新しい人生は新米ポケモントレーナー   作:とぅりりりり

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票数ナギサ圧勝すぎてむしろ知ってたってなりましたね。


ハッピー遊園地 ~ナギサ編~

 

 

 まあ誘うならナギサだよな。入院中にも見舞いとかで世話になってるし、一番遊園地とか付き合ってくれそうだし。

 そんなわけでもう夕方というより夜の時間だがナギサに電話をかけるとしばらくのコールのあとに応じる声が聞こえてきた。

『もしもしヒロ兄? どうかした?』

 なんだか妙に久しぶりに声を聞いた気がする。相変わらず明るくてハキハキした印象を与えてくる。

「急にごめんな。実はさ、遊園地のペアチケットもらったんだけど一緒にどうかなって。期限が近いからできれば早めがいいんだけど」

 

『…………えっ、遊園……ええっ!?』

 

 なぜか電話の向こうで驚くようなナギサの声がし、不思議に思っていると『ちょ、ちょっと待ってね……』とナギサの声が離れていく。予定の確認でもしているんだろうか。

『ああ、あのっ! 明日! 明日とか大丈夫!?』

「え? 俺はいいけどナギサは大丈夫なのか?」

 こっちも急に誘ってるし難しいなら無理はしてほしくはない。

『うん! むしろ明日なら特に予定ないし……その……せっかく…………だし……』

 後半よく聞こえなかったが明日一緒に行くことが確定し、あとは待ち合わせ場所と時間を決めてから話を終えた。

 声からするに喜んでいたしよかった。他の候補は正直あんな喜ぶような面々いないしなぁ。

「明日楽しみだな」

「ふぃー」

 イヴもこういった遊園地などは初めてだし乗り気だ。尻尾を揺らしてそわそわしている。

 俺も前世含めて遊園地は存在は知っているが行ったことはないので年甲斐もなく興味をそそられる。

 今日は色々大変だったし明日は各々好きに行動することにもなったので早めに就寝することとなった。

 

 

 

――――――――

 

 

 電話を終えて、ナギサはしばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。

 その様子を不思議に思ったジムトレーナーのアクアがナギサに近づいて目の前で手を振ってみる。

「もしもーし。どうしたの?」

「……ハッ!」

 正気に戻ったナギサが近くの窓ガラスで自分の姿を確認すると両手で顔を挟みながらアクアに詰め寄った。

 

「ど、どどどどどどどうしよう! ねえこの時間でも開いてる美容室ない!?」

 

「え、何急に。えー、もうそろそろ閉まるんじゃない?」

「いやあああああっ! 直近だと明日くらいしか予定空いてないのにー!」

「え、何。デートにでも誘われたの?」

「にゃーっ!!」

 真っ赤になってあわてふためくナギサとその様子を見守るジムトレたち。青春だなぁと思いつつ、ランタにバレたらやばいなと確信して皆ナギサのためになんとしても隠し通そうと決意したのである。

 

 

 

 

――――――――

 

 

 翌日、ナギサとの待ち合わせのために早めに現地へと向かう。華祭りの前だからか思ったより人が多いようで結構な熱気だ。

 はぐれると困るので連れ歩いていたイヴをボールに戻してナギサを待つとまだ待ち合わせの10分前だというのにナギサの姿が見えた。

 

「お、おまたせヒロ兄!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 暑いのか少し顔が赤い様子で心配になるが次いで服装に目が行った。

 紺基調のワンピース。セーラー服モチーフなのだろうか暗い色なのにどこか爽やかさがある。

 普段の明るい色合いとはまた違う印象で少し不思議な気分だ。

 俺の視線に気づいたのかナギサは自分の髪を指先でつまんで少し照れくさそうに言う。

「へ、変かな?」

「え? いや、いつもと違うなーって思ったけど似合ってていいと思うよ」

 ナギサ、こんなオシャレしてくるなんてよっぽど楽しみだったんだな。誘った甲斐があったってもんだ。

 素直な気持ちを口にしたらナギサは嬉しそうに笑ってくるりとその場で回ってみせる。

「じゃあ今日はよろしくおねがいします、ヒロ兄」

「ああ、じゃあさっそく行こうか」

 ペアチケットを持って受付に向かい、園内に入ると人の多さで少し不安が生じた。せっかく遊びに来たのにはぐれて時間を取られるのは不本意だ。出る前にイオトも「遊園地って地味に二人で行くと難易度高いんだよなー」って言ってたし。

「なあナギサ、ここ人多いし手繋がないか?」

 勝手に繋ぐのは流石にこう、嫌がられるとダメージがあるので確認を取ってみる。するとナギサはなぜか無言で顔をうつむけている。その様子に「え、何この人気持ち悪い……」とか思われているのではないかと別の不安が浮かんできてしまう。

「え、あ、いやなら別に」

「する」

 慌てて言いかけたのを短い言葉で止められたと思うとナギサのほうから手を繋いできた。よかった、気持ち悪いと思ってたわけではないらしい。

「じゃあ何から行こうか」

 入園時にもらった地図を見ながらナギサの俺より小さな手を握って人の多い園内へと歩みを進めた。

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 ナギサは緊張していた。過去かつてないほど緊張していた。

 手を繋ぐ提案をされた瞬間、ナギサは一瞬本気で思考が停止し、半ばパニックに陥っていた。

 

(つ、繋いでいいのかな!? イメージだともっと後の方だと思ってたのにこんな早くにいいのかな!?)

 

 昨夜寝る前にシュミレートしていた展開と早速食い違ったせいで仮にも才女と言われるナギサは適切な判断ができていなかった。

 その結果、絞り出したのが「する」の一言だったのである。

 そして、手を繋いだ際に改めて自分と違う手や他人の体温を感じて少しだけ、いつもどおりに振る舞えるだけの冷静さを取り戻す。

 

(こ、これはもしかして告白とかそういうのいけちゃうんじゃないの!?)

 

 すると、まだ混乱しているのかヒロの「何から行こうか」の声が耳を通り抜け、天使姿の自分が脳内に出てくる。

 

『駄目よ。こういうのは段階を踏んでいかないと引かれてしまうじゃない』

 

 理性的な天使姿の自分が気が早いと囁きかけてくる中、衝動的な悪魔姿の自分がこういうのは積極的にいってなんぼだと天使を押しのけてくる。

 

『ふっふっふっ、男の人はボディタッチすればイチコロのはずよ! 絶対脈あるんだから突撃よ!』

 

『いいえ、脈があるかなんてわからないじゃない。こういうのは慎重にこう、ゆっくりと距離を縮めて……』

 

『うるさーい! チャンスを活かさなくてどうするのよ!』

 

 

 騒がしい脳内の自分をなんとか振り払ってナギサは地図を見ているヒロの横顔をチラ見する。

 自分と違って緊張した様子もなく、どこから行こうかと悩んでいるせいかこちらの視線には気づいていない。

 

 改めて、少し緊張しすぎだと息を吸い込んで気持ちを切り替える。まずは普通に楽しもう。

 楽しめたらそこからなにかきっかけが生まれるかもしれない。

 

 そう前向きに気持ちを整理して繋いだ手をより一層強く握った。

 

 

 

――――――――

 

 

 まずやってきたのは人気のあるジェットコースーターの一つ、トロッコマウンテントラベルズだ。人気ということで少々並んだが、早めに来たからか比較的早めに乗ることが出来た。

 

 いわゆる山の中を冒険するという体のアトラクションでトロッコを模したものに乗って内部を進んでいく。

 最初のエリアにはズバットやゴルバットのマシンが飛んだりぐるぐる回ったりして陽気な音楽が流れてくる。

「あ、そういえば前に聞いたことある! 二番目のエリアでたくさんいるゴースに一匹だけ色違いがいるんだけど見つけられたらいいことがあるんだって!」

 もちろんこの場合本物のポケモンでなく作り物だろうがそういう隠し要素があるとちょっとワクワクするな。

「ナギサそういうの詳しいんだな」

「え? そうかな。色々噂とか話題になってるもの聞いてると自然と覚えたりするんだよね」

 そうこう言っているうちに早くもトンネルに入り次のエリアだ。事前に聞いたとおりゴースがたくさんいる少しおどろおどろしいエリアでヨワマルなどのゴーストタイプがほかにも見受けられた。

「色違い色違い……」

「あ、あれじゃないか?」

 ちょっと青っぽい色に見えるゴースが遠くでゆらゆら揺れているのが見える。ゴースって通常と色違いの差意外と見分けづらいな……。

「ホントだ! いいことあるといいねー」

「あんまり並ばずにアトラクションに乗れたりとか?」

 そんな他愛もないやりとりをしていると不穏な気配が音楽やセットの様子でわかる。

 ジェットコースターということでこの後一気に落ちるエリアがあるはずだが――

 

 のぼっていくトロッコが今か今かと落下を焦らし、ナギサの手がぎゅっとこちらを握ってくる。

「ここ写真撮るんだよ」

 えっ、と言葉が出る前に一気に落下するコースターに俺たち以外からも悲鳴があがる。

 

「わあああああああああああああ」

「きゃーっ!」

 

 楽しげなナギサの悲鳴と大量の水しぶきに見舞われ、終わる頃には髪が水気でしっとりとしていた。

 

 

 コースターから出ると写真のエリアが目に入り、ナギサがパタパタと駆け寄っていく。濡れた髪をタオルで拭きつつついていくと先ほどの落下中の写真がモニターに写っていた。

 ナギサは楽しそうに空いた手でピースをしており割と余裕があるが俺はなんというか間抜け面を晒している。

「あはは、せっかく写真撮るって言ったのに」

「いきなり言われても無理だって」

 するとナギサは「あ、ちょっと待ってて」と言い残して写真の受付に向かう。……買うのか、あの俺の間抜けな顔が横にいるアレを?

 戻ってきたナギサは写真の入った封筒片手にニコニコである。いや、本当にアレでいいのか……?

「お待たせ! 次どうしよっか」

「今のうちに並びそうなアトラクションのチケット取っておくか?」

 地図を見つつその後の予定を相談しながら楽しい時間があっという間に過ぎていくのを感じる。

 なんか改めてデートみたいだなこれ、なんて思いながら髪が乾く頃には次のアトラクションへと移動していた。

 

 

 

 

――――――――

 

 

 あれからいくつかアトラクションやエリアを見たり、ピカチュウのきぐるみとかと遭遇して写真を撮ったりしてもうお昼をとっくに過ぎていた。

 

 これからどこかで昼食でもとるかというところでナギサがトイレに行き、近くのベンチで一人休憩をしている。

「イヴも遊びたいよなー。この後ポケモンも楽しめるエリア行こうな」

「ふぃ!」

 近くで買ったチュロスを半分こしてナギサを待ってるがトイレが混雑でもしているのかなかなかナギサが戻ってこない。

 

「ん?」

 

 ふと人だかりの中に見覚えのある姿が一瞬見えたので立ち上がって目を凝らす。そこには満面の笑顔のイオトがいた。なにかのアトラクションに並んでいる最中のようで列の中でその長身が目立った。

 

 え、何あいつも来たの?

 

 しかし一人で来ているはずがないので誰が一緒なのだろうとよーく観察すると人だかりの動きでようやくその同行者の姿が確認できる。

 一緒にいたのはフユミだった。シアンのメイドの一人、一番あの中で幼かった子だ。イオトの隣でツンとした表情でいるがイオトに何か言われると恥ずかしそうに赤面している。

 

 えぇ……嘘だろお前……マジで手出してんの……。

 

 確かフユミって15歳とか言ってなかった? 余裕で犯罪だろお前……。

 さすがにドン引きである。百歩譲って合法だとしてもシアンの、旅の仲間の身内を口説き落としているその行動力が怖い。ていうか本当にいつの間に口説き落としたんだ。

 軽い恐怖体験に慄いているとナギサがトイレから戻ってきた。

「あれ、ヒロ兄どうかした?」

「あ、いや……な、なんでもない……」

 絶対に関わらないようにしよう……。

 イオトなんて見なかったことにして早速昼食をとるためこのエリアから一刻も早く離れるのであった。

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 アトラクションの待ち時間は暇をつぶすためもあってか会話が弾む。ナギサは海の話や子どもたちとの勉強会の話、アクアリウムのイベントの話ととにかく話題が尽きない。

「ヒロ兄の話も聞きたいな」

 自分ばかり喋っているのが申し訳ないという顔をしているナギサの話聞いてるの楽しいんだけどなぁと思いつつ何か話題がないかここ最近のことを思い出す。

 

 ……やべぇ、トラブルしかないジムの手伝いとか舞台が事故手前だったとかそんなことしか浮かばねぇ。

 

「あーえっと、祭りの後になりそうなんだけどアンリエッタさんのジムに挑むつもりなんだ。なんかアドバイスとか……ないかなー……なんて」

 

「アンリ姉は強いよ」

 

 急に、先程まで年相応にはしゃいでいた少女ではなく、ジムリーダーとしての顔がそこに浮かんでいる。

「アンリ姉は自分を卑下するけど私と比べ物にならないくらい強い。正直私からアドバイスできることは……あんまりないかな。ケイ兄とかなら違ったかもしれないけど」

 そんなに強いのか……。ナギサの真剣な様子に思わずごくりとツバを飲み込む。いや強いのはわかっていたがそこまでとは。

「そうだね……強いて言うならアンリ姉は優しいけど甘くないから常に気を抜かないほうがいいよってことだけ。何もしてこないと思ったら見えないところで何か仕込んでると思って」

 なるほどな……。ナギサ以外に聞いたらもっと具体的なことがわかるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 夕方になり、陽も傾いてくると夜のパレードに備えてか移動する人がちらほら増えてくる。

 待ち時間もあったが結構回れて楽しめたほうだ。昼食の後はナギサのトリトドンとイヴも一緒に遊べるポケモンレンジャーエリアにも行ったし。

「あ……私そろそろ帰らないと」

 時間を確認して少し寂しそうにそうつぶやくナギサ。なんとなく夜のパレードとかも見て帰るつもりだったがナギサも忙しいし遅くまで付き合わせるわけにもいかないのを失念していた。そもそも帰りの距離あるしな。

「今日はありがと! すっごい楽しかったよ!」

 笑顔で俺の顔を覗き込んできたナギサは本当に楽しそうにぴょんと跳ねてみせる。

「あ、ヒロ兄も別に一緒に出なくていいんだよ! せっかくなんだしヒロ兄はパレードとか見ていけばいいよ」

 ナギサはそう言うが別にそこまでパレードに興味はないんだよなぁ。ポケモンも出演してるけど遠目からしか見れないし。

「とりあえず入り口まで送るよ」

「あ、う、うん」

 しばらくの無言。いきなり誘ってしまった割にはナギサも楽しんでくれたようなので俺としては満足なのだがここにきて無言が続くとなぜか気まずい。

 

「あ、あの……!」

 

 沈黙を打ち破ったのは控えめな声。俺の服の裾をきゅっと掴んで引き止めたかと思うと身長差もあって自然と上目遣いになるナギサ。

 

 

「また、一緒に遊びに行ってもいい……?」

 

 

 夕日のせいかナギサの顔が赤く見えて少しドキッとする。

 

「あー、うん……。また機会があったら誘うよ」

 

 ナギサもジムとかで忙しいだろうから俺から誘うよりナギサが誘ってくれたほうが負担はないと思うのだが、なんというか、妹みたいな感じがしてつい誘ってみたくなるんだよなぁ。

「うん……! 約束! また遊びに行こ!」

 小指を出すように手を引かれ、小指を立てると「ゆーびきりげーんまん」とナギサの嬉しそうな声が聞こえてくる。

「嘘ついたらハリーセンのーます」

「ハリーセン飲まされたくはないなぁ」

「ふふ、ゆびきった!」

 

 

 ナギサを入り口まで送り届け、バイバイと手をふるナギサの姿が見えなくなるのを確認してから土産を買うためにショップへと入り、いくつか気になるものを購入して俺も遊園地を出た。

 いやぁ、一緒に来たのがナギサでよかった。

 

 多分他のやつと来てたらこんな穏やかに楽しめなかった気がする。

 

 




Q、もうナギサヒロインでよくない?
A、作者は本編リジアエンドを変える気は微塵もない模様(IFをやらないとは言っていない)


もしほかの人を誘っていたらどうなるのかのダイジェストはそのうち番外編集のほうに載せられたらいいなぁ

誰を遊園地に誘う?

  • ナギサ
  • リコリス
  • コハク
  • ユーリ
  • ケイ
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