そう、この邪念こそが私がこの団を抜けようと考えた原因だった。ずっと前から一緒だったはずなのに、近頃グランの事を考えると私はどうもおかしくなる。そして、それを意識し始めると私は何にも集中できなくなってしまうのだ。

恋?まさか、もう生娘などと呼ばれる齢ではあるまい。私はもう20だぞ?それに何と言う笑い話だろう?あの、ダークドラグーン・フォルテが恋の病で槍もまともに振るえないなどと。そんな事を認めれるはずが無かった。

無論他にも理由はある。騎空団ダークドラグーンに残してきた部下達の事も気になってきていたし、なによりグランはもう十分強くなった。私も再びこの空を自由に駆け、強敵と渡り合う日々に戻る頃合いだとも感じてきていた。

 

そう、だから私はこの感情から逃げる為にこの団を出るのではないのだ・・・私は必死に自分に言い聞かせた。私はそんなものには囚われない、私は誇り高き戦士だ・・・そう思っていた。

 

「む、あれは・・・グラン?」

 

グランが自身の部屋の前に立っているのが見えた。ちょうどいい、私が声をかけようとしたその時

 

「グラン☆お待たせー!」

 

明るい声が邸内の廊下に響いた。見るとクラリスがグランの部屋の前まで走ってくるのが見えた。

私はとっさに廊下の角に隠れた。

 

(何故私は隠れたんだ?隠れることなどないだろう、さっさと要件を言って部屋に戻るべきだ。)

 

私の中のある部分が囁いた。だが私は動こうとしなかった。私の中のもう一つの部分が、この所私に邪念を抱かせている部分がここから動くなと命じていた。

 

「あ、クラリス。で、用っていうのは?」

「えへへ、あのね。それなんだけどさ・・・できればグランの部屋の中で話したいっていうかー・・・」

 

もう十分だ、行こう。

 

「え!?ぼ、僕の部屋で?それは・・・ちょっとまずいんじゃ・・・」

「えー、なんで?」

「なんで、って・・・そりゃ・・・」

「そりゃ、なに?」

「いや、そりゃこういう時間に、その、部屋で二人きりっていうのは色々まずいっていうか・・・」

「んー、そっか、それもそうだよね。じゃ、こーいうのはどう?」

 

やめてくれ。

 

「うちね、グランのこと・・・好きだよ?」

 

そこから自分の部屋に戻るまでの事はよく覚えていなかった。とにかく、平然を保とうとしていた。何ともないような顔をしていようと思った。部屋に戻る途中に何人か団員とすれ違ったが、彼等には悟られてはいなかったと思う。

 

部屋に戻ると、即座にベッドに飛び込んだ。さっきのクラリスと、グランの会話が頭の中でずっと再生され続けていた。

その後、グランとの今までの思い出が頭の中を巡っていった。あいつとの特訓、あいつとの会話、あいつの笑った顔、あいつと出会った日、あいつを無意識に目で追った時、あいつが見つめ返して来た時、そしてあいつに負かされた日・・・

思えばあの日、あいつに負かされた日からだ。私とあいつの日課だった特訓は日が経つにつれやらなくなっていた。あいつが活躍し、強くなっていく度にあいつとの距離は離れていった。私が望んだように、あいつは強くなっていったのに、それを見てもいつからか私は満たされなくなった。

ああ、そうか。ようやく私はわかってきた。いつからか、あの特訓はただの特訓じゃなくなっていたのだ。あれは、特訓であると同時に、私とあいつの繋がりでもあったのだ。私はあいつを必死に繋ぎ止めようとしていたんだ。

 

何が自分を律する事ができる、だ。何が誇り高きダークドラグーンだ。結局、それは自分の気持ちと向き合わないで逃げ続けるための方便だった。私は、私は・・・

 

 

「私はグランが好きだったんだ。」

 

 

言葉にした瞬間、堰を切ったように涙があふれてきた。そして私は、人生で初めて一人でむせび泣いた。

 




続きとか、他キャラの短編とかは気が向いたら書くかもしれません。
運営さん、フォルテママの2アビの攻downを片面枠にしてください。


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