ブリーク・フォール墓地編は書き終わっているので、後で纏めて投稿しようかなと思ってます。
入口から入ってすぐのところで山賊を倒した2人は辺りを物色していた。
「この山賊とそっちにいた2人の山賊は別のグループだな」
「そうね。この元々あった死体は殺されてから間もないし、形跡から見ても仲間割れとは考えにくいわ」
「多分金の爪を持ってるグループと、ここを根城にしてたグループだろう」
「あ、あそこに宝箱!」
「じゃあそれは任せた。俺は山賊から金目の物を頂戴するよ」
リンは鍵のかかった宝箱を見付け開錠に取り掛かった。
ロイは3つの死体から金と軽くて金になりそうなものを回収する。
「スタミナ回復の薬と金貨50枚程、それと銀の指輪ね」
「結構な収穫だな。コイツらの金庫変わりだったのかな?」
「何にしてもラッキーね。じゃ、先に進みましょ」
回収した物を腰のポーチに入れて先に進む2人。
しばらく進むと人の気配を感じ取ったリンが姿勢を低くし、ハンドシグナルを出した。
ロイも頷きで返事をしてから姿勢を低くする。
階段を降りた先に見えたのはレバーを引こうとする山賊だった。
「ぐうぅっ」
レバーを引いた山賊は四方から発射された矢によって絶命。
それを見たロイ達はあのレバーが何らかの罠であると理解した。
「これは古代ノルドの仕掛けね」
「解き方わかるか?」
階段を降りた2人は辺りを見渡し、状況を把握していく。
この仕掛けは古代のノルド達がよく施す仕掛けで、何枚かの絵柄を合わせてレバーを引かなければならない。もし間違った絵を選択すれば、その瞬間罠が作動はし先程の山賊のように蜂の巣になる。
「このくらいなら簡単よ」
「なら頼むわ。うわ!この山賊金貨20枚も持ってやがる!」
リンが仕掛けを解いている間、死体の懐を探っていたロイはホクホク顔だ。
「これでレバーを引けば扉が開くわ」
「おっしゃ、引くぞ」
レバーを引くとギギっと鈍い音が漏れる。
少し遅れて目の前の鉄の格子で出来た扉が開いた。
「失敗したかも?ってビビったろ今」
にひひと笑って言うロイにリンは顔を赤くして反論する。
「そんな事ない!私は失敗しないもん!」
「焦ってる焦ってる、図星だったか?」
「う、うるさい!私はロイが死んだら生きていけないんだから焦って当然でしょ!」
「大袈裟だよお前は、ったく」
からかっただけだよと言ってリンから目線をそらす。
からかわれたリンは先程の発言の恥ずかしさから綺麗な白い肌を耳まで赤くさせていた。
「お、あそこにも宝箱あんぞ」
「え、どれどれ!?」
「ほらあそこ」
「中身は・・・と」
「早いなオイ」
「金貨23枚と矢が11本と鋼鉄の兜ね」
「金貨は回収、矢も補充して残りはそのまま置いとけ」
「兜は重いもんね」
ロイ達は背嚢を背負っているが、それ程容量に余裕はない。
なのでこういったダンジョンでの戦利品は厳選しなければならないのだ。
何でもかんでも持って歩けば荷物は重くなり、音も増すので隠密行動や戦闘に支障が出る。
「そこの螺旋階段から降りてくみたいだな」
「下からスキーヴァーの臭いと鳴き声がするわ」
「ただのスキーヴァーなら火炎で十分だな。下がってろ」
螺旋階段を降りていくとリンの言った通り何匹かのスキーヴァーがロイに襲い掛かる。
しかしスキーヴァー程度、ロイ程の魔術師ならば一瞬で黒焦げに出来るので大した脅威ではない。
あっという間にスキーヴァーの丸焼き3人前の完成である。
「誰か・・・こっちに来るのか?ハークニール、お前なのか?それともビョルン?ソリング?」
螺旋階段を降りるとどこからか声が聞こえてきた。どうやら火炎の音とスキーヴァーの悲鳴が聞こえたようだ。
2人は息を殺してそちら近付いていく。
周りには蜘蛛の糸が張り巡らされており、ここはフロストバイト・スパイダーの巣であることは明確だった。
声のする方を見ると、蜘蛛の巣に雁字搦めにされた男が目に入った。
(ここ、蜘蛛の巣、アイツどうする?)
リンはハンドシグナルでロイに問い掛ける。
2人は隠密行動の際は声を出さず、ハンドシグナルだけでやり取りをするように前もって決めている。
あまり複雑な会話は出来ないが、ある程度ならばハンドシグナルだけで意思疎通が可能だ。
(俺、前出る、援護頼む)
(了解)
リンが弓を構え、ロイが火炎で道を塞いでいる蜘蛛の巣を焼き払う。
「またあの蜘蛛だ!助けてくれ!頼む!」
隠密行動も虚しく、蜘蛛の巣に囚われている男が叫ぶとほぼ同時に、上から巨大な蜘蛛、ジャイアントフロストバイト・スパイダーが降ってきた。
「ちっ、見付かったか!毒に気を付けろ、俺が撹乱するから頭を狙え!」
「任せて!」
火炎で蜘蛛を焼きながら横に回り込む。
蜘蛛はロイに気を取られリンは視界に入っていないようだ。
しかしリンに対して横を向いたことで、蜘蛛の長い足が邪魔して矢で頭を狙う事が出来ない。
「ロイ!一旦下がって!」
「それじゃあこの男が殺されちまう!」
リンは蜘蛛の頭を狙えず、ロイが下がれば男を見殺しにする事になる。
このままではロイが蜘蛛の毒牙にかかるのは時間の問題だった。
「仕方ねぇ、アレを出す!」
「でも!」
「離れてろ!それしかねぇ!」
ロイは皮の兜を脱ぎ捨てると額に指を当てた。
「はぁぁぁぁ!!」
額に力を込めると、そこにもう1つの目が浮かび上がった。
ロイの持つ特異体質、邪眼である。
ロイは額にもう1つの目を持っており、それを開くことで魔力を大幅に上げる事が出来る。
この邪眼状態で使う魔法は消費マジカが増え疲労が増す変わりに、凄まじい威力の魔法を放つ事が出来るのだ。
「食らえ!邪王炎殺煉獄焦!」
ロイの両拳から黒い炎の玉が拳を突き出す度に飛び出し蜘蛛を焼く。
この黒い炎は普通の炎の威力の比ではなく、厚い皮膚に覆われた蜘蛛にも凄まじいダメージを与えた。
「トドメだ!」
両拳を重ねて同時に突き出すと、先程より一段と大きな黒炎の玉が蜘蛛の頭に直撃する。
頭を焼かれた蜘蛛はきゅうと鳴いてから呼吸をやめた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ロイ!大丈夫!?」
膝に手をついて肩で息をするロイの背中を、兜を渡しながらさするリン。
「やっぱこれは疲れるわ・・・」
「あんまり無理しないでよ、お願いだから」
「はは、悪ぃ悪ぃ。ついな」
邪眼を閉じて兜を被るロイに魔力回復ポーションとスタミナ回復ポーションを手渡す。
それを飲み干すとロイは空き瓶をポーチにしまう。すると蜘蛛の巣に囚われた男に話し掛けられた。
「アンタ凄いな。さっきの魔法・・・ありゃ何なんだ?」
「教えねぇよ爪泥棒のコソ泥野郎」
「なっ!この爪は盗んだんじゃねぇ!拾ったんだ!」
「アッサリと白状してくれたわねコイツ」
ロイのカマかけにあっさりと引っかかった男は全てを白状しようと決めたようだ。
「バレちゃあしょうがねぇ。俺は韋駄天のアーヴェル、お前の言う通り泥棒さ」
「随分素直だな。で、爪はどこだ?」
「ここにはない!だがどこにあるかは知ってる!」
「へぇ。それを信じろって言うの?」
「どのみちこのままじゃ何も教えられない、ここから降ろしてくれ!」
「ふざけんなよ。お前降ろしたらソッコーで逃げる気だろ」
「いいわロイ。降ろしてあげて」
「はぁ?そんな事したら逃げられるぞ?」
「逃げられないわよ。だって私が弓を引き絞っているんだもの」
「じゃ、そういう事だから。逃げようとしたらお前の頭が矢とキスする事になるからな」
「わ、わかったよ。とにかく降ろしてくれ!」
リンが弓に矢をつがえて引き絞る。
剣で丁寧に蜘蛛の糸を切っていくと、徐々にアーヴェルの拘束が緩んだ。
アーヴェルが自力で出れるところまで糸を切ってから2歩後ろに下がる。
「助かった・・・ほら、約束通り爪は渡すから逃がしてくれ」
「そうだな。リン、殺れ」
「ま、待ってくれよ!話が違う!」
「あら、爪を渡したら助けるなんて誰が言ったかしら?」
「ち、ちくしょう!」
アーヴェルは慌てて走り出すが時すでに遅く、リンの放った矢がアーヴェルの胸を貫いた。
「あ、悪党・・・が・・・」
「盗人を生かしておくわけねぇだろ」
「衛兵に引き渡してもどのみち死刑よ」
ロイとリンは正義の傭兵、これだとどちらが悪党かわからないが盗人を生かして帰す程彼らは甘くはない。
このスカイリムで生きていくにはこうするしかない。悪党は殺さなければ自分が殺されてしまうのだ。
「生かしていつか復讐でもされたらたまらねぇからな」
「悪事を働いた自分を恨むのね」
2人は殺しが好きな訳ではなく、人を殺す事を何とも思っていない訳ではない。
だが正義の為、か弱い市民の生活の安寧を守る為にはやむを得ないのだ。
重ねて言うが彼らは悪党ではないし、人を殺す事に喜びを感じる訳でもない。
しかし、悪党に情を持ってはいけない事を誰よりも理解している。
奪われないように殺す、殺されないように殺す。
人を殺す事は良いことではないが、この乱れきったスカイリムという土地では、これが生きていく術である事もまた事実なのである。
今回主人公の転生要素が出てきました!
スカイリムなんて土地じゃ普通の人間がデカい蜘蛛やドラウグルの群れ相手に生きて帰ってくるなんて難しいですからね。
チートじゃねぇの?って思われちゃうかもですが、このくらいは許してください。
あくまでも魔法の強化版とか、魔法強化MODくらいに思っていただければ(笑)
一応ブリーク・フォール墓地編が終わったら、設定集を投稿しようと思ってます。
それではまた次回!