ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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夜はまだまだこれから。

中尉とふたりっきりです。

彼を応援してくださいね。


第5話 ある駆逐艦の覚悟

荒潮は、あることを覚悟して執務室の前に立っていた。

静かに深呼吸をするとドアをノックした。

 

中には提督がいるのは間違いなかった。

だが返事はなかった。

短く訝しんだ後もう一度ノックしようとした刹那。

 

『入れ』

 

執務室のドア越しに籠った声で返事があった。

 

「失礼します!」

荒潮は姿勢を正して返すとドアノブを回す。

 

ドアを開け執務室に入ってドアを閉めて振り返った。

荒潮は目の前の光景を目の当たりしたことを少なからず後悔した。

 

その後悔は大きい。

美鳳様がブラックな提督のひざに座っていた。

 

かなり酔っているのはすぐにわかった。

しかし、提督に絡みつく姿は他人には見せられない類のものだった。

 

 = = = = =

 

「中尉、荒潮が見ているぞ。

 後で続きをしてやるから早く離れるんだ、クヒヒ」

「ブーーー」

中尉は不満たらたらだったが膝から降りて俺の右側に回った。

 

「荒潮、どうしたこんな時間に。

 ・・・・クヒヒ、お前の用事はどうでもいいか。

 こっちにこい。

 かわいがってやる」

艦娘の表情には緊張と覚悟が見てとれた。

俺に犯されに来たのかもしれない。

反抗心を引き上げるにはちょうどいい機会だ。

 

 = = = = =

 

『はい』

荒潮は蚊の鳴くような声で返事をした。

目の前に座る提督に歩み寄った。

 

彼女の中には後悔があった。

このゲスも結局は他の提督たちと変わらなかった。

武蔵の言ったことが先入観になって帰りを待つ姿に感動したのは間違いだった。

 

いきなり肉体を求めてきた。

今までの行動は他の艦娘たちが居たから演技だったのだ。

 

気持ちの悪い下卑た笑みを浮かべる提督を憎く思えてきた。

わざわざ犯される姿を美鳳様に見られてしまう屈辱。

こうなったら恨まれるのを覚悟で美鳳様のために提督(ゲス)を始末してやろう。

 

手の届くところまで近づいた。

艤装を展開しようとしたその刹那。

中尉が抱き着きついでに提督(カレ)の顔まで覆っていた眼帯をずらした。

 

 = = = = =

 

いい感じに反抗心を燃やしているようだ。

殺気も混じり始めたからこのまま撃たれるかもしれない。

 

突然中尉が抱き着いてきた。

特に滑り止めがないので眼帯がずれてしまった。

 

「貴官、離れろ。

 俺はこれからコイツをかわいがるんだからな、キヒヒ」

今の距離だと荒潮が外すことはないだろう。

しかし、骨の破片が中尉に当たらないとも限らない。

 

「イーヤ。

 ワタシも混ざるぅ」

中尉は頑なに離れようとはしなかった。

 

「仕方ねえな。

 駆逐艦、自室に戻れ」

俺は荒潮に命令した。

しかし、荒潮は執務室から出てい行かないどころか何も言わずに膝に座ってきた。

 

 = = = = =

 

「司令官、荒潮をかわいがって」

荒潮は泣きながら懇願した。

 

提督の金属製眼窩カバーを見たら自分を罪を思い出していた。

自分はこの件で本人から恨みごとを言われていない。

 

荒潮は気づいてしまった。

提督はこんな自分を許していたんだと。

身体が芯が熱くなってあふれる涙を止められなかった。

 

この方には一度抱いていただこう。

この気持ちの昂りは一時的なものかもしれない。

今は身をゆだねることに抵抗がなかった。

 

このまま美鳳様と3人で早く甘美なひとときを過ごしたくなっていた。

 

荒潮が提督がブラウスの胸元のボタンを外すのを静かに待っていた。

ドキドキしてきた。

 

胸元に彼の手が滑りこんできた。

同時にスカートの中に手が潜り込んでくる。

恥ずかしいような照れくさいような気分で不快ではなかった。

 

提督の手は高尾達と違ってガッチリしている。

そして潜り込んできた鎮守府のどの提督よりも頼もしく感じた。

 

「どうだ、悔しくなってきただろ、クヒヒ」

ぎこちない愛撫と無理な下卑た笑みから躊躇していると判った。

 

「提督、荒潮はもう・・」

荒潮は自分を抑えきれなくなってきた。

自分から提督に奉仕したら淫らな艦娘だと軽蔑されるかもしれない。

荒潮は提督の前戯を期待して思いとどまった。

 

ふと提督の手が止まった。

「そうか、そうか。

 このまま撃たれるのも困るからな。

 今日はこのくらいにしておいてやる。

 自室に戻っていいぞ」

 

荒潮は信じられなかった。

どこかに落ち度があったのか思い返してみた。

特に思いつかない。

 

美鳳様が自分を助けるために合図をした結果なのか?

彼女は熱心に提督の耳を噛んだり、首筋を嗅いだりしていた。

関係ないのが見てとれた。

 

「俺の嫌がらせは苦痛だったろ、キヒヒ」

提督が満足げに薄ら笑いを浮かべていた。

 

次の瞬間、提督の顔を美鳳様の頭が覆った。

 

「モガモガモガモガ~~~!!」

提督は美鳳様の腕を掴んだ。

 

「プッハ。

 貴官、娘からそんなことをするんじゃない!」

まだ、あきらめていない美鳳様を制止する提督。

 

「ぷッ、荒潮、自室に戻ります。

 失礼します」

荒潮はまだ攻防を続けるふたりに敬礼して執務室を出た。

 

自室に戻る荒潮の表情は何かを手に入れた喜びに満ちていた。

 

 = = = = =

 

「ちゅーさー、チューぅ」

「こらこら、やめろ。

 あんまり揶揄うなら、泣かすぞ」

「やったー、いい声で鳴くから、前戯はやさしくしてね」




中尉が最接近。

どうなる?

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