新しい人生は新米ポケモントレーナー   作:とぅりりりり

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ポケモン泥棒

 

 

 

 

 

 草むらにやってきたわけだけどトレーナーがいねぇ。

 まあ野生が何か出ればいいか。

 イヴは興味津々なのか小石とかつついて目をキラキラさせてる。はー、かわいいな。写真撮りたい。

 それにしても、俺の前世のゲーム知識はどれくらいアテになるんだろうか。まあ技とかポケモンの名前とか特性とかはだいたいわかるけどゲームと同じとも限らないしなぁ。

 そういえば俺図鑑とか持ってないからイヴのレベルとか技何が覚えてるかわかんねぇ。

 まあでも戦ったことないし、卵の時から覚えてる技なら使えるだろう。

「イヴ、しっぽをふる」

 イヴはぱたぱたと尻尾を振り、俺の心の防御力が下がった。かわいすぎる。

「えっとじゃあ、俺にたいあたり」

 冗談めかして言ってみたら結構とんでもない勢いでぶつかってきた。みぞおちにクリティカルヒットで急所に当たったポケモンの気持ちがよくわかった。

「マサラ人すげぇな……」

 前世でよく知るあいつはすごいんだと今更ながらに感動した。

 ふと、草むらが揺れクレッフィが顔を覗かせる。

「あれ、この辺クレッフィなんて出てくるのか」

 捕まえられるかな、と少し考えるが相性もあるしなぁ。

「まあいいか、イヴ、たいあた――」

 たいあたりをかます前にクレッフィのでんじはがイヴに直撃し、プルプルと痺れたのかその場から動けなくなる。

「げっ、麻痺!? 待ってろイヴ、今ラムの――」

 

「へぇ、新米トレーナーだと思っていましたがきのみは一人前に備えているんですね」

 

 背後からの女の声。それと同時に紫色の影が目の前を横切り、次の瞬間にはイヴがいなくなっていた。

「イヴ!? イヴどこだ!」

「ぶいー!!」

 鳴き声の方向を見るとそこにはグレーのシャツに黒いショートパンツの女が木の上でイヴを押さえつけていた。

「イヴ!」

「はあ。メスのイーブイなんて珍しいから土産にしようと思ったんですが弱いですねこれ」

 図鑑のような機械なのかなにかの端末でイヴをスキャンしている女の横にはグライオンがいた。イヴを連れ去った犯人はあいつか。

「クレフ。帰りますよ」

 女は俺のことを気にも留めず先程まで相対していたクレッフィへと声をかけた。最初からグルだったらしい。嵌められた。

「イヴを返せ!」

「……あ?」

 女はようやく顔を上げ、不機嫌そうな目つきで俺を睨む。濃い青色の髪に緑色の目をした女はイヴを押さえつけながらネクタイを緩める。緩く編まれた三つ編みが風に揺れている。

「うるさい人がいますねぇ……」

「返せ!」

 木の上にいるから俺が登るしかないのだが近くにいたクレッフィが妨害してくる。こいつら完全に慣れてやがる。

「ん? なんですかこれ。かわらずのいし……? 奇特なトレーナーもいるもんですね」

 呆れたようにイヴからかわらずのいしを取り上げて自分の懐にしまうとクレッフィをボールに戻して新しくネイティオをボールから出した。

 空を飛ぶのかそれともテレポートか!

 慌てて女の服を掴み体勢を崩そうとするが予想していたのか女は少し揺らぐだけで落ちる気配はない。

「みっともありませんよ? グライ、テレポートの邪魔になるのであれを追い払ってください」

 グライオンが頷くと俺を叩き落とそうと向かってくる。流石にグライオンの毒をうけたりハサミを使われたら致命傷だ。だがそれでも、イヴを諦めるわけには――

「ぶいー!」

 女に押さえつけられていたイヴは無理やり抜け出したかと思うと女へとたいあたりを繰り返す。

「うわ、ちょっと――危な――」

 繰り返される渾身のたいあたりによろめいた女に気づいたグライオンがはっとして俺を無視して助けようとする。

 しかし、そこに先ほどボールから出たネイティオが参戦し大混戦。

「ちょっ、ネネ! 今攻撃すると私も巻き込み――」

 ネイティオのエアスラッシュがイヴに向かって放たれるが回避したイヴは俺の頭へと飛び、エアスラッシュにより女と俺が乗っていた枝が見事に折れた。

「げっ――」

「ちょっ――」

 二人揃って(イヴも俺の髪の毛を掴んで)落ち、主人を落としたことに困惑したネイティオとグライオンが慌てている気配がする。

 そして、落ちたものの俺はあまり痛みはない。というかなにか下敷きになっている。

 

「――どきなさい」

 土煙が晴れると俺の下には不愉快そうに女が仰向けになっていた。俺よりあちこち擦り傷になっている。

「……」

 今の状況は俗に言うマウントポジション――というか押し倒してるみたいになっているのだがそう、俺の手がつまり、女の胸のあたりを触っていた。

「……聞いてるんですかボサ髪」

「いや……胸はそのうち成長すると思いますよ……」

 全然触ったのに気づかなかったくらい平らだった……。

 なんかこう、ラッキースケベしたのにまったく嬉しくない。というか、ちょっと泣けてきた。こんなに真っ平らな女いるんだぁ……。

 見た目こそいい感じで恐らく姉と同じくらいの年頃だと推測できる。姉はそこそこ胸があったが特別大きいわけでもなくいわゆる平均的なものだと思う。

 ……あれ、なんか微妙に顔に見覚えがあるような気がする。

 顔をじっと見ていると不愉快そうに女は顔を歪めた。

「……どうやら死にたいようですね?」

「い、いや! よく考えたらお前の方が人のポケモン取ろうとしたりしてるから俺はなんにも悪いことしてねぇよ!」

 責められるのはお門違いだ。しかもこの女、照れるとか全くない。かわいげがなさすぎる。こう、もっと可愛らしい反応してもいいと思うんだ。

 唐突に、殺伐とした空気の中、女の端末がピピピと機械音を鳴らし、女が舌打ちした。

「今日殺してやれないのが残念ですよ」

 低いドスのきいた声。俺を押しのけようとして腕を動かしたかと思うと俺の前から一瞬で消えた。

「次会ったらおとなしく奪われなかったことを後悔させてやりますから」

 ネイティオが引き寄せたのかグライオンとネイティオの隣でつばを吐くとまるで白昼夢のように消え去った。

 

 消える直前、含みのある笑みが見えた気がしたがそれがどんな意味を持つのかは俺にはわからない。

 

 

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