新しい人生は新米ポケモントレーナー   作:とぅりりりり

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お屋敷ラプソディ3

 

 

 イオトはガタガタと揺れる音で目を覚まし、周囲を見渡すと埃っぽい物置にいることに気づいて体についた埃を払う。

 未だに物音は止まらない。少なくともこの部屋ではないどこかだと気づいて部屋から出るとろうそくの灯りで頼りなく照らされている廊下に出る。1階や2階とは違う装いからここが隠し通路か地下あたりだと推測し、とりあえず物音を頼りに進んでいく。途中、悪寒というか見られている気配を何度も感じたが手持ちたちがボール越しに威嚇しているためか襲ってくるものはいない。

 先程倒れていた部屋まで聞こえていた物音がする部屋までたどり着くと声もかすかにだが聞こえてくる。

「誰かー! だーれーかー!」

 聞き覚えしかなくてイオトは呆れた顔で部屋へ入ると部屋の隅で鎮座するデスカーンを見てあれかぁと無言になる。

 その間もガンガンと内側から蹴りつけるような音が響き、めちゃくちゃシュールな絵面になっていた。

「ヘルプ! ちょっとマジで誰かいない!? やばいってこれシャレにならないから! サーナイト! サーナイトいないの!?」

 こもったエミの声がデスカーンの内部から聞こえ、イオトは困惑しながらそれを見守る。

「今なんか聞こえた! 誰かいるだろ! なあ、おい!」

「……えーと……大丈夫か?」

「その声はイオトだよね!? 早く出してくれないかな! ちょっとこれネタじゃなくてガチでやばいから!」

 困惑しつつもイオトはボールからフシギバナを出してデスカーンの体をつるで引っ張ってエミを出そうとするがデスカーンも黙って開かれるつもりはなく、襲い掛かってくる。

「揺れ、めっちゃ揺れる!」

 中でグロッキーになっているエミを無視してフシギバナはギガドレインでデスカーンの体力を削っていく。さすがに実力差があるのかデスカーンはあっけなく倒され、つるで開いた体の中からエミが目を回した状態で出て来る。

「酔った……」

 四つん這いで息を荒くするエミを見てイオトはちょっと笑えてきて声を押し殺すように笑うと、それに気づいたエミがぶすっと拗ねたような表情を浮かべた。

「で、ここどこ」

「さあな。俺も気づいたら別の部屋にいたし。少なくとも寝る前に行った場所ではないっぽいぜ」

 エミは手持ちがおらず、イオトはマリルリを除いて揃っている状況。内心嫌だとは思いつつもエミはイオトに頼るしかない。

「僕はサーナイト見つけないと……」

「まあ、歩いてりゃそのうち見つかるだろ。出口も一緒に」

 不気味に揺れるろうそくのあかりを頼りにやけに長く感じる廊下を進む二人。普段ならヒロやシアンがいるため二人になると途端に話が途切れて妙に空気が重くなる。

「……あー」

「……何?」

 何か話そうと口を開くも特に浮かばなかったイオトに、エミは少し不愉快そうに言う。

 一緒に旅をしているというのに別段仲がいいというわけではないのが奇妙だ。

(やばい、気まずい……)

 イオトが内心エミへの対応に困っているとエミが口元を隠しながら聞いてくる。

「…………イオトってなんであんまりポケモン見せないの?」

 探るような声音にイオトは一瞬だけ返答に悩み、少し間を置いてから答える。

「不必要な力の誇示はよくないだろ」

「ふーん。つまり君はポケモンを力だと思ってるわけだ」

 棘のある言い方にイオトもむっとして再び無言が続く。イオトは初めてマリルリさんがそばにいないことをこんなに悔やんだことはないと心から思った。

 そんな無言を遮るように進む先から戦闘音と駆けてくる何かの足音が聞こえ、手持ちのいないエミの前にイオトが立つ。

 

「さなあああああああああああああああ」

 

 それは涙目で全力疾走しているエミのサーナイトだった。

 何かから逃げているのかとても怯えておりサーナイトに似つかわしくない健脚でエミたちすら横切ろうとする。

「サーナイト! どうしたんだそんな慌てて……」

「さなさなさなー! さぁ!」

 必死に走ってきた方向を指差すサーナイトを落ち着かせようとエミが頭を撫で「いや、テレパシーして」と冷静に突っ込む。

 すると、足音こそしないものの何かが近づいてくる気配。暗闇の中にぼうっと浮かぶ赤い光たち。

 それは楽しそうに迫ってくるゴーストポケモンの群れだった。

「さなあああああああああ!!」

 サーナイトがすがるようにエミに抱きついて、それをイオトが困惑しながら眺める。

「お前のサーナイト随分と気弱だな……」

「いや、単純にゴーストにあれだけ追い回されたらねぇ……」

「ああ、相性か……」

 完全に世紀末でヒャッハーしてる何かのノリでサーナイトを追いかけているゴーストタイプたちを見たらこうなっても仕方ないかもしれない。

「ごめんよ、今君しか手持ちがいないんだ。ちょっとがんばって」

「さなぁ……」

 怯えてはいるものの主人のためと前に立つサーナイトと並ぶようにイオトもアーケオスを繰り出す。

 イオトの初めて見せる手持ちにエミは少しだけ意外そうな顔をして言う。

「さっきのフシギバナもだけど今日はやけに手持ち見せるね?」

「見せないだけでうるさい誰かさんがいるからなー」

 嫌味を刺しながらアーケオスが一瞬のうちにゴーストたちの背後に回って目にも留まらぬ速さで打ち倒していく。アーケオスの足に何か輝くものが見えた気がしたがエミはそれを捉えきれない。

「アーク!」

 イオトが指で弾き飛ばしたそれは小さい宝石のようなもの。アーケオスはそれをキャッチしたかと思うとすぐさま消費するように素早く動く。それだけでゲンガーやゴースたちが次々と倒れていきサーナイトはほとんど何もせずに道が拓かれていく。

「へぇ、イッシュの特産のジュエルってやつ? アクロバットであんな威力出るんだね」

「これ結構たけーんだぞ」

 二つも使わせやがってとぼやくイオトだがもはや前ではなく後ろを見ている。

「まだ後ろから来るっぽいぞ」

「走るかい?」

「まあ下手したら挟み撃ちだし開けたところに出るのを願うしかないな」

 背後から迫ってくる気配を感じつつサーナイトがきた方向へと走るとホールのような広い場所に出る。こう、隅の方に骨のような何かが見えた気がしたが気のせいだと二人して目をそらす。部屋の真ん中には灯りのないシャンデリアが埃を被っており、不気味さを醸し出している。

 妙に、体が重くなる感覚と、3つに別れた道のせいでどうしようかと数秒悩んだ二人は同時にどっちへ行くか指で示すと見事に意見が割れてしまい笑顔で互いの顔を見合わせる。

「お前、今サーナイトしかいないんだから俺のほうについてくるよな?」

「え? 自分がちょっと優位だからって従わせるとかそういうのよくないと思うけど?」

 剣呑な雰囲気になっている間も背後から迫ってくる何かは徐々に距離を詰めてくる。サーナイトがエミの服の裾を引っ張って早く早くと焦っており、アーケオスに関しては呆れている。

 舌をのばして獲物を捕らえたと言わんばかりのゲンガーとヤミラミが襲い掛かってくる直前、言い争っていた二人はキレながら敵であるそれを見てセリフをハモらせる。

『今それどころじゃない!』

 イオトはボールからガブリアスを繰り出してゲンガーを叩きのめし、エミはもはやポケモンを使うことすらせずヤミラミを投げ飛ばして瀕死のゲンガーの方に叩きつけるという荒業を披露し、サーナイトがぽかんとしていると言い争いの終わらない二人は襲ってきたポケモンの存在などいないかのように話を続ける。

「だいたい君、前から思ってたんだけど僕らのこと見下してるだろ!」

「はぁー? 見下してねぇし。そういう思い込みマジで気持ち悪いしやめろよな」

「ちょっと年上だからって舐め腐ったその態度やめたらどうだい? だいたいいい歳して旅トレーナーだけとか将来無職まっしぐらだけど?」

「今それ関係なくないか!? 寄って集って俺のこと将来ニート有力だのなんだの言いやがって!」

 久しぶりにボールから出たというのに主人が他人と言い争いをしているのを目の当たりにしたガブリアスは困惑しながらアーケオスに声をかける。

「ガブ……ガブガ?」

「アークケケ、ケケ」

 どうすればいい? しーらね、と言わんばかりの対応。サーナイトも対応に困って言い争いが終わるのを待ちながら警戒するしかできなかった。

 

 

――――――――

 

 

 俺とシアンは地下につながる場所を探しながらマリルリさんとエンペルト、イヴとカモネギを連れての大所帯で歩いていた。そしてそこにムウマとミミッキュもついてきている。

 結局捕獲は叶わず諦めて泣く泣く離れたのだがムウマはともかくミミッキュは気に入ったのかついてきていたのだ。

 やっぱり捕まえるべきだと思って再度ボールを投げたら弾かれた。新手のツンデレかもしれない。

「ここは……倉庫か?」

 少し埃っぽいが整頓されている倉庫にはダンボールや脚立などが置かれており、部屋の奥の床に扉のようなものがあった。

「今度こそ当たりですかね……?」

 シアンが怪訝そうに見つめる。鍵と思われるツマミを回すと扉を引っ張り上げることに成功し、少し離れたところから灯りのようなものが見える。ここだろうか。

 どちらが先に降りるか確認するとシアンはあとがいいと言いたげな目をしていたので先に降り、シアンが降りてくる間に通路の先を見てみると一定間隔で蝋燭の灯のようなものが見え、ランプの灯りがなくとも十分に視界の確保はできそうだった。

 シアンに続いてマリルリさんやエンペルトも降りてきたので先に進もうとすると一瞬最悪の可能性が頭をよぎる。

 

 これ、扉閉められたら詰みじゃね?

 

 その思考を嘲笑うようにバタンッと扉が閉まる音。慌てて引き返して扉をあけようとしたその瞬間、カチッと鍵の閉まるような音がして体温が急激にさがっていく感覚に陥る。

 ヨマワルの鳴き声がしてそれが遠ざかっていく気配と、血の気が引いていく感覚にシアンは真っ青通り越して真っ白だった。

「ぎゃあああああああああああああああ」

「おち、落ち着け! 最悪壊したら出られるはずだ!」

「とじこめられたですよおおおああああびゃああああああ」

「シャラップ!」

 もう大惨事すぎてうるさい。

「いざとなったらマリルリさんかエンペルトが壊してくれるって」

「ほ、ほんとです……?」

「俺は信じなくてもいいからマリルリさんとエンペルトを信じろ」

 マリルリさんはグッと任せろのサインをしてエンペルトも頷いてくれる。この二匹は圧倒的に頼りになりすぎて出て来るゲーム間違えてないかと思ってしまう。いや、そもそもこれゲームじゃないけどさ。

 落ち着きを取り戻したシアンをつれて先に進むと時折ゴーストタイプの気配とともにエンペルトかマリルリさんが撃墜してくれて何もないまま終わる時間が続き、本当にここにイオトかエミがいるのか心配になってくる。

 すると、マリルリさんの耳がピクっと動いて後ろに控えていたにも関わらずすたすたと前に出る。

「マリルリさん?」

「まりまり」

 指差した先にイオトがいるのだろうか。マリルリさんに従ってついていくと時折ドーンという戦闘音が混じりつつも声が聞こえてくる。

「僕、君のそういうところ嫌いだわー!」

「俺もお前のそういうところ大っ嫌いだわー!」

 ……確認するまでもなくイオトとエミなのだが何してるんだろうあいつら。

 ひらけた場所に出ると、なぜかど真ん中で取っ組み合いの喧嘩をしているイオトとエミ。なぜか一つの通路の前に積み重なる戦闘不能のゴーストタイプの山。呆れたサーナイトと石で遊び始めるアーケオスとそれを見るガブリアス。

 どういう状況だこれ……。

「えっちゃん! イオくん!」

 俺の後ろに隠れていたシアンが声をかけると喧嘩していた二人はぴたりと争いをやめ、今更取り繕うように笑顔を浮かべた。

「わ、わぁー! 二人とも大丈夫? 僕ら気づいたらここにいてさー!」

「そうそう! いやー、合流できてよかった!」

 無理して取り繕わなくていいんだぞ。

「こっちに出口があるですがゴーストポケモンに鍵しめられちゃったですよ……」

「まあそれくらいならポケモンに頼んで扉ごとふっ飛ばせば大丈夫だと思うけど」

 俺とシアンがきた通路を確認した二人は「どっちも外れだったか……」と呟いて肩をまわす。

「あーじゃあさっさと出よう。僕なんか無駄に疲れた」

「俺もなんかやけにだるい……」

 エミはともかくイオトはやけに顔色が悪い。

 すると、エンペルトとマリルリさんがほぼ同時にその広場の灯りであるろうそくを消してしまい、灯りが俺の持つランプだけとなり一気に薄暗くなる。

「マリルリさん何――」

 イオトの背後にぼうっと青い炎が浮かび上がったかと思うとマリルリさんがイオトを蹴っ飛ばしてアクアジェットで炎を消そうとする。

 ゆらゆらと揺れながらその一室を満たすように青い炎が現れ、ようやく正体がわかったときには部屋の真ん中に鎮座するシャンデリアに明かりが灯った。

 

 シャンデラと大量のヒトモシ。今にも命を奪おうと爛々と燃える炎はこちらを襲おうと飛んでくる。

「マリルリさ――」

 すべて倒そうとするイオトだったが急激に下がった室温と違和感に気づいて大量のゴーストタイプの山を見る。

 

 そこには人がいた。

 

 顔こそ見えないもののぼんやりと、俺たちを引きずり込もうとする怨念。痩せこけた指が俺たちを指差して呪詛を紡ぐ。

 

 

 

 

 

『さ びし い    よ』

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああ!?」

「ぎゃあああああああああああ!!」

「うえええええええええええええ!?」

「出たあああああああああああ!!」

 

 俺、シアン、エミ、イオトの絶叫四重奏。イオトとエミすら目の当たりにしてしまったからか珍しく慌てている。

 幽霊(仮)のひしゃがれた声に呼応するようにヒトモシとシャンデラたちが一斉に襲い掛かってくる。

 マリルリさんとエンペルト二匹が俺らを押し込むように出口につながる通路に押し込めると俺たちとポケモンはマリルリさんたちを殿に全力で走った。

「マジで出るとか聞いてないんだけど!」

 なぜかキレるエミと後ろを振り返ってぎょっとしたイオトが叫ぶ。

「つうかこれ幽霊追ってきてるのか!?」

 その発言に俺もエミも振り返るとなぜか走ってないのに一定の距離で追ってくる幽霊。シアンはもう叫ぶだけの何かになっている。

「もういやですううううあああああああ!!」

 あと少しで出口だがマリルリさんとエンペルトはヒトモシ軍団の相手で手一杯で破壊できそうにもない。

「早く! 早く誰か扉壊してですよぉ!」

「ガリア! 頼んだ!」

 イオトのガブリアスが扉を破壊しようと懇親のパワーで攻撃するがなぜか傷一つつかない事態にイオトも真っ青になる。

「はぁ!? 嘘だろ! ガリアもう一回!」

「にゃあああああああもうだめですううううああああ」

 扉があかない以上ここは行き止まり。シアンが俺に隠れるようになり、近づいてくる幽霊は俺とエミに迫る。伸ばされた手が俺とエミに伸びて早く扉が開けと念じていると悲しそうな声がした。

 

『あ どう し  て』

 

 幽霊は触れる前にぴたりと手を止める。

 俺かエミにかはわからないけど困惑しているようだった。

 

『あ    の こ』

 

 その瞬間、幽霊の姿が消え、ヒトモシたちも呼応するように消えていく。

 そして、連鎖するように扉が開いて、そこには寝間着姿の女中さんがいた。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 ランプ片手に心配そうな女中さんが俺達を見ており、それを期に長い夜の馬鹿騒ぎは終わりを告げた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 朝食の最中、全員死んだ目で並んでいる食事を口に詰め込む。眠気とか疲れとか生気を吸われて軽い鎮静状態だとかまあ色々だが女中さんはそれを見て申し訳なさそうな顔をする。

「起こしていただければ私どもでどうにかしましたのに……」

「いえ……泊めてもらったのに悪いですし……」

 変な気を使ったのがいけなかったのかものすごくだるい。一生分の恐怖体験を味わった。

 主人も申し訳なさそうな顔でため息をついた。

「普段はあまり暴れないのですが珍しい客人に恐らく浮かれてしまったのでしょう……すべて野生のポケモンたちなのですよ。普段はもう使っていない地下に住んでいるのですが……」

 普段はたまに顔を出す程度でここまで悪さはしないらしい。元々悪意のあるポケモンたちは主人と女中さんが追い払ったりしているのでまさか俺たちを襲うとは思っていなかったようだ。

「いたずら好きで特に悪さをするポケモンと人懐っこいポケモンがいましてね。その子らは後者です」

 さも当然のように一緒に朝食をとってるミミッキュとムウマ。女中さんはそれを見て苦笑する。

「随分と気に入られていらっしゃいますね」

「しっしっですよ!」

 シアンがムウマを追い払うようなジェスチャーをするも通じていないのかそれとも気にしていないのかムウマは楽しそうにシアンのまわりを浮遊する。

「お詫びに菓子の土産を用意させましたのでどうぞお持ち帰りください。今日は天気もよいのでレンガノシティにすぐつくと思いますよ」

「たびたびありがとうございます……」

 朝食の後、一刻も早く出たいシアンの要望ですぐの出立になり、女中さんから菓子の入った袋を受け取って見送られながら屋敷をあとにした。

「ひどい一日だったです……」

「まあ無事だったからまだマシだよね」

 エミがもらった菓子を早速口にしながら呑気なことをいい、イオトは一番生気を持っていかれたのかまだちょっと顔色が悪く、気だるげに言う。

「結局最後のあれなんだったんだろうな……」

 消えた幽霊(仮)の話を蒸し返したくないのか全員静まり返り、話を変えたくて俺は話題を振った。

「ていうかイオトとエミってあんな仲悪かったのか?」

 地下で手持ちを放置して喧嘩するのを見て何事かと思ったくらいだ。普段はそんな様子を見せないので意外というか。

「いやー、でもまあ、ちょっと本音で語り合ったから前よりはマシかな?」

「そうだなー。前よりは信用できるわ」

 よくわからない。きっと二人にしかわからない何かなんだろう。仲良くなったようだしそれは何よりだ。

 

「ところで……いつまでついてくるです!?」

 

 後ろにムウマとミミッキュがさも当然のようについてきており、俺は捕まえようとミミッキュにボールを投げるのになぜか捕まってくれない。本当に謎だ。

「シアンはムウマ捕まえないのか?」

「ゴーストタイプは嫌ですよぉ!」

「でも懐かれてるし……」

 懐かれているというか半分は食料みたいに思われてそうだけど。

 ムウマは楽しそうにシアンの頭上をくるくる浮遊している。シアンは心底嫌そうな顔をしているが気にされていない。

 そんなこんなをしているとレンガノシティが見えてきて、もう少しで新しい町の風景だと心を躍らせる。

 ミミッキュの真意はわからないけど女中さんにもらったお菓子を少し与えると喜んで相変わらず俺についてくる。

 かわいい。欲しい。

 そんな俺の気持ちを手玉に取るようにボールには入ってくれないミミッキュだった。

 

 

 

 レンガノシティはレンガ造りの古めかしい町並みが特徴的で、よく言えば静か。悪く言えばちょっと暗い雰囲気だ。

 早速ポケモンセンターへと向かい、今日の泊まる部屋をとってから手持ちを回復させにいった。

「はい、お預かりしますね。そちらのムウマちゃんとミミッキュちゃんはよろしいですか?」

「あ、こいつ野生なんですけどついてきちゃったので……」

「そうですか。それにしても昨日すごい雨だったのに……大丈夫でした?」

 こんな朝早くに旅トレーナーが来るということは野宿したと思われているのだろう。あの雨はたしかにひどかった。あれで野宿はさすがにハードルが高い。

「いえ、森にある屋敷に泊めてもらったので大丈夫です」

 俺の発言にジョーイさんがぴたりと笑顔を凍らせる。

「屋敷……ですか?」

「ああ、あの女中さんと男の人が二人の――」

 

 

 

 

「あそこの屋敷はもう随分前に住人が亡くなって今は無人のはずですが……」

 

 

 

 

 ジョーイさんの発言にシアンは卒倒し、ついてきたムウマは楽しそうにシアンからエネルギーを摂取していた。

 

 

 

 

 

 




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