無限ルーパー   作:泥人形

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息抜きd(⌒ー⌒) グッ


冬木@無限ループ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 い、一体何が……

 意味が分からなすぎるが、黙っていることもできず、一先ず適当に歩き出してみた。

 瓦礫を崩しながら進み続ければ、遠くに人影が見える。

 思わずやったぁ人だぁ! と勇みよく駆けだした瞬間、視界は真っ赤な空を映した。

 下には首のない人の身体。

 い、一体なにが──?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 ……何? さすがに急展開すぎるだろ。

 どうやらリスタートらしい、意味わかんねぇ。

 けどまぁ、こうなった以上進むしかなさそうだし……

 今度は背後に注意しながら進むか……とノソノソ姿勢を低くしながら歩けば不意に耳朶を打ったのは足音だった。

 パっと振り向くと同時に振り下ろされたのは少々煤けた、しかし白の何か──いや、恐らくは、剣。

 そしてそれを持つのはやたら肉も皮もなにもない何か、学校の理科室とかで見たことのある、模型のような何か。

 というか動く骨だった。

 は? 動く骨って何?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 骸骨が動くとか安いホラー映画かよ。普通に怖いわ。

 でもあの人影は気になるし……

 仕方ないので警戒しながらコソコソ歩き始めればすぐに人影は見えた。

 ここで骨ぇ! とジャンプし振り向けば勢いよく剣を振る骨の姿。

 完璧すぎるタイミングだ。思わず自画自賛しながらフッと笑い着地。

 同時に鋭い痛みが胸を貫いた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 二匹目は卑怯だと思うんですけど!

 さっきと同じタイミングでジャンプ、そして流れるように横に回転。

 シュバッ! と剣を突き出す骨を見ながらフッと笑う。

 二度も同じ方法で俺がやられるとでも……?

 バーカ! と煽ったは良いが倒す方法が無いのに気付いた。

 ど、どうすれば……

 迷っている間に首は飛んだ。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 今思い出したんだけど俺って魔術師じゃん。

 最近とか魔法撃ち出せるようになったしこれで倒せるんじゃね!?

 気合入れて魔力的な何かをめっちゃ撃つ。

 骨は無傷だった。ざけんな、死ね。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 やっぱ人間、最終的には物理に頼るのが正解なのだと思う。

 てなわけで手頃な木材と石ころを発見。片手に木材、ポッケに石という雑装備。

 だがこれで勝つ。

 骨の鋭い一撃を避けて頭を叩けば。鈍い音と共に木材と骨の頭が砕けた。

 半ばから折れていく木材を投げ捨て、懐に潜ませていた石をすぐさま投擲するがしかし全て明後日の方向へ飛んで行った。

 うーん、ビックリするくらいのノーコン。

 骨は無慈悲に頭を貫いた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 実績のある木材くんで倒していきましょうね~と木材を二つ拾う。

 何とか乗り越えた。

 連続で頭を砕いて見せた俺が流石すぎる。

 原始時代に還った気分だった。

 取りあえずさっきから気になっていた人影へと助けを求めようと駆けだした。

 瓦礫を乗り越えやっとのことで辿り着いたそこにいたのは、紫の長髪に金の瞳を持つ美しい女性だった。

 あ、あのー……と、声をかけることは、しかし叶わない。

 は? 何か石になっていくんですけど──!?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 まさかの石化ルート。あんなん卑怯じゃん……

 ただああいうのは目を見るとアウトなんだって相場は決まっているのだ。

 手早く骨を潰して先手必勝、全力で投石してからグッと姿勢を下げて潜り込む。

 万が一にでも目をつむって一気に近づいてぇ……!?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 槍っぽいのでグサッと一撃であった。

 正直目瞑ってたから得物が何だったのかははっきりとしないが、まぁ槍的なサムシングだった。

 流石に目を閉じたまま勝てる相手ではなかったか……

 今度は目を合わせずに戦ってみようか。

 骨を砕いて石をシューートッ! そのまま目は合わせず退治すれば女性は怪訝そうに人の子……? と呟いたが、何でも良いか、と頭を振るう。

 どちらにせよ殺すのだ──これからお前を殺す相手の名くらいは、覚えていくとよい。

 我が名はメドゥーサ! さらばだ生き残った人の子よ!

 掛け声と共に鎖が飛び出しあちこちに突き刺さる。

 それはさながら決闘場、あるいは牢獄にすら見える。

 つーかどっから出てきてんだよそれ……

 文句を吐き棄てながらオラァッと木材を振るうも槍でサクッ、俺の身体もサクッであった。無念。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 どう足掻いてもあれは無理じゃない? スペックに差がありすぎるだろ。

 だけど、うぅん、メドゥーサか……

 まぁ聞いたことくらいはある、別に特段詳しいという訳でもないが、それでも多少くらいは知っている。

 あれでしょ? 鏡の盾で石化光線反射されて石になったやつ。

 ……ちょっと試してみるか。

 慣れた手つきで骨を砕き、そこの人へるぷみーと叫びながらスマホの内カメラを起動しながら画面を前に押し出した。

 瞬間、想定通り黄金の目が閃き──俺の腕ごと石化してスマホは死んだ。

 す、スマホぉぉぉおお!

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 スマホのカメラでは鏡の代用にはならないようだ。

 でも俺、鏡なんて持ってないよぉ……

 自分の女子力の無さを恨んだ瞬間であった。

 いや仮に鏡があったとしてもどうにかできるという確証はないのだが。

 まぁ今度は画面を真っ暗にしてそれを見せてみよう。

 カメラよりかは幾らか鏡的性質があるだろう。

 素早く骨を砕き、焼き増しのようにそこの人ヘルプミーと叫びながら画面を押し出した。

 予定調和のように黄金の目は怪しく光りながら俺を見て──そして。

 数秒の沈黙が訪れた。

 恐る恐る顔を上げればそこにいたのは石化した先ほどの女性。

 ──ふ、ふふふふ、はーはっはっはっは! ざまぁみやがれ──え?

 瞬間鋭い痛みが胸を貫いた。

 骨ェ……

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 骨ェ……マジ骨ェ……

 取りあえず調子に乗ったら死ぬということだけは良く分かった。

 次は慢心せずにいくぜ!

 骨を砕き、声を懸けながらスマホどん! 横目で石と化した女──メドゥーサを見ながら両手で木材を振るう。

 伝わってくるのは硬質な何かを弾き砕く感触。

 か、完璧……! 流石俺……ッ!

 バクバクと鳴る心臓を落ち着かせるように自画自賛して、それからもう一度歩き出す。

 にしてもやたら瓦礫が多いし、あちこち燃えてるのは何なんだ? と火を避けながら暫く進めば複数の人影が目に入った。

 ひ、人──! 助けて──! と叫びたいところだったがグッと我慢。

 もう騙されねぇぜと木材を振りかぶりながら先制決めようとしたら大盾で防がれそのままゴシャッ! とされた。

 驚いた様に俺の名前を叫ぶ声を聴きながら俺の頭は砕けた。

 ……マシュ?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 敵だと思ったら完全に味方だった件について。

 人を疑いすぎるのは良くない、はっかり分かんだね

 それにしても破廉恥な格好をしていましたねぇ……大丈夫? 防御力低すぎない?

 お兄さんは心配ですよ。

 まあでもそれはそれとして知り合いに遭えたのはラッキーだ、とテンションを上げながらスキップして行ったら骨に殺された。

 完全に忘れてました……。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 段々骨が可愛く見えてきた。君たちもろすぎぃ!

 というか明らか俺の力が最初に比べて強くなっている気がする。

 もしかしたら倒せば倒す程経験値的な何かがたまっているのではなかろうか。

 レベルが上がっているような気分だ。

 気分はドラゴンなクエストの勇者パーティーである。

 メラ! ヒャド! バギ! イオ!

 出せる魔法(魔術?)はそれ以下ですけどね^^

 現代的にスマホを活用して石化眼光反射である。

 もう完全に攻略法を掴んでしまった..….すまんな紫モブよ……

 ヘイ! マシュー! と叫びながらジャンピング。

 瞬間視界がブラックアウトした。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 いや……これあれですね。

 無駄に飛び跳ねて大きな声を出した結果遠くにいた狙撃手(恐らく骨)に射抜かれましたね。

 頭にグサッとなったに違いない。

 人の命とはかくも儚きものよ……と骨を砕きながら呟く。

 いやー一対一なら負けないのだけは助かりますね!

 メドゥーサもスマホで完封できるし現代科学様様って感じ。

 さて、と。派手に行くと殺られちゃうし、今度はこっそりと慎重に.……!?

 コソコソと近づいたら警戒レベルMaxのマシュに殴られました^^

 遺憾の死である。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 実はマシュが一番の鬼門なのではないかと思えてきた。

 あいつのキルスコアかなり高い、骨に肉薄しつつあるレベル。

 知り合いに殺されるとか悲しすぎるだろ……。

 ひねりも何もなく、普通に近づけば何事もなく合流できた。

 要するにマシュのキルスコアは俺が稼いでたって言っても過言ではないってこと。

 へへっ……つら……。

 今更だがマシュの傍にはもう一人男性がいた。

 マシュはやらんぞ! と勇みよく言ったら礼儀正しく挨拶された。

 やだ……超いい子……

 彼はマシュのマスターらしい。

 え? マシュってサーヴァントだったんですか?

 素直に疑問を吐き出せば、マシュは軽く笑ってどうやらデミサーヴァントというやつになったと言った、なるほどよくわからん。

 マシュの必死の解説虚しく俺の頭は早々と限界を迎えた。 

 俺が一番悲しかったのは言うまでもない。

 これからどうするのかと聞けば霊脈とやらに向かうらしい。

 そこなら物資も補給できるとかなんとか。

 合流したことだし、もう死ぬこともないだろう。

 あぁ安心した。

 ほっと息を吐きながら歩き出した瞬間俺の身体は砕け散った。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 (((謎の死)))

 流石の俺にも意味が分からない。

 砕けるって何? ガラス製品じゃねーんだぞ。

 取り合えずさくっと合流し、今度は後ろを歩きながら周りを警戒する。

 瞬間黒い巨人がマシュを吹き飛ばした。

 青年──藤丸立香くんの叫び声が虚しく消える。

 真っ赤に染まった視界の中で、俺の身体が千切れていくのが見えた──

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 あの巨人強すぎないか?

 最大戦力のマシュが一撃でやられた時点で勝ち目は限りなく薄い──というか無い。

 俺とかどうあがいても一般人レベルの力しかないし、藤丸くんもそうだろう。

 どうにかして奴を倒す算段を立てようとするが何も思い浮かばない。

 けれども誰も死なせる訳にはいかない。

 どうしてか知らないが死んでもやり直せる力が俺にあるのだ。

 なら犠牲になるべきなのも俺しかありえない。

 あー……嫌だなぁ……。

 さすがにこえーわ、という感想を押し込み静かに深呼吸をする。

 出来るだけ準備を万端にして戦いは始まった──。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 巨人さん強すぎぃ! 

 マシュを下がらせてまでして被害をなくしてからスタートしたにも関わらず全滅である。

 たくさん兵隊が出てくるのは卑怯だろうがよ……!

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 斧が強すぎる。加減しろ馬鹿!

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 傷がついてくれない、お前の皮膚、鋼かなんかでできてる感じ?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 骨が邪魔すぎる。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 この光景にも見飽き始めた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 魔術←カス

 肉弾戦←カス

 武器←カス

 

 ……無理やん( ^ω^)

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 眼を潰すのは良い発想だったが同時に斧が体を引き裂いた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 ものは試しと魔法(魔術?)を放つ。 

 当たり前のように無傷であった。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 もう何度、もう何回繰り返しただろうか。

 一向に勝てるビジョンが見えない。

 ふらつきながら骨を砕き紫へ──ってああああぁぁぁぁぁ……

 

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 スマホを取り出し忘れて石化した。 

 ちょっと疲れているのかもしれない、流れ作業じゃダメなのだ。

 ゲームじゃないんだから。

 気を入れなおしてから歩き出す──が、あれ?

 な、なんか道違くね?

 いつの間にか辺りは森である。

 方向音痴!!!

 まあでも、ここまで来たからには遠目に見える城を目指そうじゃあないか。

 ……あの巨人、もう見たくないし……。

 意気揚々と歩き出した俺の身体は瞬時に木っ端と化した。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 どぉして!?

 原因の分からない死に方が多くて困る、呪われでもしてんのか?

 気になってもう一度行きたくなる→死ぬ

 無限ループの始まりである。

 五回目で気づいたが黒とは違う巨人が俺にアタックかましてきているようだった。

 ここ巨人多すぎませんかねぇ……心臓捧げちゃおうか?

 今日も元気に汚い花火である。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 駆逐したいけどできないのでまた違う方向へ。

 道行く骨を砕いて進む。

 グシャッ

 心臓 が 潰れて しまった !!

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 謎の死パート3だ。

 パターンが豊富すぎるだろ、何考えてんだ。

 原因究明の為に俺は今日も走る……!

 グシャッ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 抵抗どころか何が起こったかすらも分からないのは怖すぎる。

 ちょっと意外性を出して四つん這いになりながら張って進んでみた。

 グサッ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 骨ぇぇぇえぇっぇぇぇぇぇぇl!!!!

 いつもいつも絶妙なタイミングで邪魔な骨である。

 全力疾走で駆け抜けてみた。

 サクッ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 頭に何かが刺さって即死したっぽい。

 骨の使う矢は結構ボロくて死ぬまでちょっとかかるから多分別物だ。

 一先ずベルトで頭に平らな石を縛り全力疾走してみた。

 途中でカァァン! という音が響いて身体よろめく、だが死んではいない。

 マジ? こんなんで防げていいの? と疑問は出たが今は無視。

 瓦礫の陰から出てきたのは奇妙な右腕を持ち仮面をつけた黒装束の人だった。

 何かしゃべっているがそんなん知らん。

 先手必勝は大体の場合において有利なのはもう身に染みて知っている。

 全力で踏み込み木材を振り上げ──グシャッ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 ハートキャッチ(物理)されてしまった。

 流石にえぐすぎませんかね……

 手が入ってくる感覚マジで最悪すぎる。.

 石越しに響く音を聞きながら木材を横殴りに振るうが期待していたような感触は伝わらない。

 グサッ

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 多分首にナイフか何かを一撃だったと思うのだが、特に痛みなく殺してくれるのに関してはマジで助かる。

 めっちゃ不快な悪夢見た程度で済むからな。

 いい加減ナイフの軌道も読めてきたし、石を外して走り出す。

 タイミングよく横に跳ねれば足元に鋭く黒いナイフが突き立った。

 そっと見上げればそこには右手の長い奇妙なやつが一人。

 視界に入れた瞬間脊髄反射で魔法(魔術?)を放つ。目隠し程度になれば良い、そう思ったのだが。

 聞こえてきたのは苦しげな声だった。

 ……あいつ骨より弱いな!?

 こいつはいける、更に撃ち込み続けようと気合を入れた。

 瞬間鋭い痛みが俺の胸を貫いた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 骨ぇぇぇぇぇぇええええ!!!!

 人の真剣勝負に茶々を入れやがって……!

 許さんぞ骨野郎。

 怒りを力に変えるように走りだした。

 魔術を放ち苦し気な声を聴きながら木材を振るった。

 木材が砕け散るのを見ながらふと思う。

 木材、魔術で強化できるやん……

 初撃は良いものの、長く続く接近戦では為すすべ無しでそのまま俺の心臓がごみくずと化した。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 くらえ強化木材!

 魔術で怯む右腕野郎の頭を強化木材で殴り飛ばす。

 骨とは違う感触が腕に伝わってくる。

 ──骨を殴った時とは感覚が違う、衝撃を逃がされた?。

 まぁどちらにせよ倒せてはいない、ここで仕留めなければ俺の未来もない。

 そう思って更に一歩踏み込みもう一撃。

 今度はかわされカウンター気味にナイフが肩に突き刺さる。

 ただこの程度ならまだ余裕というものだ。

 死ぬのに比べれば痛くもかゆくもない。

 死ななければこの程度は誤差の範囲内だ。

 強化した木材を勢いよく振りぬけば、今度は骨を殴った時に近い、手に馴染んだ衝撃が腕に響いた。

 あー……。

 倒した、倒せた。終わった、終わらせた。

 良かったぁ~……。

 そんなことを呟き先に進む。

 瞬間首が千切れて落ちた。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた。

 油断しました☆

 あそこまでされて生きてるとか……ドン引きです……

 ていうか人が誇って良い耐久力と生命力じゃないだろ。

 じ、人外さんなのか……?

 まぁどっちでも良いんだけど、と木材(強)で殴り飛ばす。

 先ほどと同じ動きを完璧に再現しながら頭に振りぬいた。

 硬いものが砕ける感触が手に伝わってくる。

 地面に倒れ伏す右腕野郎の頭を蹴り飛ばし、念入りに、叩き潰すように木材を垂直に突き刺した。

 勢いよく血──のような何かが飛び散り次の瞬間その全身は霞と消えた。

 あっ、やっぱり人じゃないんだ……。

 こ、こわ~……。

 やっぱここホラー映画の中だろ。

 若干の満足感とおっきな疑問をを胸に何となく先に進むと段々人の石像があちこちに現れ始めた。

 こ、こいつら動き出さないよね……?

 あまりのリアルさにビビりながら横を通っていけば大きな河原に出た。

 ──見覚えがある、というか。

 ここメドゥーサがいるところじゃね…?

 ということはこの石は…・・

 ほとんど反射でスマホを握る。

 瞬間ジャラジャラと音を立てた大きな鎖が俺を囲んだ。

 ──来たか。

 激しく耳を打つ鼓動を無視しながら大きく息を吐いて吸う。

 メドゥーサは槍を構えてこちらをねめつけていた。

 直接戦闘になったら勝てるわけないんだけどな、と冷や汗を流しながら木材を片手に間合いを取る。

 まったく、何でこんなことになってるんだか。

 ツイてない、と思えば幾らかは楽になった気がした。

 木材と槍がぶつかり金属同士がぶつかったような音が空気を揺らす。

 だが拮抗は続かない、あまりの力強さに押し飛ばされた。

 女性とは思えない力に目を見開いた。

 あの細腕から出して良い膂力じゃねーだろ……!

 砕けなかった木材に驚きつつも喜び走りだす。

 跳躍して一振り。

 当然のように槍に弾かれ、そのまま勢いよく首を掴まれた。

 徐々に視界がぼやけ全身から力が抜けていく。 

 嘲笑うように口を開いてやつは空いてる手で自身の眼を指さした。

 さぁ見ろ、と言わんばかりに。

 黄金の眼光が、鋭く光り──時に片手に潜ませていたスマホを上へと放り投げた。

 頭上へと放られたのであれば、次に来るのは当然落下。

 真っ暗に落とされた画面は、その眼を弾くようにメドゥーサに向けられて落ちてきて──やつの身体は、石と化した。

 ふー、やっぱ俺、ツイてるかも。

 ほくそ笑もうとして盛大に咳き込んだ。

 あいつ握力どんだけだよ……

 慢心して眼を使おうとしなかったら今頃首の折れた死体がここに転がっていたかもしれない。

 あるいは首の折れた石造か。

 想像したくもねぇな、と独り言ちてその場に座り込む。

 そういえばこの先にマシュ達がいるのだろうか?

 いや、まず黒い巨人は倒せたのだろうか?

 一瞬、見捨ててしまったという思考が過る。

 その罪悪感に軽い吐き気を払うように空を見上げれば、ぬっと黒い影が俺を囲った。

 噂をすれば陰。

 黒い巨人様の登場だった。

 お、おわた……

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人佇んでいた――と思ったがどこか今までと何かが違う。

 ここ……河原? ということはメドゥーサと戦ったところか……?

 すぐ足元を見れば石となった女性が一人。よく見なくともそれが彼女であることは分かった。

 なるほど、どうやらセーブポイントはここのようらしい。

 それが良いことなのか、悪いことなのかは分からないが、まぁ良いのだろう。

 てかそんなことよりさっさと逃げなきゃいけないんだわ。

 巨人様が来る前に撤退である。

 ふらつく足に鞭を打ち、取り敢えず近場の建物へと身を隠した。

 屋根も何もなく、かろうじて壁が残っている程度だから、建物の残骸と言った方が正しいかもしれないが。

 それでも無いよりマシだ、と自分に言い聞かせれば轟音が響いた。

 間一髪だな……と息を吐く。

 黒い巨人は流石に鬼すぎる。

 純粋に強すぎて無理だ。

 さっさとどこかに行ってくれないだろうか……

 そう思っていたらまたも轟音が鳴り響いた。

 いや、轟音と言うにはあまりにも鈍い──何かが何かを強烈に叩いたような音。

 ──誰か戦闘しているのか?

 だとすれば十中八九マシュ達だろうとこっそりと覗けば、そこにいたのはマシュと立香くん。それからフードを被った謎のイケメンがいた。

 いや誰──!? と生きてた良かったー! という気持ちが織り交ざる。

 しかしあのイケメン。めちゃくちゃ強いな。

 一応マシュとイケメンで戦っているがほとんどイケメンが巨人をさばいている。

 すげぇ仲間を見つけたな……

 これなら倒せるかもしれない、そう思って木材を強化した。

 今なら、後ろから殴ることくらいはできる、ダメージにはならなくとも多少の気が引ければこっちのものだ。

 そう思って地を蹴り、全力で後頭部へと振り落とす。

 瞬間巨人は業火に飲み込まれ、そのまま霞と消えた。

 お、俺に炎属性の力が備わってしまった……

 という訳でもなくあのイケメンが炎を飛ばしてきていただけだった。

 イケメンはクーフーリンというらしい。

 今の巨人と同じサーヴァントだとかなんとか。

 というか今更ではあるのだが、所長もいた。

 オルガマリー・アニムスフィア、我らカルデア率いる若き所長だ。

 何んでか分からんがやたら怒られた。

 り、理不尽……!

 もうちょっとこう……優しい言葉くらい……! と思ってたら小さく生きててよかった……と所長は呟いた。

 なるほど、ツンデレね。最高。

 違うわよ! と頭をはたかれたところで、ようやく説明タイムが始まった。

 何十回リセマラしただろうか……

 長い道のりだった。

 所長曰くどうやらここは何年か前に聖杯戦争とかいう戦いが起きた場所らしい。

 そうして今、現在進行形でその聖杯戦争ってやつが行われているとのことだ。

 タイムスリップみたいなものをした、と考えて良い。

 ちなみに聖杯とは万能の願望器だとかなんとか。超すごいドラゴンボールだと思っておけばいいか。

 何で聖杯も聖杯戦争も知らないのよ! 講習で説明したでしょ!? と言われたけど寝てたし知らないに決まってるよね。

 いや好きで寝ていた訳でもないのだけれども……。

 そしてまあ、その聖杯戦争にイレギュラーが起こりやばいことになってしまった、みたいな感じらしい。

 最優のサーヴァントのセイバーってのがボスでクーフーリン(キャスター)以外のサーヴァントも皆敵になったとかなんとか。

 なるほど……? とか言っておいて納得した風を出しておく。

 少し前まで一般人やってた人間にはレベルが高すぎた……

 いや多少は分かるんだよ、本当に。

 サーヴァント←やばい

 聖杯←やばい

 聖杯戦争←やばい

 現状←超やばい

 こんな感じだろ?

 あぁ、そういえば、サーヴァントとえば俺二人くらい多分倒したよ。

 腕長いやつと紫……メドゥーサ。

 見栄なんて張らなくて良いんだぞ、と暖かい眼で慰められた。解せぬ。

 説明兼休憩も済んだことだし先に進むことに。

 正直もっと休みたいくらい疲労しているのだがさっさと行かないと骨に集られるし、仕方ないのだ。

 キャスター曰くいくら来ようが倒せるがなるべく体力は温存したいらしい。

 まあそういうことならさっさと行こうぜ!と先頭を走りだす。

 ん? 何かこっちに飛んでき──

 

 

 

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人――「おい、大丈夫か坊主?」

 うっひょぉおぉおおおおああああ!

 気が付いたら目の前にキャスターがいたンゴ……

 ビビりすぎて思わず叫んでしまった、恥ずかしい。

 しかしまた復活地点が更新されたようだ。

 心臓に悪い地点だがラッキーではあるだろう。

 さっきは味方と合流したことで完全に油断してたし……。

 飛んできたのはドリルみたいな剣だった。は? ドリルみたいな剣ってそれはもうドリルじゃん。

 きっと俺の頭は跡形も残らなかったことだろう。

 また現れたのであろう新敵に辟易しながら俺は何でもないと進みだした(マシュの盾に隠れつつ)。

 いやここ本当に安全なんだって──と言い訳をし始めた瞬間音が響いた。

 金属同士が奏でる硬質な高音。

 マシュの盾がドリルソードを弾きとばしたのだ。

 それを見越していたのかどうかは知らないが、それでもすぐに第二射目が降りかかる。

 これはキャスターが炎を連続で飛ばし撃ち落として見せた。か、かっけぇ……!

 薄々気づいてはいたのだがもしかしてキャスター、恐ろしく強い上に超かっこよいのではなかろうか。

 今度からキャスターの兄貴と呼ばせてくだせぇ!

 次々と振ってくる剣を完璧に撃ち落としてくキャスニキ(キャスターの兄貴)。

 おぉすげぇ、と思いながら木材片手に走り出した。

 キャスニキに攻撃を相殺されてる今が一番付け込める隙があるのではと考えた結果だ。

 そんな俺を守るようにマシュが隣を走ってくれる。

 立花くんはキャスニキの後ろ……ん?立香くん……ちゃん……?

 見慣れないオレンジの髪を持つ少女が視線の先にいた。

 性……転……換……?

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街――「おい、大丈夫か坊主?」

 立香くんはちゃんではなくくんに戻っていた。黒髪青年である。

 さっきのは幻覚とでも思っておこうか……

 火の粉と鉄の欠片が降りしきる空の下、キャスニキが落とさなかった敵の剣を拾い駆け抜けた。

 木材より重いがその重みが逆にしっかりとした安心感を与えてくれる。

 これが人を、何かを倒す為、殺す為の武器なのであると実感させてくれる。

 次々に現れる骨どもを滑らかに切断していく。木材とはえらい違いだ。

 キャスニキ曰く、マシュの盾がセイバーを倒す鍵だそうなのだ。

 ならばこそこんな雑兵どもの相手でマシュを消耗させる訳にはいかない。

 より体に力を込めて、前へと進む。

 赤い外套に白髪で褐色の肌の男──あれが敵か。

 強化を走らせた剣を振るう。

 一閃二閃。

 全力で振るったそれは、しかし白と黒の双剣に難なく弾かれた。

 流石、というべきか。

 マシュと俺のコンビネーションを捌きながらキャスニキの炎も上手く躱している。

 中々決定打を決められない。

 ぶつかり合っては弾き合い、そしてまた切りかかる。

 そんな中、見透かしたようにその男は口を開いた。

 マシュでもなく、キャスニキでもなく、俺に向かって。

 見たところ戦いなれているという訳でもないだろう、良く人に向かって剣を振るえるものだな、と。

 いや、そりゃお前……死にたくねぇからだよくそったれが。

 ばっかじゃねぇの? と両手で柄を握りしめて勢いよく振り落とす。

 瞬間、剣は霞と消えた。

 同時に俺の視界は剣でいっぱいに染まり──

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人――「おい、大丈夫か坊主?」

 ああ問題ない。早く先に行こう。

 視界が軽く歪む。

 立ちくらみだろうか。今まで無かったことなので少しばかりビビった。

 ちょっと疲れてるのかもしれないが、弱音を吐いてられる場合でもないだろう。

 それにしてもやつを攻略するにはどうするべきだろうか。

 無尽蔵(多分)に剣を作り出せるとか半端ないよぅ……

 巨人さん並みに攻略の糸口がつかめない。

 剣は途中まで使わせては貰うがやつ相手には使えない。

 剣を使う以上木材なんて持っていられない、中々どうして剣は重いのだ。

 何てったって剣って鉄の塊だからね?

 全身に強化をかけてやっと振り回せるくらいなのだ。

 自分のあまりのスペックの低さに涙目である。

 戦闘系ゲームの主人公がうらやましい。

 あいつらほいほい剣とか銃とか扱いやがるからな……

 あ、でも俺もある意味主人公なのではなかろうか。 

 セーブして死んだらやり直せるとか超主人公。

 でもそのセーブは自分でできない、みたいな

 やだ……俺ってば超欠陥品……

 そんなことを考えていたら時間がきた。

 地に突き立つ剣を手に取り走り出す。

 作業的に骨を貫き斬り飛ばして白髪の元に向かう。

 消される前に剣を投げつける。

 何ともないようにはじき返されるがそれは想定内だ。

 全身に強化を回し、石ころを握りしめてぶん殴る。

 一発二発三発。

 ジョブジョブストレート! と言わんばかりに放つが見向きされることなく防がれた。

 まあ当然だな。まだ想定内だ。

 こっちが戦闘とはほぼ皆無だった一般人であることに対して相手は名のある英雄(多分)なのだ。

 だったらもう、ダメもとで挑もうじゃあねぇか。

 やれそうなことは全部やる、それくらいで良い。

 狂ったように拳を撃ち放つ。

 最初は驚いたように対応していた白髪も慣れてきたようで俺の未熟な拳を軽々とはじき返しそのまま首元に剣をねじ込んだ。

 

 

 気が付いたら人気の無い上燃え盛る街に一人――「おい、大丈夫か坊主?」

 ああ、大丈夫だ。

 それより、残った敵はセイバー以外で誰がいるんだ?

 何? 俺の話が本当ならばあとは警戒するのはアーチャーだけ?

 バーサーカーは森にいるから放っておけば良い? なるほど。

 アーチャーはどう倒せば良いとかあるの?

 え、いや特に無いってちょっと……キャスニキが相手する?

 そんなことしたらセイバー倒すの難しくなるじゃないですかやだー!

 こうなったらマシュを主軸に戦うのが最善っぽいな。

 そう思って剣を片手に走り出した。

 マシュを戦わせないよう骨の相手を進んで引き受けていく。

 骨の相手だけならば慣れたものだ。

 よっし、見つけたぞ白髪頭ぁ!

 炎の雨が降りしきる中、剣がぶつかり合って俺の持つ剣のみが姿を消した。

 だがそれは想定内。

 今までと違い接近して戦っているのは俺だけではないのだ。

 マシュの大盾が猛威を振るう。

 俺を何度も殺したのだからかなりの威力を内包しているのは間違いない。

 拾った棒切れを強化しマシュに隠れるようにヒットアンドアウェイだ。

 俺程度の強化ではぶつかり合う度に一瞬の拮抗しか生み出せず、結局綺麗にスライスされてしまうがそれで構わない。

 身体に無数の切り傷が出来上がっていくがもう俺はその程度では気にすらしない。

 気にしてはいけない、死ぬこと以外は怖くない。

 そう信じる、そう思い込む。

 そこらに転がっている石を強化し蹴り飛ばして足を止めさせて、一瞬だけ息を休めた。

 マシュの盾が強すぎるな、と思った。

 強さ、というよりは堅牢さ、というべきか。

 白髪の攻撃は早く鋭いが威力が若干足りていない。

 大盾を主武装とするマシュを抜けないのだ。

 そして戦闘面に関しての未熟さは俺がちょいちょい邪魔することでしばらくは拮抗を保たせられる。

 そうして、不安定ながらもその均衡を保てば、やがてそれは来た。

 キャスニキ渾身の一撃、巨人すら焼き尽くした灼熱の業火。

 それは瞬く間に白髪を包み込み、巨大なダメージと隙を作り上げる。  

 ──ここだ。

 そう思うと同時にマシュと目が合って軽く頷いて踏み込む。

 瞬間、マシュの盾が白髪の剣を弾き上げ、滑り込むように入った俺が頭をカチ割った。

 キャスニキが軽い調子で白髪に謝罪をしていた。

 知り合いだったのだろうか。

 まあ知ったことではない、さっさとセイバーの元に行こうじゃないか──と言いたいが、その前に休憩タイムである。

 俺もマシュも結構傷だらけなのだ。

 俺はともかく、マシュは全快になってもらわないと困る。

 戦闘では欠片も役に立たなかった所長唯一の見せ場である。

 手を当てられたり何か唱えられたりすればたちまち怪我は塞がり体力は戻った。

 完 全 復 活 ってやつだ。

 血が足りないのか、それとも疲れたのか、若干フラフラとするがまあ問題はなさそうだ。

 サクッとセイバーを倒してゆっくりカルデアで休みたいですね……

 そういえばカルデアってどうなったのん?

 あ、壊滅的ですかそうですか……

 寝床は大丈夫? あ、大丈夫。なら良かったぜ。

 何にもよくないわよ! とかいう言葉はスルーしておく。

 や、言い合いになるのはちょっと、な。

 それじゃあそろそろ行こうか、という立香くんの言葉で皆が歩を進め始めた。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 近づいていくだけで身体にかかる重圧で潰れそうになる。

 呼吸をするのすら一苦労だ。

 全身を強化して何とかコンディションを全快に近づける。

 これでは立香くんは苦しいだろうと振り向けば普通にピンピンしていた。

 俺がくそ雑魚すぎる可能性が出てきちゃったな。

 悲しみに溺れながら感動の対面である。

 ああ、会いたかったぜセイバー、初対面だけど、本当に会いたかった──終わらせたかった。帰りたかった。

 カルデアにいるナビゲーター──ロマニ・アーキマン。通称ドクターロマンがあれはアーサー王だと冷静に皆に伝えた。

 有名なアーサー王が女性なのは驚くものがあったが特に気にすることでもない。

 男性だろうが女性だろうが、やることは変わらないのだから。

 だから──まぁ、さっさと死んでくれ。

 拾っていた鉄パイプを強化し上段から振り落とし──

 気づいた時には俺の首は滑らかに滑り落ちていった。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 ちょっとセイバー強すぎないだろうか。

 回避しようとか考える間もなく斬り飛ばされるとか……

 巨人さんより強い気がするぜ……!

 今度は遠くから強化石ころ投げる作戦に切り替えてみた。

 セイバー、それ即ち剣士という意味だ。

 遠距離攻撃はもってないだろ──ま、魔力が飛んでくる──!?

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 遠近万能とか最強にしか見えない件について。

 俺の強化石とかジュッと蒸発してたからね。

 格の差がありすぎるというレベルの話ではない。

 流石に飛んでくる魔力は防ぎようがないので強化したパイプで殴りかかる。

 拮抗することもなく俺の身体ごと切り捨てられた。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 ですよね! といった結果である。

 くそっ! 魔術師の本気を見てみやがれぇ! 

 魔術をガンガン撃ち放つ。

 当然のように意味はなかった。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 まぁ、やけくそになったのは良くなかったかもしれない。

 そもそも骨にすら通らないのにセイバーに通るわけがなかった。

 今度はいきなり襲い掛からず話させてみた、人類は言葉によるコミュニケーションってものがあるからな。

 仲良く和解とは言わないが何かしら友好的な……

 え、エクスカリバー──?

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 突然の宝具である。やたら黒い極光に視界をいっぱいいっぱいにされた。

 ここでマシュが重要になってくるという訳かぁ、と一人納得する。

 素早く後ろに隠れた瞬間セイバーが剣を振るった。

 闇をそのまま凝縮したような真っ黒な破壊光線をマシュ盾の宝具が防ぎ、立香君がマシュを支える。

 マスターなんだから、自分のサーヴァントを支えるくらいしないと、と彼はあの極光を前に歩を進めたのだ。

 凄まじい破壊音が辺りを散らし、展開されている宝具以外の場所が全てを消し飛ばされていく。

 控えめにいっても絶大な魔力量だ。

 キャスニキ曰くセイバーは聖杯と直接リンクしておりそれにより無限ともいえる魔力を得ているとかなんとか。

 ち、チーターじゃん……BANされても文句言えないぞ!?

 しかし文句を言ったところでどうにもならない。現実は厳しいものだ。

 魔力が散ると同時にマシュとセイバーは地を蹴った。

 黒の聖剣と大盾がぶつかり、マシュが一瞬で吹き飛んだ。

 セイバーの細腕からは考えられないような膂力だ。

 驚く間もなく切りかかってくるセイバーの一撃を鉄パイプで受け流し、一瞬でごみと化したそれ投げ捨てると同時に拳を振るう。

 気づいた時には宙を舞っていた。

 い、一体何が──

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 60kgオーバーの俺を片手で投げ飛ばすとか……

 身動き取れない中でバターのように滑らかに切断されてしまった。

 あの膂力も魔力によるものなのだろうか。

 取りあえず真正面から戦っても勝ち目がないことだけはよく理解した。

 何か他に手は……と、あちこち見回しながら先に進めば不意に()()は目についた。

 あぁー、これは使えるかもしれない。

 キャスニキにも「悪くはねぇな」というお墨付きをもらって俺は皆から離れてそれのもとに残った。

 心地の悪い振動を聞きながら時を待つ。

 まだかまだかと罅割れた空を見上げていれば、唐突に真っ黒な光の柱が天に昇って行った。

 衝撃と豪風が遅れて吹きすさぶ。

 ──来た!

 その瞬間俺は廃車寸前の車を発進させた。

 一本道に入ると同時にクラッチを踏み込みギアを上げてアクセルを踏み込む。

 エンジンが勢いよく音を立ててスピードが馬鹿みたいに上がった。

 狙うはセイバーただ一人。

 マシュが勢い良く吹き飛ぶと同時に車はセイバーの真横に突進した。

 同時に轟音、衝撃。

 片手で車を止めた……だと……?

 か、完全に予想──内だ。

 一瞬で車をバラすセイバーを先に脱出しておくことでその車の後ろから眺めていた俺は車が爆発した瞬間鉄パイプを突き出した。

 グチャリと嫌な感触が手に伝わってくる。

 ──決まった、致命傷でなくとも一撃は入った!

 興奮をそぎ落としながらすかさず手を離して回し蹴り。

 同時に不自然に煙が消し飛んだ。

 その風圧によろけながら前を見れば──血を流しながら笑うセイバーが、そこにいた。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 まーた片手でぶん投げられた。

 建物にぶつかってぐちゃっである。マジで痛いやつだからやめてほしい。

 中々即死できないからかなり苦しいんだよあれ。

 大体キャスニキの援護射撃の炎が降る中あんなに動けるとかおかしすぎるだろ。

 見えていない所からの攻撃からは一瞬反応が遅れるがだから何? ってくらい意味をなさない。

 反射神経抜群というレベルではない、見えてんだろアレ。

 マシュだけでは技量不足。

 キャスニキがいても決め手に欠ける。

 俺はただのカス。

 あれ、これどうしようもなくない……?

 真っ黒な魔力が俺を呑み込んだ。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 もう……何か消し飛ばされるのも慣れて来た感がある。

 最早消し飛ばされるプロとか名乗れちゃうレベル。

 何それ超不名誉……

 取りあえず一対一だと数秒も稼げないということが良く分かったので魔術師らしくかっこよさげに後ろで佇んでみた。

 マシュの宝具がセイバーの宝具を防ぎきれば爆炎と共にキャスニキが動きだした。

 今まで通り炎の雨が降り注ぐが物怖じすることなくセイバーはそれをかわしていく。

 立香くんがこちらに吹き飛ばされるのと同時にマシュがセイバーとぶつかり合った。

 当然のように弾き飛ばされたマシュが建物に叩き付けられるのを横目にキャスニキが走り出した。

 あ、あれ、めっちゃスムーズ……なるほどこれが正規ルート……! 

 何事も先行せずに後ろからゆったり見ているのが一番よろしかったようですね。

 キャスニキとセイバーがぶつかり合う。

 一見すれば互角だ。

 キャスニキが上手くセイバーを捌いている。

 キャスターだけあって魔術を上手く使いセイバーの魔力も上手くいなしているのだ。

 かっちょええ……

 そう思うが、しかしジリ貧だ。

 元々立香くんと仮契約している状態にあるので、彼の魔力にも当然底がある。

 立香くんの代わりに俺が援護をしていたりするがそれもあまりを意味をなさない。

 どす黒い、巨大な魔力が全てを呑み込んだ──

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた

 長期戦になると死ぬのが良く分かった。

 でも短期決着とか無理ゲーすぎるんだよな。

 ど、どうしたら……

 キャスニキに宝具はないのかと聞くが、セイバーの宝具と真っ向でぶつけ合わせられるような宝具ではないらしい。 

 どんな感じなのかと聞けば巨大な燃える藁人形だとかなんとか。

 よ、弱そう……

 そいつの手だけ地面から出したり結構便利らしい。

 よ、弱そう……(二回目)

 失礼か! と頭をはたかれた、いやごめんて。

 ただクリティカルヒットすれば倒せるそうだ。

 もちろん全身に纏っている魔力を消せれば、らしいが。

 これは……! 無理ですね……

 どうしようかなーと考えている内にマシュが吹き飛んでいった。

 今度は戻って来ていない立香……ちゃんの襟を引っ張り後ろに投げ飛ばす。

 視界は黒に染まっていた。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 どうにも立香ちゃんだと逃げきれないみたいですね……

 ふと横を見たら今度も立香ちゃんだった。

 一体どういうことだってばよ!

 頭を抱えている内にセイバーの宝具が放たれた。

 気づいたんだが宝具を撃ってから少しの間は纏ってる魔力は消えるっぽい。

 ただキャスニキが魔力を練り上げてもらおうにもそんな隙は易々とくれないだろう。

 マシュも数瞬で吹き飛ばされるし俺は一瞬も持たせられない。

 何てったって武器のスペックが違いすぎるのだ。

 いや技術とか力も全てにおいてあっちの方が上なんだけどね?

 あ……キャスニキに強化してもらえばよくね……?

 視界が斜めにずれていく中そう思った。

 

 

 濃厚な死の匂いが立ち込めていた。

 中二チックな文字を鉄パイプと身体に刻んでもらった。

 ルーン文字ってやつらしい、北欧とかのやつだっけ?

 まぁそんなことより体がくそ軽い!  

 極稀に道端で見るやたらテンションの高い変人になっているやつがいた。

 というか俺であった。

 いやでもこれ、マジですごいのだ。

 今までが錘でもつけていたんじゃないかってくらい身体が軽い。

 目が良く見える、手足が理想通りに動く。

 これなら多少は戦える。

 二つの宝具が消えると同時に駆けだした。

 中二パイプと剣がぶつかり弾き合う。

 いつの間にか、見えなかった剣速が目で追えるようになっていた。

 やっぱりキャスニキの強化のおかげか、はたまた経験値的なあれがたまっているのか。

 まぁどっちでもいい──けど、セイバーが驚いたように目を見開くのは少しだけ愉快だった。

 左下からの一閃。回転してきて右からの一撃。

 あからさまに魔力が迸っている時だけ全力で回避しそれ以外はギリギリで反応して弾き合う。

 全部反応しきれているように見せかけて三回に一回くらいしかまともに防げていないが、それでも今までに比べれば怖ろしいほどの成長だ。

 だがそれも長くは続かない、俺より先に中二パイプが悲鳴を上げ始めた。

 それを無視して上から振り落とし。返すように下から一閃。

 音もなく中二パイプは真っ二つに切断された。

 だが、それでもまだ戦える。

 間合いが短くなっただけだ、切り落とされた方も持って二刀流。

 これで更に近づけば良い──と、思った。

 それが間違いだと気づくのは少しだけ遅かった。

 右斜めから振り上げ。流れるように左下からの振り上げ。

 それだけで、二つのパイプは粉々になり、同時に衝撃で足が止まった。

 それを見逃してくれるわけがない。

 風を穿つような突き。神速の一撃だったそれは腹を貫いて、真っ赤な血が溢れかえった。

 ゴボリ、と血が喉元を通って吐き出される。

 憐れむように俺を見る金の瞳が酷く愉快だった。

 セイバーが薄く口を開いて何かを呟いた。

 お前は本当に人か? と問いを投げかけられた。

 いや、あるいはそれは、ただのつぶやきだったかもしれないが。

 どちらにせよ失礼なやつだな……

 だがまあ、それよりも、だ。

 引き抜こうとする腕を引っ張り両手で身体をがっしりとホールドした。

 意地でも離さない、そう思った瞬間彼女はその身に纏う魔力を爆発させた。

 同時に燃え盛る、巨大な藁の手がセイバーを掴んだ。

 セイバーが驚愕に目を見開いた。

 貴様、まさかこの為にその身を──!? と悲鳴にも近い声でそう言った。

 いや、そりゃそうだろ、と言葉にしようとして血を吐き出した。

 か、かっこつかねぇ……でも流石キャスニキだ、完璧に決めてくれた。

 地面からズゴゴゴゴと出てきた藁人形はその手に掴んだセイバーを己の腹に収め、大きく燃え盛ったまま轟音を立ててその身ごと地面に叩き付けた。

 それが消えた時、セイバーは血みどろでそこに立っていた。

 その身は既に限界なようで、金色の粉に解けていっている。

 ──見事だ。

 その一言だけ言ったセイバーは、それから『グランドオーダー』という謎の単語を残してその姿消した。

 グランドオーダーって何だろうか。狼狽える所長を横目に頭を捻らせれば、突然声が響いた。

 それは酷く、不愉快な笑い声。

 まだ終わんねぇの!? とか言ってる暇も余裕もない。

 まあでも? こっちには? 最強のキャスニキがいるし? よゆーよゆー。 

 とか思っていたらキャスニキが消えた。

 めっちゃ悔しそうに消えていくもんだから文句も言えない。

 セイバーが死んで聖杯戦争が終わったかららしい。強制退去というやつだ。

 ま、マジかよ……と思いながら笑い声のもとへと視線を向ける。

 大して良くはない眼をこすって見たらそこには緑色のいかにもキマっちゃってる目をした人が──レフ!!

 所長が泣き叫ぶように目がイカれてる感じの男の名前を呼んだ。

 ていうか俺も知ってる人だった。

 いささか優しさが抜け落ちたような不気味な目をしているが、それでもあれはレフ教授だった。

 超知ってたし超お世話になってたわ……

 そんな教授に所長が希望を見つけた! と言わんばかりの笑顔で駆けよっていった。

 え? 行っちゃうの? 絶対ダメでしょ、と嫌な予感がして掴もうとしたが、しかし手は空を切る。

 すると予感が当たったのか。

 ここの空間とカルデアが繋がり、カルデアスと呼ばれる機械に所長が放り込まれた。

 いや一言で言って良いようなことではないのだが、しかし。

 事実そうだった、彼は──レフ教授はなんの感慨深さもなく。

 感情はなく、言葉もほとんどなく。所長を投げ捨てるように放り込んだのだ。

 泣き叫び続けていた彼女の声が掠れていき、やがて消えていく。

 カルデアスの中は人が生きながらえられる場所ではない──どころの話ではない、と彼は言う。

 太陽やブラックホール何かと同一視されるものである、と。

 ただ死ぬだけでなく永遠に死に続ける、そういったある種の地獄。

 それを嬉しそうに、高笑いしながらレフ教授が話し続ける。

 所長はとっくに死んでいたのだよ、とレフ教授は言った。

 レイシフト適性の無かった彼女は、精神のみでここに存在していた、と。

 まぁ、その辺の話は正直、100%理解できなかった。

 だけどカルデアが半壊なのも、俺たちがこんな思いをしているのも、人理がやばいのも全てやつのせいなのは良く分かった。

 あー……そうだったんだ。マジかよ。

 じゃあ死ねよ。

 俺を一瞥した教授は何ちゃっかりお前生き残ってんだよ、と憤っていたが怒りたいのは俺の方だった。

 しかし何かする前にレフは消えてしまった。

 抗えるものなら抗うと良い──とはいえ、もう世界の運命は決まってしまったのだがね、と言い残して。

 

 

 世界が揺れる──

 反射的にマシュと立香くんを抱え込むように引き寄せた。

 世界が崩れゆく──

 徐々に自分という存在が消えていくような感覚を覚えた。

 必死に抱き寄せ二人という存在を通して自分はいるということを再確認する。

 マシュと立香くんが必死にドクターを急かすように叫ぶ。

 ドクターの焦ったような声が耳朶を叩く。

 瞬間、嫌な浮遊感が俺を──俺たちを襲った。

 それでもグッと二人を掴んで離さない。

 少しずつ視界が歪んでぼやけていく。

 またやり直しか。

 視界はぐるりと暗転した。

 

 

 何やかんや助かったっぽい。

 若干涙目のロマン含め職員たちが視界に入ったことで確信した。

 流れるようにベッドに回収されてポイッとされる。

 暖かな毛布の存在が何よりの癒しに思えた。

 ああ、長い一日だった。

 本当に、本当に長かった。

 それ以上何か考えようとはしたが、しかしどうすることもできず沈むように意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こっそり文章整形・修正しました。

誤字脱字等あったらこっそり教えてくれな!

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