ブラックな彼はどうして来たのでしょうか。
彼を応援してくださいね。
「仕方ねえなぁ」
内ポケットから、IDカードを取り出す。
「誰か飲み物を頼む」
「自分が行ってきます!」
「じゃあ、外の連中にも差し入・・ワイロを頼む」
「はい! ワイロ頼まれました!」
「もう1人、手伝い頼むな」
「自分が行きます!」
若い将校が2人、ジムを飛び出していった。
「中佐、たまには自分たちに奢らせてください」
「ヤダ!」
少尉は、こういう風にいい奴だ。
「中佐、今度は子供」
「キャバ嬢はうるせえよ」
生意気な後輩はいつも身内のように接してくる。
「言ったなぁー」
女性士官は合気道よろしく関節を決めやがった。
「痛ててて!」
「ふふん。
降参ですか、中佐どの?」
「降参 降参。
かわいくいってもなぁ、痛ぇんだよ」
残念ながら、俺は勝ち誇る中尉に勝った試しがない。
「「買ってきました!!」」
2人の士官が帰ってきた。
ふたりに見覚えがなかった。
それもそのはず、俺がここを離れた直後に異動してきたそうだ。
息が合うのか、任務以外は、いつも一緒に行動しているらしい。
『中佐、中佐。
どっちが【受け】だと思いますか?』
『そうよねぇ。
ここまで、見せられちゃうとねぇ』
『お前らなぁ』
女性士官たちは、ほど良く腐っているみたいだ。
これも職場環境の弊害じゃないだろうか。
今日は俺以外の高級士官が居ないらしく、世間話をすることになった。
「なんか不満に思っているとか、不満を漏らしてる将校とかいないか?」
「そうですね。
最近、新型戦艦一隻で艦隊が壊滅させられたって言ってましたね」
「一隻でか?」
「はい、一隻で何重にも攻撃を繰り出してくるとか」
嫌な噂を聞いてしまった。
俺の鎮守府からも出撃することになるだろうが、できれば、遠慮したい。
「中佐、中佐。
何なら、詳細を確認しますけど?」
「気を使うなよ。
お前らは、情報部じゃねえんだから」
そう、なぜか
迷惑じゃないんだが、何かあったときに助けてやれないのが困る。
水分補給が終わったところで、お茶会をお開きにする。
「じゃあ、俺はトレーニングを始めるわ」
「中佐、お相手します」
「いや、いい」
「えぇ!」
「貴君の指導は、アスリート級じゃないとついていけんわ」
「中佐はいい線行っておられますよ」
「世辞は止せ」
少尉の申し出を速攻で断った。
若いインストラクターとは、根本的に体力が違うのだ。
「じゃあぁ、わたしと組手はどうですか?
寝技OKですよ」
「お前の両手両脚を縛るハンデがあったら、考えてやるよ」
「中佐のエッチ」
「女性士官が、嬉しそうに言うな!」
= = = = =
久しぶりにマシンでランニングをしている。
走るだけなら、屋外を走る方が好きなんだが。
「とうとう貴様のところにも現れたか?」
「ああ、哨戒で発見して、直後、姿を消した」
ジムに顔を出す士官たちは、概ね志が高かったりする。
その分、血の気が多い場合もある。
軍上層部が腐敗しだすとクーデターを企てる輩が居たりいなかったり。
こういうのは、直に聞くのが一番。
なぜか汗を流している風に見せていると話を聞いていないように思われるみたいだ。
会話の感じから、近隣の鎮守府の提督がどちらかなのだろう。
哨戒ありがとうね、感謝していますよ。
今度、砂糖を50kgほど送っておくから、艦娘たちに甘いものでも作ってあげてね。
この様子だとちょくちょく噂を聞きに来ないとダメそうだ。
大本営への報告だと【かもしれない】ところが、削られてしまっていたからだ。
大本営からの情報とふたりの会話の齟齬を確認しながら10kmほど走っていた。
あー、疲れる。
ああ、お色気がたりない。
ブラックがぶらっくになっていく。