ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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絶体絶命の日本海軍。

このまま殲滅戦に突入か。

彼を応援してくださいね。


第12話 絆と言えるかどうか

「提督、後方より新たな航空兵力です」

対空監視をしていた駆逐艦たちは機影を確認した。

「挟撃かよ、あちらさんもバカじゃないだろうしな」

提督は泊地水鬼に向き変える。

 

「どうだい?

 ここまで差がついたんだ。

 ここの艦娘が鎮守府に戻っても構わんだろ」

「ソレガ ナニノ イミガ アル」

「いやな、あの鎮守府じゃ、お前さんたちに勝てねえのは判ってんだ。

 だから、轟沈するにしても仲間と一緒にさせてやりてぇんだよ」

提督は覚悟を決めていた。

もし敵わないなら、せめて艦娘たちと散ろうと。

 

「秋月、照月、涼月、初月、貧乏くじを引かせちまったな。

 あの世で毎日俺を射撃の的にして遊んでくれや」

提督はとうとう涙が堪えられなくなった。

自分の判断で艦娘たちが轟沈する。

その船体は引き裂かれ苦しみの中で轟沈する。

あの時、むざむざ轟沈させてしまった艦娘にあの世で会えないだろうか。

自分は地獄に行くだろうが、連絡手段があればいいなと考えていた。

 

 = = = = =

 

深海棲艦艦隊が突如防空態勢に移行した。

「おいおい、どうしたんだ?」

提督は状況がつかめないでいた。

 

「フフフ ヤハリ オモシロイ オトコダナ」

泊地水鬼は楽しそうに微笑んだ。

 

 = = = = =

 

時系列は少し遡る。

 

提督が単身出撃した直後。

 

「レキュウ、ヲキュウタチヲ ミンナツレテイッテ」

「カンシャスル。

 ワレラノチンジュフニ アンソクヲ」

短い言葉を交わした後、レ級がヲ級6隻を率いて鎮守府を出港していった。

 

レ級たちを見送る深海棲艦たち。

「カンムスタチガ モドッテクルマデ ココニテダシハ サセナイ」

「イコクノチ イコクノウミ シッテイタキガスル」

飛行場姫と港湾水鬼はいつの間にかブラック鎮守府の一員だと自覚を持っていた。

 

鎮守府のすぐ隣の入り江に仮の停泊地が作られている。

鎮守府から電気、水道が引かれ、水洗トイレも標準装備で、秘密の通路を通れば、鎮守府で入渠までできた。

 

飛行場姫は間宮のハンバーグと入渠さえあれば海軍に寝返るのもありだと考えたりなかったり。

 

食事は面倒だが鎮守府の食堂を利用していた。

 

洋上パトロールには、鳳翔たちの手作りオムスビを希望する深海棲艦も少なくなかった。

 

もうグズグズのガバガバだった。

 

地上で艤装を納めた駆逐ニ級たちが鎮守府防衛のため待機している。

鎮守府の艦娘たちを待つのが当たり前になっていた。

海軍穏健派のブラックな提督は人類の裏切り者に落ちぶれていると言ってもいい状況だ。

 

 = = = = =

 

≪テイトク マダ イキテルカ≫

提督の通信機に直接語り掛けてきた。

「レ級、お前だったのか?」

提督はここに来て少しだけ心細さが和らいだ。

彼自身、艦娘を道連れに死ぬのは怖かった。

レ級が来てくれたら、せめて艦娘たちは鹵獲されても轟沈はない。

なぜだかそう思えた。

確信もなくそう思えた。

 

≪わたしたちしか戦えないから、仕方がないの≫

「お、おい。

 レ級、何言ってんだよ」

≪アナタガ、アナタノママ ダッタカラ スグニ ワカリマシタ≫

「俺は、何もできないグズなんだぞ」

≪カモ シレマセンネ。

 デモ ワタシハ タヨリニ シテ イマスヨ≫

 

「レキュウ テキタイ スルノ」

≪ワレラノ シハイカイイキニ テダシヲ スルナ≫

泊地水鬼とレ級が交渉を始めた。

 

「イッセン マジエテモ カマワナイケド」

≪イイヨ≫

一触即発になったその時だった。

 

一航戦の戦闘機が飛来した。

 

≪ブラック鎮守府の所属は全機撤退せよ。

 これより鎮守府所属が突入する、繰り返す我突入す≫

意味の判らない電文だった。

 

しかし、ヲ級から発艦した航空兵力はその場から離脱し始めた。

 

 = = = = =

 

今、洋上を深海棲艦艦隊が鎮守府に向かって航行していた。

並走するのは艦娘たち。

 

「ウワサドオリ ブラックナ テイトク ダナ」

「うるせえよ。

 なんだよ、噂って」

「ワレラノ センリョウヲ ウケイレテイル ブラックナ テイトク ダト」

クツクツと泊地水鬼が笑う。

 

「お前ら、間宮たちの飯を食ってみろ。

 お前らが鹵獲されたってわかるからよ」




なぜか、中尉警護の艦娘と同じ言葉を口にしたレ級。

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