ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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いよいよ中尉の大攻勢が開始されるかもしれません。

提督は持ち前のブラックさで押し戻せるのでしょうか?

彼を応援してくださいね。


第7話 艦娘と荒潮と深海棲艦と

「まずまずの天候だな」

俺は清々しい気持ちで朝を迎えていた。

 

畳床に敷いた布団で中尉がスヤスヤと寝息を立てていた。

時々寝返りを打つと胸元が(はだ)ける。

若手将校の目を釘付けにすることだろう。

 

≪コンコン≫

「入れ」

ノックに許可を与えると龍田(輪っか)が入ってきた。

 

「おう、当番はお前か。

 今日一日俺の嘗め回すような視線に耐えるんだな、クヒヒ」

「やぁんっ♪後ろから眺めてもいいですけど。

 おさわりは禁止されています~。

 その手、落ちても知らないですよ?」

「俺の手と引き換えに解体されたいなら、かまわねえぜ、キヒヒ」

病(み)巡(洋艦)とは、眼鏡と違ったテンポの会話になる。

 

「輪っか、飯は食ったのか?」

「まだですよ~、んふふふ~」

「そうか、隣の私室に中尉がいるから食堂へ同行しろ」

「いいですよ~、失礼しま~す」

俺が私室につながったドアを指し示すと病巡(龍田)が入っていく。

 

「提督、天龍ちゃんに言っちゃいますよ~。

 あの子も拗ねちゃうわね~」

私室のドア越しに俺を睨む龍田。

 

「?・・輪っか、何言ってんだ?」

 

 = = = = =

 

≪≪ドドドドドドドドド≫≫

≪ガチャッン!!≫

 

≪≪提督!!(ゲス野郎)どういうことか説明して(ドウイウコトカセツメイシテ)!≫≫

「ちょ、お前ら、狭いわーー!」

執務室は突入してきた艦娘・深海棲艦連合艦隊で埋め尽くされた。

入りきれない連中は廊下に溢れている。

「何のことか知らんが、いいだろう講堂で話を聞こう」

 

ゾロゾロと執務室から体育館兼講堂に向かう提督と艦娘たち。

 

「司令官、おはようございます」

「おう、荒潮。

 どうした?」

「うふふふっ!

 いい天気ですね、任務頑張りますよー!

 うふふふっ♪」

俺に並んで歩く荒潮はどういうわけか張り切っていた。

 

講堂では、俺は壁を背にして囲まれた。

 

「今度ばかりは言い逃れはできませんよ」

「言い訳は聞いてあげる」

長門と陸奥が鎮守府の代表として歩み出た。

前回と違って毅然とした口調だった。

なぜか耳まで真っ赤なのはなぜだろうか?

 

「日ごろの行いの結果だろ。

 逃げも隠れもしねえさ。

 何が聞きたいんだ?」

「昨夜、不埒なことをしたことに対してどう責任を取るか教えてもらおうか」

「提督、鎮守府で火遊びって良くないと思わない?」

「なんだぁ、火遊びって。

 不埒っていうか?

 煙草をふかしたくらいで」

戦艦たちの言うことが見えてこなかった。

俺は鎮守府(ここ)に着任以来リトルシガーを嗜んでいることは艦娘たちは知っている。

煙たがるヤツはいるものの鎮守府全体が文句を言ってくるような不評ではなかった。

 

「とぼけるのは止めてもらおうか」

「あら、あらあら。

 素直じゃないんですね」

戦艦たちは聞く耳を持たなかった。

 

彼女らの瞳にうすら寒い殺気が灯った瞬間だった。

「やらせません!

 うふふふふっ!

 司令官は荒潮がお護りします!」

駆逐艦が割って入った。

その両腕は左右に広げられ戦艦の前で盾となって立ちはだかった。

 

≪≪荒潮!≫≫

何隻かがその姿に驚愕の声を上げた。

「私達も荒潮と一緒に提督をお護りするわよ!!」

「わたしたちが護ってあげるわ♪」

残りの独立愚連艦隊艦が荒潮に加勢した。

 

「ちょ・・・・いいだろう、ビック7の力、侮るなよ」

「いいわ、やってあげる。

 仕方ないわね」

戦艦たちは引き下がらなかった。

鎮守府が分裂の危機を迎えていた。

 

「私はこちら側だな」

武蔵が独立愚連艦隊に加勢する。

 

「コホン、てーとく私も頑張りますね」

さりげなく大淀も提督側に回った。

 

「あ、大淀、抜け駆けしやがって。

 龍田、オレたちも加勢するぜ。

 倒すのはオレだ」

天龍と龍田も釣られてきた。

 

≪≪ワレワレヲ ワスレテモラッテハ コマル≫≫

深海棲艦が艦隊ごと提督側に回ってしまった。

 

鎮守府壊滅の危機、その時。

「みんなー、おはよう」

入口から中尉が入ってきた。

講堂全体の視線が集中する。

 

「どしたの?」

何事かと中尉は首をかしげる。

 

 = = = = =

 

「はいはい、中佐は出て行って」

「なんだよ、貴官」

「いいから」

俺は講堂から追い出されてしまった。

「・・・・執務室に戻るか」

 

 = = = = =

 

「何もなかったから、解散!」

「中尉殿、いささか胸元が大胆なようなのだが」

「そうなんだよねー、これでも何もなかったよ」

≪≪うーむ(ウーム)≫≫

講堂内に声ならぬ声で埋まった。

 

しばらくして、全艦が講堂からゾロゾロ出てきた。

それぞれは新たな決意を秘めて任務に臨むのだった。




今回は早いもの順でした。

独立愚連艦隊の存在感を示した一件だったかもしれません。

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