ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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眼鏡と間宮にお触り(?)した提督。

これから本領発揮かも。

彼を応援してくださいね。


第12話 亀裂

≪ちゅんちゅん≫

小鳥のさえずりで目を覚ます。

 

鎮守府が機能を停止してから、起床時間の存在は無意味だった。

 

空腹で眠れない、空腹すぎて意識が混濁する、空腹で意識が保てないなど。

 

朝がこんなに清々しいと思えるものだったことを忘れていたこと知った。

昨日までの日々が夢だったと思えるほどに。

 

 = = = = =

 

「こ、こんなことって」

巡洋艦は、自分でもわからない苛立ちを覚えていた。

 

こやつは、この野郎は、このゲスは、この提督は!

どうしてソファで寝ている?

ご丁寧に寝袋まで用意して。

 

昨日スカートの中に手をつっこみ、胸まで揉んだくせに。

 

紳士ぶって、ソファで寝る?

 

無性に腹が立つ。

 

自分でも理由がわからない。

 

同じ寝かせるなら、眼鏡(わたし)のほうがソファじゃないのか?

 

朝、目を覚ますと久しぶりに清潔感のある寝床に驚いたくらいだった。

 

【お前は俺のモノ】

 

この提督の所有物、

生殺与奪は思いのまま、命令如何に依っては、死ぬよりつらいことに耐えなければならないと覚悟までした。

 

嫌がらせ、蹴り、罵声、セクハラ、ワイロと碌なものじゃない。

 

そんな男が、目の前で無防備に眠っている。

「ゲスてーとく、眉間に縦筋入ってますよ」

顔を覗き込んで眉間をツンツンしてやった。

わたしの復讐は、これでリセットとしてあげよう。

 

 = = = = =

 

「てーとく、朝ですが」

 

スカッと目が覚めた。

すると、目の前に若い美女がいた。

おっと、騙されるところだった。

コイツは眼鏡だ。

 

「おはよう、眼鏡。

 スケベスカートの調子はどうだ」

眼鏡は、跳ね上がりスカートのスソを押さえていた。

 

「昨日は(まさぐ)られて、喘ぎ声を上げてたじゃねえか」

眼鏡は俯いて反論してこなかった。

 

(なんか調子狂うな)

 

「俺は着替えるから、お前は朝飯食って来い」

「てーとくはどうされるのですか」

眼鏡のやつ、上目遣いで聞いてきやがる。

(何か企んでいるのか?)

 

「俺は、やることがあるんでな。

 空いた時間に食うわ。

 そうそう、洗濯機が手に入るまで、タライで洗濯しろと、全員に伝えとけ。

 風呂に入っても服が臭ェてな」

 

 = = = = =

 

間宮の朝は早かった。

 

大食いたちが腹の虫に管楽合奏をさせながら食堂に入ってきた。

 

「昨日と同じで良ければできていますよ」

テーブルにドンと寸胴鍋を置く。

昨日のように柄杓が差してあった。

 

「間宮さん、お手数を掛けますね」

「いただきます」

一航戦の空母が、申し訳なさそうにしながらも、柄杓に手を伸ばす。

一度目覚めた食欲を抑えるのは、難しかった。

 

「今日は、トッピングを作っておきましたよ」

梅干しや漬物のほかに、ありあわせの材料で作ったふりかけなど、手間を惜しまず文字通り作っておいた。

 

腕を揮える喜び。

みんなの期待に添いたい。

喜ぶ顔が見たい。

 

【お前は俺のモノ】

 

乱暴な言葉とゲスの笑いと形容できる顔が脳裏に浮かぶ。

何度も蹴られたりもした。

寝る前に見たら、痣になっていた。

 

あの艦娘は、ほぼ一日提督と過ごしている。

 

みんなの笑顔を見るとますますある感情が頭をもたげてくる。

 

気が付くと頬を一筋雫が伝った。

 

 = = = = =

 

俺は、買い物リスト完成させた。

「午後、街に行ってみるか」




提督の知らないところで

【お前らは俺のモノ】

が、

一人歩きを始めてしまっています。

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