彼の暴力は留まるところを知りません。
彼を応援してくださいね。
「おい、眼鏡」
「・・・・」
「・・ビッチ」
「ビッチじゃありません!」
「眼鏡の自覚が出てきたな、結構、結構。
ところでビッチ」
「てーとく、眼鏡でいいです」
「眼鏡、俺に指図するんじゃねぇ。
解体すんぞ」
俺は、空手チョップを眼鏡にお見舞いする。
「へぅ」
眼鏡は頭をさすっている。
「スケベスカートで、話しが進まねえだろ」
「眼鏡でいいです」
「ヤレヤレ」
「うーーーーー」
揶揄い過ぎて眼鏡が唸りだした。
パワハラは愉快愉快。
「あのさー、お前も洗濯、行ってこい」
「でも、書類が」
俺は、中庭で洗濯大会が繰り広げられる予定は確認できている。
眼鏡が朝食を済ませて、執務室に戻った際に報告してきた。
「気象情報を信じれば、明日以降天気がくずれる。
今のうちに洗濯してこい」
「書類の「部屋干し臭い女は、20m以内に近寄るのを禁止するぞ!」はい!行ってきます!」
眼鏡は執務室を飛び出していった。
「飯食って、早めに出発するか」
今日は、洗濯機をはじめ、物資調達に出かける予定がある。
交渉事が伴うし、時間に余裕を持つためにも繰り上げるのもありかと考えた。
= = = = =
食堂は昨日と違って、大食いの人数が半分しかいなかった。
俺に気が付いた大食い(半艦隊)が睨んでくるが気にしない。
「間宮、熱湯くれ」
「提督、あの、すぐお食事の用意をしますね」
「はぁ?俺は、熱湯って言ったよな」
「あの、でも」
「逆らうの?解体して欲しい?」
「貴様! 間宮さんの好意を無下にするのか!」
俺と間宮のやり取りを見かねたのか、戦艦が語勢を強めてきた。
「戦艦さんよぉー、俺は熱湯を頼んだんだよ。
それを聞き入れてくれないのに、好意って何よ。
お前さぁ、人格者で慕われてるってわかるよ。
でもよぉ、お前が必ず正しいって、押し付けて来るな」
「な!」
「長門さん、いいんです。
提督、申し訳ありません。
熱湯です」
間宮がヤカンを持っている。
「よしよし、じゃ、・・・・なんだ?」
俺は、間宮からヤカンを受けとり熱湯を注ごうとする。
ヤカンが動かない。
間宮が取っ手を掴んだまま放さない。
「間宮、蹴りでも入れてほしいの?
ドMなの、Mビッチに目覚めたのか、キヒヒ」
意図が判らないので、軽口で探りを入れることにした。
食事をし、体力が戻った艦娘なら、生身の人間をひき肉にするのも
「提督、せめて、お湯を注ぐくらいには、お役立てください。
お願いします」
間宮は、半ば強引にカップに熱湯を注ぎ入れた。
俺は、間宮の真意を図りかねている。
艦娘たちに警戒しながら、カップ麺を食べ、食堂を後にした。
= = = = =
提督が、カップ麺のスープまで飲み干し、カップをお湯で濯ぎ、箸を洗って食堂から出て行った。
無言のまま。
「間宮さん、申し訳ない」
「長門さんは、何も悪くありません」
「わたしは、もしかしたら、大きな勘違いをしているのかもしれない」
「・・・・長門さん」
「いや、忘れてくれ」
「・・・・お代わりのお鍋は、いりますよね?」
「ああ、消化が早くて、食べるのが追い付かないな」
長門は、苦笑いを間宮に投げた。
間宮は、少し悲しそうな笑顔だけで応えた。
なぜか複雑になる鎮守府