畜生道からごきげんよう   作:家葉 テイク

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一六一話:再びソリを曳いて

 PPPの合宿から、一か月余りが経った。

 その間にサンドスター火山の噴火などがあったものの、基本的にはジャパリシアター及び俺達は普段と変わらない──即ち客の来ない暇な日々を送っている。

 ……まぁ、まだ準備期間だからな。ウチは。*1

 

 そうそう。これは旅をしている最中に知ったのだが、サンドスター火山の噴火って、年一くらいのアニバーサリー的なやつかと思ってたんだけど、実はそうじゃないのな。

 というのも、頻繁にというわけではないんだが、『ときどき』くらいの頻度では火山が噴火するのだ。

 カレンダーもないし詳しい間隔は分からないが、多分月一くらいのペースでは噴火してるんじゃないかと思う。

 最初は俺も『こんなにサンドスター火山が噴火するなんて、ヤバイんじゃないか……?』と戦々恐々としていたものだが、周りの連中があまり気にしていないどころか、新たなフレンズの誕生を言祝いでいるのを見ると、なんかそういうことを考える気にもならなくなっていくんだよな。

 …………まぁ、サンドスター火山のフィルターが復活してない現状、噴火はサンドスター・ローの漏出にも繋がるわけだから、完全に気を抜いたりはしないけどな。

 

 

「チーター。そろそろさばんなちほーに行こうと思いますよ」

 

 

 そんなある日のことだった。

 チベスナがそんなことを言い出したのは。

 

 来たか……ついにこの日が。

 俺達は、サバンナ地方でやり残したことが一つある。それが──『ぬいぐるみの回収』だ。サバンナ地方のアーケードの時点では、まだあのあと遊園地地帯にロッジ地帯に雪山地方に水辺地方に森林地方にと先が長かったこともあり、ぬいぐるみはほどほどのところで制限していたのだが、その代わり旅が終わって落ち着いたらまたアーケードに行って、残りのぬいぐるみを回収することをチベスナに約束していたのだ。

 当然、その為にはソリを出してサバンナ地方まで行き、ぬいぐるみを山ほど積んでシアターまで戻らないといけない。めちゃくちゃめんどくさいので、俺はあえて今まで自分からは言い出していなかったのだが……。

 

 というわけで、最後の抵抗ということで俺はすっとぼけて首をかしげてみる。

 

 

「サバンナ地方? 何しに行くんだよ今更。やることなくないか?」

 

「何言ってると思いますよ! ぬいぐるみの回収があるじゃないですか!」

 

 

 ……チッ、まだ覚えてたか。

 めんどくさいから忘れてくれてたらよかったのにな……。

 

 何が面倒くさいって、地味に遠いんだよな、サバンナ地方──というかアーケード。ジャングル地方を越えて行かないといけない上に、サバンナ地方自体、雨季だと足をとられるから非常に歩きづらい。

 

「もうしあたーの方もすっかり綺麗になったし、ぬいぐるみを回収しに行こうと思いますよ! 行くと思いますよ!」

 

「はいはい……」

 

 

 まぁ、俺もぬいぐるみ回収は面倒くさいが、逸るチベスナを突っぱねてまで拒否したいわけでもない。約束もしたことだしな。

 めんどくさいが、行くかぁ……。

 

 決意を固めた俺は、即座に脳裏で旅に必要なもののリストアップを始める。

 普通に行けば面倒くさい旅路。それを少しでも楽にする方法。その為に必要なモノ──。

 

 ソリは確定として……追加でアレと、アレ……アレもいるな。

 

 よし、決まった。

 

 

「んじゃチベスナ。久々に、旅するか。支度しろー」

 

「よし来たと思いますよ!」

 

 

 チベスナに声を掛けながら、俺は若干埃を被りつつあったソリを引っ張り出す。

 ……まさかまた、コイツを連れていくことになるとはな。

 

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

なわばり

 

 

一六一話:再びソリを曳いて

 

 

● ● ● ● ● ● ● ● ●

 

 

 

 そういうわけで、俺達は平原地方の平坦な道をソリを曳きつつ進んでいた。

 まぁ、ソリを曳いているのは相変わらずチベスナの方で、俺はコンパス片手に地図とにらめっこをしているのだが。

 

 

「……チーター、どっち行ってると思いますよ? じゃんぐるちほーへの道はこっちじゃないと思いますよ。もしかしてチベスナさんを試してますか? チーターのくせになまいきだと思いますよ」

 

「何シームレスに喧嘩腰に移行してんだ馬鹿」

 

 

 ぺしりといきり立つチベスナの頭を叩いて宥めつつ、

 

 

「ほら、この前地下水路を見つけたろ? せっかくだし、あっちの道を使っていこうと思ってな。いざってとき、使える道は多いに越したことないだろ」

 

 

 と、思惑を説明する。

 地下水路については、俺の持っている地図とは対応していない道が多すぎるので微妙に勝手が分からないが……だからといって、せっかくあると分かったものを使わないのも、それはそれで勿体ないしな。

 何より地下の道をよく知っておけば、いざってときにけっこう使えそうなので、こういうときにちょこちょこ使うことで慣れておきたいのである。

 

 それに何より──おそらく、根本的に地上の道より、地下水路の方が面倒が少ない。地下に隠れているということはサンドスター・ローが入り込む機会も少なく、地下水路は人工物も少ないからセルリアンが生まれる機会も少ない。

 さらに道が平坦だから、地上の道と違って俺の体力が減りづらい。日差しもないから暑くないしな。

 

 と、ここまで列挙すれば分かる通り、地図の道と一致しないという問題はあるが、そこを乗り越えれば地下の道はメリットしかないのである。

 まぁ、観光って話だと断然地上なんだが、今回は単に人形を運搬するだけだからね。

 

 

「じゃあ、どこから地下水路に入ると思いますよ? ちなみにしあたーの入り口は小さすぎてソリが入らないと思いますよ」

 

「だから移動してんだろ。忘れたのかチベスナ。俺達は、ソリも入れそうなくらい巨大な地下への入り口を既に見ているはずだぞ」

 

「……あ。プレーリーの巣だと思いますよ?」

 

「正解。正確には、その失敗跡地だけどな」

 

 

 気付いたチベスナに頷いて、俺は足を止める。

 俺達の数十メートルほど先には、掘り返した土に僅かばかり茂り出した雑草が飾り付けられた大きな横穴があった。

 そしてその奥には────無機質な通路、否、コンクリートの枯れた水路。

 水路づくりの際にプレーリーが彫り出していた、地下水路へ続く道だ。保全の観点から言えばこの穴もいずれは埋めないといけないのだが……ま、今でなくてもよかろう。

 

 チベスナは耳を忙しなく動かしながら辺りを見渡して、

 

 

「プレーリーはいないと思いますよ。別のところに巣を作ったんですかね」

 

「だろうな。ただでさえこのへんは穴ぼこまみれだし、穴が埋まって土が固まるまではここで巣作りも難しいだろ」

 

 

 そのうち、プレーリーが巣にできそうな地域はこの地方からなくなりそうだが…………その前に、別のフレンズの縄張りとかち合って揉めるのが先かな。ライオンの縄張りだったらめんどくさいし、今度プレーリーにそれとなく忠告しとこう。

 

 

「ともかく。さっさと入るぞ。地下水路第二ラウンドだ」

 

「腕が鳴ると思いますよ!」

 

「ひどい目に遭いそうだから鳴らさんでいい」

 

 

 そこはかとなく不服そうなチベスナはさておき、俺は穴から飛び降りて地下水路へと降り立った。

 地上に残っていたチベスナにそっとソリを降ろしてもらい(タオルが思いきり零れた。この野郎ちゃんと降ろせ……)、それからソリをズラしてチベスナを降りてこさせる。よし。無事に地下水路に入ったぞ。

 

 

「これ、登るとき大変そうだと思いますよ」

 

「ここが用水路なら多分アーケード近くに入口があるはずだし、ソリは水路に置いてってもいいかもな」

 

 

 人工物は人工物に繋がる。これはこの水路がシアターに繋がっていたことからも、そう突飛な発想ではないと思う。一周目やってたときの俺達は、あんま地下とか見ようとしてなかったから発見してなかっただけで。

 

 さて、そんな地下水道だが……。

 内部の構造を簡潔に説明するならば──『巨大な水道管』といったところか。その中に、人が歩くための足場が設置されており、ところどころに昇降用の梯子(タラップ)がある感じだ。ちなみに水は完全に枯れ、無機質な底が完全に露呈している。このへんはジャングル地方にあった枯れた河と似たようなもんだな。

 

 前回はプレーリーとの親睦を深める為だったのと、初めて来た場所だったのとであまり細かいところまで見ることはできていなかったが──こうして見ると、なかなか圧巻だ。やっぱスケールがデカいと、それだけで一定の浪漫があるよな。

 

 ぱっ、と懐中電灯で明かりをつけた俺は、チベスナと一緒にタオルをソリの中に戻すと、そのまま歩き始める。

 先日探索したときは埃の類もなかった地下水路だが、穴が空いて日が経ったからか、あるいは前回は気付いていなかっただけか、耳を澄ますと生き物たちの音が聞こえてくるようだった。

 何のけものかは分からないが、遠くから息遣いのような音も聞こえる。

 ……けっこうデカイな。

 

 

「チベスナ」

 

「分かってると思いますよ。けっこう大きなけものか、フレンズだと思いますよ?」

 

「多分な。上から迷い込んできた動物かもしれんし、もしそうだったら戻しといてやるか」

 

 

 なんてことを言いながら、懐中電灯で先を照らしつつ先を進んでいく。

 けっこう先まで照らしているはずなのだが、やはりその先は依然として暗闇の道先が続いている。どこまで続いてるんだろうなあ……。

 

 

「この先もけっこう長いと思いますよ? 方向も分からないですし……これ、さばくちほーまで行っちゃうと思いますよ?」

 

「コンパスで大まかな方角は把握してるから安心しとけ」

 

 

 そもそもサバンナ地方と砂漠地方は真逆だからな。チベスナじゃあるまいし、そんなエキセントリックな方向転換はしないっての。

 まぁ、砂漠地方にもこの地下水路が続いているかと言われたら、続いてるだろうなあとは思うけど。今にして思えば、あのオアシスとかも、噴水とかあったしこの地下水路を使って水を引いてるのかもな。

 ……のわりには、この水路自体には水が全然流れてないのが疑問だが。どっかの時点で別の水路から水が流入してたりすんのかね。

 

 

「んー、でも、なんだかどこかからさばくちほーの匂いがするような……」

 

「匂いて」

 

 

 俺はそんな匂いしないぞ。精々するのはツチノコの匂い──

 

 

 

「わァあ!? ななっな、なんだぁこの光!? 新手のセルリアンかぁ!?」

 

 

 

 ──あ、ツチノコだ。

*1
言ってて悲しくなった。




この先しばらく、ツチノコと一緒に行動します。
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