新しい人生は新米ポケモントレーナー   作:とぅりりりり

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突撃!真っ黒ワールド!~胃痛はトモダチ~

 

 

 やや緊張感が漂う中、応接室らしい少しゆとりのある部屋で俺は正座しながらうつむく。

 イオトとエミのせいで俺一人完全アウェイなんだけどどうしろっていうんだこれ。

「さて、改めましてシアンの父、ハクロです。この度は娘が世話になったね」

「母のシモエです」

 両親が俺に頭を下げるので俺も釣られて頭を下げる。実際具体的になにかしたわけではないのだがそこらへん否定しても仕方ないし。

「後ほどお礼をお渡ししたいと考えております。我が家の一人娘の恩人だ」

 かしこまった空気に耐えられそうにない。いえ、そんなとボソボソと声が漏れるだけで具体的になにか話せる勇気はなかった。

「さて、あとお二人いると聞いていたのだが……戻られるまでにユーリ君との話を……」

 父のハクロさんがチラリと横に控えていたユーリに目を向ける。しかしユーリさんは渋い表情を浮かべながら外していた帽子を胸に当て頭を下げる。

「お二人とも、お言葉ですが俺は戸籍上もうちゃんと女ですし婚約は……ちょっと……特に孫となると俺は絶対に無理ですし」

「あら、ユーリ君そういえば女の子だったかしら」

「あれ、君そういえば女の子か」

 待って、まずそこから? この家大丈夫? 思ってたより闇が深いぞこの世界。

「いや……なんとなくそんな予感はしていたんですが俺はちゃんともう女として生きているので……じいやもなぜか勝手に縁談進めてるしついにボケたのかと思ったが……」

「うーん、小さい頃の君はやんちゃ坊主、って感じで全然疑いもしなかったけどそういえばそうだったねぇ」

「あら、でも今は女同士でも子供が産める研究を――」

「二人共ユーリの性別わかったのもう何年前だと思ってるです!? とにかくユーリは嫌です! 論外ですよ!」

 ユーリさんの複雑な事情はさておきシアンもユーリさんも拒否ということで形だけの婚約関係は完全になくなり、次はシアンの方へと視線がシフトする。

「で、シアン。わかっているね?」

「わっかんねー!」

 キレ気味に怒鳴ったシアンがそっぽを向き、ご両親が頭を抱える。

「シアンあなた、16で婚約者もいないなんて周りにどう思われるかわからないの?」

「このご時世に古くせぇ婚約がどうだとか面倒です。だいたい二人共ボクが嫌だったら断ってもいいって言ったじゃねぇですか」

「まさか数十と縁談を力づくでご破算にされるとは思っていませんでしたからね」

 シアン母の圧がすごい。ていうかそんなに断ってよく未だにこの態度取れるな……。

「何が不満だというの? うちは婿入りしてもらわなければならないから相手を選ぶにも長男は――」

「ボクは運命の筋肉美男子と結ばれるんですよ! 家の都合で婚約とかまっぴらです!」

 うん、シアンがお花畑なことだけはわかった。ご両親もさぞ大変だっただろうな。いやまあユーリさんのくだりとか見てるとどっちもどっちだとは思うんだけど。

「何を言うのですか! いいですか。女は家を守り、夫を支える大事な役目があります。特に殿方は楚々とした女を好みます。今のシアンのような性格では本当に婿入してくださる殿方がいませんよ! 気づいたら嫁き遅れなんてあってはならないのです!」

「まあまあ……」

 母であるシモエさんがキッとシアンを強く叱りつけ、横でハクロさんがそれを嗜める。

「シアン、そこまで言うのなら具体的に相手はいるのかい? いつか、なんて駄目だよ。できればいい家の人なら私達も安心なんだが、もう選んではいられないからね……」

「ちょっとあなた!」

 本当にもう相手というか後がないのがハクロさんの遠い目から察せられる。いやでもまあ、相手が皆無ということはないと思うんだよな。めちゃくちゃ金も歴史もある家だし。いないというのは要するに「シアンが幸せになれる相手」ということなんだと思う。選ばなければそれこそ二回り年上とかもありそうだし。

 でもシアンにそんな具体的な相手なんていないだろうし――

 

「い、いるですよ! まだお付き合いはしてねぇですが!」

 

 シアンの発言にその場の時が止まったかのように凍りつく。えっ、マジで?

 まず真っ先に反応したのは執事の男だった。

「お嬢様!? どこのどいつですか!? お嬢様に付け入ろうとする不届きな輩がいるのですか!? 許せねぇ、ぶっ殺してや――」

「はい黙ろうねー。あ、奥様、こちらは気にせず」

 メイドのナツエさんが執事の男を羽交い締めにして端へと移動させる。若いとはいえ成人男性をなんであんな軽々と移動させてるんだの人……。見た目からして派手な印象があったがもしかしたらかなりの武闘派では?

「……なるほど。いい人がいる、と。ですがその人と好い仲になるとも限らないでしょう」

「そんなの試してみねぇとわからねぇです! それに、旅をしてるときがボクは一番楽しかったです! まだこんな家でままごとするのは嫌ですよ!」

 シアン、気持ちはわかるんだけど、お母さんの顔の引きつり方が尋常じゃない。他人事のはずなのに俺の胃がキリキリしてきた……。

「……では、アキコたちをつけて花嫁修行も兼ねた旅なら許可します」

「きぃー! なんもわかってねぇですね! 使用人がいる旅とか絶対嫌です! なんならヒロ君たちがいるならそれで十分安全ですよ!」

 やめて! 俺をこれ以上巻き込まないで! イオトとエミはいくらでも巻き込んでいいけど俺だけは助けて!

「だいたい、こんなこと御本人の前で言いたくはないですが世間体というものを少しは気にしなさい! 年頃の男女が寝食を共にするなどふしだらだと噂を立てられても仕方のないことですよ!」

 シアン母の言い分、実に真っ当なものなので俺は何も言えねぇ。というか、確かに俺らが一切その気なくてもはたから見たら実質シアンの逆ハーみたいなものだしな。

「もうお二方はどちらに行かれたかは知りませんが、素性も知れぬ殿方と軽率に旅をするなどと……」

「あの二人はホモなんで大丈夫ですよ」

 待て待て、何お前さも当たり前のように嘘ついてんの? しかも当人たちいないところで濡れ衣着せるのやめてやれよ!

「えっ、あっ、え……?」

 なぜかユーリさんが困惑しながら首を傾げ「いや、あり得るのか……?」などとブツブツ言い始める。この人急にどうしたんだ。

「お嬢様! もう少しその話詳しく! あとで詳しくお願いします!」

 アキコさんが身を乗り出さんばかりにシアンに懇願し、ハルナさんに抑えられて自重している。この場にいたくないけど、いなくなったら俺まで変な属性つけられそう。逃げちゃ駄目だ。

 実際問題、俺たちが信用を得るのは相当難しいと思う。なんてったって男だし。まあ俺はリジアにしか興味ないんだけどそんなこと他人からすれば知ったことではないし。というかイオトに関しては素行がアレすぎてそこを指摘されたら詰む。

「はぁ……まったく……できるだけシアンの意思を尊重したかったのだけれど、もう勝手に相手を決めてしまったほうが早いような気がするわ」

「もういっそケニスと結婚でもしたらどう?」

 ため息を吐くシモエさんにハクロさんが気の抜けた発言をしてメイドたちから一斉に「えー……」と不満そうな声があがった。

「えっ、俺ですか!?」

 一方、ケニスという先程からうるさくで面倒そうな執事がどこか嬉しそうに、困惑混じりの表情でシモエさんたちを見る。

「ぜってぇ嫌です! ママもパパもボクの幸せを考慮してくれねぇですか!?」

「あなたがアレも嫌コレも嫌とワガママしか言わない癖して対案を一切出さないからこっちも困っているのです! それだけワガママ垂れるならもっと具体的な案を述べたらどうですか」

「わかったですよ! バトル! バトルで決着をつけるです! 古今東西、ありとあらゆる物事の決着の付け方です!」

 シアン、言っちゃあれだけどお前結構弱いぞ? 俺の方が今はまだ勝てるぞ?

「……わかりました。では、シアン、そしてヒロさんたちの今の実力を見せていただきましょう。明日、そちらの4人とこちら――そうですね、メイドたちに相手させます。ファイトルールで彼女たちを全員圧倒できたならシアンが彼らと旅をすることを許可します。旅の支援もしましょう」

 俺何も喋ってないのに普通に頭数に入れられてるんだけどどういうことなの……。だがここで口を挟む隙間などなく、シモエさんが凛とシアンに敗北した際のことを言い含める。

「ただし、負けたなら潔くこちらが決めた縁談に従いなさい。いいですね?」

「けっ、望むところですよ! ヒロ君はともかくイオ君とえっちゃんなら超つえーですから余裕ですよ!」

 こいつ、わざと負けてやろうか? キレるぞ。

 すると、話は聞いているが口を挟まなかったユーリさんが「ちょっ」と焦ったように声を漏らす。

「きょ、今日じゃ駄目でしょうか!? 俺明日は仕事で伺えな――」

「あら、ユーリ君は付き添わなくても大丈夫よ。むしろ巻き込んでごめんなさいね。心配せずとも明日きっちり白黒つけますから」

「あ、いやそうじゃなくて……その……えっと……」

  ユーリさんは何か言いたそうだが言葉に詰まり「間が悪い……!」と自分を叱りつけるように呟いた。どうしたんだろうかこの人。

「せ、せめて一週間後とかどうでしょうか!? その日なら俺も空いて……じゃなくて……そう、ほら、少しはシアンも特訓とかしたいでしょうし」

「レグルス団とやらが特訓している間待ってくれますか? すぐに対応できるようでなければそれこそ意味がないことです。さすがに今日はお客様への礼儀もありますのでやめておきますが明日は絶対です」

 ユーリさんは「うっ……です、よね……」苦々しく呟いて諦めたように座り直す。この人のことはまだよくわからないけどこう、やっぱり悪い人ではないんだろうな。

「それではヒロさん。メイドにお部屋に案内させますので明日また、よろしくおねがいしますね。私達はこれから会社に戻らなければならないので」

「使用人に伝えておくから困ったことがあったらなんでも言うんだよ」

 頭を下げるシモエさんと呑気に手を振るハクロさん。待って待って、俺一度も頷いてない。

「あの……俺バトルするって――」

「当然、お客人として扱わせていただきますが今後の旅に関してはうちの使用人を圧倒するほどの実力を示していただかなければこちらも娘を預けることはできません故。ご了承ください」

「いや、俺もう帰っていいですか?」

 おうちにかえりたい。それかポケセンにいきたい。

「そんな、いけません。お世話になったお客様を放り出すなど我が家の面子にも関わります。本日はこのままお泊りください」

「かえらせて」

 イオトとエミ早く戻ってきて。俺この場にいるの本当に辛い。

 時間がないのか足早に両親二人は部屋から出ていき、残された俺はアキコさんに「それではお部屋にご案内します」と導かれる。

「おい、ちょっとこいつと話がある。俺もついていくぞ」

「かしこまりました」

 ユーリさんが俺ではなくアキコさんにそう言い、シアンがむすっと頬を膨らませた。

「ヒロ君に余計なこと言うんじゃねぇですよ! ていうかもう帰れです!」

「やかましい。まあいい、さっさと行くぞ」

「えぇ……」

 完全に流れに流されるままの俺。イオトとエミはまだ戻らない。どうして俺こんなことになってるんだ? 本当にしんどい。

 

 

 

――――――――

 

 

 客室と思われる一室。メイドさんが縁側に続く襖を開くと庭が一望できるようでなかなか壮観だ。

「お連れのお二人はどうされますか? あ、やはりお二人は別にお部屋を――」

「お、お任せします……」

 ちょっと赤面しつつ妙な誤解を抱かれているイオトとエミを擁護することなく、俺は一人部屋を獲得した。あいつらの世間体とか知らないよ。俺を一人にした罰だ。

「ふふ……その……できればヒロ様から見たお二人の話もよろしければあとで――」

「おい、その悪趣味な妄想を他人に押し付けるな。シアンにでも聞いておけ」

 ユーリさんが助け舟を出してくれたのでアキコさんが「失礼しました。少々興奮しすぎて」と頭を下げる。

「では、ご用向の際にはそちらの鈴を鳴らしてください。メイドの誰かが伺いますので」

 机に置かれたリーシャンモチーフの鈴を示し、アキコさんは退室する。そして、ユーリさんと残されたわけだがすごく気まずい。

「……お前に言っておきたいことはいくつかある。まずは、そうだな。明日の勝負、もし勝つつもりならしっかりとシアンと旅をする覚悟を決めておけ。ないなら負けろ。それだけだ」

 要するに覚悟もないのに勝つなってことだよな? すごくわかりにくいけど中途半端はよくないって言ってるんだろう。

「わかってます。まあ、面倒なところも……いや面倒なところしかないけどなんだかんだで旅してて楽しいですから、少しくらいは協力してやらないと」

「はあ……俺も甘いな……」

 呆れたように、どこか困ったようなため息をついてユーリさんは頭を掻いた。

「そうだな。次は……例の件についてだが、シアンと今後旅をするようなら定期的にお前の動向を見させてもらう。わかったな」

「やましいことはないんで問題ないでーす」

 例の件、つまり転生者云々のことだろう。

 本当に何も変なことはしてない。ので、俺がとやかく言われることはないはずだ。記憶はあるしちょっと他人より有利だけど基本的に一般人ですよ、と。

 

「ふん。ならいい。そしてもう一つ――」

 

 突如、ユーリさんが腰につけてある長いロープ、いやよく見るとそれは平べったい紐を鞭のようにして振るい、何かと思ってぎょっとしていると縁側の方にまるで生きているかのような動きで伸びていき、物陰から執事のケニスが首に巻き付いた鞭のせいで引っ張り出された。

 

 

「これ、ほんっっっっっっとうに面倒だからできるだけ関わらないほうがいいぞ」

 

 

 あまりにも面倒そうな顔に、これはガチのやつだと一瞬で察せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

「ナツエと!」

「アキコの」

 

『お嬢様とケニス昔話~』

 

 

 なんでか盗み聞きしていたケニスを引き取ってもらおうとメイドさんを呼び、アキコさんとナツエさんが引きずって回収してくれたのだがその時俺がぽつりと漏らした一言がなぜかこの状況を引き起こした。

『なんであれ、雇ってるんですか?』

『聞きたいそこのお客サマ!? なら私達がお答えしましょう!』

『えっ』

『ご安心ください。わかりやすいよう紙芝居にしてあります』

『なんで紙芝居があるの?』

 アキエさんがさも当然のように取り出した紙芝居を二人で抱え、寸劇が始まり、今に至る。ユーリさんはどこか遠い目をしながらそれを止めることはなく、頭が痛そうに額を抑えていた。

 

 

「まずはケニスの経歴から! あいつは元々とある会社のお坊ちゃんでした!」

「まあ当時と今はさほど変わらず、ワガママで尊大、それでいてかわいげもないクソガキですね」

 なんでケニスこんなにボロクソに言われて辞めないの? メンタル鋼タイプかよ。

「まあ、この界隈にはよくあることなんですが、小さい頃から婚約者を決めてることが多く、ケニスの家は会社の経営が少し怪しいのもあってとある大企業の娘さんと婚約させようと考えたわけですよ!」

「まあ半分は融資目的、もう半分はパイプ作りです。生々しいですね」

「その楽しそうな声で現実的なこと話すのやめません?」

 紙芝居の絵はそれこそちょっとデフォルメしてあるかわいい系の絵なのに生々しい単語しか出てこねぇ。

「だいたい今から15年くらい前のこと。ケニスとそのご令嬢がお互い顔合わせすることになり、ご令嬢の方はどうやらケニスの写真を見て結構好意的だったそうです」

「まあ見てくれだけは今もそこまでひどくないしねー! 15年前ってことはケニスが9歳くらいのときだし、まあ悪くはなかったんでしょ」

 あいつ24なんだ……。

「ところがどっこい! ケニスはなんと初対面のご令嬢を見て『俺より背の高いデブなんかと付き合えるか!』と言い放ち、その後も暴言の嵐。コンプレックスを指摘されご令嬢はひどく傷つき、婚約したくないという流れへ!」

「ここからがケニスの転落人生の始まりと言われています」

 今の所わかったのは俺この界隈に絶対関わりたくないってことだけである。

「まあ本来なら子供のしたことで済むんですけどご令嬢のお兄さんが激怒しまして『子供だから何言ってもいいのなら僕も好き勝手言いますけどあんな失礼なやつと縁続きになりたくないです。はっきり言って不愉快です』と笑顔で双方の両親に言い放ち、将来的には跡継ぎ確定の兄君に強く出れなかったケニスのご両親も婚約をなかったことにすることを渋々ながら了承したとか」

「まあ仮に婚約押し進めてもお兄様が絶対に破棄の流れに持っていく空気だったらしいので仕方のないことらしいですけど」

「そのお兄様とやらにだけは今後絶対に会いたくないし関わりたくない」

 心からの本音だった。一歩間違えたら地獄に落とされそう。

「まあその結果融資の流れもおじゃんになり、噂が広がってケニスの両親の会社は業績悪化の一途を辿り、遂には倒産。元々性格がよくないことも災いしてか同世代の子どもたちの間でも親しい間柄の人間がいないケニスは孤立の道へ!」

「ざまあみろやんな」

 アキコさんがついにド直球で私情を交えてきた。

 ユーリさんが渋い顔をしながら紙芝居のモブ子供を指差し、アキコさんを見る。

「なあ、それ俺だよな……」

「はい。ユーリさん、当時ケニスをよくいびっていたとお伺いしていますが」

「まあそもそもその令嬢とやらが俺の知り合いだしな……。ついでにリコリスもそこにいたぞ」

 この界隈、狭すぎない?

「まああいつはケニスに散々ブス呼ばわりされていたから相当嫌っていたから……。没落していく様を見て笑いながら『ざっまあああ!!』と煽っていたから俺よりタチが悪いぞ」

 リコリスさん、顔にコンプレックスあったみたいだしそりゃ地雷だったんだろうな……。嫌でも普通に怖いよ。この界隈絶対俺は関わりたくないよ。

 ちょっと話がずれたからかナツエさんがごほんと咳をして手を叩く。

「えーと、それでお嬢様との出会いは今から11年前!」

「ちょうどその時、ケニスのご両親がケニスを残して自殺され、借金こそどうにかしたもののケニスの人生はお先真っ暗闇といった頃です」

「シアンとの出会いよりもそっちのドス黒さにしか頭に入ってこないんですけど!?」

 ナチュラルに真っ黒すぎる情報を軽く流されて頭がパンクしそうになる。普通に闇が深いよ!

「遺書には古くからの友人であった旦那様と奥様にケニスを託したいとの旨があり、お優しい旦那様と奥様はケニスが最低限自立できるだけの支援をしようと考えていたのですが――」

「その頃、5歳ほどのお嬢様がケニスを見て『しあんのしつじこれがいい!』と駄々をこねちゃったんですよ。ちなみにそれがお嬢様の後悔の始まりです」

 シアン、まさかの自分で執事を所望していた。

「まあ散々奥様に駄目と言われたんですがケニスにひっついて日が暮れるまで駄々をこねたお嬢様に絆されたケニスは支援の代わりに使用人としてお嬢様にお仕えすることを決め、旦那様と奥様もそれを許可したのですが……」

「ケニスあの野郎! 二十歳すぎてもちっとも自立する気配がないしお嬢様過激派狂信者みたいになったせいで大迷惑なんですけどご友人の忘れ形見ということもあって旦那様方も辞めろとは言えませんしお嬢様も自分でほしいと言ったんだから最後まで責任をとれと奥様に言われているせいでクビにもできない有様なんですよねー!」

 紙芝居が終わり、なぜか聞いていただけなのにどっと疲れた気がしてふーっと息を吐く。

 

 うん、この世界怖い。

 

 はっきりとわかったのはケニスってやつは関わるだけでろくでもない予感しかしないし、この界隈に下手に関わると真っ黒すぎる現実を直視してしまうということだけであった。

 俺もうシアン無視して一人で旅しちゃ駄目? 駄目かなぁ……。

 イオトとエミも戻ってくる気配がないし、あいつら今日中に戻らなかったら絶対に一人で旅に戻ることにしてやる。絶対にだ。

 

 

 

 

 




イオト(今すぐに戻らないと取り返しがつかないことになりそうな気がする)
エミ(でもいま戻ると……)
イオト・エミ(あいつ(ユーリ)と鉢合わせることになる――!)

ちなみにユーリが今日か1週間後じゃだめかとなっていたのはこの場にいないとある人物に直接会いたかったからです
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