天帝の眼が開眼しました。 作:池上
どうぞ~~。
さっそく0-2というビハインドのピッチに入った俺と龍。最近2週間前からぐらいからかな。龍はセンターフォワードに、俺は中盤の底・ボランチに付いた。
「宮崎!」
さっそく俺は相手の横パスを奪取してセンターサークルの位置にいた宮崎へ渡してリターンを受ける。
「っと!」
そのリタ―ンをダイレクトでそのまま右サイドへ送った。その先には右サイドバックからオーバーラップした優人がいた。
「つながった!」
そりゃそうだ。優人の動き出しは前半から改善されていた。龍がボールを受けたら攻撃的に前に5m近くは取るようにポジションを動かしてたからな。
「龍ちゃん!」
優人はサイドを切り裂いてクロス。面白いクロスだった、キーパーの取れるか取れないかのギリギリに送られたクロスに龍が飛びこんだ。
「ポスト――――!?」
ヘディングシュートはゴール右ポストに嫌われてしまい相手にクリアされた。でも、初めてこの試合を通して大浦東の決定的な場面だった。
そのプレーから龍へのマークが厳しくなった。
(はてさて、どのタイミングで出そうか)
俺は中盤でボールを回して伺う。
「龍ちゃん来てるよ!」
優人が言うように俺が出したボールを受けた龍だったが、いきなりマーク2枚を付けてくる。
「あっ」
龍のトラップは流れてしまい相手に奪われてしまう。それからも、龍は相手との競り合いや球際のところで負けてしまいボールをロストしてしまった。
「ほいっとな」
だが、俺がしっかりと攻撃の芽を摘んで相手の得点機を防いでやった。
「さぁ、しっかりつないでいこうぜ!」
俺は慌てず得点の機会をうかがうように周りに指示を出し、パス回しを始める中で1本のワンタッチでロングパスを出した。小学校の頃苦手だったが、今ではしっかりと狙って蹴れるようになった。
「オフサイドは――! なしだ!」
「完全に抜け出した!!」
さっきからボールを受ける動きをしていた龍だったけど、チラッと裏への動きを目線で入れていたからな。放り込んでやった。
「龍! 決めろ!!」
完全に抜き出した龍、あとはGKとの1対1だった。一度はシュートを阻まれたが最後はヘディングシュートで押しこんだ。
「おっしゃぁあ! ナイス龍!」
「ナイスパス、翼!」
よく決めてくれたな。これで俺個人としてはアシストが記録され、1-2と1点差に縮めることが出来た。
(あと10分弱)
そしてロスタイムを含めてあと10分ぐらい。射程圏内に入った。
そこから相手の志村二中は俺が張っている中盤ではなくサイド攻撃を仕掛けてきた。まぁ、あれだけ中盤でボール取られてそれが結果的に失点につながったのだからそう考えるのも悪くないが……いいのかな? そっちのサイドに預けても?
「ナイス宮崎!」
相手が俺たちの右サイドで攻撃を展開しようとするが、優人の運動量から追い込まれて横パスしたところを宮崎がいち早くパスを刈った。
「優人!」
宮崎も分かっていたように、優人を走らせる。
「全く落ちねぇぞ!」
「どんなスタミナしているだよ!!」
優人は毎日朝と夜の10㎞ランニングを欠かさずやっているだけあってさすがの運動量だった。エリア内を見た優人、龍が上手く相手のDFを引き付けたところだった。
「なっ!?」
ボールはCBを引き付けた龍ではなく、マイナス気味の低いグラウンダーのクロスだった。その先にいたのは――俺だった。そのボールをただ右足で当てるだけで良かった。ボールはゴール右隅下にグラウンダーで入った。
「入った――――!!」
「大浦東同点!!」
はい、きました~~!! 赤星翼のゴ~~~~ル!! 右足でズドーン!1
「早く戻れ!」
「おっ、そうだった」
龍がすぐさま自陣に戻るように言う。そうだった、まだ同点なんだ。あと1点を奪って勝たなければ。
「龍、俺がボールを受けたら左サイドに流れてくれ」
「!」
「得意な形で勝負しよう」
俺は今、しっかりと動けているからこそ龍にそう指示を送った。
そして、相手のキックオフで再開されて相手は0-2から同点にされたダメージからかボール回しが雑に見えた。
「パスカット!」
その中で、ボールを奪った優人はすぐさま俺に託した。
「翼!」
「合点!」
俺は狙っていた通りに左に流れていた龍へパスを送った。龍のトラップは少し浮いたが形に入った。龍の得意なカットインの形へ――
龍のことを知っている誰もが得意な形であるカットインからミドルシュートを期待した。龍の代名詞だったから。だが、現実は甘くなかった。
――――ピィ――!!
昔なら簡単で振り切れていたが、今は振り切れなかったみたいだ。
「大丈夫か? 龍」
「おう、大丈夫」
龍は大丈夫そうでこの絶好の位置からFKから決めようとみんなに話した。それを聞いた宮崎は勘違いしたのかわざとファウルを貰ったのかと言うが、龍が全力で行ったからこそ奪ったファウルだった。
「宮崎そういうことだ、頼む」
俺は止まったボールを蹴るに関してはあれだからな。明後日の方向に行っちまうし……。
「一条、 お前が蹴れ。そして赤星。お前左利きだからダミーな」
本来ならFKを任されているのは宮崎だ。それをわざわざ譲るとなると決めないとな、龍。
「(龍、頼むぜ)」
「(おう、でも――――)」
俺たちは手で口元を隠して打ち合わせをする。ここなら間違いなく龍が蹴るだろう。雰囲気も間違いなく龍へのFKを期待した。
――ピィ!
笛が鳴る。龍が最初にボールに向かっていた。誰もが龍が蹴るもんだと思っていたように声が上がった。だが――――
「ずらした!!?」
そう。龍のFKに意識が向いている分、ここで蹴るのは左利きの俺だった。ちょっとでも動いているボールなら明後日の方向にはいかない自信はあった。俺は左足インサイドでボールを巻くように蹴った。
その軌道は昔、龍と一緒にやっていた頃に初めて決めたFKと同じ軌道だった。
「ズラして――最後は赤星が決めた!!」
ボールはゴール左隅上に突き刺さった。完璧なゴールだった。
「よっしゃぁあ!!」
俺は喜んだ後に、セレブレーションをした。反転してからの仁王立ちのロナウド~~。
「すげぇよ!」
「赤星――――!!」
「ぶふぇっ」
せっかくの得点からのセレブレーションが上手く行ったのに、押しつぶされた。お前ら~~!!
――――ピィ、ピィ、ピィ~~!!
「タイムアップ!」
「大浦東、赤星2ゴールと一条の1ゴールで逆転勝利!!」
0-2からの逆転勝利に盛り上がるピッチ。俺は龍と優人を指さして行かなければいかない方へ連れて行った。
「優希、先生!」
「龍くんおめでとう! よく頑張ったね!」
「ありがとうございました!」
そう笑顔で話す龍。
「ハハッ! 勝ったぞ、優希! お前も――」
俺も一緒にピッチで喜び合おうと優希を手招きしようとする前だった。思いっきりダイブされた。
「翼くん、龍ちゃん……!! うわぁぁああ!!」
優希は今までのことを思ってか涙を流し、それを貰ったように優希のダイブで俺と龍の下敷きになった優人も大粒の涙を流した。
ここからだ、また俺たちのサッカーが始まると思えた瞬間だった。
またね。