永遠のアセリア ~二つの“世界”~   作:帝督

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第一章 ー有限世界の妖精たちー
第二話『会合 その1』


☆★☆★☆★

 

 

 

 夢を見ている。

 

 

 

 年齢がまだ一桁の頃、瞬とはまだ仲の良い普通の兄弟だった頃だ。

 

 瞬は生まれつき身体が弱くて、何時も病院か自宅のベッドの上で過ごしていた。

 

 オレはそんな瞬が暇しない様に、度々瞬の元を訪れて、玩具で遊んだり、物語を読んで聞かせたりしていた。

 

 

『…その後、桃太郎は人様の宝を持ち主に返す事もなく自身の懐に入れ、退治した鬼達を子分にして無理矢理働かせてコキ使い、更なる富を築き、この世の春を満喫し、幸せに暮らしました。 メデタシ、メデタシ』

『…めでたし、なのかな? それ…』

『何だよ。 これのどこに桃太郎は幸せじゃないって場所があんだよ』

『いや、桃太郎は幸せなんだろうけど………他の人達は絶対に幸せじゃないよね?』

『まぁ、そりゃな』

『お爺さんとお婆さん、桃太郎のせいで借金だらけになっちゃうし。 犬さんとお猿さんは囮にされたし、キジさんは非常食にされちゃったし。 都の人達は盗られたお宝は結局返ってこないし。 鬼さん達はコキ使われちゃうし。 どう聞いても、桃太郎以外誰も幸せになってないよ!』

『瞬、覚えておけ。 人間とは犠牲がなくては生を謳歌できぬ獣の名だ(某金ピカ王風にキリッ』

『だからってここまでする必要なかったよね!?』

『んだよ…瞬がとびっきり幸せで終わるお話をしてくれって言うから、桃太郎をアレンジしてとびっきりの幸せで終わる話にしたんじゃねーか』

『一人だけしか幸せになってないよ!? もっとみんな幸せになってよ!』

『しょーがねーなぁ、じゃ今度は浦島太郎で全員幸せになる話を作ってやんよ』

『…大丈夫かなぁ? 凄く嫌な予感がするんだけど…』

『大丈夫大丈夫。 任しとけって。 (………確か浦島太郎の伝説のモデルって、麻薬付けにされた男の話って説を聞いた事があったなぁ…よし…)』

 

 

 お互い気兼ね無く話せる兄弟だったのに。

 

 

 

 何時からだろう。

 

 オレと瞬が、ここまで冷えきってしまったのは。

 

 瞬が周りの人達を憎悪する様になったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 決まっている。

 

 オレが、瞬を裏切ったあの時からだ。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓から差し込まれる朝の日射し浴びて、久は目を覚ました。

 

 

 「…んあ? 何処だここ…」

 

 

 上半身を起こし、寝惚け顔で辺りを見渡す。

 明らかに自宅の自分の部屋ではなかった。

 

 

「あぁ…そういや確か、」

 

 

 久は昨日の出来事を思い出していく。

 

  買い物の帰りに神社で謎の光を見つけた事。

  そこで複数の男女が光に呑み込まれていた事。

  自身のスタンドで彼らを助けようした事。

  時間を止めたにも拘わらず行動出来る謎の巫女の少女がいた事。

  自身も光に呑み込まれた事。

  気が付くと森にいた事。

  その森で青い髪の少女に出会った事。

  自身と同じ歳くらいの少年が倒れていた事。

  その少年と共に青髪の少女に拉致された事。

 

 

「…んで、その後………」

 

 

  随分と古めかしい何処かの館に連れ込まれた事。

  その館で青髪の少女と同等の美しさの、ショートヘアーの茶髪の少女に出会った事。

  少年は結局目を覚まさなかった為、青髪の少女がそのまま館内の何処かへ連れていった事。

  自分は茶髪の少女に連れられてこの部屋に案内された事。

  非常に疲れた為、そのままベッドに横になると同時に眠りについた事。

 

 

「…何も考えずにベッドで寝ちまったけど…、使って良かったんだよな?」

 

 

 青髪の少女の言葉も茶髪の少女の言葉も全く理解出来なかったが、この部屋に居てくれ、或いはこの部屋を使ってくれ、と言う様な雰囲気だった為、久は備え付けのベッドで眠りについた。

 

 しかし、一晩寝て頭が回り出すと、自身の行動に自信が無くなっていった。

 何せ相手が何を言ったのか全く理解出来なかったのだ。

 そう言う雰囲気だった、と言うのは飽くまで久の自己解釈でしかないのだ。

 全く別の意味だったとしても可笑しくないのだ。

 

 

 

 久は改めて部屋の中を見渡す。

 家具や部屋の作り等、全体的に古めかしい印象を受ける。

 

 ふと、腰掛けているベッドの脇のテーブルに有るハンドベルを見つける。

 昨日、この部屋に案内された時に茶髪の少女が渡してきた物だった事を思い出す。

 

 

「昨日は特に何も考えなかったけど、…これはどういうつもりで渡したんだ? …唯のアンティークならワザワザ手渡す意味がわかんねーし…。 普通に考えたら、呼び出しベルか、非常用ベル…なんだろうけど」

 

 

 その時、ドアをノックする音がした。

 

 

「? どうぞ?」

「ヤシュウウ・リレシス。 ラスト、ソロノーハティン、ワ、ウズカァ?(おはようございます。 目を覚まされましたか?)」

 

 

 入って来たのは、この部屋に案内した茶髪の少女だった。

 そして、やはり意味が解らない言葉と共にお辞儀をして来た。

 

 

「あ~、えと…ども」

 

 

 釣られて久もお辞儀をした。

 

 

「イス、ウナニスカ、アーン、フシナ、セィン、ソゥ、ラハテ・レナ(エトランジェ様の所へ案内いたします。)」

 

 

 相変わらず少女の言っている事は解らないが、少女の仕草から、何処かへ案内しようとしているのでは? と久は思い、ベッドから立ち上がり少女の元へ歩み寄る。

 

 すると少女もそれに合わせて部屋を出て歩き始めたので、久はそのまま少女に着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 久が少女の後ろを着いて歩いて行くと、ある部屋の前で立ち止まった。

 そしてノックをし、部屋の中に入っていった。

 久もそれにならって部屋に入っていく。

 

 

 

 その部屋の中は、久が宛がわれた部屋とそう変わらない部屋だった。

 ベッドには昨日森で見つけた少年が、眠っていた。

 が、かなり魘されている様だった。

 

 茶髪の少女は少年の元に歩み寄ると、少年の額に乗せてある手拭いを取り、心配そうに少年の頭を優しく撫でる。

 そして側に置いてある水の入った桶で、手拭いを絞り再び少年の額に乗せる。

 

 

「ラスト、イニーム、テスハーア…?(大丈夫でしょうか…?)」

 

 

 苦しそうに魘されている少年。

 それを心配し、優しく看病してくれる美少女。

 

 そんな光景を見て久は思った。

 

 

(…何故オレは、もうちょっと遅く起きなかったんだ!? そうしたらあの美少女に撫でて貰えたのに! 起こして貰えたのに! やはり必要なのは時を止める能力ではなく時を戻す能力だった! イヤ待て、今ここで体調が悪そうに振る舞えばオレも看病してくれんじゃね? コレ物語的に言えば逃したらダメなイベントじゃね?)

 

 

「う…うぅぅ」

 

 

 そんなバカな事を考えている間に、少年が目を覚ました。

 茶髪の少女は未だ体調が悪そうな少年に水を飲ましたり等して看病を続ける。

 

 そんな様子を見て、久は…

 

 

(…泡吹いてのたうちまわれば、どんな看病してくれるんだろ? イヤそれは流石にやり過ぎか…。 壁にもたれ掛かって胸押さえて苦しそうにするのが堅実だな………。 イヤ待て、そのシチュエーションより…)

 

 

 尚もバカな事を真面目に考え始める。

 

 美少女に朝起こされる、美少女に看病して貰う、と言うシチュエーションに、余程強く憧れていたのだと思われる。

 

 

「ソゥ、ラハテ・レナ(エトランジェ様)」

「う、ウォ!?」

 

 

 バカな妄想に浸っていると茶髪の少女が話しかけてきた。

 突然話しかけられた久は驚いて、少しビクッとし、そんな久を見て茶髪の少女は、クスッと軽く笑う。

 

 

「イス、ソロノーハティン、ワ、ウズカァ(目を覚まされました)」

「あぁ…えと…」

「ハル、ニセスィラス、ワ、アエレナ、ネハ、ウネ、ヤァ、ワハエルラス。 リス、キネラス、リーニュア、ヤァ、ヨテト(ご用があるならベルを鳴らしてください。 私が跳んで来ますので)」

 

 

 そう言うと茶髪の少女は、久が寝泊まりした部屋でも渡されたハンドベルと同じ物を渡す。

 

 そして一礼して部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

(…よく解らんが………大事なイベントをやり損ねたのは解った…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  永遠のアセリア ~二つの“世界”~

 

  第一章 ー有限世界の妖精たちー

 

 第二話『会合 その1』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久は目を覚ましたが、未だ茫然としている少年に話しかける。

 

 

「よぉ、大丈夫か?」

 

 

 久は少年の顔が日本人っぽかった事と、服装が日本の学生服の様だった為、日本語が通じると判断して取り敢えず話しかけてみる事にした。

 久の声に反応するように、ベッドで上半身だけ起こしていた少年が久を見た。

 

 そして、驚きの余り目を見開き、そして憎々しげに久を睨み付けた。

 

 

「…瞬…なんでお前がここに居る?」

「は?」

「いや、お前の事なんてどうでもいい…」

「イヤ、どうでもいいって、お前…」

「確か、神社で突然光に包まれて、その後…その後…」

「あのさぁ、お前なんか勘違いしてねーか? オレは…」

「確か、森で女の子に…」

「おい、聞けよ」

「!? そうだ! 俺は、わけがわかんない女の子に…刺されたんだ!」

 

 

 少年は、自分の胸に手を伸ばして恐る恐る確認する。

 特に怪我が無い事を確認すると、ホッと息をする。

 

 そして、少し考ええる素振りを見せた後、久にの方を向く。

 

 

「…瞬、お前が俺を…助けたのか?」

「…その質問に答える前に、お前の勘違いを訂正しておく。 オレは瞬じゃあねー」

「なに?」

「確かにオレには瞬と言う名前の双子の兄弟がいるが、オレ自身が瞬と言う訳じゃあねー。 オレは秋月 久ってんだ」

「秋月…久? 瞬の兄弟?」

「お前の言う瞬って言う奴の名字が秋月ってんなら、多分そー」

 

 

 少年は久の言葉が今一信用出来ないのか、疑心の眼を向ける。

 

 

「んで? お前の名前は?」

「………高嶺 悠人(たかみね ゆうと)

「ん、オケ。 高嶺だな? 先っきも言ったが、秋月 久だ。 よろしくぅ」

「………」

 

 

 少年は高嶺 悠人と名乗り、久も名乗り、お互いに自己紹介をした。

 そして久が握手を求めたが、悠人は応じず、怪訝な顔をした。

 

 どうやら、余りにも久が瞬と似すぎている為、本当に別人かどうか怪しんでいる様子だった。

 

 

「…なんか、その様子だと…ウチの瞬が大分やらかしているみたいだな?」

「…」

「確かに瞬は人付き合い悪いし、余り好まれない性格かもしれないけど、積極的に人様に迷惑かける様な奴じゃあ無いぜ?」

「あいつの存在そのものが迷惑だ!!」

 

(はぁ? …こいつ…先っきから喧嘩売ってんのか)

 

 

 悠人の叫ぶ様な断言の言葉に久は面を食らうと同時に怒りも湧いてきた。

 

 久としては、普段の瞬の様子から考えて、周りからは「いけ好かない奴」、「態度が悪い奴」、程度の事は思われているかもしれない、と思ってはいた。

 だが、存在そのものが迷惑だ、とまで言われたのは完全に予想外だった。

 

 久の中で段々と苛立ちが出てきた。

 見ず知らずの他人に、面と向かって自分の兄弟を悪く言われ腹が立ったのだ。

 

 

「…おい、多少イヤな奴だからってそんな言い方はないんじゃあねーの? オレは一応瞬の兄弟なんだ。 面と向かってそんな言い方されたら、スゲー腹立つんだけど。 ソコんとこ解ってんの?」

「だったら瞬に二度と佳織には近付くなって言っとけ!!」

「誰だよ、佳織って…? オレは瞬の口からそんな名前、聞いた事ねーよ」

「俺の妹だ!」

「じゃあその妹さんに、瞬がなんかしたってのかよ。 泣かせたりでもしたのかよ」

「そうだ! アイツに付き纏われて、佳織は迷惑しているんだ! 質の悪いストーカーと同じだ!!」

「はぁあ!? 人の兄弟を事欠いてストーカー呼ばわりとは、中々いい性格してんなぁテメーはよぉ。 実は妹さんは、テメーのその鬱陶しい性格にこそウンザリしてんじゃあねーのか!?」

「なんだと!!」

 

 

 売り言葉に買い言葉。

 

 ついには悠人が久に掴みかかっていくが、久は余裕をもってその手を掴み、逆にその手を捻り上げ、組伏せる。

 

 久は転生する時に、謎の存在に戦いに巻き込まれると聞いていた為、幼い頃から武術を習っており、スタンドが無くともそこら辺の大人が2、3人纏めてかかってきてもあしらえる程の腕を持っていた。

 加えて悠人は病み上がりで体調が万全ではない。

 

 結果は当然の帰結であった。

 

 

「ヅッ…グッ…(コイツ!? 光陰並みに鍛えていやがる!?)」

「おいおい、暴力に訴えるとは、図星かぁ? こりゃあ、妹さんに鬱陶しいがられている説が濃厚になってきたんじゃあねーの? 高嶺君よー」

「…だ…黙れ…お前に…お前なんかに…何がわかる…!」

「何が解るかって? 今初めて会ったテメーの事なんざぁ、解るわけねーだろ。 だがなぁ、瞬の事はテメーなんかよりずっと………」

 

 

 ここで久の言葉と態度が窄み始めた。

 

 

「…ずっ…と………」

「?」

 

 

 久は悠人の腕を離した。

 

 

「…」

「…なんだよ…」

 

(…オレは…瞬の事なにも知らない…。 アイツの家族以外の人間関係も、普段学校で何をしてるのかも、趣味も何も…知らない…)

 

 

 久は自分が兄弟であるにも関わらず、瞬の事は何も知らなかったと言う事実に気が付いた。

 瞬の口から瞬自身の話を聞いた事はなかった。

 瞬が人様に迷惑をかける様な奴ではない、と言う根拠も、自身がよく知る仲違いする前の瞬と照らし合わせたのであって、今の瞬を照らし合わせたわけではなかった。

 

 久とて知ろうとはした。

 しかし、瞬本人に聞いても決して教えては貰えず、親に聞いても、知る必要はない、そんなツマラナイ事気にするな、等と言う回答以外貰った事はない。

 通っている学校が違う為、瞬の学校の様子を知る事はできず、家では顔を合わせても会話にならない事が殆どだった。

 

 そう、久は下手をすれば悠人よりも今の瞬の事を知らないのだ。

 瞬が迷惑をかけていない等と言うのは所詮、久の一方的な願望ででしかないのだ。

 

 

「すまない。 確かに高嶺の言う通りだ…。 オレは、何も知らない………君達兄妹の事も…瞬の事も…」

「な、何だよいきなり」

「勝手な事言ってすまなかった…。 それと、瞬が迷惑をかけていたのなら、オレが謝る。 本当に、すまなかった!」

「あ、あぁ…?」

 

 

 久は悠人に頭を下げて謝る。

 

 しかし、当の悠人は久の突然の変わり様に着いていけていなかった。

 謝る理由は解るのだが、何故謝ると言う行動をしたのかが解らない。

 けれど、悠人の方も頭が冷えたのか、態度が少し柔らかくなった。

 

 

「…久、だっけか? もういいよ、頭を上げてくれ。 俺の方も言い過ぎた。 俺の方こそすまない。」

(本当に瞬とは別人なんだな…。 アイツは絶対にこんな風に頭下げる処が、謝りすらしない)

 

 

「「………」」

 

 

 二人の間になんとも言えない空気が漂う。

 お互いに頭に血が昇って言い過ぎたと思った為、気まずくなった。

 

 

「そう言えばここはどこなんだ?」

 

 

 ふと、思い出した様に悠人が久に尋ねる。

 

 

「あぁ…それは…オレも解らん」

「じゃあ何で俺達はここに居る?」

「それなら答えられる。 青い髪の超美人な娘に森で拉致られたからだよ。 んで、ここに連れてこられた」

「青い髪の………。 そう言えば、あの時、青い髪で白い羽が生えた女の子に助けて貰ったんだった」

「ん? 襲われたんじゃなくて、助けて貰ったのか?」

「あぁ」

 

 

 久と悠人はお互いに情報交換をする。

 

 

「確か、俺は神社で光に包まれたと思ったら森にいて、そしたら赤い髪の変な女の子が突然剣で刺してきて、その後青い髪の女の子に助けて貰った…。 そして気がついたらここにいた。 久の方は?」

「(やっぱ、神社にいたのは高嶺か…)オレの方も大体似た様なモノだ。 神社で光の柱を見かけて、様子を見に行ったらその光に呑み込まれて、気が付いたら森にいて、青い髪の女の子と倒れてる高嶺を見つけて、んで、青い髪の女の子にここまで連れてこられた、って感じかな」

「そうか…」

「そういや神社で高嶺以外にも3、4人程人がいたけど…誰か解るか?」

「あぁ、確かあの場にいたのは…今日子と光陰と佳織………」

 

(…んじゃあ、高嶺以外に助け損なったあの娘は、今日子って娘か、佳織って娘のどちらか、か…。 後は、あの巫女服の女の子の事だな)

 

「なぁ、そいつら以外に巫女f「佳織!!」」

 

 

 すると悠人は突然思い出した様に叫ぶ。

 

 

「佳織!! 佳織はどこだ!! 久、佳織は…俺以外に女の子がいなかったか!? 俺と同じく学生服を着ていて帽子と眼鏡をかけた女の子だ!」

「…いや、見てないな。 光に包まれた後で、出会った同郷の人は高嶺だけだ」

「じゃあ佳織は今も何処かで一人きりって事か!? こうしちゃあ居られない!」

「お、おい」

 

 

 悠人は未だ万全ではない身体を引き摺ってベッドから降りて、外に出ようとする。

 

 

「よせ、止めろって! そんな体で何処行こってんだよ!?」

「煩い! 離せ! 今すぐ佳織を探さなきゃならないんだ!!」

 

 

 慌てて久が取り押さえてベッドに戻そうとする。

 が、悠人はもがき暴れて久を振りほどこうとする。

 

 

「落ち着け! よく考えろ! ここは日本じゃあねーんだぞ。 場所も解らない、言葉も通じない、自分達が今どんな状況下に置かれているかも解らないのに妹さんを見つける事なんて出来るわけないだろー! 山を登る時、ルートもわかんねー! 頂上がどこにあるかもわかんなねーじゃあ遭難は確実だろ! 確実! そうコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実だろ!」

「煩い…久には関係ない。 俺の好きにさせてくれ!」

「これから見つかるかもしれないだろ!? あの青い髪の女の子が、オレ達を見つけてここに連れてきた様に、妹さんも連れて来るかもしれないだろ!? 或いは別の場所で保護されているかもしれない。 下手に動けばスレ違いになるかもしれない。 先ず大事なのは情報収集だ。 それから高嶺の体調を万全にする事だ。 情報を集めておけば妹さんだってより早く見つける事ができる。 体調が整っていないとイザ妹さんを助ける時、助けれないだろ」

「…っく…」

 

 

 久の必死の説得に悠人は一旦落ち着きを取り戻す。

 久は大人しくなった悠人に肩を貸してベッドに座らせる。

 

 

「取り敢えず、今解っている情報を整理してみようぜ」

「…」

 

 

 そして、悠人の気を逸らす意味でも、自身も整理する意味でも、現在判明している情報を整理する事を提案する。

 

 

「高嶺も感じているかもしれないけど、この場所は恐らく冬じゃあない。 理由は森にいた時に草木を簡単に調べたけど、常緑植物じゃあないのに葉が生い茂っていた。 気温だって温かい。 と言う事はここは日本じゃあなくて、どこかの外国という事になる(…或いは異世界か)」

「そう言えば、かなり温かいな」

「仮にどこかの外国だとしたらここは間違いなく南半球に位置する場所の筈だ」

「出会った女の子二人とも明らかに外国語? を喋ってたしな…確かにここは日本じゃあなさそうだな」

「後は、この館の家具と女の子達の服装だな」

「家具と服装?」

「なぁ、見てみろよ高嶺。 この部屋の家具、どれもこれも古めかしい物ばかりだと思わねーか? 偏見かもしんねーけど、現代でこんな家具を使っているのは欧州ぐらいじゃね?」

「そ、そうか? 日本でも探せば使っている人も居るんじゃあないかな?」

「そうだとしても、せいぜい一つか二つだろ。 今の日本で一から十まで、家具の何もかもを古い物にしている奴はいないだろ。 仮にいたとしてもそれは日本風な物にするはずで、こんな欧州風な物にはしないだろ」

「少し暴論な気もするけど…言いたい事は解る」

「ただなぁ、それだとあの何語かわかんねー言語がネックなんだよなぁ。 物や雰囲気は欧州風なのに言語は欧州のどの国にも当てはまらない」

「そうなのか?」

「あぁ、英語は勿論の事、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、スペイン語、グロンギ語、オランダ語、ポルトガル語、スイス語でもなかった」

「…今、変な言語言わなかったか? なんか欧州の言語とは関係の無い言語が混じっていた様な気がしたけど」

「服装だってさぁ、なんかどこぞのゲーム風の…それこそいかにも剣と魔法の国の服装ですって感じの服装じゃね?」

「そう言われれば…そうかも」

「今の処はこれくらいかな。 正直…今の処、全部推測だけで何一つ確定事項がねーんだよなぁ」

「…佳織は、無事かな…?」

「それも含めて、オレがどうにか情報を集めてみる。 だから高嶺は今は休んどけ。 イザ妹さんを助ける時の為に英気を養っとけ」

「…解った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー高嶺 悠人が目を覚ましてから3日後の昼 久達が連れてこられた館ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハル、シノンッ!(退けッ!)」

「イス、ハサーム、ノーク! イス、ハウェイテス、ハルサゥ、ヤミニェ、ナ、ウルタス、スクテ!(お待ちください! まだ安静にしなければならない状態なのです!)」

「エメソスッ! イッド、ワーグラススヤング、ヤァ、ソゥ、ウナーマセク! デハルク、ワ、ハノーム!(うるさいっ! 陛下がお呼びしているんだ! 邪魔をするな!)」

 

 

 

 突然、部屋の外から怒声が響いてきた。

 

 

「んぁ? なんだ?」

 

 

 久達が悠人が宛がわれた部屋で、茶髪の少女が運んでくれた食事をとっていると、下の階から怒声が聞こえてきた。

 久も悠人も突然の事に身構える。

 

 すると、ドタドタと複数の乱暴な足音と共に扉が勢いよく開かれ、数人の男が部屋に雪崩れ込んできた。

 

 

 

「な、なんだ?」

「…穏やかな雰囲気じゃあねーな…。 高嶺、そのままベッドに座ってろ。 オレが対処する」

 

 

 悠人は突然の事に目を白黒させ、久は椅子から立ち上がって悠人の前に陣取る。

 

 

「アブ、エノウィッ! ハル、マネ、キューサムッ! イッド、ワーグラススヤング、ヤァ、ソゥ、ウナーマセク!(貴様等ッ! 早く来いッ! 陛下がお呼びしているんだ!)」

 

 

 入って来た男の一人が久の腕を乱暴に掴み上げる。

 

 

「! いきなり何すんだテメー!」

 

 

 久はその腕を振り払った。

 

 

「ハル、デハルク、コンセサ!(逆らうな!)」

 

 ブンッ!

 スッ。

 

 

 久が抵抗した為、男は持っていた棒で久を殴ろうとするが、久は難無くそれを最小限の動きでかわす。

 

 

 

「エノウィッ!(貴様ッ!)」

 

 

 するとますます、男達は声を荒げ殺気だつ。

 そして他の男達も棒を久に向ける。

 

 

「ハル、ノクラス!(お待ちください!)」

 

 

 慌てて入って来た茶髪の少女が男達と久達の間に割って入る。

 そして悲痛な表情で男達に訴えかける。

 

 

「イス、デヨスムラス、ヤァ、ミスィーハ、セィン、ラ、ラハテ・レナ(エトランジェはこちらの言葉が解らないのです)」

「イッド、キニカ、セム、リューヤミニェ、ニースト。 イッド、ハイム、ヨスム、ウ、ナセク、ネハ、デヨスム!(だからどうしたと言うのだ。 解らないのなら体で解らすまでだ!)」

 

 

 男の一人が久に向かって再び棒を振り上げてきた為、久はもう一度回避しようとするが、その棒が久に振り下ろされる事はなかった。

 

 茶髪の少女が男の腕を抑えたからだ。

 

 

 

「イス、ハル、ヤミニェラスッ!(丁寧にしてくださいませっ!)」

「ハル、シンテ! デハルク、アケム、ウ、キナス、クテニタム、ヤァ、レ・ラナ・レナ!(離せ! スピリットが汚い手で触れるな!)」

「キャッ!」

 

 

 男は乱暴に茶髪の少女を振りほどいた。

 

 

 

「アブ、エノウィッ! ハル、マネ、キューサムッ!(貴様等ッ! 早く来いッ!)」

 

 

 様子を見ていた悠人は状況が解らず目を白黒させ、同じく様子を見ていた久はある考えが浮かぶ。

 

 

「…いったい何なんだ?」

「なぁ、高嶺。 この状況…結構不味い感じがしてきたんだけど」

「どんな状況だよ?」

「コイツら皆同じ服装で、しかも兵士っぽい格好をしてるだろ?」

「まぁ、言われてみれば確かに」

「って事はさぁ、この人達、治安維持組織の人か何かじゃね?」

「…警察、って事か?」

「多分」

「なら丁度いい。 佳織の事聞きたかったんだ」

「…その前にだ。 高嶺、この人達から見てオレ達はなんだと思う?」

「何って…何だよ」

「オレ達、今パスポート持ってるか?」

「………い、いや…で、でも…俺達は来たくて来たわけじゃあ…」

「仮に高嶺が警察官だとして、不法入国者が、 ワタシ、ヒカリニツツマレタネ、キヅイタラココイタヨ、ホントハキタクナカッタネ、ダカラワルクナイネOK? とか何とか言ってきたらお前ならどうする?」

「問答無用で逮捕」

「詰まりそう言う事だ」

「なら仕方無いな。 大人しく従おう」

「だな」

 

 

 その後、久と悠人は男達に抵抗する事無く、されるがままに乱暴に何処かへ連れていかれた。

 

 

 

 

 




 おかしい。

 本当はこんなにダラダラと進む予定ではなくて、もっとテンポ良く進めるはずだったのに…

 予想以上にSSを書くのが難しい。
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