彼を応援してくださいね。
0700
鎮守府に来客があった。
サイドカーが先導する他とは違った黒の装輪兵員輸送車が鉄門前で停車する。
群青地にナンバーの記されたプレートがナンバープレート代わりについていた。
当直の艦娘が通用門から運転席のところに用件を確認しに駆け寄った。
当直が敬礼をし、運転席の窓の下で背伸びする。
「おはよう、査察だ。
これよりこの鎮守府は情報部の監視下に置かれる」
そう言ったのは濃いゴークルの若い女性だった。
「お、おはようございます。
お役目お疲れさまです。
ち、鎮守府にようこそお越しくださいました。
あの、その、身分証明をお願いいたします!」
うさ耳リボンの駆逐艦は、狼狽えながらも。しっかり当直していた。
前に止まっているサイドカー、舟側の兵士が、振り向いて艤装を展開した。
艦娘の連装砲3基が素早くその兵士に照準を合わせていた。
「ほう、我々に砲身を向けるのか」
女性は感心しながら、身分証を当直に渡す。
「に、任務ですから。
確認しました、ありがとうございます。
お返しします」
当直は、反射的に動いてしまったことを後悔していた。
「同行の艦娘たちも入府してもいいかね?」
「はい、どうぞ。
駐車場は、軍用車の隣をお使いください」
サイドカーと兵員輸送車が敷地に入って行った。
= = = = =
「ここの島風は、一段と速いですね」
「反応も早かったわ」
兵員室から覗いていた戦艦たちが感心していた。
「彼のことだから、当然よ。
変わらないわね、全員、気は抜かないこと」
≪イエッス!マム!≫
= = = = =
「査察官が来た?」
≪はい、今駐車場にクルマを停めました≫
「・・・・わかったわ、ありがとう」
眼鏡は、内線電話を切ると出迎えるために玄関へ向かう。
眼鏡は、いつもと変わらない態度だったが、嫌な予感しかしなかった。
情報部の査察と言えば、いわば身内の私刑。
提督のような悪人だと処断されるしかない。
鎮守府はすでに深海棲艦が常駐する「最前線」になっている。
万が一、そこを目撃されてしまえば、
眼鏡は執務室に急いだ。
しまった。
執務室の前には見慣れない艦娘たちが歩いていた。
= = = = =
執務室のドアが断りもなく開かれた。
「少佐閣下、ようこそ我が鎮守府に。
小官がこの鎮守府の責任者であります、クヒヒ」
「それは知っている。
できれば先に仕事の話をしたいのだが?
よろしいかな中佐」
女性将校は乗馬用の短鞭を弄りながら提督に確認をする。
「おっと、大佐にご昇進でしたか。
これはご無礼を」
提督は、女性将校が階級章を短鞭で軽く打つのを見て気がついた。
「んふふ、そろそろ座ってもいいかな、て、い、と、く」
「これは気がつきませんでした、どうぞそちらに」
大佐の要望にソファを指し示す提督だった。
「いや、椅子は持参したのでな≪パチンッ≫」
大佐は指を鳴らすと彼女に同行してきた艦娘が数隻、動いた。
「大和、お前にするわ、長門、陸奥、お前たちは傍に、後ろは誰?」
「私、やりマース」
「いいわ、金剛、お前に任せるわ」
大佐の周りに艦娘たちは配置についた。
「やれやれ、相変わらずのご趣味だな、大佐どの」
提督はいつもは見せない表情で呆れてみせた。
「あら、貴官にだけは言われたくないわ」
「俺はブラックだからな。
お前とは違うんだよ」
ふたりの会話は砕けたものになっていた。
「陸奥、少し前に出なさい」
「はい」
陸奥が一歩前に出る。
≪ピゥシッ!≫
「ハウン」
陸奥の臀部が鞭打たれた。
「誰が声を出していいと言ったの≪ピシィ!≫」
「ヒャン!」
「あら、気持ちよくなりたくてわざと声を出しているのかしら≪パシィ!≫」
「あ、そ、そんなことは」
「誰がしゃべっていいと言ったの?
このメスブタ≪ヒュシィ!≫」
「わ、わたしはメスブタですぅ。
大佐、もっと、もっと罵ってぇ」
鞭打たれる陸奥を他の艦娘たちはある感情を抱いて見ていた。
「お姉ちゃん、相変わらずだなぁ」
提督の隣にいた中尉も呆れていた
女は男で変わることがあります。
続きは次話で。