いよいよ年貢の納め時か。
彼を応援してくださいね。
指令所のドアが勢いよく開かれる。
「提督!どうして救援を認めていただけないのか!」
「いろいろありましたが、鎮守府の仲間なんですよ」
長門と陸奥は帰投命令が納得できなかった。
「
「夜戦じゃないけど、私たちの出番だと思うのね」
天龍と川内は救援に向かう気満々だった。
返事が返ってこなかった。
嘗め回すような纏わりつく視線もなかった。
艦娘たちは指令所の中を見回した。
あの方がいない。
「あれ?提督は?」
「おトイレ?」
2戦艦は当番秘書艦龍田以外が指令所にいないことに気がついた。
「あの方は、救援のため出撃されました」
龍田の声は弱々しく今にも泣きそうな声を辛うじて絞り出しているようだ。
「お、おい、龍田。
あの人だけで行っちまったのかよ」
生巡はその場にへたり込んだ。
夜戦バカは言葉もなく立ち尽くしていた。
「そ、そんな」
「艦娘は秋月ちゃんたちだけ?」
2戦艦はにわかに信じられなかった。
信じたくなかった。
これまで提督のデタラメな人徳で深海棲艦たちが
しかし、今攻撃を仕掛けてきているのは彼女らではない。
戦力差を考えるとほぼ間違いなく提督は死ぬ。
それを考えた艦娘たちは鎮守府で緩やかに機能停止を待つ日々よりもドス黒い絶望を感じた。
それが艦娘たちを突き動かした。
「長門、陸奥、今こそ提督に思い知らせる時だと思うが?」
武蔵が指令所に現れるととんでもない提案をした。
= = = = =
「よう、荒潮。
良いざまだな」
提督は深海棲艦の大艦隊を前に独立愚連艦隊と合流した。
そして半包囲されている。
どういうわけか深海棲艦たちは動かなかった。
「うふふふ♪
荒潮のことなんか放っておいてもよかったのに、ぐすっ」
荒潮はまた涙を堪えきれなかった。
この提督はまた裏切った。
何度目かも覚えていない。
今度ばかりは轟沈を覚悟した。
= = = = =
演習の航空部隊が爆雷撃を仕掛けてきたと思った。
ところが艦砲の挟叉、魚雷の雷撃とほぼ飽和攻撃が始まった。
荒潮は回避しきれず被雷した。
油断が招いた危機。
深海棲艦の来襲。
予想できる事象だったが、ブラックな鎮守府の誰もが予想だにしなかった。
艦娘にとって深海棲艦たちはお隣さん的な存在になっていたのだ。
圧倒的な敵を前に僚艦たちはとどまってくれた。
それを嬉しく感じた荒潮の我儘とも言えた。
絶望的な状況でも独立愚連艦隊に悔いはなかった。
最後に本当の提督に出会えたことが艦娘たちの行動を決めていた。
= = = = =
「秋月、照月、涼月、初月、お前ら降りろ」
「司令、私…私はずっと、お守りします」
提督の命令に涼月は何かを感じとった。
「涼月ぃ。
口答えかぁ?」
「はい、そう取っていただいてもかまいません。
私、提督のためなら・・・・」
「涼月ぃ、お前らは鎮守府に帰れ。
邪魔なんだよ。
少し黙ってろ」
「高雄、お前ら独立愚連艦隊は解任だ。
さっさと帰れ。
荒潮を忘れんなよ」
「提督、嫌です。
最期までお供します」
提督の命令に高雄が食い下がった。
「俺はこれから美人たちと組んず解れずを始めるんだよ。
お前ら、ジャマ、キキキ」
提督は艦娘たちの深海棲艦艦隊の間に高速艇を滑り込ませる。
「おー、美人さんたち。
俺はこの辺を仕切ってる提督だ。
艦娘の艦隊並みに価値のある人間だ」
「ホウ ニンゲンハ オモシロイコトヲ イウ」
提督の言葉に泊地水鬼が返す。
「だろう。
そこで提案だ。
この場に俺が残る。
艦娘たちは戦線の離脱をさせてくれ」
「ワレワニハ カンケイナイコトダ」
提督と泊地水鬼の交渉が始まった。
「そうかぁ、お買い得だと思うがな」
「オカイドク?」
「そう、深海棲艦といえど補給が必要なんだろ?
だったら、ここで無駄弾を使わなければ効率いいだろ?」
「ソレハ ソウダナ」
「俺なら、お前らが素手で殺せるだろ?」
「ウフフフ、イタイ、キット イタイヨ」
「まあ、それも給料の内だ」
「フフフ キイタトオリ オモシロイオトコ ダナ」
「キヒヒ、ブラックでゲスなんだよ、俺は」
判り切った状況の提督。
柄にもなく艦娘たちを離脱させようとするヘタレ。