ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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町に来た提督。

慣れているみたいです。

彼を応援してくださいね。


第15話 情報収集

施設の正門で身分照会を受けてから、軍用車を駐車場に乗り入れる。

 

担当下士官が、駆け寄ってくる。

 

「そちらは、将官用ですので」

「ああ、そうか。

 あっちでいいかな?」

俺は、建物から離れた第2駐車場の方を指さした。

「畏れ入ります」

下士官は敬礼を向けてきた。

軽く敬礼を返して、軍用車を移動させる。

 

ここは、海軍将校クラブ。

軍区統括鎮守府なら、鎮守府内に設置される。

 

軍区の端の方になると物理的に距離が離れているため、利用しづらい提督も居たりする。

簡単に言えば、鎮守府の場所で不公平が生じて不満が出てくる。

そういう不満を少しでも解消するための出張所みたいなものだ。

 

ラウンジ、レストラン、パブ、会議室、ジム、プール、公園などの施設を利用できる。

それも将校に限られる。

施設内にも格差があり、階級によって、使える設備が変わってくる。

特に高級軍人になると特権もついてくる。

何名か同行できるようになる。

要するに依怙贔屓して、派閥を形成したりも可能ということだ。

 

本人は、退官後は民間企業に天下り。

まあ、軍隊も上に行くほど、お役所みたいなところということだ。

 

所定の場所に軍用車を駐車し、運転中、脱いでいた第一種軍装に袖を通す。

いつもは、面倒なので提督の徽章である飾緒は外している。

今日は、知人とも会うので飾緒をつけてきた。

これでどこから見ても提督とわかるのだ。

 

 

クルマを後にして、クラブ入り口へ歩いていく。

 

さっきの下士官と目が合った。

軽く敬礼すると下士官の顔がどんどん青ざめていく。

雷(気象現象)に打たれたように身体が跳ねて敬礼をする。

 

実は、俺は提督なので、特別に将官用駐車場を使ってもいい身分なのだが、

軍用車に乗ってきたので遠慮した。

「か、か、か、か、閣下ぁー!失礼いたしましたぁーーーー!」

「貴様ぁー、官姓名はぁ」

「は!  じ、自分はー」

「冗談だよ。

 アメちゃん、食べるか?」

俺は、ポケットから【飴】を取り出し、下士官に渡しながら、聞いてみた。

「俺みたいな、提督は珍しいか?」

 

「はい! い、いえ! 失礼いたしました!」

「何をもって、判断した?」

「は!提督の方々は、ご自分で運転なさいませんし、もう少し年上のように感じております」

「しょぼい軍用車を自分で運転するような若造は、提督には見えないと」

「い、いえ、決してそのような。

 はっ!もしかして、閣下は【元帥の懐刀】と」

「はぁ?誰だよ、そんな恥ずかしぃヤツ」

「い、いえ。自分の勘違いでありましたぁー!」

「だよなぁー。

 俺は、たまたま、提督になれた佐官だよ。

 鎮守府も小さい」

俺はもう一つ下士官に【飴】を渡す。

「このアメちゃんは、ワイロじゃないからな。

 わかっているね」

「は、はい!任務、誠にお疲れさまです!」

どうも勘違いされている。

仕方ないか、ついこの間まで、ここで活動していたしな。

 

実は、先任(クソ)を追い詰めたのが、俺だったりした。

 

平謝りの下士官を後にして、将校クラブの扉をくぐる。

 

飾緒を見せびらかしにジムに行くか。

 

 = = = = =

 

ジムに入るとすぐに受付のカウンターがある。

見知った顔が居て、向こうもこっちに気が付いた。

 

「中佐、こんにちは。これからトレーニ・・・・提督?」

「よう。

 そうだよ、提督だよ」

彼は、ここのインストラクターをしている少尉。

俺は、彼の疑問形に答える。

 

「ご昇進おめでとうございます!」

「昇進はしてねえよ。代将扱いで提督さ」

自分のことのように喜ぶ少尉にくぎを刺す。

なかなかの好青年なので、俺は軍人にしておくのは勿体ないと思っている。

 

「中佐の声がしたようだけど?」

奥の事務所から、若い女性の声がする。

こっちの声も知っている。

「俺だ俺だ」

「中佐ぁ。お久しぶりじゃないですかぁ」

「1週間も経ってないはずだぞ。

 お前は、キャバ嬢か?」

「ひっどーい!

 中佐のことだから、艦娘ちゃんたちを好き放題しているんじゃないですかぁ?」

「よくわかったなぁ。

 もう全員、俺にメロメロだぜ」

「中佐、中身がオヤジ」

「なかなか、痛いところを突いてくるな」

俺が来たのが知れたら担当若手尉官(インストラクター)たちが集まってきた。




任職以前の様子を少し書こうと思います。

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