スカイリム~邪眼士として戦乱の地へ~   作:元気玉

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ボス戦です!


第5話─最奥の間─

 

ウォーカーを倒し少し休んでから扉の先へ向かう。

通路を進んでいくとまたも振り子の罠があり、リンが解除する。

その先は天井が高い広間になっており、床には油の水溜りが出来ていた。

広間に入ってすぐに、横にあった棺桶からドラウグルが這い出してきた。更にそれを合図とするかのように2体のドラウグルが奥から表れ、その内階段の上にいた1体の射手が、クーガーに向けて矢を放ってきた。

 

「大丈夫か!?」

 

「盾で防いだ、怪我はない」

 

「来るわ!」

 

クーガーへと放たれた矢は盾に防がれて地面へと落ちた。

近くにいる1体がクーガーへ斧を振り下ろし、もう1体はロイへと向かってくる。

クーガーは斧をかわしてバッシュを放ち、ロイは腰の剣を抜いて身構えた。

リンは弓に矢をつがえて階段の上から狙ってくる射手へと向け戦闘を開始。

 

「射手は任せたぞ!」

 

「ええ!」

 

「ちぃ!近接は苦手なのによ!」

 

3対3と数的には互角だがロイは近接戦闘に不慣れであり、形勢は若干不利であった。

更に不運な事にクーガーの相手のドラウグルは最下級だが、生前は名のある戦士だったようでなかなか手強く、ロイの救援に向かう事が出来ずにいた。

 

「私も突貫するわ!」

 

リンの放った矢は射手の肩に刺さり、射手は弓を落とす。

これを好機と見たリンもダガーを抜いて突貫し、各々1対1の近接戦闘へとなった。

 

「くっ!」

 

ドラウグルの剣撃を辛うじて防ぎ何とか体勢を保っているロイ。

 

「──っの野郎!」

 

渾身の切り上げがドラウグルの盾を弾き飛ばす。

これでドラウグルはバッシュも盾によるガードも出来なくなった。

 

「ギギッ!」

 

ドラウグルの振り下ろしをすんででかわし武器を持つ腕を切り落とす。更に回転しながら首目掛けて剣を振った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・何とかなったか・・・」

 

ロイがドラウグルを倒し辺りを見ると、クーガーもトドメをさしたところだった。

 

「ふっ!やぁ!」

 

リンも両手のダガーによるラッシュでドラウグルを倒したようだ。

 

「3人で良かったとつくづく思うぜ」

 

「ああそうだな。1人では俺も少々手こずったろう」

 

「油断せず行きましょう。最奥の敵は間違いなく強敵よ」

 

3人とも息を整えてから階段を上り、廊下を進んでいく。

すると広い廊下の奥に仕掛け扉があった。

3枚の絵が描かれた3枚の扉は古代ノルドの典型的な仕掛け扉だ。

 

「ここに爪をはめ込むのか?」

 

「ええ。爪の装飾が答えよ」

 

「なるほど。奥には余程大切な宝があるのだな」

 

「熊、蛾、梟の順か」

 

ロイが金の爪に施された装飾の通りに仕掛けを回転させる。

そして爪をはめ込んで左右に回すと、リンの言った通り扉が開いた。

 

「随分手の込んだ仕掛けだな」

 

「古代ノルド人はよく考えてるのか単純なのか分からないわね」

 

ロイの皮肉にリンが言葉を返す。

実際仕掛け自体はごく単純なものだ。

しかし対応した爪が無いと扉が開かないので、まぁセキュリティとして問題は無いように思える。

 

「広いな」

 

階段を上って最奥の間へ踏み入るとクーガーが呟いた。

広さや向こうに見える祭壇から考えても、ここが最奥で間違いないだろう。

 

「何か聞こえないか?」

 

奥の祭壇の方へ近付くとクーガーがロイ達に問い掛けた。

 

「いや、特に何も聞こえねぇけど?」

 

「私にも聞こえないわ」

 

「そうか・・・なんと言っているかは俺にもわからんが・・・何となく呼ばれている気がする」

 

「おい、怖い事言うなよ」

 

「あの壁は何かしら?」

 

3人が祭壇へ上り横を見ると文字の彫られた壁があった。

ロイとリンには何の文字かはわからなかったが、クーガーだけは反応した。

 

「ぬう!なんだ!?」

 

壁の文字から風のような何かが吹くと、それはクーガーの体に吸い込まれていく。

ロイもリンも、もちろんクーガーにも何が起こっているのかわからなかった。

 

「な、なんなんだそれは?」

 

「俺にもわからん・・・何か言葉のような、知識のようなものが体に流れ込んできたが・・・」

 

「2人共、お客よ」

 

クーガーに風が吸い込まれると、少し遅れて祭壇の棺が開く。

リンの言葉でクーガーは斧を抜き、ロイも手にマジカを集中させて戦闘準備を整えた。

 

「グオアアア!」

 

「お、オーバーロードかよ!?」

 

棺から出てきたのは盾と片手斧を持ったドラウグルだった。

しかしただのドラウグルではない。

ロイの驚きからも分かるようにこのドラウグルはかなりの強敵、ドラウグル・オーバーロードだった。

先程3人が苦戦したウォーカーよりも3つも階級が上だと言えば、どれだけ難敵かわかるだろう。

 

「ここにきてオーバーロードか・・・」

 

「ロイ、どうするの!?」

 

普段のロイ達ならば勝てない相手からは逃げる。

戦わない事も戦術の1つなのだ。

しかし・・・

 

「真のノルドは退かない!お前達は行け!」

 

クーガーは逃げない。

このオーバーロードがドラゴンストーンを持っているかもしれないのもあるが、彼は生粋のノルドだ。

戦闘において、たとえ勝てない相手だろうとも逃走の二文字はない。

 

「俺達もやるぞ!覚悟決めろ!」

 

「あーもう!クーガー、帰ったら奢りなさいよ!」

 

2人は意を決した。

ここまで短い間とはいえ死地を共にした者を置いてはいけない。

リンは弓を構え、ロイは邪眼を解放した。

 

「恩に着る!うおぉぉぉ!!」

 

クーガーはロイ達を一瞥するとオーバーロードに突貫する。

だがクーガー渾身の一撃は盾でガードされてしまった。

今度はオーバーロードの斧の一撃がくる。

 

「ぬうぅん!」

 

しかしクーガーもさるもの。

それを盾でガードしバッシュを繰り出す。

 

「この斧、氷系の付呪がされているぞ」

 

そう言うクーガーの盾を持つ腕は氷に覆われていた。

それを斧の柄で叩いて砕く。

 

「そいつぁお宝だ。死体から剥ぎ取ってやるぜ!」

 

「私も突っ込むわ!」

 

「俺も行くぜ!3方向からの波状攻撃だ!」

 

リンも両手にダガーを持ちオーバーロードに肉薄する。

斧の一撃をかわしざまに横腹を斬りつけ離脱。

怯んだ隙にクーガーの斧が背中を捉える。

しかし大したダメージは与えられていないようだ。

さすがにオーバーロードの体力は凄まじい。

その間にロイは邪眼を解放した。

 

「とっておきだ。邪王炎殺剣!」

 

ロイの手から溢れた黒炎が剣の形を成していく。

斬ると焼くを同時に行える、ロイの隠し玉だ。

 

「うらぁ!」

 

「ヌウゥ・・・!」

 

低く突っ込んだロイの炎剣がオーバーロードの太股を斬り付ける。

炎の付呪とは違う、本物の炎で斬られるのはさすがのオーバーロードにも堪えたようだ。

 

「ロ・・・ダ!」

 

「なんだ!?」

 

オーバーロードが何やら叫ぶとロイの体勢が崩れた。

 

「何かに押されたような、何かの魔法か!?」

 

「得体の知れない力だ、気を付けろ!」

 

「やっ!」

 

クーガーがロイを支えて立ち直す。

その隙をつかれないようリンがダガーで斬り付け牽制し、何とか事なきを得た。

それから連携を駆使し何度も攻撃を加えるが、オーバーロードが倒れる気配はなかった。

 

「このままじゃジリ貧だな・・・」

 

「しかし打つ手がない」

 

「まさかロイ・・・あれをやる気?!」

 

3人ともオーバーロードから距離をとる。

棺を挟んですぐに攻撃されない位置に移動して対策を練った。

 

「それしかねぇだろ。2人とも離れてろよ?」

 

「何か考えがあるのか?」

 

「クーガー離れて!私達は巻き込まれない事を第一に考えるの!ロイ、無茶しないでよ!?」

 

リンに手を引かれてクーガーもその場を離れる。

ロイだけを残して戦線を離脱する形となった。

ロイはリンの言葉に頷きだけで返すと、全身にマジカを行き渡らせ魔力を高めていく。

 

「俺の全マジカとスタミナをくれてやる。頼むからくたばってくれよ?」

 

リンはクーガーを連れて岩陰に身を隠し、ロイの技が及ばないよう身を屈める。

クーガーもそれに習って大きな体を精一杯縮め

、ロイは全身にマジカが行き渡ったの感じて詠唱を始めた。

 

「行くぜ、邪王炎殺獄炎爆焦!!」

 

詠唱を終えたロイが技名を叫ぶと同時に全身から黒炎が溢れ出し、火柱のように上へ立ち昇った。

その黒炎は半径10m程に広がると一気に収束し、1本の熱線となってオーバーロードに向かっていく。

黒炎に貫かれたオーバーロードの胴体は丸く穴が空いており、そのまま前に崩れるように倒れ込んで生命活動を止めた。

 

「ロイ!」

 

「なんだ今の魔法は?!見た事が無いぞ!」

 

リンはロイに駆け寄りすぐさま抱き抱えてポーションを飲ませる。

ロイは腕を動かすスタミナも残っていないようだ。

そんな様子をただ呆然とクーガーは見つめていた。

10歳の頃に傭兵となって戦地に出てから、早20数年。未だかつて見た事も無い魔法を目にし戸惑いと驚きで立ち尽くす。

 

「ぷはっ・・・!はぁ・・・はぁ・・・」

 

「無茶しないでって言ったのに・・・!」

 

ロイは呼吸をするので精一杯のようだが、目から涙を零すリンを見て微笑んだ。

 

「し、死なねぇように・・・加減はしたよ・・・」

 

額の邪眼もロイの意思とは無関係に閉じており、ロイの満身創痍さを物語っていた。

リンは手で涙を拭うと、ようやく笑った。

 

「その魔法は禁止じゃなかったの?」

 

「後でばあちゃんに怒られるな、こりゃ」

 

「聞かせてくれ、今の魔法なんなんだ?黒い炎など見た事も聞いた事も無い」

 

我に返ったクーガーがロイに問い掛ける。

ポーションで多少なりとも回復したロイは体を起こし、リンに背中を預けて語り出した。

 

「これは邪眼の力なんだ。黒い炎はこの世の炎じゃない、この額の邪眼で魔界の炎を召喚したんだよ」

 

「魔界の炎だと・・・?」

 

「スタミナをマジカに変換する魔法も同時に使ってようやく呼び出せるんだ。黒炎を召喚するには今の俺のマジカだけじゃ足りないからな」

 

「そんな魔法が存在するとは・・・大学にもお前程の魔術師はそういないだろう」

 

「まぁな、俺の魔法は人間仕込みじゃねぇからよ。話せるのはここまでだ」

 

ロイはそう言ってリンの手を借りつつゆっくり立ち上がる。

 

「いや、答えてくれて礼を言うよ。少しだが理解出来た」

 

クーガーがこれ以上聞いてこなかったのはロイに対して感謝の気持ちがあったからだろう。

好奇心は尽きないが、恩人を困らせる真似もしないのはノルドの男気の表れだ。

 

「しばらく休んでいかないと・・・ロイ、無理しないで」

 

「それなら心配ない。歩けるならば町まで護衛しよう」

 

「急いでるんじゃないのか?」

 

「恩人を放っていけばノルドの名が廃る。それに、約束があるからな」

 

そう言って微笑むクーガーの視線の先にはリンの目があった。

 

「な、なに?」

 

「生きて帰ったら奢る、そう約束しただろう?」

 

クーガーは戦闘前のリンの言葉を覚えていた。

もちろん下心など一切ないとクーガーは続ける。

 

「はははは!気に入ったぜアンタ!」

 

「光栄だ。さて、ドラゴンストーンを探すとしよう。お前達は休んでいろ、お宝も持って来てやる」

 

ロイとリンはお言葉に甘え、休む事に専念した。

リンはそれ程疲れてはいないがロイを放っておけないのだろう、ロイから離れようとしなかった。

しばらく待っているとクーガーが袋を持って戻ってきた。

 

「お宝はこれで全部だ。付呪された武器も入れておいたぞ」

 

ドサっとロイ達の前にその袋を置く。

金貨の音もしたのでかなりの収穫なのは確実だ。

 

「目当てのモンはあったのか?」

 

「ああ。棺の中に入っていたよ。どうやら古代ノルド人の一番の宝はこれだったらしい」

 

「ちっ、譲るんじゃなかったぜ」

 

「付呪された片手斧という喉から手が出る程欲しい物を我慢するんだ、そう言わないでくれ」

 

「ま、生きてただけ良しとするか!」

 

「「HAHAHAHAHA!」」

 

「まったく、男ってのは・・・」

 

リンのボヤきは2人の笑い声にかき消された。

 




チュートリアルダンジョンみたいなここでこんなに手こずってたら、この先話にならないですよね(笑)
なのでそのうち修行パート入れますww

ではまた次回!
お気に入りありがとうございます!!

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